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第一話 彼と私の共通点?
⑥ 干渉なんて、いたしませんわ!
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眩暈がしそうだ。
「ほぼ週3の頻度でシャルロッテ様のお供をせよと……?」
「そう、僕……いや、私……ああもう、貴族的に話すの疲れるから、君が妻になってくれると見込んでフランクに会話させてもらうよ。僕が彼女とアフタヌーンを過ごすのはそのペースだから、毎回同伴して欲しい」
私も2日おきのペースでお父様とティータイムを過ごすので、これも同じだ。
「それ以外は君の自由にしてくれて構わないから。ご実家からうちに通うのは大変かもしれないが、月に十日の務めだと思って我慢して欲しい」
「そうはおっしゃりますが……あなたの妻として、社交場に顔を出さないといけないのでは」
「社交場? そんなの出なくていいよ。僕も出てないし」
「えっ? 次期領主ともあろうお方が?」
「僕の家は、そんなところで縦横の繋がり保つためにせかせか立ち回らなくてはいけないほど困窮してない」
辺境伯すごい。
「むしろ妻となる人に、そういうところへの出席をせがまれると弱ってしまう。とても面倒くさい」
なんという利害の一致。
「そして、恋愛も君の自由だ」
「んんっ?」
「結婚したその日から、好きな人と好きに付き合えばいい。まぁ外聞もあるからあまり派手なのは困るけれど」
……結婚とはいったい。
「ただし、子どもが生まれるとなれば、僕たちの子として我が家で育てる。それが納得できる相手と、そういうことは頼む」
はぁ??
「……ちょっとおっしゃってる意味が分かりませんが。あなたの血を受け継いだ子でなくてもいいと?」
「だって、偽装結婚の僕たちの間に、子は生まれてこないだろう?」
偽装結婚……。それは、まぁ、そういうことなのだけど。
「……私は今後、恋をするつもりはありません。ですから跡取りを期待されても」
「それならどこかから養子をもらうことにする。君が産んだということにして」
「あなたはそれでいいのですか!?」
「ああ」
あっさりとした顔で返事をされた。
「むちゃくちゃだわ」
「その無茶を申し出る側として、君の希望にはできる限り応えるよ」
「本当に、社交場に出なくていいのですね? 週3日のお務めを果たせば、父のそばにいていいのですね?」
「その務めの最中、シャルロッテの前では、僕とうまくやっていると完璧に演じてくれるなら。別居夫婦でも彼女が安心していられるようにね」
あの方の目を欺く……無理じゃないかな。
「互いに干渉されたくない同士なら、波風も立たない。だが、いかなる食い違いも想定し、あらかじめ決まりを作っておこう」
「なら紙面に記しておかなくてはなりませんね」
「そうだね。細かいことは結婚までの逢瀬で話し合い、決めていこうか」
結婚前の男女の逢瀬で、契約書制作?
「僕の提案を受け入れてくれてありがとう。末永くよろしく頼む」
「ええ、末永く……」
こうして、私は彼の口車にまんまと乗せられ、契約結婚をすることになった。
たぶん、きっとこれ、「私にとっては」最高に条件のいい結婚だわ。
でも……。
「……お出かけの際、周りにはあなたとシャルロッテ様が夫婦で、私は付き人のように見られますわね」
「? そんなことないよ」
「あなただって、初めて私たちを目にした時、妹のアンジェリカを令嬢だと……、私は侍女か何かだと思ったのでしょう?」
「いや、あのドレスのせいで妹御しか目に入らなかった」
「…………」
「だってあの席に、気合の入った派手なドレスで来てるのが当事者だと思うだろ!?」
はい、アンジェリカにちゃんと言っておきます。
「私がこの地味なドレスで来たのが、考えなしでしたわね。ファッションセンスに自信のない女ですので」
「僕は、そのスミレ色のドレスが好きだよ」
「……ん?」
「装飾を限りなく削り落とした意匠すら、エレガントな女性の落ち着いた雰囲気をよく演出していて、そこはかとなく色気がある」
彼はふっと私の肩に指を添えてきた。……けど、ぱっと引っこめた。
「まぁ、僕は衣裳なら、赤より薄紫のが好きだ」
人を褒めるの、慣れてないのかな。少し頬が赤くなってる。
「私も、子どもの頃から薄紫が好きなのです」
なんだか笑えてきた。この人、見た目だけなら完璧貴公子なのに。
「次お逢いする時も、淡い色のドレスを着て参りますわ」
私が持っているの、ほとんど淡い色なんだもの。ちょうど良かったです!
その晩、お持ち帰りは丁重にお断りしてホテルに泊まり、翌朝、馬車で帰る間際のこと。
「次は君の街へお邪魔するよ」
「来週ですね。すぐですわね」
「ああ、君に会えるのを楽しみにしている。僕も、シャルロッテも」
爽やかな顔でさらっと言ってくれる。まぁ母親の名前も普通に出すのだけど。
「あ、エイリーク様。お聞きしたいのですが。あなたはお母様とお過ごしにならない週4日を、どのように過ごされているの?」
「…………」
そこで彼は、私の頭にそっとキスをした。そして、うっすら笑顔で。
「互いに干渉しない約束だよ?」
「……!」
そうでしたわねっ。
馬車の中で私は悶々としていた。あれすらも干渉になるのか!
「私だって、お父様とのティータイム以外の過ごし方、聞いてきたって絶対教えて差し上げないわ!」
「お姉様、うるさいわ」
「アンジェリカ! ドレスの色、デザインも、時と場合を考えなさい!」
「うるさいですわぁ……」
さて、棚からボタ餅の偽装結婚。私の描いていたような未来は、これで保証されるのだろうか。
この時の私はまだ、彼との出会いから自身がどのように変わっていくのか、想像だにしていないのであった。
「ほぼ週3の頻度でシャルロッテ様のお供をせよと……?」
「そう、僕……いや、私……ああもう、貴族的に話すの疲れるから、君が妻になってくれると見込んでフランクに会話させてもらうよ。僕が彼女とアフタヌーンを過ごすのはそのペースだから、毎回同伴して欲しい」
私も2日おきのペースでお父様とティータイムを過ごすので、これも同じだ。
「それ以外は君の自由にしてくれて構わないから。ご実家からうちに通うのは大変かもしれないが、月に十日の務めだと思って我慢して欲しい」
「そうはおっしゃりますが……あなたの妻として、社交場に顔を出さないといけないのでは」
「社交場? そんなの出なくていいよ。僕も出てないし」
「えっ? 次期領主ともあろうお方が?」
「僕の家は、そんなところで縦横の繋がり保つためにせかせか立ち回らなくてはいけないほど困窮してない」
辺境伯すごい。
「むしろ妻となる人に、そういうところへの出席をせがまれると弱ってしまう。とても面倒くさい」
なんという利害の一致。
「そして、恋愛も君の自由だ」
「んんっ?」
「結婚したその日から、好きな人と好きに付き合えばいい。まぁ外聞もあるからあまり派手なのは困るけれど」
……結婚とはいったい。
「ただし、子どもが生まれるとなれば、僕たちの子として我が家で育てる。それが納得できる相手と、そういうことは頼む」
はぁ??
「……ちょっとおっしゃってる意味が分かりませんが。あなたの血を受け継いだ子でなくてもいいと?」
「だって、偽装結婚の僕たちの間に、子は生まれてこないだろう?」
偽装結婚……。それは、まぁ、そういうことなのだけど。
「……私は今後、恋をするつもりはありません。ですから跡取りを期待されても」
「それならどこかから養子をもらうことにする。君が産んだということにして」
「あなたはそれでいいのですか!?」
「ああ」
あっさりとした顔で返事をされた。
「むちゃくちゃだわ」
「その無茶を申し出る側として、君の希望にはできる限り応えるよ」
「本当に、社交場に出なくていいのですね? 週3日のお務めを果たせば、父のそばにいていいのですね?」
「その務めの最中、シャルロッテの前では、僕とうまくやっていると完璧に演じてくれるなら。別居夫婦でも彼女が安心していられるようにね」
あの方の目を欺く……無理じゃないかな。
「互いに干渉されたくない同士なら、波風も立たない。だが、いかなる食い違いも想定し、あらかじめ決まりを作っておこう」
「なら紙面に記しておかなくてはなりませんね」
「そうだね。細かいことは結婚までの逢瀬で話し合い、決めていこうか」
結婚前の男女の逢瀬で、契約書制作?
「僕の提案を受け入れてくれてありがとう。末永くよろしく頼む」
「ええ、末永く……」
こうして、私は彼の口車にまんまと乗せられ、契約結婚をすることになった。
たぶん、きっとこれ、「私にとっては」最高に条件のいい結婚だわ。
でも……。
「……お出かけの際、周りにはあなたとシャルロッテ様が夫婦で、私は付き人のように見られますわね」
「? そんなことないよ」
「あなただって、初めて私たちを目にした時、妹のアンジェリカを令嬢だと……、私は侍女か何かだと思ったのでしょう?」
「いや、あのドレスのせいで妹御しか目に入らなかった」
「…………」
「だってあの席に、気合の入った派手なドレスで来てるのが当事者だと思うだろ!?」
はい、アンジェリカにちゃんと言っておきます。
「私がこの地味なドレスで来たのが、考えなしでしたわね。ファッションセンスに自信のない女ですので」
「僕は、そのスミレ色のドレスが好きだよ」
「……ん?」
「装飾を限りなく削り落とした意匠すら、エレガントな女性の落ち着いた雰囲気をよく演出していて、そこはかとなく色気がある」
彼はふっと私の肩に指を添えてきた。……けど、ぱっと引っこめた。
「まぁ、僕は衣裳なら、赤より薄紫のが好きだ」
人を褒めるの、慣れてないのかな。少し頬が赤くなってる。
「私も、子どもの頃から薄紫が好きなのです」
なんだか笑えてきた。この人、見た目だけなら完璧貴公子なのに。
「次お逢いする時も、淡い色のドレスを着て参りますわ」
私が持っているの、ほとんど淡い色なんだもの。ちょうど良かったです!
その晩、お持ち帰りは丁重にお断りしてホテルに泊まり、翌朝、馬車で帰る間際のこと。
「次は君の街へお邪魔するよ」
「来週ですね。すぐですわね」
「ああ、君に会えるのを楽しみにしている。僕も、シャルロッテも」
爽やかな顔でさらっと言ってくれる。まぁ母親の名前も普通に出すのだけど。
「あ、エイリーク様。お聞きしたいのですが。あなたはお母様とお過ごしにならない週4日を、どのように過ごされているの?」
「…………」
そこで彼は、私の頭にそっとキスをした。そして、うっすら笑顔で。
「互いに干渉しない約束だよ?」
「……!」
そうでしたわねっ。
馬車の中で私は悶々としていた。あれすらも干渉になるのか!
「私だって、お父様とのティータイム以外の過ごし方、聞いてきたって絶対教えて差し上げないわ!」
「お姉様、うるさいわ」
「アンジェリカ! ドレスの色、デザインも、時と場合を考えなさい!」
「うるさいですわぁ……」
さて、棚からボタ餅の偽装結婚。私の描いていたような未来は、これで保証されるのだろうか。
この時の私はまだ、彼との出会いから自身がどのように変わっていくのか、想像だにしていないのであった。
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