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第五章 アイルランドの女海賊と海賊団結成
5-18.オマリー海賊団 1
しおりを挟むアイルランド島。
アイルランドの歴史は長い。
紀元前3000年ごろには青銅器文明が存在し、ピクト人が農耕を行っていた。
紀元前1600年ごろになると、ケルト人がこの地に到達し、小国が成立し各地に王が出現し統治した。
ローマ帝国の勢力の拡大により、4世紀から5世紀にはキリスト教が布教され、学問や文化が発展していく。
ところが、8世紀末にノルマン人、つまり、ヴァイキングの侵入が始まると、大部分はノルマン人の国家となる。
やがて、ブリテン島からの侵攻があり、興廃を繰り返しながら、今に至る。
強い統一国家がなかったのが、ブリテン島から侵攻に対抗できなかったのだろう。
そんな王権を有さない王国が、いくつもあるアイルランド。※1
そして、ここの宗教は、強固なまでの旧教徒なのだ。
そのアイルランドで16世紀、支配者のように君臨していた女がいた。
その名は、グレイス・オマリー。
アイルランド島の西側にあるウール王国の王女。
彼女の存在は、アイルランドの歴史には、一切、記載がない。
しかし、彼女は、実在したのだ。
なぜなら、イングランド海軍の公式記録に、「海軍船を沈めたのは、グレイス・オマリーの海賊団だ」と記載されているからだ。※2
そのオマリー海賊団に、アインス商会がイングランドの武器を売りつけるらしい。
エディンバラからヘブリディーズ諸島を抜け、北アイルランドへ行く。
そして、島の西側へと抜けると、数隻の海賊船が、航行するイングランドの商船を襲っていた。
「ミーナちゃん、あれがオマリー海賊団よ」
「すごい手慣れているわ」
そう、まるで何かの流れ作業かと思うほど、海賊は商船をスルスルっと襲い、略奪を行っていた。
何を奪い、何が不要なのか。
誰を捕虜にして、誰を始末すればよいのかを知っているように感じた。
その海賊船が、今度は、私の乗るキャラベルに近づいてきたので、私は自身の緊張を隠すことが出来たか不安になった。
※1 王権を有する 王権はローマ教皇が認めるもの
※2 エリザベス女王18の質問状
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