握力令嬢は握りつぶす。―社会のしがらみも、貴公子の掌も握りつぶす― (海賊令嬢シリーズ5)

SHOTARO

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第六章 ヴィルヘルミーナの白い海賊船

6-16.強行突破

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 この時、私はイリーゼと共に、ガレオン船を離れ武装漁船の一隻に乗っていた。

 この船には、大砲二門と機雷、小銃があるだけの武装であったが、10隻もあれば、何かできる感じがしていた。

 機雷と言っても酒樽に火薬を入れ、蝋を塗り密閉したものだ。
 それに油をしみ込ませ導火線に火をつけ流すわけだ。

 導火線に油をしみ込ませる時間が無い場合や密閉する蝋がない場合は、即席機雷としてバターなどを使う。
 バターは蝋よりも低い温度で燃えるので、使い勝手が良いが、衝撃に弱いという弱点もある。

 それと、エマリーには伝書鳩を使うなとも言っておいた。
 敵の伝書鳩なのか、味方のものなのか、判断がつかないからだ。
 頭上を伝書鳩が飛んだら、撃ち落とすつもりだ。

 そして、先から何羽も撃ち落としているので、敵の伝書鳩以外の鳩も撃っているのだろうかと思うと、申し訳ない。
「きっと、すべて敵の伝書鳩に違いないわ」

 さて、直線距離にして10キロ。
 辻馬車なら1時間程度かかる距離だ。

 そこまで行くには、やはり、それなりの時間がかかったようだ。
 この武装漁船だけでは、五隻も船は破壊できない。

 うまくエマリーが、ガレオン船を動かしてくれていることを願うしかない。


***


 ここは、三大魔女の聖地の一つ、ボーデ峡谷。

 魔女なのに、男というのはおかしいかもしれない。
 しかし、男でも魔女と呼ぶのが慣習のようだ。
 なので、彼のことを“男の魔女”とでも呼ぶことにしよう。
 その“男の魔女”が、
「ペディさま、クレマンティーヌ103号からの通信が無くなったようです。死亡したかと」
「そう」と、ペティという子どもは、素っ気なく答えた。

 クレマンティーヌ103号は、三代目クレマンティーヌになれる逸材であったが、やや、年齢を重ねてしまったようだ。
 知力に体力のピークを過ぎてしまったのだろう。

「では、四代目に相応しい逸材を目覚めさせます」
 また、別の魔女が言った。
「あぁ、100日間の催眠術に耐えた逸材。100日間の教育を受け切った逸材が目覚めますわ」と。

「うん、楽しみね」と、ペティは子どもらしく答えた。
 そして、催眠教育から、目を冷ましたのは、18か19歳の若い女だった。
「お前の名前は?」
「我が名はクレマンティーヌ。ブルゴーニュのクレマンティーヌ」
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