119 / 148
【 第十一章 】 選ばなかった道の先にある運命
⑦ 子どもの気持ち
しおりを挟む
翌日は老人が少し遠くで素材を集めてくると出かけていった。なのでアリアンロッドは代わりに、彼の家屋の前で薪を割っていた。
「よいしょっと。こんなものかしら……ん?」
ふと顔を上げたら、近くの藪から顔をちらちらと覗かせるひとりの男がいた。不審に思い、彼女は斧をかざして近付いた。
「ひぇっ…?」
男はそんなアリアンロッドから逃げ出した。
「むっ?」
逃げられたのでアリアンロッドは追いかける。男と女の法則である。
しかしどうにもその男は鈍くさく、あっさりつまずいたところを、アリアンロッドはその背に飛び乗った。
「よしっ捕まえたっ! 何者!?」
「お前こそ何者だっ……まさか親父の新しい嫁!? いくらなんでも若すぎないか!?」
「親父??」
話を聞くと、彼は老人の、たった一人残った息子であった。どこからか見知らぬ女児がやってきて、父親が明日をも知れぬ命だと言い捨てて帰ったので、念のため様子を見に来たらしい。
アリアンロッドはせっかくルゥがおびき寄せたのに、ここで早速「嘘でした」と言っていいものか、考える。
「うん……明日をも知れぬと言うほどじゃないけれど、独りで暮らすには心配な感じだから、もう戻ってきたら?」
「ひとり? お前、新妻なんだろ?」
「妻じゃありません」
アリアンロッドが珍しく真顔になった。
アリアンロッドは年老いた父に歩み寄るべきだと、放蕩息子を説得したい。
「もう親一人子一人なんでしょ。父君もあなたが実の兄を傷付けたこと、いつまで言ってても仕方ないって分かってるわよ。あとはあなたの態度次第だと思うな」
「そんなこと赤の他人に話したのか? そんな家内の恥を」
「あなたの恥でしょ……」
よく言えるなと呆れてしまう。
「大体、どうしてそんなことしたの? 喧嘩で刺したなんて……凶器がしょせんナイフじゃ殺意というほどでもないでしょうけど。脅してそれを取り上げるつもりだったの?」
10年も前のことを赤の他人に蒸し返されて、男は不機嫌だ。
「いいや、カッとなってたから殺意はあったぜ」
「どんな喧嘩よ……。兄君はあなたと違って、素直で温厚な人だったって聞いたけど?」
「ナイフ、おふくろの形見だったんだ。あっちだけもらったんだよ。俺、おふくろが鍛えてるとこ見てて、欲しいって言ったのに」
「それでカッとなって?」
「それだけじゃなくて、ずっと親父もおふくろもあいつばかり可愛がってさ」
彼は拳を握って悔しさを滲ませた。その様子に、彼が幼い頃から今に至るまで不満を募らせていることは分かったが、だからこそ彼はより両親に認められる言動をしなかったのではないかと、アリアンロッドは感じた。つまり卵が先か鶏が先か、だ。
「ところで、そのナイフってこれでしょ? 兄から奪ったこれを、どうして持っていかなかったの? 兄を傷付けてまで欲しかったものなのに」
「どうしてお前が! ……そんなもの持っていくわけないだろ」
「見るたびに、自責の念に駆られるもんね。これが欲しくて仕方なかったのに、皮肉なものね」
「…………」
双子の片割れも、もうこの世にいない今、彼は心の隅で申し訳なさを感じているようだった。
「ん?」
そのナイフを受け取ると彼は、何か違和感を覚えた。アリアンロッドがその詳細を尋ねると。
「この真ん中の、突起……こんなのなかったぞ。ここには確か、穴が空いてて」
アリアンロッドは昨日の老人の言葉を思い出す。彼も同じことを言っていたのだ。
結局、放蕩息子は逃がしてしまった。いい大人が老いた親に謝罪もできないとは情けない。そうは思うが、彼もやはり父親が心配なのだ。10年も疎遠にしていたら、確かにどの面下げてという話だろう。本当に死期が迫るまで対面は実現しないかもしれない。それも彼の自業自得だ。
アリアンロッドはナイフを見つめて溜め息をつく。
「それにしても、本当に変よね、これ。彼はこれで兄を刺した。確かにこれを手に持ったら“刺す”よね、“切りつける”気にならない。これ、何も切れる気がしないっていうか。ナイフなのに……」
ふたりの言った言葉が脳裏に浮かんだ。
「真ん中に穴の開いた、これ……??」
もしかして、とアリアンロッドは立ち上がった。家を出て、もうひとつの家屋に入ってみた。そこも倉庫代わりのようで物がやたらと乱雑に置かれている。まずは片付けだ。
「今日は片付けの日か? 爺さんは?」
そこにルゥがやってきた。
老人は少し遠くに仕事に行ったと伝えた。
「散歩がてらだな。そういえば例の息子は来たか? 焚きつけてみたが」
「ええ、朝一で。びくびくしながら」
「俺の手柄だな!」
「まぁ……。でも嘘はダメよ」
「嘘も方便だろ?」
「今回のは仕方ないけど。命に関わるとか嘘をつくの、普段はダメだからね!」
ルゥはそれくらい分かってるとふてくされた顔をする。
「で、あいつが戻ってくるからここを片付けてるのか?」
「ううん。あの人また逃げちゃって。今ここ片付けてるのはね……」
経緯を聞いたルゥも少し興味あるようで、一緒に片付けを始めた。
「あ! なぁ、このカゴの中に木箱が入ってた」
「え、見せて見せて」
「ん」
「それよ、同じ大きさの箱。開けてみて」
彼女がそのふたを開けたら、やはり同じナイフが入っていた。
「彼の分もあったんじゃない!」
あの男はこれに関してずっと不満感を抱いていたのだろうが、ただの思い込みだったのだ。母は同じものを用意していて、それに気付かなかっただけだ。アリアンロッドはすぐにでも彼に伝えに行きたくなる。それを察したか、ルゥは。
「そのうちまた気になってひょっこり顔出すだろ。ほっとけ」
「でも……」
「あいつも少しは自分で考えなきゃいけないんだ」
「あなたはおじいさんの息子たちに何があったか知ってるの?」
「知らねえけど? 俺の生まれる前なんだろ?」
本当にふしぎな少女だ。
「そんなことより俺の話だよ。母さまに聞いたんだ。今、夢がひとつ叶うなら何を願うか」
「へぇ。なに?」
ルゥは周りに誰もいないのに、なぜかこそこそと耳打ちをした。
「え? 女神の歌声が聴きたい??」
◇◆
もう夕方になるが、ふたりでヨモギを採っている。
「そんな都合よく女神が降臨するわけないから、それは不可能というものじゃないかなぁ」
アリアンロッドがルゥへ目を向けると、彼女はふくれっ面だ。
「母君は歌が得意なの? そういう仕事していたとか」
「いや、普通だと思うけど……。でも一度だけ、そういえば父さまが言った。“舞台の上で讃美歌を歌う母さまはきれいだった”って」
「ん? やっぱり母君は歌手だったのね?」
「でも母さまは歌でお金をもらってたことないって言ってたし」
アリアンロッドもそれは釈然としない。
「女神はともかく……ルゥが女神っぽく演出して歌をプレゼントしてあげたら?」
「そんなこと言われても、俺の歌なんてフツーだよ」
彼女はその華やかな顔立ちをぐっと曇らせる。
「うーん……。私が“本物の女神”仕込みの歌を教えてあげてもいいけど……」
「本物の女神…仕込みの歌!?」
ルゥの顔が紅潮した。しかしアリアンロッドは口にはしたものの、国の宗教歌を勝手に教えていいものかと躊躇した。とりあえずこの話は保留にする。ルゥはがっかりしたようだ。
「よいしょっと。こんなものかしら……ん?」
ふと顔を上げたら、近くの藪から顔をちらちらと覗かせるひとりの男がいた。不審に思い、彼女は斧をかざして近付いた。
「ひぇっ…?」
男はそんなアリアンロッドから逃げ出した。
「むっ?」
逃げられたのでアリアンロッドは追いかける。男と女の法則である。
しかしどうにもその男は鈍くさく、あっさりつまずいたところを、アリアンロッドはその背に飛び乗った。
「よしっ捕まえたっ! 何者!?」
「お前こそ何者だっ……まさか親父の新しい嫁!? いくらなんでも若すぎないか!?」
「親父??」
話を聞くと、彼は老人の、たった一人残った息子であった。どこからか見知らぬ女児がやってきて、父親が明日をも知れぬ命だと言い捨てて帰ったので、念のため様子を見に来たらしい。
アリアンロッドはせっかくルゥがおびき寄せたのに、ここで早速「嘘でした」と言っていいものか、考える。
「うん……明日をも知れぬと言うほどじゃないけれど、独りで暮らすには心配な感じだから、もう戻ってきたら?」
「ひとり? お前、新妻なんだろ?」
「妻じゃありません」
アリアンロッドが珍しく真顔になった。
アリアンロッドは年老いた父に歩み寄るべきだと、放蕩息子を説得したい。
「もう親一人子一人なんでしょ。父君もあなたが実の兄を傷付けたこと、いつまで言ってても仕方ないって分かってるわよ。あとはあなたの態度次第だと思うな」
「そんなこと赤の他人に話したのか? そんな家内の恥を」
「あなたの恥でしょ……」
よく言えるなと呆れてしまう。
「大体、どうしてそんなことしたの? 喧嘩で刺したなんて……凶器がしょせんナイフじゃ殺意というほどでもないでしょうけど。脅してそれを取り上げるつもりだったの?」
10年も前のことを赤の他人に蒸し返されて、男は不機嫌だ。
「いいや、カッとなってたから殺意はあったぜ」
「どんな喧嘩よ……。兄君はあなたと違って、素直で温厚な人だったって聞いたけど?」
「ナイフ、おふくろの形見だったんだ。あっちだけもらったんだよ。俺、おふくろが鍛えてるとこ見てて、欲しいって言ったのに」
「それでカッとなって?」
「それだけじゃなくて、ずっと親父もおふくろもあいつばかり可愛がってさ」
彼は拳を握って悔しさを滲ませた。その様子に、彼が幼い頃から今に至るまで不満を募らせていることは分かったが、だからこそ彼はより両親に認められる言動をしなかったのではないかと、アリアンロッドは感じた。つまり卵が先か鶏が先か、だ。
「ところで、そのナイフってこれでしょ? 兄から奪ったこれを、どうして持っていかなかったの? 兄を傷付けてまで欲しかったものなのに」
「どうしてお前が! ……そんなもの持っていくわけないだろ」
「見るたびに、自責の念に駆られるもんね。これが欲しくて仕方なかったのに、皮肉なものね」
「…………」
双子の片割れも、もうこの世にいない今、彼は心の隅で申し訳なさを感じているようだった。
「ん?」
そのナイフを受け取ると彼は、何か違和感を覚えた。アリアンロッドがその詳細を尋ねると。
「この真ん中の、突起……こんなのなかったぞ。ここには確か、穴が空いてて」
アリアンロッドは昨日の老人の言葉を思い出す。彼も同じことを言っていたのだ。
結局、放蕩息子は逃がしてしまった。いい大人が老いた親に謝罪もできないとは情けない。そうは思うが、彼もやはり父親が心配なのだ。10年も疎遠にしていたら、確かにどの面下げてという話だろう。本当に死期が迫るまで対面は実現しないかもしれない。それも彼の自業自得だ。
アリアンロッドはナイフを見つめて溜め息をつく。
「それにしても、本当に変よね、これ。彼はこれで兄を刺した。確かにこれを手に持ったら“刺す”よね、“切りつける”気にならない。これ、何も切れる気がしないっていうか。ナイフなのに……」
ふたりの言った言葉が脳裏に浮かんだ。
「真ん中に穴の開いた、これ……??」
もしかして、とアリアンロッドは立ち上がった。家を出て、もうひとつの家屋に入ってみた。そこも倉庫代わりのようで物がやたらと乱雑に置かれている。まずは片付けだ。
「今日は片付けの日か? 爺さんは?」
そこにルゥがやってきた。
老人は少し遠くに仕事に行ったと伝えた。
「散歩がてらだな。そういえば例の息子は来たか? 焚きつけてみたが」
「ええ、朝一で。びくびくしながら」
「俺の手柄だな!」
「まぁ……。でも嘘はダメよ」
「嘘も方便だろ?」
「今回のは仕方ないけど。命に関わるとか嘘をつくの、普段はダメだからね!」
ルゥはそれくらい分かってるとふてくされた顔をする。
「で、あいつが戻ってくるからここを片付けてるのか?」
「ううん。あの人また逃げちゃって。今ここ片付けてるのはね……」
経緯を聞いたルゥも少し興味あるようで、一緒に片付けを始めた。
「あ! なぁ、このカゴの中に木箱が入ってた」
「え、見せて見せて」
「ん」
「それよ、同じ大きさの箱。開けてみて」
彼女がそのふたを開けたら、やはり同じナイフが入っていた。
「彼の分もあったんじゃない!」
あの男はこれに関してずっと不満感を抱いていたのだろうが、ただの思い込みだったのだ。母は同じものを用意していて、それに気付かなかっただけだ。アリアンロッドはすぐにでも彼に伝えに行きたくなる。それを察したか、ルゥは。
「そのうちまた気になってひょっこり顔出すだろ。ほっとけ」
「でも……」
「あいつも少しは自分で考えなきゃいけないんだ」
「あなたはおじいさんの息子たちに何があったか知ってるの?」
「知らねえけど? 俺の生まれる前なんだろ?」
本当にふしぎな少女だ。
「そんなことより俺の話だよ。母さまに聞いたんだ。今、夢がひとつ叶うなら何を願うか」
「へぇ。なに?」
ルゥは周りに誰もいないのに、なぜかこそこそと耳打ちをした。
「え? 女神の歌声が聴きたい??」
◇◆
もう夕方になるが、ふたりでヨモギを採っている。
「そんな都合よく女神が降臨するわけないから、それは不可能というものじゃないかなぁ」
アリアンロッドがルゥへ目を向けると、彼女はふくれっ面だ。
「母君は歌が得意なの? そういう仕事していたとか」
「いや、普通だと思うけど……。でも一度だけ、そういえば父さまが言った。“舞台の上で讃美歌を歌う母さまはきれいだった”って」
「ん? やっぱり母君は歌手だったのね?」
「でも母さまは歌でお金をもらってたことないって言ってたし」
アリアンロッドもそれは釈然としない。
「女神はともかく……ルゥが女神っぽく演出して歌をプレゼントしてあげたら?」
「そんなこと言われても、俺の歌なんてフツーだよ」
彼女はその華やかな顔立ちをぐっと曇らせる。
「うーん……。私が“本物の女神”仕込みの歌を教えてあげてもいいけど……」
「本物の女神…仕込みの歌!?」
ルゥの顔が紅潮した。しかしアリアンロッドは口にはしたものの、国の宗教歌を勝手に教えていいものかと躊躇した。とりあえずこの話は保留にする。ルゥはがっかりしたようだ。
0
あなたにおすすめの小説
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる