58 / 96
七章 ひきこもり
第五十八話
しおりを挟む
ガイアスに向かっているときはまさかこんなことになるとは全く思ってなかったなぁ、そうぼんやり考えながらルナの背に揺られている。
このままずっとルナの背に揺られ続けてたいな。気持ち良いなぁ。
空にはゼルが羽ばたいているのが見える。
エルザイアに戻るとリシュレルさんにガイアスでの顛末を話した。
リシュレルさんは驚いたような悔しさのような哀れみのような複雑な顔をした。
「まさかそんな展開になっていようとは……ユウ様、何と言ったら……」
「気にしないで下さい……と言っても気にしちゃいますよね」
苦笑するしかなかった。
「良いんです! 私はこれからひきこもりを満喫するんです! なので、可愛い家をお願いします!」
そう、これは本心。こうなれば楽しむしかない!
「そうだな。とりあえず森にユウが家を建てる許可を取るか。それから家造りだ!」
それからは着々と家造りは進み、私はというとキシュクのみんなに別れではなく、しばらく会えなくなると言って離れた。
悲しくなりたくなかったから、本当のことは言わなかった。またいつか会えたらな……。
そして一ヶ月後。
「完成だー! 希望通りー! アレンありがとう!」
王宮裏の森奥深く、可愛い家が建った。
ロッジ風! こんな家に住んでみたかったのよ~!
「気に入ったなら良かった」
アレンも満足そうだ。
ディルアスは今日までずっと複雑そうな顔をしている。
結局一度もちゃんと笑った顔は見れなかったなぁ。一瞬笑ったかな、っていうのはあったけど。ちゃんとした笑顔が見たかった。
「何か必要になったり、困ったことがあればすぐ連絡しろよ?」
「うん、ありがとう」
「じゃあな」
アレンもイグリードと別れたときのように、強く抱き締めて離れて行った。
ディルアスは無言だった。せっかく仲良くなれそうだったんだけどな。
「ディルアス?」
「俺は……」
言い淀んでいる。
「私に怒ってる?」
「!! 怒ってない!!」
いや、怒ってるようにしか見えないんですけど……。
「ユウに怒っている訳じゃない。自分に腹が立っているだけだ。何も出来ない自分に……」
ずっと自分を責めてたのかな。私がこの選択したことによって、ディルアスが傷付いた? そうだったら嫌だな。
「私のせいだね、ごめん」
「謝るな、ユウのせいじゃない」
沈黙が流れた。
「俺は会いに来る。良いか?」
「え? ここに?」
「あぁ」
「そ、それは……」
人と離れて暮らすつもりなのにディルアスとだけ会うというのもどうだろう。
「来るから。分かったな?」
「え、あ、うん」
うん、って言っちゃったよ。あー、ま、いっか。
悩むのもうやめ!
好きに生きるって決めたんだから!
「じゃあまた」
ディルアスはゼルに乗って去った。
「そうだ、ルナとオブ、元に戻って良いよ」
森の中だから小型化する必要はもうどこにもない。
「これからはずっとその姿で大丈夫だからね?」
ルナとオブが動き回れるだけの広さがロッジの前に広がっている。
「あ、そうだ、これだけは最初に言っておかないとね。ルナ、オブ、私がいなくなったら自由になってね」
『ユウ、ぼくユウがいなくなるのやだ!』
「ありがとう、でも仕方ないの。最後までいっぱい一緒にいようね」
大きな姿のオブを撫でた。ルナは何も言わない。
そんなルナも撫でると真っ直ぐな瞳を向けた。
「さて、これからどうするかな~」
食べ物やら必要なものは全てアレンが用意してくれた。定期的に届けてくれるらしい。
「でも~、それに頼ってばかりもねぇ」
考えた。まず家庭菜園してみるか!
種を用意してもらい畑を作って植えてみる。う~ん、育て方よく分からないしなぁ、色々試すかな。
色んな種類の野菜を植えてみた。
「水魔法で水やり~」
ちょっと横着かしら。何てことを考えるが、やっぱり魔法も使いたいしね!
横ではオブがルナにちょっかいをかけている。ルナはちょっと迷惑顔で何だか可笑しかった。
じゃれあっている姿が可愛いなぁ、と思ったけど、よく考えたら幼子と大人……。
オブが人型になれたら、と想像したら、凄いクールな保育士と幼児……盛大に吹き出してしまった。
ルナとオブが怪訝な顔。すいません、変な想像して……。
色々試行錯誤しながら数ヶ月。枯らしてしまったもの多々あり。
「うーん、難しい。上手く育ったのはこれだけかぁ」
傷薬になる青いメランという花だ。
「これだけ一面に咲いたねぇ、アハハ」
こんなに大量に傷薬の素があってもねぇ。まあ良いか、綺麗だし。
索敵に何か引っ掛かった。敵意がないとはっきりとは分からない。これは……
「ユウ」
「ディルアス、いらっしゃい」
ディルアスは数ヶ月に一度くらいのペースで遊びに来てくれる。
遊びに来ると言っても、特に何かをするでもなく、一日まったり外にテーブルを出してお茶をしている。お互い無言だが、でもなぜかそれが普通というか、逆に落ち着くんだよね。
何だか優しい空気。ルナとオブもいて、ディルアスも横にいて、ゆったりとした幸せな時間。
たまにキシュクのみんなの話をしてくれるのが懐かしくて嬉しくなる。
そうやってまったりとした一日を過ごしてディルアスは帰って行く。
「今日はゼルに乗って海を見に行かないか?」
「え?」
突然の提案に驚いた。今まで何か行動したことはなかったから、一瞬思考が止まった。
「え、あ、海!? 海!! そういえばアレンが言ってたね! 行きたい!」
そういえばアレンが最北に行くと海が見えるって言ってたな。色々やってたらすっかり忘れてた。
そう、こっちの世界の海、見てみたいと思ってた!
「フッ。じゃあ行こう」
あ、微かに笑った。やっぱりちゃんとした笑顔は見れないけど、こういう微かな笑顔でも嬉しいな。
「ゼルに乗るから、ルナとオブは留守番だな」
「ん? ルナとオブはお留守番……」
『えー! ぼくもいきたい!』
「今回は留守番だ」
ディルアスが珍しく強く言った。
オブがブーブー言ってる。
「うーん、ごめんね、オブはルナと待ってて? ルナ、お願い」
仕方ないな、と、ルナがオブを宥めている。お父さんみたい? やっぱり保育士? と、ちょっと可笑しかった。
ゼルに乗ったディルアスが手を差し伸べる。その手を取るとディルアスの前に引き上げられた。
ゼルは大きく羽ばたき、一気に空高く舞い上がった。
このままずっとルナの背に揺られ続けてたいな。気持ち良いなぁ。
空にはゼルが羽ばたいているのが見える。
エルザイアに戻るとリシュレルさんにガイアスでの顛末を話した。
リシュレルさんは驚いたような悔しさのような哀れみのような複雑な顔をした。
「まさかそんな展開になっていようとは……ユウ様、何と言ったら……」
「気にしないで下さい……と言っても気にしちゃいますよね」
苦笑するしかなかった。
「良いんです! 私はこれからひきこもりを満喫するんです! なので、可愛い家をお願いします!」
そう、これは本心。こうなれば楽しむしかない!
「そうだな。とりあえず森にユウが家を建てる許可を取るか。それから家造りだ!」
それからは着々と家造りは進み、私はというとキシュクのみんなに別れではなく、しばらく会えなくなると言って離れた。
悲しくなりたくなかったから、本当のことは言わなかった。またいつか会えたらな……。
そして一ヶ月後。
「完成だー! 希望通りー! アレンありがとう!」
王宮裏の森奥深く、可愛い家が建った。
ロッジ風! こんな家に住んでみたかったのよ~!
「気に入ったなら良かった」
アレンも満足そうだ。
ディルアスは今日までずっと複雑そうな顔をしている。
結局一度もちゃんと笑った顔は見れなかったなぁ。一瞬笑ったかな、っていうのはあったけど。ちゃんとした笑顔が見たかった。
「何か必要になったり、困ったことがあればすぐ連絡しろよ?」
「うん、ありがとう」
「じゃあな」
アレンもイグリードと別れたときのように、強く抱き締めて離れて行った。
ディルアスは無言だった。せっかく仲良くなれそうだったんだけどな。
「ディルアス?」
「俺は……」
言い淀んでいる。
「私に怒ってる?」
「!! 怒ってない!!」
いや、怒ってるようにしか見えないんですけど……。
「ユウに怒っている訳じゃない。自分に腹が立っているだけだ。何も出来ない自分に……」
ずっと自分を責めてたのかな。私がこの選択したことによって、ディルアスが傷付いた? そうだったら嫌だな。
「私のせいだね、ごめん」
「謝るな、ユウのせいじゃない」
沈黙が流れた。
「俺は会いに来る。良いか?」
「え? ここに?」
「あぁ」
「そ、それは……」
人と離れて暮らすつもりなのにディルアスとだけ会うというのもどうだろう。
「来るから。分かったな?」
「え、あ、うん」
うん、って言っちゃったよ。あー、ま、いっか。
悩むのもうやめ!
好きに生きるって決めたんだから!
「じゃあまた」
ディルアスはゼルに乗って去った。
「そうだ、ルナとオブ、元に戻って良いよ」
森の中だから小型化する必要はもうどこにもない。
「これからはずっとその姿で大丈夫だからね?」
ルナとオブが動き回れるだけの広さがロッジの前に広がっている。
「あ、そうだ、これだけは最初に言っておかないとね。ルナ、オブ、私がいなくなったら自由になってね」
『ユウ、ぼくユウがいなくなるのやだ!』
「ありがとう、でも仕方ないの。最後までいっぱい一緒にいようね」
大きな姿のオブを撫でた。ルナは何も言わない。
そんなルナも撫でると真っ直ぐな瞳を向けた。
「さて、これからどうするかな~」
食べ物やら必要なものは全てアレンが用意してくれた。定期的に届けてくれるらしい。
「でも~、それに頼ってばかりもねぇ」
考えた。まず家庭菜園してみるか!
種を用意してもらい畑を作って植えてみる。う~ん、育て方よく分からないしなぁ、色々試すかな。
色んな種類の野菜を植えてみた。
「水魔法で水やり~」
ちょっと横着かしら。何てことを考えるが、やっぱり魔法も使いたいしね!
横ではオブがルナにちょっかいをかけている。ルナはちょっと迷惑顔で何だか可笑しかった。
じゃれあっている姿が可愛いなぁ、と思ったけど、よく考えたら幼子と大人……。
オブが人型になれたら、と想像したら、凄いクールな保育士と幼児……盛大に吹き出してしまった。
ルナとオブが怪訝な顔。すいません、変な想像して……。
色々試行錯誤しながら数ヶ月。枯らしてしまったもの多々あり。
「うーん、難しい。上手く育ったのはこれだけかぁ」
傷薬になる青いメランという花だ。
「これだけ一面に咲いたねぇ、アハハ」
こんなに大量に傷薬の素があってもねぇ。まあ良いか、綺麗だし。
索敵に何か引っ掛かった。敵意がないとはっきりとは分からない。これは……
「ユウ」
「ディルアス、いらっしゃい」
ディルアスは数ヶ月に一度くらいのペースで遊びに来てくれる。
遊びに来ると言っても、特に何かをするでもなく、一日まったり外にテーブルを出してお茶をしている。お互い無言だが、でもなぜかそれが普通というか、逆に落ち着くんだよね。
何だか優しい空気。ルナとオブもいて、ディルアスも横にいて、ゆったりとした幸せな時間。
たまにキシュクのみんなの話をしてくれるのが懐かしくて嬉しくなる。
そうやってまったりとした一日を過ごしてディルアスは帰って行く。
「今日はゼルに乗って海を見に行かないか?」
「え?」
突然の提案に驚いた。今まで何か行動したことはなかったから、一瞬思考が止まった。
「え、あ、海!? 海!! そういえばアレンが言ってたね! 行きたい!」
そういえばアレンが最北に行くと海が見えるって言ってたな。色々やってたらすっかり忘れてた。
そう、こっちの世界の海、見てみたいと思ってた!
「フッ。じゃあ行こう」
あ、微かに笑った。やっぱりちゃんとした笑顔は見れないけど、こういう微かな笑顔でも嬉しいな。
「ゼルに乗るから、ルナとオブは留守番だな」
「ん? ルナとオブはお留守番……」
『えー! ぼくもいきたい!』
「今回は留守番だ」
ディルアスが珍しく強く言った。
オブがブーブー言ってる。
「うーん、ごめんね、オブはルナと待ってて? ルナ、お願い」
仕方ないな、と、ルナがオブを宥めている。お父さんみたい? やっぱり保育士? と、ちょっと可笑しかった。
ゼルに乗ったディルアスが手を差し伸べる。その手を取るとディルアスの前に引き上げられた。
ゼルは大きく羽ばたき、一気に空高く舞い上がった。
0
あなたにおすすめの小説
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する
雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。
ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。
「シェイド様、大好き!!」
「〜〜〜〜っっっ!!???」
逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる