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第六章 ヴィルヘルミーナの白い海賊船
6-7.ローレライの上での決戦 2
しおりを挟む私は腸が煮えくり返っていた。
人前で「無能、無能」と言われ、良い気分ではない。
次に、私は自分の知らないうちに、魔女にされていたということ。
さらに、自分の人格まで変えられてしまっていたこと。
「それでは、私は、お母さまのコピーでは!」
すると、アンの口から母の言葉が告げられた。
「何がいけないの? ヴィル」
ゾッとした。
「マリアンヌ! 言い過ぎだぞ」と、父が叱るように言った。
「あら、フォルカー。貴方はよく頑張りましたね。このラインラントの地を、よく統治しましたわ。我がラインラントの地を。私に代わって」
何を言っているのだ。
お父さまは、毎日、遅くまで、領地・領民のため働いているのだ。
何が、「私に代わって」だ。
「ヴィル」と、母が言ったので、思わず、ビクッとなった。
「貴女の中にも、私の力が入っているわ。だから、貴女は私には逆らえないの。私にはね」
そうなのだ、先ほどから、身体を動かそうにも動かせない。
「これが、魔女の力、な、の……」
「おい、ヴィル!」と父が言うも、私は自分の力では何もできなかった。
「おい、茶番はそこまでだ。マリアンヌ」と言ったのはクレマンティーヌだ。
「茶番に付き合うつもりはない、フォルカーもヴィルヘルミーナも死んでもらう。ついでにアンゲーリカとその中にいるマリアンヌもだ。すでに援軍も到着している」と、クレマンティーヌは苛立っているようだ。
「援軍が来る前に、貴女を始末するわ」と母が言った。
「どうやって」
「すでに、傭兵は私の言いなりよ。あはは。この女を捕まえろ」と母が命ずると傭兵たちは従った。
「クレマンティーヌ、すぐに私を処刑しなかったのが間違いだったようね。傭兵には鎧を被る前に力を行使しておいたわ」と、鼻でふふんと笑っていた。
「また、エラそうに」と言うと、母がこちらを見たような気がした。
ヴィルヘルミーナと別れたエマリーたちは、ガレオン船に乗っていた。
「ヤスミン、試射をやりましょう」
「はい、準備は出来ておりますよ」
「では、お願い」
「68ポンド砲用意ッ」とヤスミンが言うと、船首像が倒れて行く。
船首像が水面と平行になると、その中に68ポンド砲が隠されていた。
「榴弾を試す。撃てぇ」
“ドゴォーーーーン”
目標とした古船は砕け散った。
「きゃあ、ヤスミンンンン、一撃よ、一撃よ」
「ヤスミンさん、一撃必殺の大砲ですよ」とイリーゼも興奮している。
「後の武装は、ドーバー港から注文の品が届き次第ですね」
そう、このガレオン船は、まだ、武装は完全でなかった。
そう、完全ではなかった。
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