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【 第八章 】 同じ思いを抱いている
⑨ 吸い跡
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「騒ぎになる前に、ここを出るぞ」
「…………」
もはやこの男を疑う余地はない。窮地を助けてくれたのだから。
それでも彼と共に行くことに、アリアンロッドは物怖じした。
「俺が怖いか?」
「……いいえ」
すぐには答えられなかったが、それはないと確信し、はっきりと首を横に振る。
────これがヴァルであっても、ためらいなく殺してた。
「私、まだ動けなくて、連れていってもらえると助かるのだけど……」
その言葉を聞いたら、彼はすぐさま彼女を抱き上げ、屋敷を出た。
夜も大分更けていて、外に人通りは見られない。彼は小屋で馬を調達し、アリアンロッドを手前に乗せて、森へ入って行った。
「どうして森へ?」
梟が鳴く草深い森の中で、アリアンロッドは不安になる。
「温泉に浸かりたい」
「明けてからでいいじゃない」
「やっぱり怖いのか?」
「夜の森を怖がらない人はいないわ」
「大丈夫だ。路も完璧に覚えてるし、ここは獣も出てこない」
彼が大丈夫と言うならそうなのだろう。今は彼の腕の中、否応なく身を任せるだけだった。
「ねぇ、本当はあいつが犯人だと分かってたから、潜んでたんでしょう?」
「いや、本当に夜這いなり、朝這いなりを遂行しに」
「なにそれ……。まるで子どもを相手にするような態度だったのに。本当に女なら誰でもいいの?」
「まぁ女は淑やかな方が好みだが、お前も悪くない。俺と一緒に来い」
「はぁ??」
アリアンロッドはどうせまたからかっているのだろうと、無視を決め込んだ。そろそろ眠たくなってきたのもある。
それからのふたりは無言を貫き、馬の蹄音だけが路にこだましていた。
◇
男が温泉の洞窟前に馬を停めた頃、アリアンロッドはすっかり寝入っていた。
「せっかく温泉に着いたのに入らないのか。まぁそりゃ今日も疲れたよな。歌も見事だったしな」
なので起こされず、ゆっくり丁寧に降ろされた。
男はアリアンロッドを大事に抱き上げ大木の元まで運んだら、そこにドスンと腰を落ち着ける。
「ん……むにゃぁ、ヴぁる……?」
ふにゃっとしたその寝顔を目に留めて彼は、クスリと笑った。
ふたりして大きな根元にもたれかかり、また互いにもたれ合い、眠ったのだった。
朝、アリアンロッドが目を覚ましたら、そこは男の膝元だった。
「へっ? ……え? ふぇっ??」
やはり慌てふためいて妙な挙動になる。
「ああ、朝か」
おかげで彼も目を覚まし、大きなあくびをした。
そこで目の前の彼女が顔を赤くしてるのを、彼が見逃すわけもなく。
「温泉入るか? 一緒に」
「またそんなことを!」
「まぁそれは冗談でもいいが、昨夜言ったことは本気だ」
「え?」
アリアンロッドは彼の、海と地が交じり合う瞳の色をじっと見る。
「俺のところに来いよ。家族、いないんだろ?」
意外にも、彼の目は情のこもったようである。それはアリアンロッドにも強く伝わった。
「どうして、そんなこと……」
「やはり勘なんだが、お前は俺に近しいものを感じる、というくらいか」
彼女も実際、そんな気がしないでもないと感じている。彼とは、似たような思いを抱いていて、どこかで通じ合っているのでは、と────
しかしそんな共感を散らすように、首をブンブン振って。
「そ、そんな気まぐれを言われても、受ける気にはなれないわ。それに、私に家族はいないけど、待ってる人たちがいるの、私の帰りを……」
そう言いながら立ち上がった彼女を、追って彼も腰を上げ、即座に彼女の手首を掴んだ。
「やっ、なにっ……」
そして一瞬にして引っ張られたアリアンロッドは、その背を大木に押し付けられた。
「いたっ……」
「俺の命に背ける奴はいない」
「っ…………」
彼女はその凄みを利かせた視線に声を失った。幾度かあったはずだが、この時初めて、彼を心の底から恐いと思った。
その意志の強い目は、他者を縛り付けるには十分だ。何を盛られたわけでもないのに、動けなくなってしまっている。
────なぜ? 覚えがある。この広い大地を讃えたような、強く逞しい瞳の色は……
そんな焦りを察したか、彼は薄く笑みを浮かべ、おもむろに、彼女の顔に自身の顔を近付けて──
「っ……」
アリアンロッドが思わず目を閉じた瞬間、するりと彼は顔の位置を下げ、
「?」
その白く細い首筋に、吸いついた。
「!? ……っ……」
アリアンロッドは何が起こったのか、すぐには理解できなかった。
「あっ……」
今まで感じたことのない、おかしな心地がする。唇で触れられている。舐められているのではなく、吸われているのだと感付く。
「んっ……」
これがまた、妙な気分になるが、なぜだか悪くない。
「────様! 探しましたよ」
彼女がそれをされるがまま、身も心も委ねていたら、主を追って男がひとりやってきた。その従者は木の陰に隠れたアリアンロッドに、遅れて気付く。女性と一緒にいるのかと、少々ためらったようだ。
他人の声でハッと意識づいたアリアンロッドは、その声の主を視界に入れた。それは初老だろうか、白髪交じりの長い髪の、落ち着いた外見の者だった。
「……あなたは、どこかで……」
その男の顔を僅かの間だが、しかと目に入れた時。アリアンロッドは感じた。あの、帰る予兆を。
「っ!」
彼女は掴まれている腕を全力で振り払い、急いですぐそこの洞窟へと走る。
それをその場に残った男ふたりは追ったのだが、彼らがそこに入った時、中にはもう、何者も存在しなかった。
◇◆◇
アリアンロッドが気付いたらそこは、同じ洞窟の手前だった。
(帰ってこれた……?)
知った処に戻ってまずは安心する。時間はどれほど経過しているのだろう。
「アリア!?」
「ヴァル!」
早速届いたアンヴァルの声も姿も、アリアンロッドは心の底から嬉しくて、そそくさと彼に駆け寄った。ずっと彼が隣にいなくて心細かったのだ。
「無事か、良かった」
アンヴァルもアリアンロッドが無事で安堵した。しかしやたら綺麗な衣装の、襟や袖、スカート部分がひどく破れている。彼は何があったのか問いただしたかった。
「私、どれくらい行ってた? みんなに迷惑は……」
「問題ない。もうすぐ日が暮れる」
「日は跨いでないのね」
その時アンヴァルは、ほっとしているアリアンロッドの首筋に、赤いアザがあるのに気付く。
「お前、首のそれ……」
「えっ?」
アリアンロッドはパッと目を丸くして、今さっきの出来事を思い出してしまったら、箇所を慌てて手で押さえた。更には急速に顔を真っ赤にするのだ。
「どうしたんだ、そこ? 虫にくわれたのか?」
「え? あ、うん。そう。虫に……」
彼女は分かりやすく目を逸らした。
「なわけないだろ!? 何があったんだ!?」
「それは……。これは、別に……」
アンヴァルは、自身の赤面にも気付かない彼女の、アザを押さえて隠す手の、手首を強く掴んだ。
「いたっ。……ヴァル……なにっ」
彼のいつもとはまったく違う様相に、アリアンロッドは怯えだす。
「行った先でお前、何やってたんだよ……」
「ヴァル?」
彼がまるで知らない人のようで、空恐ろしく感じる。こんな状況で何を答えられるわけもない。
「何やってたんだよ!!?」
アリアンロッドはその声で縮こまり、顔に困惑を浮かべた。
アンヴァルはそこでハッとして、我を忘れて叫んだことを自覚し、掴んだ彼女の手首を振り切るように放したら、その場から足早に立ち去った。
「ヴァル……?」
その後、代わりの兵が、立ち尽くしていたアリアンロッドを迎えにきた。
彼らは翌日から移動の日を費やしたが、王宮までの残り短いその道中、まともに口を聞くことはなかったという。
*̣̣̥- - - - - - - - - - - - - - - - - -♔˖°
第八章にお付き合いくださいましてありがとうございました。
このように今章が終わってしまったので、次章はアンヴァルの代行主人公回でお送りいたします。
(ふたりがずっと離れ離れなのでアンヴァルの方をクローズアップすることに決めました! ……より面倒事に巻き込まれる方を、ということで!(
「…………」
もはやこの男を疑う余地はない。窮地を助けてくれたのだから。
それでも彼と共に行くことに、アリアンロッドは物怖じした。
「俺が怖いか?」
「……いいえ」
すぐには答えられなかったが、それはないと確信し、はっきりと首を横に振る。
────これがヴァルであっても、ためらいなく殺してた。
「私、まだ動けなくて、連れていってもらえると助かるのだけど……」
その言葉を聞いたら、彼はすぐさま彼女を抱き上げ、屋敷を出た。
夜も大分更けていて、外に人通りは見られない。彼は小屋で馬を調達し、アリアンロッドを手前に乗せて、森へ入って行った。
「どうして森へ?」
梟が鳴く草深い森の中で、アリアンロッドは不安になる。
「温泉に浸かりたい」
「明けてからでいいじゃない」
「やっぱり怖いのか?」
「夜の森を怖がらない人はいないわ」
「大丈夫だ。路も完璧に覚えてるし、ここは獣も出てこない」
彼が大丈夫と言うならそうなのだろう。今は彼の腕の中、否応なく身を任せるだけだった。
「ねぇ、本当はあいつが犯人だと分かってたから、潜んでたんでしょう?」
「いや、本当に夜這いなり、朝這いなりを遂行しに」
「なにそれ……。まるで子どもを相手にするような態度だったのに。本当に女なら誰でもいいの?」
「まぁ女は淑やかな方が好みだが、お前も悪くない。俺と一緒に来い」
「はぁ??」
アリアンロッドはどうせまたからかっているのだろうと、無視を決め込んだ。そろそろ眠たくなってきたのもある。
それからのふたりは無言を貫き、馬の蹄音だけが路にこだましていた。
◇
男が温泉の洞窟前に馬を停めた頃、アリアンロッドはすっかり寝入っていた。
「せっかく温泉に着いたのに入らないのか。まぁそりゃ今日も疲れたよな。歌も見事だったしな」
なので起こされず、ゆっくり丁寧に降ろされた。
男はアリアンロッドを大事に抱き上げ大木の元まで運んだら、そこにドスンと腰を落ち着ける。
「ん……むにゃぁ、ヴぁる……?」
ふにゃっとしたその寝顔を目に留めて彼は、クスリと笑った。
ふたりして大きな根元にもたれかかり、また互いにもたれ合い、眠ったのだった。
朝、アリアンロッドが目を覚ましたら、そこは男の膝元だった。
「へっ? ……え? ふぇっ??」
やはり慌てふためいて妙な挙動になる。
「ああ、朝か」
おかげで彼も目を覚まし、大きなあくびをした。
そこで目の前の彼女が顔を赤くしてるのを、彼が見逃すわけもなく。
「温泉入るか? 一緒に」
「またそんなことを!」
「まぁそれは冗談でもいいが、昨夜言ったことは本気だ」
「え?」
アリアンロッドは彼の、海と地が交じり合う瞳の色をじっと見る。
「俺のところに来いよ。家族、いないんだろ?」
意外にも、彼の目は情のこもったようである。それはアリアンロッドにも強く伝わった。
「どうして、そんなこと……」
「やはり勘なんだが、お前は俺に近しいものを感じる、というくらいか」
彼女も実際、そんな気がしないでもないと感じている。彼とは、似たような思いを抱いていて、どこかで通じ合っているのでは、と────
しかしそんな共感を散らすように、首をブンブン振って。
「そ、そんな気まぐれを言われても、受ける気にはなれないわ。それに、私に家族はいないけど、待ってる人たちがいるの、私の帰りを……」
そう言いながら立ち上がった彼女を、追って彼も腰を上げ、即座に彼女の手首を掴んだ。
「やっ、なにっ……」
そして一瞬にして引っ張られたアリアンロッドは、その背を大木に押し付けられた。
「いたっ……」
「俺の命に背ける奴はいない」
「っ…………」
彼女はその凄みを利かせた視線に声を失った。幾度かあったはずだが、この時初めて、彼を心の底から恐いと思った。
その意志の強い目は、他者を縛り付けるには十分だ。何を盛られたわけでもないのに、動けなくなってしまっている。
────なぜ? 覚えがある。この広い大地を讃えたような、強く逞しい瞳の色は……
そんな焦りを察したか、彼は薄く笑みを浮かべ、おもむろに、彼女の顔に自身の顔を近付けて──
「っ……」
アリアンロッドが思わず目を閉じた瞬間、するりと彼は顔の位置を下げ、
「?」
その白く細い首筋に、吸いついた。
「!? ……っ……」
アリアンロッドは何が起こったのか、すぐには理解できなかった。
「あっ……」
今まで感じたことのない、おかしな心地がする。唇で触れられている。舐められているのではなく、吸われているのだと感付く。
「んっ……」
これがまた、妙な気分になるが、なぜだか悪くない。
「────様! 探しましたよ」
彼女がそれをされるがまま、身も心も委ねていたら、主を追って男がひとりやってきた。その従者は木の陰に隠れたアリアンロッドに、遅れて気付く。女性と一緒にいるのかと、少々ためらったようだ。
他人の声でハッと意識づいたアリアンロッドは、その声の主を視界に入れた。それは初老だろうか、白髪交じりの長い髪の、落ち着いた外見の者だった。
「……あなたは、どこかで……」
その男の顔を僅かの間だが、しかと目に入れた時。アリアンロッドは感じた。あの、帰る予兆を。
「っ!」
彼女は掴まれている腕を全力で振り払い、急いですぐそこの洞窟へと走る。
それをその場に残った男ふたりは追ったのだが、彼らがそこに入った時、中にはもう、何者も存在しなかった。
◇◆◇
アリアンロッドが気付いたらそこは、同じ洞窟の手前だった。
(帰ってこれた……?)
知った処に戻ってまずは安心する。時間はどれほど経過しているのだろう。
「アリア!?」
「ヴァル!」
早速届いたアンヴァルの声も姿も、アリアンロッドは心の底から嬉しくて、そそくさと彼に駆け寄った。ずっと彼が隣にいなくて心細かったのだ。
「無事か、良かった」
アンヴァルもアリアンロッドが無事で安堵した。しかしやたら綺麗な衣装の、襟や袖、スカート部分がひどく破れている。彼は何があったのか問いただしたかった。
「私、どれくらい行ってた? みんなに迷惑は……」
「問題ない。もうすぐ日が暮れる」
「日は跨いでないのね」
その時アンヴァルは、ほっとしているアリアンロッドの首筋に、赤いアザがあるのに気付く。
「お前、首のそれ……」
「えっ?」
アリアンロッドはパッと目を丸くして、今さっきの出来事を思い出してしまったら、箇所を慌てて手で押さえた。更には急速に顔を真っ赤にするのだ。
「どうしたんだ、そこ? 虫にくわれたのか?」
「え? あ、うん。そう。虫に……」
彼女は分かりやすく目を逸らした。
「なわけないだろ!? 何があったんだ!?」
「それは……。これは、別に……」
アンヴァルは、自身の赤面にも気付かない彼女の、アザを押さえて隠す手の、手首を強く掴んだ。
「いたっ。……ヴァル……なにっ」
彼のいつもとはまったく違う様相に、アリアンロッドは怯えだす。
「行った先でお前、何やってたんだよ……」
「ヴァル?」
彼がまるで知らない人のようで、空恐ろしく感じる。こんな状況で何を答えられるわけもない。
「何やってたんだよ!!?」
アリアンロッドはその声で縮こまり、顔に困惑を浮かべた。
アンヴァルはそこでハッとして、我を忘れて叫んだことを自覚し、掴んだ彼女の手首を振り切るように放したら、その場から足早に立ち去った。
「ヴァル……?」
その後、代わりの兵が、立ち尽くしていたアリアンロッドを迎えにきた。
彼らは翌日から移動の日を費やしたが、王宮までの残り短いその道中、まともに口を聞くことはなかったという。
*̣̣̥- - - - - - - - - - - - - - - - - -♔˖°
第八章にお付き合いくださいましてありがとうございました。
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