50 / 148
【 第四章 】 私が再会させてあげる!
⑨ 女王様の命令だからね?
しおりを挟む
アリアンロッドが目覚めたのは、翌日の昼時だった。
「ここは?」
「ご気分はいかがですか? ここは町のはずれの空き家ですよ」
アリアンロッドにその居場所を教えてくれたのは、歌劇団の下働きの娘だ。歌姫ローズに世話を頼まれたらしい。
彼女の言では、先に連れの男性が目覚め、さきほど裏の原っぱに散歩に出たそうで。
「私も行ってきます!」
「ええ、どうぞ。あ、ローズ様がおふた方にお礼をしたいと話しておりました。ですのでまた後ほど」
「は──い」
アリアンロッドは野原の中で先代王を見つけ、走り寄った。
「おお、具合はいかがですか?」
「なんとか大丈夫です!」
彼は膝をつき頭を下げ、巻き込んだことを謝罪した。
「あなたの命を危険に晒してしまった。まことに申し訳ない」
そんな彼にアリアンロッドはしゃがみこみ、寄り添おうとする。
「頭を上げてください。あなたもですよ。この国に滞在中のあなたに何かあったら、外交問題になりますし……。どうしてあんな無茶を?」
「それはきっと、あの子が、私の……」
そこで急に彼がうずくまった。
「どうしました!?」
「胸が……痛……」
「誰か呼んできますっ」
そうアリアンロッドが立ち上がった瞬間、立ちくらみが起こる。彼のほうに倒れかけたその時、ほんの刹那の間に、彼女は例の異変を感じた。
「あ、これ……」
「うわぁぁ!!?」
快晴の昼下がり、ただいま原っぱで腰を落とし休憩するアンヴァルの膝元に、人間がふたり突如、転がってきた。
周りの兵士が、「隊長!? どうしたんですか!?」と駆け寄る。そこはアンヴァルの隊が演習している場だった。
兵士たちは当然現れた、高貴な二人組に驚きを隠せず、ざわざわ騒ぎ立てている。
鼓動のまだ速いアンヴァルだが、二人を認識したようだ。しかも彼らは怪我を負っている。即座に救護室へ運ぶよう周りの者に指示した。
アンヴァルは演習中で知らされていなかったが、先代王の侍従が主人の行方知れずを騒いだことで、他の隊による捜索が行われているところだった。
その後、彼は眠っているアリアンロッドの元へ出向き、「どこに行ってたんだ今度は」と頬をつまんで問いかけた。
アリアンロッドが再び目を覚ましたのは、移動した日の夕方。本来ならディオニソスと忍びで出かけている時分であったが仕方がない。
先代王も目覚めたと聞いたので早速、彼の寝室に走った。
「王様、やっぱり……?」
「ああ、夢から覚めたようだ。もう目は見えない。しかし本当にいい夢をみていた。あなたのおかげだ」
「夢じゃないですよ。火傷の跡も、ひりひり傷むでしょう?」
先代王は納得したように微笑んだ。
彼の寝室を出た時、待ちわびていたのか、廊下にもたれるディオニソスがアリアンロッドに話しかけてきた。
「君の怪我の具合は?」
「私はそんなにひどくないから。火傷も足に少ししただけだし」
そうアリアンロッドが足の火傷を確認しようとしたら、彼は無言で彼女を抱き上げ、
「え? ん??」
近くの一室に入り、大きなソファにゆっくりと下ろした。
「また無茶をしたのか? 跡が残ってしまうかも……」
心配そうな声でつぶやき、その跡を確認するため、彼女のドレスの裾を持ち上げた。
思いがけないことでアリアンロッドは、その胸の鼓動を速めた。
「ど、どーせお嫁に行くことはないんだから、跡なんかいくら残ったって平気よ」
「そういうことを言うなら……」
「へぇっ…? ひゃぁっ」
あらわになった白い脚にのる、その傷跡を、彼が触れるか触れないかの微妙な感触で撫でてくる。アリアンロッドは更に恥ずかしくなり、それを隠すために虚勢を張った。
「聖女なんて本当に損な役! ……だけど折角ならここは、女王然と振るまってみましょうか」
「?」
「この火傷の跡、舐めて」
「は?」
「この国の象徴である、私の命令よ」
顎を引いて、上目にディオニソスの目を見つめる。
空間移動明けの妙なテンションで突っ走るアリアンロッドだった。
「なにか、教育上良くない書籍でも読んだのか」
「子ども扱いしないで!」
「こんなこと教えた覚えはないんだけどな……」
彼のそのげんなりした顔を見て少し冷静になり、アリアンロッドはだんだん不安になってきた。はしたないことを言ってしまったと。
しかし、冗談だって言わなきゃと口を開いた瞬間、彼がひざの裏をドレスの布越しに少し持ち上げ、顔を寄せてくるのだった。
────え? ほんとに? ほんとに??
アリアンロッドが焦りに焦るその時、ガタッと戸が開き、こんな賭け声が。
「ディオニソス、ここにいるのかな? 歌劇団の舞台の日取りなのだが──」
「「「!!?」」」
この場の三名が目をひん剥いた、同じ顔をしている。
やってきたのは国の王。つまりはディオニソスの父であった。
王笏が王の手から落ち、カラン……と落下音が響いた。
息子の顔のすぐそこに聖女の下半身がある、いかにもな体勢のふたりが、たったいま目の前に。
「う? ううん? あれ? 衣服は着ているかい?」
「「き、着てます! ほら、着ています!!」」
あくまで怪我の様子を見ていただけだと説明し、ディオニソスは事なきを得た。
(ふふっ……可愛いディオ様)
アリアンロッドはこんなにも慌てた彼の姿を初めて横目にできて、結果的には満足だった。
「ここは?」
「ご気分はいかがですか? ここは町のはずれの空き家ですよ」
アリアンロッドにその居場所を教えてくれたのは、歌劇団の下働きの娘だ。歌姫ローズに世話を頼まれたらしい。
彼女の言では、先に連れの男性が目覚め、さきほど裏の原っぱに散歩に出たそうで。
「私も行ってきます!」
「ええ、どうぞ。あ、ローズ様がおふた方にお礼をしたいと話しておりました。ですのでまた後ほど」
「は──い」
アリアンロッドは野原の中で先代王を見つけ、走り寄った。
「おお、具合はいかがですか?」
「なんとか大丈夫です!」
彼は膝をつき頭を下げ、巻き込んだことを謝罪した。
「あなたの命を危険に晒してしまった。まことに申し訳ない」
そんな彼にアリアンロッドはしゃがみこみ、寄り添おうとする。
「頭を上げてください。あなたもですよ。この国に滞在中のあなたに何かあったら、外交問題になりますし……。どうしてあんな無茶を?」
「それはきっと、あの子が、私の……」
そこで急に彼がうずくまった。
「どうしました!?」
「胸が……痛……」
「誰か呼んできますっ」
そうアリアンロッドが立ち上がった瞬間、立ちくらみが起こる。彼のほうに倒れかけたその時、ほんの刹那の間に、彼女は例の異変を感じた。
「あ、これ……」
「うわぁぁ!!?」
快晴の昼下がり、ただいま原っぱで腰を落とし休憩するアンヴァルの膝元に、人間がふたり突如、転がってきた。
周りの兵士が、「隊長!? どうしたんですか!?」と駆け寄る。そこはアンヴァルの隊が演習している場だった。
兵士たちは当然現れた、高貴な二人組に驚きを隠せず、ざわざわ騒ぎ立てている。
鼓動のまだ速いアンヴァルだが、二人を認識したようだ。しかも彼らは怪我を負っている。即座に救護室へ運ぶよう周りの者に指示した。
アンヴァルは演習中で知らされていなかったが、先代王の侍従が主人の行方知れずを騒いだことで、他の隊による捜索が行われているところだった。
その後、彼は眠っているアリアンロッドの元へ出向き、「どこに行ってたんだ今度は」と頬をつまんで問いかけた。
アリアンロッドが再び目を覚ましたのは、移動した日の夕方。本来ならディオニソスと忍びで出かけている時分であったが仕方がない。
先代王も目覚めたと聞いたので早速、彼の寝室に走った。
「王様、やっぱり……?」
「ああ、夢から覚めたようだ。もう目は見えない。しかし本当にいい夢をみていた。あなたのおかげだ」
「夢じゃないですよ。火傷の跡も、ひりひり傷むでしょう?」
先代王は納得したように微笑んだ。
彼の寝室を出た時、待ちわびていたのか、廊下にもたれるディオニソスがアリアンロッドに話しかけてきた。
「君の怪我の具合は?」
「私はそんなにひどくないから。火傷も足に少ししただけだし」
そうアリアンロッドが足の火傷を確認しようとしたら、彼は無言で彼女を抱き上げ、
「え? ん??」
近くの一室に入り、大きなソファにゆっくりと下ろした。
「また無茶をしたのか? 跡が残ってしまうかも……」
心配そうな声でつぶやき、その跡を確認するため、彼女のドレスの裾を持ち上げた。
思いがけないことでアリアンロッドは、その胸の鼓動を速めた。
「ど、どーせお嫁に行くことはないんだから、跡なんかいくら残ったって平気よ」
「そういうことを言うなら……」
「へぇっ…? ひゃぁっ」
あらわになった白い脚にのる、その傷跡を、彼が触れるか触れないかの微妙な感触で撫でてくる。アリアンロッドは更に恥ずかしくなり、それを隠すために虚勢を張った。
「聖女なんて本当に損な役! ……だけど折角ならここは、女王然と振るまってみましょうか」
「?」
「この火傷の跡、舐めて」
「は?」
「この国の象徴である、私の命令よ」
顎を引いて、上目にディオニソスの目を見つめる。
空間移動明けの妙なテンションで突っ走るアリアンロッドだった。
「なにか、教育上良くない書籍でも読んだのか」
「子ども扱いしないで!」
「こんなこと教えた覚えはないんだけどな……」
彼のそのげんなりした顔を見て少し冷静になり、アリアンロッドはだんだん不安になってきた。はしたないことを言ってしまったと。
しかし、冗談だって言わなきゃと口を開いた瞬間、彼がひざの裏をドレスの布越しに少し持ち上げ、顔を寄せてくるのだった。
────え? ほんとに? ほんとに??
アリアンロッドが焦りに焦るその時、ガタッと戸が開き、こんな賭け声が。
「ディオニソス、ここにいるのかな? 歌劇団の舞台の日取りなのだが──」
「「「!!?」」」
この場の三名が目をひん剥いた、同じ顔をしている。
やってきたのは国の王。つまりはディオニソスの父であった。
王笏が王の手から落ち、カラン……と落下音が響いた。
息子の顔のすぐそこに聖女の下半身がある、いかにもな体勢のふたりが、たったいま目の前に。
「う? ううん? あれ? 衣服は着ているかい?」
「「き、着てます! ほら、着ています!!」」
あくまで怪我の様子を見ていただけだと説明し、ディオニソスは事なきを得た。
(ふふっ……可愛いディオ様)
アリアンロッドはこんなにも慌てた彼の姿を初めて横目にできて、結果的には満足だった。
0
あなたにおすすめの小説
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる