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【 第十一章 】 選ばなかった道の先にある運命
④ 希少な力を持つ聖女を探しに
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ディオニソスから返答はなくとも、ルーンは続けて言葉を放つ。
「少し前から、どうして勝ち目のない戦いが“開戦する”運命なのだろうと、考えてみたのですが。あなた様はご自身や一族の男子のみが刑に処されることで済むならば、一般の民までも巻き込むだろう大規模な戦いなど、望まれないでしょう。それはやはり、ご自身だけで済むわけはなく、大聖女であるアリアンロッド様の処刑も免れないから」
「…………」
「あなた方はまったく同じことを考えておられるのですね。しかし違うのは、あなた様はひとつでも多くの手立てを模索したい」
ただ彼女だけは、その運命から逃がしたい一心で。
「そして先ほどアリアンロッド様に、暗に、時代を超えてまでも次の大聖女を探すよう仕向けた」
「仕向けたというほどのことでもない」
「戦いの起こることは、もはや変わりようのない現実。しかしアリアンロッド様の言は、“大聖女はその戦いにて果てる”という伝聞のみ。それがアリアンロッド様とは限らないわけです。その一縷の望みに託されたと、私が勘繰ってもふしぎはないでしょう?」
彼は“他者を身代わりにしてでも”アリアンロッドを生かしたい、と考える己の罪深さを分かっている。ルーンは愚かしい考えだと責めるつもりはない。
ディオニソスは重い口を開いた。
「彼女は運命を変えられるかもしれないと、その聖女を探そうとする。それが次の大聖女かどうかは分からない。ただ、どこかにいる次代をそろそろ見つけられても、おかしくないだろう? 推察した私の思惑は、胸の内に秘めておいてくれ」
「承知しております。力を持つ聖女を探し当てることは、損失にもなりえませんし」
◇◆
アリアンロッドは夜が更けるまで考えていた。その聖女は神に導いていただかなくては会えない未来にいる。都合よくその人物に会えるはずもない。会ったところでそこからこの世に連れてくるというのも、どう頼めというのか、想像がつかない。
時を戻すなど、信じ難い、強すぎる力だと思う。ただ確かに、現在まで民が聖女の神通力を信じ奉るのは、そういった力を誇示した歴代大聖女の功績によるものが大きい。
本当にその生まれ変わりが存在するなら、どういった人物なのだろう。そんな強大な力を持ちながら、普通に暮らしているのだろうか。興味本位で会ってみたくはあるのだった。
◇◆◇
悩ましげな日々の中、アリアンロッドは子どもの頃に暮らしていた、小さな町へ行ってみたいと思い付いた。
王宮で暮らし始めてからというもの、その日々の記憶は封印するようになった。否が応にも実母が恋しくなってしまうから。
アリアンロッドは侍女服に着替え、以前やったようにこっそり馬車を手配した。
王都に近いが少々寂れた、静かな町に到着した。大聖女の不在にまた、ディオニソスに心配をかけてしまうだろうが、知らない土地を歩くのは手慣れたものだ。
多少は居住区の雰囲気を覚えている。幼い自分はこの町の片隅で、昼間は大人の手伝いをしたり、同年代の仲間とはしゃいだりしていた。
「あ、ここら辺は……」
小道をまっすぐ進んでいったら、半壊した空き家が。
「ここ……私の、家、だった……」
目から涙がこぼれ落ちた。
涙をこぼしながら、その朽ちた外観をぼんやりと眺めていた。そうしていたら、なんだか背後を母が通っていたような気がして、ばっと振り向いた。
「お母さん……」
目の奥が打たれたように痛んだ。それがどんどん強まり、涙が後から後から溢れ出す。母に会いたくて、抱きしめられたくて、そんな思いが止まらない。
「お母さん……。私…、怖くて……本当は……怖いの……助けて。助けてっ……」
泣いて請うても母は現れてくれない。もしかしたら近くにいるのかもしれないが、アリアンロッドを抱きしめる腕が彼女にはないのだ。
それでも。
「逃げたい」とこぼせば受けとめてくれるであろう母を求め、しばらく声を上げて泣き続けた。
その後、路地の隅でうずくまり顔を伏せているアリアンロッドに、後ろから声をかける者たちが。
「おねえちゃん、泣いてるの?」
ここらで暮らす子どもたちだ。大きい子と小さい子、4人ほどで連れ立っている。
「おねえちゃんも一緒に遊ぼう?」
アリアンロッドは涙を拭いながら尋ねた。
「えっと、何をして?」
「かくれんぼ」
4人は顔を見合わせたら、道の先の林に向かって駆けていった。
(んんと、私が探す役なのかな?)
アリアンロッドも彼らを追って林の入り口に立つ。
そして一歩踏み出した瞬間、水面に立ったような感覚が走り、神の吹く誘いの風が彼女を遥か遠くへ吹き飛ばしていったのだった。
目が覚めたらそこは手狭な家屋の中だった。
「おや、気付いたかい」
男性の声がした。頭がまだぼんやりしている自覚はあるが、身体に痛みはない。なので起き上がろうとしたが、止められた。
「ゆっくり寝とるといいよ」
その家屋には男性がひとりきり。助けてくれたらしいその人は、偉丈夫だが老人だ。アリアンロッドは天井を見つめたままお礼を言った。
「ああ、お前さんが倒れているのを見つけたのは、俺じゃないんだがな」
老人は手柄を、彼女を見つけた他の人物に渡した。アリアンロッドはおぼろげに、この人の家族かなと思った。
「俺は外におるから、寝とればいい」
言葉に甘えて、そのまま休ませてもらうことに。
アリアンロッドはぼんやり考える。久々に神隠しによる移動で意識を失った。ルーンにこういった経験を話した時、それはもしかしたら国の外に出る場合、時空のゆがみで受ける衝撃が大きいのでは、と推測された。ここは国ではないのだろう。
ひと眠りして回復したアリアンロッドが家を出たら、老人は物作りをしていた。
「何を作っているんですか?」
「けものを捕える罠だよ」
「へぇ。おじいさんは職人なのね?」
「うーん、昔から色々作っとったが、最近はいろんなことができんくなってなあ。目はよう見えんくなったし、手もよう動かん」
「そうなんですか」
彼はアリアンロッドに尋ねる。どこから来たのか、帰るところはあるのか。
「えっと、旅をしてるのだけど……」
彼は不思議そうな顔で見てくる。アリアンロッドは言葉に詰まった。それを察してか。
「この島は旅人がたまに流れつくところだ。もし雨風凌ぐ当てがなければ、近くの空き家におってもいいよ」
「空き家があるんですか?」
「俺の息子が暮らしとったのがある。今は倉代わりにしとって、たまに掃除はしとるからな、たぶん使えるだろう。後で見とくよ」
「息子さんは今どこに?」
「ここらの村のどこぞかなあ」
村里があるようだが、ここはそれから少し離れた場所らしい。
「どうしておじいさんもそこで大勢の人と暮らさないの?」
「ずっとここに住んどるから、引っ越すのが面倒なんだなァ」
「そっかぁ」
「ああ、さっきお前さんが倒れてるって俺を呼びに来た子は、あっちの原っぱにおるよ」
「はい。お礼言ってきます!」
草原に出るまで林の中をまっすぐ行けばいいと聞いた。人がしばしば通るおかげで小道ができている。アリアンロッドは木々の隙間から差し込む光を頼りに、その人物を探しながら進んでいった。
「原っぱはもうすぐかな。……ん?」
背の高い木々の枝葉で覆われた、薄暗い場に入った瞬間だった。前方から来る急な眩しさに目がくらんで、いったん両目をぐっと閉じ、顔を背けた。そしてゆっくり目を開けながら前を向くと、驚くなかれ、前方の大木がまばゆい光の粒をまとっている。
「古代樹……?」
大木の光にアリアンロッドが目を細めて見とれていたら、その裏から、ひょこっと小さい子どもが顔を出した。
するとアリアンロッドの目に映っていたまばゆさは吸い込まれたように消えていった。
「今の光は幻……? ん?」
「ん?」
茫然とする彼女の前に現れたのは、齢10にも満たないだろう、キラッと輝く黒髪の、目のくりくりした子どもだった。
「少し前から、どうして勝ち目のない戦いが“開戦する”運命なのだろうと、考えてみたのですが。あなた様はご自身や一族の男子のみが刑に処されることで済むならば、一般の民までも巻き込むだろう大規模な戦いなど、望まれないでしょう。それはやはり、ご自身だけで済むわけはなく、大聖女であるアリアンロッド様の処刑も免れないから」
「…………」
「あなた方はまったく同じことを考えておられるのですね。しかし違うのは、あなた様はひとつでも多くの手立てを模索したい」
ただ彼女だけは、その運命から逃がしたい一心で。
「そして先ほどアリアンロッド様に、暗に、時代を超えてまでも次の大聖女を探すよう仕向けた」
「仕向けたというほどのことでもない」
「戦いの起こることは、もはや変わりようのない現実。しかしアリアンロッド様の言は、“大聖女はその戦いにて果てる”という伝聞のみ。それがアリアンロッド様とは限らないわけです。その一縷の望みに託されたと、私が勘繰ってもふしぎはないでしょう?」
彼は“他者を身代わりにしてでも”アリアンロッドを生かしたい、と考える己の罪深さを分かっている。ルーンは愚かしい考えだと責めるつもりはない。
ディオニソスは重い口を開いた。
「彼女は運命を変えられるかもしれないと、その聖女を探そうとする。それが次の大聖女かどうかは分からない。ただ、どこかにいる次代をそろそろ見つけられても、おかしくないだろう? 推察した私の思惑は、胸の内に秘めておいてくれ」
「承知しております。力を持つ聖女を探し当てることは、損失にもなりえませんし」
◇◆
アリアンロッドは夜が更けるまで考えていた。その聖女は神に導いていただかなくては会えない未来にいる。都合よくその人物に会えるはずもない。会ったところでそこからこの世に連れてくるというのも、どう頼めというのか、想像がつかない。
時を戻すなど、信じ難い、強すぎる力だと思う。ただ確かに、現在まで民が聖女の神通力を信じ奉るのは、そういった力を誇示した歴代大聖女の功績によるものが大きい。
本当にその生まれ変わりが存在するなら、どういった人物なのだろう。そんな強大な力を持ちながら、普通に暮らしているのだろうか。興味本位で会ってみたくはあるのだった。
◇◆◇
悩ましげな日々の中、アリアンロッドは子どもの頃に暮らしていた、小さな町へ行ってみたいと思い付いた。
王宮で暮らし始めてからというもの、その日々の記憶は封印するようになった。否が応にも実母が恋しくなってしまうから。
アリアンロッドは侍女服に着替え、以前やったようにこっそり馬車を手配した。
王都に近いが少々寂れた、静かな町に到着した。大聖女の不在にまた、ディオニソスに心配をかけてしまうだろうが、知らない土地を歩くのは手慣れたものだ。
多少は居住区の雰囲気を覚えている。幼い自分はこの町の片隅で、昼間は大人の手伝いをしたり、同年代の仲間とはしゃいだりしていた。
「あ、ここら辺は……」
小道をまっすぐ進んでいったら、半壊した空き家が。
「ここ……私の、家、だった……」
目から涙がこぼれ落ちた。
涙をこぼしながら、その朽ちた外観をぼんやりと眺めていた。そうしていたら、なんだか背後を母が通っていたような気がして、ばっと振り向いた。
「お母さん……」
目の奥が打たれたように痛んだ。それがどんどん強まり、涙が後から後から溢れ出す。母に会いたくて、抱きしめられたくて、そんな思いが止まらない。
「お母さん……。私…、怖くて……本当は……怖いの……助けて。助けてっ……」
泣いて請うても母は現れてくれない。もしかしたら近くにいるのかもしれないが、アリアンロッドを抱きしめる腕が彼女にはないのだ。
それでも。
「逃げたい」とこぼせば受けとめてくれるであろう母を求め、しばらく声を上げて泣き続けた。
その後、路地の隅でうずくまり顔を伏せているアリアンロッドに、後ろから声をかける者たちが。
「おねえちゃん、泣いてるの?」
ここらで暮らす子どもたちだ。大きい子と小さい子、4人ほどで連れ立っている。
「おねえちゃんも一緒に遊ぼう?」
アリアンロッドは涙を拭いながら尋ねた。
「えっと、何をして?」
「かくれんぼ」
4人は顔を見合わせたら、道の先の林に向かって駆けていった。
(んんと、私が探す役なのかな?)
アリアンロッドも彼らを追って林の入り口に立つ。
そして一歩踏み出した瞬間、水面に立ったような感覚が走り、神の吹く誘いの風が彼女を遥か遠くへ吹き飛ばしていったのだった。
目が覚めたらそこは手狭な家屋の中だった。
「おや、気付いたかい」
男性の声がした。頭がまだぼんやりしている自覚はあるが、身体に痛みはない。なので起き上がろうとしたが、止められた。
「ゆっくり寝とるといいよ」
その家屋には男性がひとりきり。助けてくれたらしいその人は、偉丈夫だが老人だ。アリアンロッドは天井を見つめたままお礼を言った。
「ああ、お前さんが倒れているのを見つけたのは、俺じゃないんだがな」
老人は手柄を、彼女を見つけた他の人物に渡した。アリアンロッドはおぼろげに、この人の家族かなと思った。
「俺は外におるから、寝とればいい」
言葉に甘えて、そのまま休ませてもらうことに。
アリアンロッドはぼんやり考える。久々に神隠しによる移動で意識を失った。ルーンにこういった経験を話した時、それはもしかしたら国の外に出る場合、時空のゆがみで受ける衝撃が大きいのでは、と推測された。ここは国ではないのだろう。
ひと眠りして回復したアリアンロッドが家を出たら、老人は物作りをしていた。
「何を作っているんですか?」
「けものを捕える罠だよ」
「へぇ。おじいさんは職人なのね?」
「うーん、昔から色々作っとったが、最近はいろんなことができんくなってなあ。目はよう見えんくなったし、手もよう動かん」
「そうなんですか」
彼はアリアンロッドに尋ねる。どこから来たのか、帰るところはあるのか。
「えっと、旅をしてるのだけど……」
彼は不思議そうな顔で見てくる。アリアンロッドは言葉に詰まった。それを察してか。
「この島は旅人がたまに流れつくところだ。もし雨風凌ぐ当てがなければ、近くの空き家におってもいいよ」
「空き家があるんですか?」
「俺の息子が暮らしとったのがある。今は倉代わりにしとって、たまに掃除はしとるからな、たぶん使えるだろう。後で見とくよ」
「息子さんは今どこに?」
「ここらの村のどこぞかなあ」
村里があるようだが、ここはそれから少し離れた場所らしい。
「どうしておじいさんもそこで大勢の人と暮らさないの?」
「ずっとここに住んどるから、引っ越すのが面倒なんだなァ」
「そっかぁ」
「ああ、さっきお前さんが倒れてるって俺を呼びに来た子は、あっちの原っぱにおるよ」
「はい。お礼言ってきます!」
草原に出るまで林の中をまっすぐ行けばいいと聞いた。人がしばしば通るおかげで小道ができている。アリアンロッドは木々の隙間から差し込む光を頼りに、その人物を探しながら進んでいった。
「原っぱはもうすぐかな。……ん?」
背の高い木々の枝葉で覆われた、薄暗い場に入った瞬間だった。前方から来る急な眩しさに目がくらんで、いったん両目をぐっと閉じ、顔を背けた。そしてゆっくり目を開けながら前を向くと、驚くなかれ、前方の大木がまばゆい光の粒をまとっている。
「古代樹……?」
大木の光にアリアンロッドが目を細めて見とれていたら、その裏から、ひょこっと小さい子どもが顔を出した。
するとアリアンロッドの目に映っていたまばゆさは吸い込まれたように消えていった。
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