おひとりさまの準備してます! ……見合いですか?まぁ一度だけなら……

松ノ木るな

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第一話 彼と私の共通点?

⑤ 人はそれを美しい魔女と呼ぶ

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 彼の唐突な申し出により、私は我に返った。多少落ち着き、ベッドの隅に大人しく腰掛ける。

「本当に申し訳なかった。彼女、シャルロッテは気ままで押しが強く、行動力の塊のような人なんだ」

 厨房ジャックするくらいですから、言われるまでもなく分かります。

「あの用意された料理、私も少し頂いたのだが、とても美味しかった。君が作ったものだろう?」

 え、確か倒れる前に、お父様に伝言を頼んだはずなのに。おかしいな。私はしらっと彼から目を逸らした。

「父君はあのようにおっしゃっていたが、シャルロッテがあれほどうまく作れるわけないし、彼女がすべて白状したよ」

 やっぱりバレていたのか。

「確かに彼女は、積極性の権化のような方でありましょうが、それを含めて美しいお方だと思いました。あのように愛情深い方に思われて、お幸せですね」

「そうなんだ」

 うわぁ、ずいぶん明け透けな笑顔……。

「彼女をよく分かってくれて嬉しいよ」

 よく分かってもこの見合いはなかったことになるし、もう会うこともありませんが。

「それで、だからこそ、私と結婚して欲しい!」

「は?」
 話に脈絡がない。

「どういうことでしょう?」

「いや私も、こんなことを起こしてどの面下げてと分かってはいるのだが、母が君を全力で勧めるものだから……」

「…………?」
 ちょっと待て。今、関係者ひとり急に増えましたね?

「この見合いに乗り気だったのはお母様でしたの?」

「まぁ、今度こそ僕が……あ、私が、見合い相手をお持ち帰りしてくるようにと、気合を入れて昼前からマグロをさばいていたらしいが……」

 ルーベル地方では、今マグロがブームなの?

「今となっては、ぜひ君に!と、彼女たっての願いなんだ。君は信用に足るご令嬢だと、彼女が」

「はぁ? いつどこでお母様があなたに私を勧めたんですか! だいたい、結婚は信用に足る人とではなく、愛する人とするものでしょう?」

「愛する人?」
「シャルロッテ様とか」
「は? いや彼女とは結婚できないし」

「まぁ事情がおありなのでしょうけど、それならもう諦めて、彼女にも劣らぬ美しい人を探すとか」

「諦めてって、僕はシャルロッテと別に結婚なんてしたくない。見くびらないでくれ」

 ……見くびる?? なにそれ。ほんとうに不機嫌になってるみたいだけど。

「君も僕のことをそんなふうに見るのか……」

 ものすごく心外だというような顔をして嘆かれている。

「でも誤解だよ。そんな、実の親と結婚したいなんて、変態もいいところじゃないか!!」

「変態……?」

 その時、ダァン!と激しく扉が開いた。

「シャルロッテ様?」
 驚いた私の目の前で、彼女はエイリーク様に突進し、タイを掴み引っ張りあげた。

「さっきから扉の向こうで聞き耳立てていたら、まったくもう! あなたはご令嬢ひとりスマートに口説けないの!?」

「実の親……?」

「それにエレーゼは変態じゃないわ! ただお父上が大好きというだけよ!」

 私、別に変態って言われてません! ええっと、もう、何が何だか。

「シャルロッテ。盗み聞きしてたのか」

 シャルロッテ様……何か文句ある?という鼻息を。

「でも心配はいらない。僕も腹を決めた。何としてでも今夜、彼女を我が家に案内する。だから別室でゆっくり紅茶でも飲んでいてくれ」

「信じていいのね?」
「ああ」

 ……そして彼女は扉の向こうに。

「そういうわけで、君は母が認めた女性だ。ぜひ、私の妻になってもらえないだろうか!」

「……えええ!? は、母!?」

「母」
 扉の方を指さした私に、彼も扉の方を指さし平然と言った。

「母いくつ!?」
「たしか今年37だったかな」
「怖っ! 10以上若く見えます!!」
「まぁ、見目はすばらしく可憐だからな……」

「え、じゃあ、ちょっと待って。金時計に母の肖像画って!」
「何か? というか何で君が知ってるんだ」
「変態じゃないですか!」
「変態とは失礼だな。母親を愛しく思わない人間はいないだろう? 愛しい家族の肖像画を持ち運んで何が悪い」

 開き直った!

「それに、さっきシャルロッテから聞いたよ。君も、父君を深く愛しているのだろう?」

 貴族が実母を呼び捨てにしないでください。

「君は父君と片時も離れたくないから、この縁談も断るつもりなのだろう!?」

 父が好きなのも断るつもりなのも事実だけれど、その表現ではまるで私が父と結婚したい変態みたいではないか。

「私たちは同士だ。結婚に乗り気でないのに、外からの圧力で見合いさせられている」

 うん? 彼女は恋人ではなくて、母親……だったのに、乗り気でない?

「あなたもお母様と一緒にいたくて?」

「いや、決してそういう理由では。まぁ、いろいろと心配な親なので見張っていないと……。でも、そういうことではなくて!」

 ジトっとした視線を投げかけてやる。

「人付き合いは苦手だ。自由でいたい。しかし私は家の嫡子。はじめはその運命に従い、然るべき御家のご令嬢に結婚を申し込んだ。だが断られ続けた」

 どうして断られたのだろう?

「断られ続けフテ腐れた私は、もう今回はこちらから断ろうと思ってやってきた」

 確かに同じだ。私も正直、相手から断られたら楽だと思う反面、自身が否定されることで神経がすり減っていくのを実感している。

「それでもやはり妻帯しないわけにいかない。頭を抱え続けることになる」

 そうそう。私もひとりで生きていく決意は固いのだけど、適齢期を抜けるまでは周囲もうるさくて、大事なことに集中できないのよね。

「で、思ったのだ。母も大いに気に入った、君の望みをできるだけ叶えることで、こちらの要望を受け入れてもらおうと」

「はぁ……」

「君は我がノエラ家に嫁いできても、ご実家でそのまま暮らしてくれて構わない!」

「えっ?」
 そんなウマい話があるのですか??

「その代わり2日おきに我が家に通って、シャルロッテの外出なり食事なりに付き合ってほしいんだ!」


 ご令嬢方に断られた原因、それか――――!!!

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