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第五章 魚の目に水見えず、人の目に空見えず
第八話~淫らな夜・前編~
しおりを挟む柚希の言葉を待たずして、今度は首筋に翔太郎の顔が埋まる。柔らかい唇が押し当てられたかと思えば生温い舌で舐め上げられ、時折軽く歯を立てられたりもした。
今までの翔太郎の様子から察するに、女性との付き合いに関しては奥手、それこそ、経験が無いのかもしれないと思っていた所為で深く疑う事をしなかったのだろう。自分が翔太郎の初めての相手だったらいいのに、だなどと思っていたからこそ激しく舌を絡めてきたり、抵抗されてもたじろぐ事無く己の欲望を満たそうと突き進む翔太郎が、まるで別人じゃないかとすら思えて仕方が無かった。
ここまで雄々しい所を見せられては、すべてが柚希の願望によって作り上げられた都合の良い妄想であったのだと結論づける他ない。予想を反した翔太郎のその姿に、柚希は目を白黒とさせていた。
翔太郎により腹部まで放たれてしまったシャツのボタン。もどかしそうにインナーシャツをスカートの中から引っ張り出すとすぐにその手は背中に回り、大きなその掌はどこへも寄り道することなくピンポイントで背中のホックへと辿りついた。慣れた手つきでなされる一連の動作に困惑している内に難なくホックも外され、窮屈そうにしていた胸元が解放される。そして、とうとうその大きな掌は背中を撫でつけるようにして前に回り込み、柔らかい左の乳房を包み込んだ。
「あ……んっ」
勝手に漏れ出るあられもない声。先ほどまでの性急さとは打って変わって、じんわりともみほぐすような緩慢な手の動き。決して尖りに触れることなく膨らみを揉みしだくその愛撫は、どこかもどかしささえ感じてしまう程だった。
首筋を這っていた舌はそのまま耳へと移動を始め、次に耳介をゾワリと舐め上げる。否応なく耳のすぐそばで聞こえる水の音、時々漏れる翔太郎の吐息。与えられている刺激はたったそれだけだと言うのに、自分の意思とは関係なく甘い声が出るのを押さえる事が出来ないでいた。
「ん……、――やぁっ!」
と、突然、柚希の尖りに甘い刺激が与えられた事で背中が反り返り、柚希は手の甲を口元へとあてがった。
しかし、その後は敏感なその場所にはわざと触れない様にしているのか、翔太郎の指先がくるくると何度も円を描く。それでも時折触れる先端の刺激に、柚希の身体が否応なく反応した。
「は、発条さん、もうやめ……」
与えられる刺激に頭が朦朧(もうろう)とし始める。息も絶え絶えに懇願すると、待ってましたかとばかりに翔太郎は反対のふくらみを口に含んだ。
「ああ! ……ん、ダメっ……」
一度は丸まっていた背中が、再び反り返る。翔太郎の顔に押し付けるようにしたその姿勢は、拒絶の言葉とは裏腹にもっともっとと強請っている様だ。何も弄られていなかった方の胸は冷たい空気に触れたことで少しひんやりとしていたのが、一気に熱に包まれたそれは余計敏感に反応した。
双丘をもみしだく指使いと連動する翔太郎の舌。自身の胸元を見下ろしてみれば、瞼を閉じながら味わう様に自身の乳房を食らう翔太郎の姿があった。
視覚、触覚、聴覚を刺激する。それだけでなく、翔太郎から溢れ出る雄の匂いが追い打ちをかけ、柚希はあっという間に彼の手の内に落ちた。
ふくらみを下から掬い上げるようにしていた右手が、わき腹を辿りながら太ももに到着する。足の外側を撫でていた手が内腿に触れた途端、柚希の身体が大きく揺れた。
大きな掌がスカートの中に侵入する。この様子だと一気に責め立てられるのかと思いきや、急に下着の際をなぞる様な焦れた動きに変化した。
尖りに歯を立て、軽い痛みを伴いながら舌先で刺激を与えるそれとは正反対の手の動きに、じれったいとさえ感じてしまった。
「はっ、発条さん、……もう」
「そう急かすなよ」
「ちがっ、――んぁッ……!」
尖りを弄んでいた薄い唇が、紅い舌を這わせながら首筋に到達したその時だった。
恥丘が掌に覆われ、下着の上から翔太郎の指が窪みを探し始める。既に湿り気を帯びていた事に気づいたのか、耳元でふっと笑う声が聞こえた。
「……っ!」
あまりの恥ずかしさに耐えられなくなり、顔を背け瞼を固く閉じていると、ショーツの脇から彼の指が入り込み、十分に濡れそぼっていた秘所は難なく彼の指を飲み込んだ。
「……や、……あぁっ!」
しんと静まる深夜の玄関先。翔太郎の指が抽送を繰り返す度に聞こえる、くちゅりくちゅりといった淫らな音。今、扉の向こうを誰かが通りでもしたら……とか、隣人に聞こえてしまうんじゃないか、などと頭の片隅にはあるものの、次から次へと与えられる快感に平静を保とうとする努力は無駄なものとなる。シャワーを浴びていないだけでなく、アルコールの匂いを充満させたこの身体を大好きな翔太郎に触れられるのが恥ずかしい。綺麗な身体で抱き合いたいと思うものの、指の抜き差しだけでは物足りないのだという思いも混在している事に、柚希は戸惑いを隠せないでいた。
左手で胸を揉みしだき、右手は秘所を弄ぶ。やがて、首筋に落としていた口づけは徐々に下降を始めた。
「あいつと同じようにしてやるよ」
「――え? ……あ、ちょっ」
もう一方の胸を食み、その輪郭をなぞる様に熱い舌が這う。鳩尾を通って下腹部まで進むと、ただならぬ嫌な予感に柚希の身体が打ち震えた。
「あっ、の」
溢れかえっていた蜜壺から、翔太郎の指が抜かれた事で束の間の安息が訪れる。しかし、ずり上がったストレッチ素材のスカートは元の位置に戻ることなく、太腿を嬲る翔太郎の目の前に惜しげもなくさらされている。その事に気付くと、慌てて両手で覆い隠した。
下着はまだつけているとは言うものの、人前にさらせる場所ではないところに翔太郎の顔がある。きっと下着についた欲望で出来た染みも見られてしまう、と思うと、急激に羞恥心に襲われた。
「……何で隠すんだよ」
ちゅっちゅっと音を立て、ショーツの際に吸い付いていた翔太郎がキッと睨み付ける。下から見上げられると切れ長の目が三白眼になり、ゾワリと何かが背中を這った。
「手、どけろよ」
下唇をぐっと噛みしめながら、柚希は無言で首を横に振る。言う事を聞かない事にイラついたのか、翔太郎は自然と舌打ちをした。
「俺はそんなに気が長い方じゃない」
「そ、んな」
困惑の色が隠せない。はぁっと溜息を吐いた翔太郎が手を払いのけると、柚希はその手で自身の顔を覆った。
「あの、お願いです。は、離れて下さい」
「は? 何で?」
「だ、だって汚いから」
「別に、汚いとは思わないけど」
「でもっ」
プルプルと震える白い柔肌。そこから香る男を誘う様な甘美な匂い。だが、その時の翔太郎はそれに興奮するでもなく、別の感情が沸き上がっている様だった。
「あいつにも同じことさせたんだろ?」
「……え? いやっ!」
下着を横にずらされ、熱く熟れた秘部が露わとなる。そこに顔を近づけようとする彼の額を、柚希は慌てて押し返した。
「だ、だめです! お風呂も入ってないのに」
「んなの、どうだっていい」
「ちがっ、……そ、それに、――こんなこと陸にもされてない!」
だが、そんな妨害にも怯むことなく左手で柚希の手を抑制すると、紅い舌をチラリと覗かせながら翔太郎は柚希の足の付け根に顔を寄せた。
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