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第六章 ヴィルヘルミーナの白い海賊船
6-17.挟撃
しおりを挟む砲撃も減ったように感じる。
中洲にいるガレオン船、騎兵隊、武装漁船、どれを狙うのか、はっきり指揮命令が出来ていない様だ。
「あまり、良い指揮官ではないようですねぇ」と、それを見たイリーゼも言っている。
とは言え、今から私が行うことをここにいる者に言うのは気が引ける。
おそらく、敵の中型船の下に潜り込んで、大砲を撃ったり、機雷でも流すのだろうと思っているのだから。
しかしである。
そんなことをしたところで、五隻の船を落とせない。
ゲリラ戦など、しょせんは嫌がらせ程度なのだ。
古今東西の戦争で、ゲリラ戦で勝利できた闘いは、20世紀に一度有っただけだ。※1
さて、そろそろ、30分が経過した。
一方、エマリーのいるガレオン船では。
「よし、中洲から出るよ」
そして、ガレオン船は、川を下るというのに帆を張った。
しかも、すべての帆を張ったのだから、ものすごい速力だった。
それを知ってか知らずか、「エマリー、頼むよ」と、私は呟いた。
それが、イリーゼにも聞えたのだろう、一つ、彼女も頷いていた。
そこに、イリーゼのエマリーに対する絶対的な信頼感を感じたのでした。
***
すると、敵の五隻の船が見えてきた。
何故か、攻撃が手薄になったのかは、一目瞭然だった。
実は、船員らが、口論をしていたのだ。
何を口論していたのかは、なんとなくわかるわ。
登って攻めるべきか、傭兵から連絡を待つべきか、その辺りだろう。
「よし、機雷を流せ。各自、船に取り付け!」
そう、大砲をぶっ放して玉砕など、するものではない。
船に取りついて、占拠する。
そう、これが海賊のやり方だ!
だから、殺傷能力の高いイリーゼを連れてきたのだ。ためらいもなく人を殺せる兵士は頼もしい。
さて、敵が機雷に右往左往している間に、取り付き、乗り込むことにした。
海と違い、流れが変わることが無い川は乗り込みやすい。
不意を突いたので、アッと言う間に占拠できた。
ただ、いつもの海賊稼業と違うのは、人も物も略奪の必要はないので、川に飛び込んでもらった。
そして、することは一つ。
この船で、残りの四隻を撃ちまくること。
弾がなくなれば、漁船で逃げれば良し。
「撃てぇ」
相手は、「こんな至近距離で」とでも言っているのだろう。
こちらが撃つたびに、敵の船員が、空中に飛び、舞い踊っていた。
敵船も発砲してきたが、元々、自分達の船ではないので壊れても、痛くも痒くもない。
弾のある限り、撃ち尽くすのだ。
しかし、左右から大砲を撃たれては、長くは続かない。
「さすがに、一対四は無理があったか」
「そうですね、潮時でしょうね」
「では、漁船で逃げるとするか」と言う頃には、下流からキャラベルが登って来た。
「良いタイミングだわ。この船は放棄する。漁船へ戻れ」と言うと、ロープをスルスルっと降りて、皆が漁船に戻り、キャラベルへ移動する。
さらに、上流からは、エマリーのガレオン船が現れた。
※1 フランスに勝利したベトナム
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