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無価値な書物達
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意地の悪い、過去の学生達の心を抉ったであろう緑色の書物を戻して塔の中を進んで行く。
多くの書物は美しいけれど古びた装丁のものばかりで、時折電光を反射して金で装飾された表紙が艶やかに光る。
螺旋階段を上へ上へ、進んで行けども、沢山の本があるばかりで、何も起こらない。塔を3分の2ぐらい過ぎたのだろうか、サイラスはふと通気窓を見れば沈みかけた太陽が木々の頂点から見え隠れしていた。
ふと、先を歩いていたベンが立ち止まって、ずらりと並ぶ本を触りながらぽつりと呟いた。
「でも、悲しいことだよな 」
「何が?」
「『水害対策の水魔術に対する考察』『生活魔術の改良論』『建築魔法の基礎論』.......」
彼は本に触れながら、一つ一つの題名を舌の上で転がしてゆく。そういえば、ここにある本は全て魔法に関するものばかりだとサイラスは気がついた。
「魔法関連の書物か 」
「ああ、よく見てみれば本当にいろんな魔法があったんだってすごくわかる 」
「たしかに、俺たちは魔法の概要しか習わないもんな」
今でも魔法関連の授業がひっそりと残っているとはいえ、役に立たないものに労力をかけるものは少ない。昔は魔法学園だったと言われるこの学園でさえ、魔法の概要を習う基礎講座がひとつだけ開講されているだけだった。
「生活魔法とか、よくわからないけど、多分生活の中で使う魔法だろ?昔の人は皿とか魔法で洗ってたのかな。それが全部使えなくなったんだ......」
ベンを真似て手に触れた書物は魔法運用についての論文だった。
「きっと、今の科学技術と同じように多くの奴らが研究してたんだろうな 」
「それが全部、全部、なにもかもが無駄になったんだ。そしてこんな塔に押し込められた ........ 」
先に続く言葉はなかった。ただどこか悔しそうに彼は笑う。
そんなベンの方をポンと叩いてサイラスは笑った。
過去は過去ことでしかない。今のサイラスらが何を想像しようが何も変わらない。
「さ、行こうぜ、探すんだろ?美女。ここは埃臭くてかなわねぇからさっさと帰って風呂に入りたい 」
「そうだな。待ってろ美女!」
空気を変えるようにそう叫んで前に躍り出た相棒に一つ苦笑を零した。
先は、あと少しだ。
ーーーーーーーーーーーーー
今に思えば、塔に行ったのが運命の始まりで、
塔の頂上で出会ったのが、運命の分岐点だったのかもしれない。
ただ、あの時、サイラスは分からなかった。
彼らの気持ちはわかる。
けど、魔法なんて、消えてしまった取り戻せないものをなんで、あの教師やベンは執着するのか分からなかった。
ーーーーーーーーーー
そこは、あまりにもひらけていた。
あまりに想像とは違うそこにサイラスは顔がひきつるのを感じた。
「........なあ、ベン....塔の最上階ってこんなレイアウトなのか?」
「........いや、全部本しかないつまんない場所って司書が言ってた筈 」
塔の最上階も図書館だ。
いや、図書館だった筈だ。
他の階では壁に沿って配置された本棚はそこにはなかった。ただ、奇妙に広く感じるその空間に古びた本が規則正しく円形に積まれていた。
多くの書物は美しいけれど古びた装丁のものばかりで、時折電光を反射して金で装飾された表紙が艶やかに光る。
螺旋階段を上へ上へ、進んで行けども、沢山の本があるばかりで、何も起こらない。塔を3分の2ぐらい過ぎたのだろうか、サイラスはふと通気窓を見れば沈みかけた太陽が木々の頂点から見え隠れしていた。
ふと、先を歩いていたベンが立ち止まって、ずらりと並ぶ本を触りながらぽつりと呟いた。
「でも、悲しいことだよな 」
「何が?」
「『水害対策の水魔術に対する考察』『生活魔術の改良論』『建築魔法の基礎論』.......」
彼は本に触れながら、一つ一つの題名を舌の上で転がしてゆく。そういえば、ここにある本は全て魔法に関するものばかりだとサイラスは気がついた。
「魔法関連の書物か 」
「ああ、よく見てみれば本当にいろんな魔法があったんだってすごくわかる 」
「たしかに、俺たちは魔法の概要しか習わないもんな」
今でも魔法関連の授業がひっそりと残っているとはいえ、役に立たないものに労力をかけるものは少ない。昔は魔法学園だったと言われるこの学園でさえ、魔法の概要を習う基礎講座がひとつだけ開講されているだけだった。
「生活魔法とか、よくわからないけど、多分生活の中で使う魔法だろ?昔の人は皿とか魔法で洗ってたのかな。それが全部使えなくなったんだ......」
ベンを真似て手に触れた書物は魔法運用についての論文だった。
「きっと、今の科学技術と同じように多くの奴らが研究してたんだろうな 」
「それが全部、全部、なにもかもが無駄になったんだ。そしてこんな塔に押し込められた ........ 」
先に続く言葉はなかった。ただどこか悔しそうに彼は笑う。
そんなベンの方をポンと叩いてサイラスは笑った。
過去は過去ことでしかない。今のサイラスらが何を想像しようが何も変わらない。
「さ、行こうぜ、探すんだろ?美女。ここは埃臭くてかなわねぇからさっさと帰って風呂に入りたい 」
「そうだな。待ってろ美女!」
空気を変えるようにそう叫んで前に躍り出た相棒に一つ苦笑を零した。
先は、あと少しだ。
ーーーーーーーーーーーーー
今に思えば、塔に行ったのが運命の始まりで、
塔の頂上で出会ったのが、運命の分岐点だったのかもしれない。
ただ、あの時、サイラスは分からなかった。
彼らの気持ちはわかる。
けど、魔法なんて、消えてしまった取り戻せないものをなんで、あの教師やベンは執着するのか分からなかった。
ーーーーーーーーーー
そこは、あまりにもひらけていた。
あまりに想像とは違うそこにサイラスは顔がひきつるのを感じた。
「........なあ、ベン....塔の最上階ってこんなレイアウトなのか?」
「........いや、全部本しかないつまんない場所って司書が言ってた筈 」
塔の最上階も図書館だ。
いや、図書館だった筈だ。
他の階では壁に沿って配置された本棚はそこにはなかった。ただ、奇妙に広く感じるその空間に古びた本が規則正しく円形に積まれていた。
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