おひとりさまの準備してます! ……見合いですか?まぁ一度だけなら……

松ノ木るな

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第四話 子連れ×コスプレ×お祭りデート?

⑧ 4人家族も、いいですね???

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 いまだ正体不明の彼の指示通り、特設舞台横で傍観していたら、参加者の持ってくるものはたいてい服飾雑貨であった。

「奥様が好むものって、そりゃ綺麗な石付きの衣裳だと思ったのに……」
「こんなに綺麗なのになんでダメなんだ……。値打ちのありそうな掛け時計だぞ」
「露店で買えるものなんて、奥様がお持ちのアクセサリーより綺麗なわけないじゃないか!」
 などとボヤきながら彼らは再挑戦に賭ける。

「そうよね、美しいものを見慣れているシャルロッテ様が、“美しい!”と舌を巻く商品なんて……」
「だからこそ、俺たちは圧倒的に有利なのさ」
「あっとうてき?」
「ああ。だってシャルロッテの性格を知っているのだから」

 そこで私は先ほどから聞きそびれていたことを思い出した。

「知っているって、結局あなたは……」
「ヒントを言うと」
 唐突に彼の人差し指が私の口を塞ぐ。

「これはカップルイベントだということだ」
「ん?」
「エイリークも気付いていて、今はカフェで余裕綽々にティータイムしてるんじゃないか?」
「…………」
 あの女性と一緒に紅茶を嗜む彼が、脳裏に浮かんだ。

「負けるわけにいかないわっ! さぁリタ、行きましょう!」



**

 そして今、私たちもオープンカフェで休憩している。

「シャルロッテ様の性格を知っているから私たちは有利? あなたはどんな物を持っていけば彼女の琴線に触れるのか、分かるのです?」

 と、まくし立てたところで実感する。フランケンシュタインの怪物と語り合うのは心もとない。やはり“表情を見ながら”話をしたいが、この高貴なお顔立ちを混雑したここらでさらすのも差し支えあるだろう。ノエラ関係者だと明るみになれば、イベント参加にも支障が。

 そうだ、確実にこの彼はエイリーク様ともシャルロッテ様とも同様の血が流れている。だがやはり本人の口から説明願いたい。

「ちゃんと話してくださるかしら?」
「エレーゼ、しーっ。後ろ」
「後ろ?」
「!」
 私たちのテーブルの隣は小さい子を抱える男女……先ほどのリタの元養父母だった。

「アクセサリーでもアンティーク雑貨でもなければ何なのよ~~?」
「もう4回チャレンジしているのにダメなんて、優勝者を出すつもりないんじゃないか?」
「違うわよ、家から持ってきてるのがバレてるからダメなの」
「なのに、また使用人メリーに家まで使い走りさせたのか?」
「彼女を出した後で気付いたのよ」
「やっぱり露店で買ったものじゃなきゃダメかぁ……」

 会話が全部聞こえてくる。よくもそんなズルしてること野外で堂々と話せるな。

「みんな考えることだからな」
「彼らは孤児院から子どもを引き取れるほどの経済状況なのに、そんなケチなことするの?」
「上流でも中流でも一定数ケチな奴らはいるよ」
 そこでまた寂しげな顔になってしまったリタに気付き、私は慌てた。

「あの人たちに勝とう! こてんぱんにやっつけちゃおう。それが厄払いになるのよ!」
「やくばらい?」
「そう。あなたがこれからすてきな人と出会うためには、やっつけなきゃいけない悪魔がいるの」

 テキトーなこと言ってるけど、まぁ悪魔は未練ね。嫌いになって忘れてしまえばいいの。

「うん、やっつける」
「よし。じゃあ私たちも、買い物を始めましょうか」
「ちょっと待って、エレーゼ」

 私が立ち上がろうとした時、それを抑えるようにフランケンシュタインの怪物は立ち上がった。

「どこへ?」
 私の質問に答えもせず、すたすたと隣のテーブルに行き、男女にこう声を掛ける。

「あのマダムノエラの望むものを、君たちに教えてあげようか?」

 え? 彼は何を言っているの?

「な、なんだお前は?」
「なんだか怪しい人ね」

 そして彼は被っているマスクをいったん上に上げ、その顔をふたりに見せた。

「「!」」
「私はノエラの関係者だ」
 ふたりは言葉を失った。まったく説得力のある顔だ。

「君たちは、いや多くの参加者は、これがカップルイベントだということを失念している」
「どういうことよ……」
「おい、この人はきっとノエラの……」
「あ、そうね。どういうことですか?」

「愛の祭りなのだよ、これは」

 ああ、そうか、博愛主義のシャルロッテ様はそのつもりでしょうね。

「美しいものとは、愛を示すものなんだ。けして万人に共通する煌びやかなものではない。愛しい人に贈りたいと心の底から湧き上がる美しい感情を、彼女は垣間見たいのだよ」

「なるほど。でもそんなもの露店にあるのかしら」
「そうだな、花なんてどうかな。切り花を出している店はたくさんあるだろう」

 ええ?? どうして答えを簡単に教えてしまうの?

「それなら買えるわね」
「ああ、誰にも追いつけないほど花を買い占めて、大きな花束を作ろう」
「そうね! 早速行きましょう!!」
 ふたりは喜び勇んでテーブルを後にした。


「…………」
 彼は単純なそのふたりの後ろ姿を、呆れたような様子で眺めていた。

「あの、どうしてそんなことまで。敵に塩を送るようなことを」
 私はすぐにも彼の元に飛んできた。彼の言ったことは私も納得できたから。この場合確実に、豪華なアクセサリーよりも花束の方が正解だわ。

「いや単に、これで花が買い占められたら、それを出した売人たちが喜ぶかなって。花の命は短いからね」
「えええ……。ん?」
 困惑した私のスカートの裾を、ここでリタが引っ張る。

「なに?」
 彼女が指をさしている先に目線を伸ばすと。

「はぁぁあ!? 子ども置きっぱなし!!」

 1歳の赤ん坊が置き去りにされていた。



**
「もう! 最悪だわ。褒美に目がくらんで子どもの存在を忘れるなんて」

 私たちは、よちよち危なげに歩く小さな子も一緒に面倒見るはめに。

「ここで待っていれば気付いて迎えに来るかしら? ええと名前は」
「ニルス」

 リタにとっては、弟だったのよね。彼女は少しふてくされた顔だ。

「一緒に、手をつないで歩いてあげましょ」
 私とリタとで、この小さい子を挟んだ。


「あ、あそこ! ヘビがいる!」
 リタが見つけたのは、ターバン巻いた御仁が笛を吹き、ヘビを籠から出したりしまったりする大道芸。ニルスを連れ喜んで走り寄っていく。

「いいんじゃないか? これで時間がつぶれる」
「そうですねぇ……ちびっこって、持て余しちゃいますよね」

 私たちは少し遠巻きに彼らを眺めていた。

「あっ、ヘビに毒があったりとか、惨事起こったりしないかしら!?」
「まぁ、たぶん大丈夫かな?」

 キシャーッと大きなヘビが目の前の小さなニルスを威嚇すると、彼は未知の恐ろしさに身をすくめ、姉リタの後ろにさっと隠れる。ならば彼女は彼を守ってやろうと、気丈にヘビを睨みつける。その場は一時緊張感に包まれるが、ヘビ使いのコントロールで彼らは和解し、和平への、新たなるステージへ……。

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