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【 第八章 】 同じ思いを抱いている
① 真っ赤なその野菜は魅惑的
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先ごろ即位した大聖女アリアンロッドは、現在お披露目行列の旅の最中にいる。一行は30ほどの大きな領地を、王宮から花弁を描くように周遊し、主要都市にて領主にもてなされ幾日も滞在した。
各街での彼女は神の子として愛想を振りまき、多くの民に崇められる日々を送っている。
この旅でアリアンロッドが召し連れるのは二十名の侍女と百名の兵だ。侍女をもっと連れていくよう言われていたが、彼女はそんなにいても仕方がないと聞かなかった。というのも、大聖女の側には常に、近衛兵隊長・アンヴァルが付き従うのだから──。
「俺を小間使いにするな!」
「こんな旅に付き合わせて侍女たちみんな疲れちゃってるから、休ませてあげたいじゃない?」
「何のための侍女だ……!」
大聖女専属の彼が常に大聖女の傍にいるのは当然のことだ。しかし付き従う近衛兵らは、二人の間でなぜかこそばゆい気分を催すこの頃であった。
たとえば兵士1がこう思っている。「なんだか大聖女と隊長を取り巻く雰囲気が。なんというか。前からこうだったかな?」
兵士2の心の声。「隊長が大聖女の部屋に入ったきり、出てこないんです……」
兵士3はこうだ。「大聖女の寝室の前を通ったら、おふたりの影が重なっていた……。まさかなぁ……まさかね。あ、いや覗いたわけじゃ」
兵士4は。「なんか妙な声が聴こえてきたし……幻聴だろうか」
兵士5も兵士6も何やら勘ぐりモヤモヤしていて、それはみなでこの情報を共有すれば、結論の一つや二つ導き出されるのかもしれないが、この全員が「でも余計なこと言って首が飛んだら嫌だし」と、心の奥底に閉じ込めておくことにしている。
そんな忙しい兵士の面々を当ててしまっている件のふたりは、大聖女の個室でこっそりアレに励んでいる──……。
「痛いってば! もっと優しくしてよ──!」
「ほら腰落とせ!」
「痛いぃぃ、もうだめ……」
「体力がなさすぎる。最近ちっとも鍛錬してなかっただろ」
アリアンロッドは堪えがきかず、アンヴァルの足元に膝を落とす。その手に掴むは、木で造られた短剣を模した棒。
彼女が以前、彼に教えを請うた、短剣術の手ほどきの最中である。この旅の滞在先で、余暇はこれに明け暮れているのだが。
「短剣術は機敏さが肝だ。やっぱりお前に向いてない」
「ええぇ……この旅の間ずっと頑張ったのに……」
「無理だと分かったって収穫があって良かったな」
「身も蓋もない……」
「まぁでもまた神隠しでひとりになった時のために、衣装の中に短剣は常に隠しておけよ」
そこで兵士が呼びに来た。
周遊の訪問先で、今は最後の市街地にいる。
この街の中心地は華やかな建設物が多く立ち並び、人々のひしめき合う活気ある処で、案内されたアリアンロッドも心が踊った。
その日は市民も参加可能な祭りが催され、大聖女には市民から、豪勢な料理が振舞われた。毒見の者が確かめた後、アリアンロッドは侍従らにも分け与え、結局自分はそれほど食べずじまいであった。
それをアンヴァルは多少気にして見ていたのだが、その催しも終わるという頃、兵士が彼にある報告をする。
何やら、大聖女にお見せしたい珍しい作物がある、と街の外れに暮らす農家が申し出ているという。アンヴァルは「アリア、興味ありそうだな」と思い、伝えることにした。
「え、珍しい作物? ぜひ見たいわ!」
「だよな」
アンヴァルは十分な数の護衛兵も連れ、その農家のところへの案内を受けた。
「だ、大聖女様……? まことに、大聖女様であらせられますか……!」
彼らは申し出てはみたものの、まさか本当に大聖女に伝わるとも思っていなかったようだ。
なんと大聖女直々のお越しであり、一家はみな感動し、一様にひれ伏した。
そこから大聖女一行は家屋近くの林の奥へ案内された。
「どんな畑があるのかしら、ドキドキするわね」
「もうすぐだってよ」
アリアンロッドとアンヴァルが踏み込んで行くと、一瞬、眩しい日光に目がくらんだ。日当たりの良いそこで、開けた瞼に飛び込んできたのは、直立して並ぶ、赤と緑のモダンなオブジェのような、奇抜な色の作物だった。
「ま、真っ赤……」
握りこぶしよりは小さいかという艶々したその赤い食物を目にして、ふたりは目を丸くした。
それを主導して栽培しているという一家長、初老の男なのだが、彼が大聖女に語り始める。
「私の祖父が20年以上も前に、ひとりの異邦人を助けた時のことです……」
容姿の違う、遠い国からやって来ただろう大柄な男が、近所をうろついていた。ここらの人々はろくに言葉の通じないその男を恐れ、石を投げて虐げたのだった。しかし男は決してこちらを害するようなことはせず、ただ困っているようだと彼の祖父は感じ、こっそり自宅へと連れ帰った。家族は驚いたが、みなで協力してその者をしばらく隠し、住まわせてやったら、彼がなんとか覚えたたどたどしい口調で、返礼にと作物の種をくれた。その後、彼は忽然と姿を消したのだが――。
「祖父は種を栽培してみました。それを父も受け継ぎ、今は私が。今後私の息子が受け継ぎます。しかしこれは、我が家の中でしか食しておりません。この非常に真っ赤な作物を街の住民に見せることで、怪しがられ虐げられたらと思うと、打ち明ける勇気がないのでございます」
アリアンロッドは生っているそれを手に乗せてみた。
「ちょっとすっぱい匂いかな?」
「味も少々すっぱいと感じられるかもしれません。しかし私は幼少の頃からこれを食し、齢40を超えますが、いまだ身体に良い気が満ちております」
「すごい! きっとおいしいわこれ。だってこの真っ赤な色、見てるとなんだか胸がどくどくする」
そんな紅潮した顔のアリアンロッドを見て、アンヴァルは「こいつにこれを食べさせるの、大丈夫かな……」と感じた。その時、一家の幼子がやってきて、
「おねえさん、これは悪魔の実だよ」
と言うのだった。
「悪魔……?」
母親が慌てて子を押さえつけ、頭を下げた。
「それはですね、その異邦人が当時幼い私にこっそり告げたのでございます。あまりに真っ赤に艶めく誘惑的なこれを、そう呼んで忌避する人々がいると。家族にそれも話してしまいました。みな気にせず食べていますが」
「へぇ~」
悪魔は怖いがやはり好奇心が勝るので、アリアンロッドはまず毒見に頼んだ。その後、アンヴァルの口に突っ込んで、自分も食してみる。
「わぉ、なんだか未知の味~~!」
「そりゃ未知の食物だからな」
「すっぱいような、甘いような!」
隣のアリアンロッドがまさに誘惑されている表情なので、アンヴァルは「早く彼女を自室に軟禁しなくては……」と思った。
「ありがとう! 気に入ったわ!」
「そのようにおっしゃっていただいて、感激の極みでございます。これは汁にしても美味でございまして。いつかまたあなた様がこの街にいらっしゃった折には、すぐにでもご用意いたしますので、ぜひお訪ねください」
「ええ!」
✼••┈┈┈┈┈┈••✼✼••┈┈┈┈┈┈••✼
お読みくださいましてありがとうございます。
アリアの食した《真っ赤な実》は、(史実では)世界で広まったのが16世紀ということですので
アリアの国は16世紀以前の世界観ということで、なにとぞ。
各街での彼女は神の子として愛想を振りまき、多くの民に崇められる日々を送っている。
この旅でアリアンロッドが召し連れるのは二十名の侍女と百名の兵だ。侍女をもっと連れていくよう言われていたが、彼女はそんなにいても仕方がないと聞かなかった。というのも、大聖女の側には常に、近衛兵隊長・アンヴァルが付き従うのだから──。
「俺を小間使いにするな!」
「こんな旅に付き合わせて侍女たちみんな疲れちゃってるから、休ませてあげたいじゃない?」
「何のための侍女だ……!」
大聖女専属の彼が常に大聖女の傍にいるのは当然のことだ。しかし付き従う近衛兵らは、二人の間でなぜかこそばゆい気分を催すこの頃であった。
たとえば兵士1がこう思っている。「なんだか大聖女と隊長を取り巻く雰囲気が。なんというか。前からこうだったかな?」
兵士2の心の声。「隊長が大聖女の部屋に入ったきり、出てこないんです……」
兵士3はこうだ。「大聖女の寝室の前を通ったら、おふたりの影が重なっていた……。まさかなぁ……まさかね。あ、いや覗いたわけじゃ」
兵士4は。「なんか妙な声が聴こえてきたし……幻聴だろうか」
兵士5も兵士6も何やら勘ぐりモヤモヤしていて、それはみなでこの情報を共有すれば、結論の一つや二つ導き出されるのかもしれないが、この全員が「でも余計なこと言って首が飛んだら嫌だし」と、心の奥底に閉じ込めておくことにしている。
そんな忙しい兵士の面々を当ててしまっている件のふたりは、大聖女の個室でこっそりアレに励んでいる──……。
「痛いってば! もっと優しくしてよ──!」
「ほら腰落とせ!」
「痛いぃぃ、もうだめ……」
「体力がなさすぎる。最近ちっとも鍛錬してなかっただろ」
アリアンロッドは堪えがきかず、アンヴァルの足元に膝を落とす。その手に掴むは、木で造られた短剣を模した棒。
彼女が以前、彼に教えを請うた、短剣術の手ほどきの最中である。この旅の滞在先で、余暇はこれに明け暮れているのだが。
「短剣術は機敏さが肝だ。やっぱりお前に向いてない」
「ええぇ……この旅の間ずっと頑張ったのに……」
「無理だと分かったって収穫があって良かったな」
「身も蓋もない……」
「まぁでもまた神隠しでひとりになった時のために、衣装の中に短剣は常に隠しておけよ」
そこで兵士が呼びに来た。
周遊の訪問先で、今は最後の市街地にいる。
この街の中心地は華やかな建設物が多く立ち並び、人々のひしめき合う活気ある処で、案内されたアリアンロッドも心が踊った。
その日は市民も参加可能な祭りが催され、大聖女には市民から、豪勢な料理が振舞われた。毒見の者が確かめた後、アリアンロッドは侍従らにも分け与え、結局自分はそれほど食べずじまいであった。
それをアンヴァルは多少気にして見ていたのだが、その催しも終わるという頃、兵士が彼にある報告をする。
何やら、大聖女にお見せしたい珍しい作物がある、と街の外れに暮らす農家が申し出ているという。アンヴァルは「アリア、興味ありそうだな」と思い、伝えることにした。
「え、珍しい作物? ぜひ見たいわ!」
「だよな」
アンヴァルは十分な数の護衛兵も連れ、その農家のところへの案内を受けた。
「だ、大聖女様……? まことに、大聖女様であらせられますか……!」
彼らは申し出てはみたものの、まさか本当に大聖女に伝わるとも思っていなかったようだ。
なんと大聖女直々のお越しであり、一家はみな感動し、一様にひれ伏した。
そこから大聖女一行は家屋近くの林の奥へ案内された。
「どんな畑があるのかしら、ドキドキするわね」
「もうすぐだってよ」
アリアンロッドとアンヴァルが踏み込んで行くと、一瞬、眩しい日光に目がくらんだ。日当たりの良いそこで、開けた瞼に飛び込んできたのは、直立して並ぶ、赤と緑のモダンなオブジェのような、奇抜な色の作物だった。
「ま、真っ赤……」
握りこぶしよりは小さいかという艶々したその赤い食物を目にして、ふたりは目を丸くした。
それを主導して栽培しているという一家長、初老の男なのだが、彼が大聖女に語り始める。
「私の祖父が20年以上も前に、ひとりの異邦人を助けた時のことです……」
容姿の違う、遠い国からやって来ただろう大柄な男が、近所をうろついていた。ここらの人々はろくに言葉の通じないその男を恐れ、石を投げて虐げたのだった。しかし男は決してこちらを害するようなことはせず、ただ困っているようだと彼の祖父は感じ、こっそり自宅へと連れ帰った。家族は驚いたが、みなで協力してその者をしばらく隠し、住まわせてやったら、彼がなんとか覚えたたどたどしい口調で、返礼にと作物の種をくれた。その後、彼は忽然と姿を消したのだが――。
「祖父は種を栽培してみました。それを父も受け継ぎ、今は私が。今後私の息子が受け継ぎます。しかしこれは、我が家の中でしか食しておりません。この非常に真っ赤な作物を街の住民に見せることで、怪しがられ虐げられたらと思うと、打ち明ける勇気がないのでございます」
アリアンロッドは生っているそれを手に乗せてみた。
「ちょっとすっぱい匂いかな?」
「味も少々すっぱいと感じられるかもしれません。しかし私は幼少の頃からこれを食し、齢40を超えますが、いまだ身体に良い気が満ちております」
「すごい! きっとおいしいわこれ。だってこの真っ赤な色、見てるとなんだか胸がどくどくする」
そんな紅潮した顔のアリアンロッドを見て、アンヴァルは「こいつにこれを食べさせるの、大丈夫かな……」と感じた。その時、一家の幼子がやってきて、
「おねえさん、これは悪魔の実だよ」
と言うのだった。
「悪魔……?」
母親が慌てて子を押さえつけ、頭を下げた。
「それはですね、その異邦人が当時幼い私にこっそり告げたのでございます。あまりに真っ赤に艶めく誘惑的なこれを、そう呼んで忌避する人々がいると。家族にそれも話してしまいました。みな気にせず食べていますが」
「へぇ~」
悪魔は怖いがやはり好奇心が勝るので、アリアンロッドはまず毒見に頼んだ。その後、アンヴァルの口に突っ込んで、自分も食してみる。
「わぉ、なんだか未知の味~~!」
「そりゃ未知の食物だからな」
「すっぱいような、甘いような!」
隣のアリアンロッドがまさに誘惑されている表情なので、アンヴァルは「早く彼女を自室に軟禁しなくては……」と思った。
「ありがとう! 気に入ったわ!」
「そのようにおっしゃっていただいて、感激の極みでございます。これは汁にしても美味でございまして。いつかまたあなた様がこの街にいらっしゃった折には、すぐにでもご用意いたしますので、ぜひお訪ねください」
「ええ!」
✼••┈┈┈┈┈┈••✼✼••┈┈┈┈┈┈••✼
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