チュートリアルと思ったらチートリアルだった件

へたまろ

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第5章:会長と勇者

第9話:勇者ミカエル

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『マスター、勇者が来ましたよ』
「ついにか」
 
 ようやく、ヘンリーを助けに勇者が現れたらしい。
 一応、ヘンリーにも伝えておく。

「そうなんだ。分かった」

 あら、意外とあっさり。
 ぶっちゃけダンジョン内の戦力を見た限り、助けて貰える可能性は低いだろうと思っているらしい。
 まあ、実際は皆無なんだけどね。
 という事で、セーブポイントに頼んで1階層に転移する。

「来ましたミカエル様。あれが、このダンジョンのマスターです」
「本当に一階層で出迎えてくれるんだな……嘗めたものだ」
「それだけ自信があるって事ですよ。帰ります?」
「なんでだよ! ヘンリー王子を助けないと」

 ローレルがミカエルに耳打ちすると、ミカエルがこちらを睨み付ける。
 どうやら、お出迎えが気に入らないらしい。
 そして、既に帰りたそうなカオルちゃん。
 ローレルがすぐに突っ込んでいた。
 まあ、そうだろうね。
 後ろでこっそり手を振ったりしてるし。
 可愛い……ほっこりする。
 あれも、俺の嫁。

『ふざけてないで、来ますよ』
「ああ……」

 セーブポイントが警告をしてくると同時に、ミカエルの姿が掻き消える。
 右手で受けたつもりが、あっさりと斬り飛ばされた。
 絶対切断持ちか、絶対切断の効果のある剣か。
 どっちにしろ、油断した。

「ふんっ、調子に乗ってるだけだったみたいだな。他愛無い」

 ミカエルが剣に付いた血を払うと、こちらを見て首を鳴らす。
 確かにローレルよりは、よっぽどやる。
 っていうか、強すぎだよね?
 先のフィフス王国の親衛隊全員を相手にする方がはるかに楽そうだ。
 石ころ、薬くれ。

『全く……油断し過ぎです』

 体内に直接フルポーションが投与される。

「なっ! 再生能力があるのか? 貴様、ただの魔族じゃないな!」

 ごめん、再生能力なんて持って無いんだ。
 ただ単に、薬飲んでるとこ見せないで回復したらハッタリになるかなって、セーブポイントと事前に取り決めてただけ。
 ただ、予想以上に効果覿面だった。
 動揺してるミカエルちゃんも可愛い。
 将来の嫁、確定だな。

『……』

 ちょっ!
 セーブポイントさん、このフルポーション猛毒混ざってるよ?
 
「あー、初手は花を持たせる主義なんでな。期待させちゃったか?」

 取りあえず、筋力30%解放で。

「なっ! 雰囲気が変わり過ぎだろ! ローレル下がれ! カオルを守るんだ」
「はいっ!」

 ミカエルが後ろに飛び退って俺と距離を取りつつ、ローレルに指示をだす。
 残念。

「おいおい、逃げなくてもいいだろ? 傷付くじゃん」

 セーブポイントに頼んで、ミカエルの背後に転移してもらう。
 距離を取ったはずのミカエルが、俺の胸元に後ろ向きで飛び込んでくる。
 おうふ、良い匂いでゴザル。
 クンカクンカ。

「くそっ!」
「っと、まあ刃が当たらなければ、絶対切断も意味は無いな」

 すぐに前かがみになって、後ろを向いたまま斬りかかってきた。
 中々に良い反応速度だけど、まだ遅いよ。
 指で刃先を摘む。
 軽く摘んでるつもりだけど、ビクともしない。

「ちっ! 離せ」
「はいっ!」
「うわっ!」

 離せって言ったから、離したのに。
 急に抵抗が無くなったため、ミカエルが思わず体勢を崩す。
 はい、罠操作。
 ミカエルが踏んだ床が開いて、中から槍が飛び出す。

「足元に良く注意しないと……このダンジョン、罠だらけだからさ」
「えっ?」
「はっ?」

 俺の言葉に、ローレルとカオルちゃんがキョトンとしてる。
 まあ、君たちは罠を使うまでも無かったからね。
 罠操作で無効にしといただけだけど、この子は結構危険そうだし。

「再生、転移、それにその膂力と速度、加えて罠のある部屋か……分が悪いな」

 ミカエルの額を汗が伝う。
 ようやく気付いて貰えたようで何より。

「仕方が無い、本気を出させてもらおう」

 ミカエルの雰囲気もガラリと代わる。

「【身体強化フィジカルブースト】、【神力解放エインヘリヤル】」

 体が少しムキッとなった。
 あー……どっちかっていうと、あんまり筋肉質な女性はちょっと。
 それと、黄金の気を纏ってる。
 神聖属性の耐性取ってるから大丈夫だと思うんだけど。
 一応、念のために。

「そうか、ハッタリじゃ無さそうだ。なら、俺も50%でお相手しよう」
「くそっ、さらに強くなるのかよ……でも、50%というのは流石にハッタリだろ!」

 なるほど、動きがかなり早くて鋭くなってるな。
 てことで、有難うセーブポイント。
 またも、セーブポイントに頼んで転移させてもらって攻撃を躱すと、硬貨を手元に出してもらう。
 それを指弾で弾き飛ばす。

「くっ! なんだ今のは!」
 
 あっ、しまった。

「ごめん、手元が狂った」

 すぐにミカエルの傍に飛び込んで、頬にポーションを塗る。
 
「顔を傷つけるつもりは無かったんだけどな。思ったより動きが素早くて」
「くっ、どこまでも馬鹿にしやがって」
「あー、それとな……」
「どこだ!」

 普通に上に飛んだだけなんだけどね。
 やっぱり、勇者っていっても神級の身体能力の前には、所詮は相手じゃないって事かな。
 俺のステータス、100%ならダンジョーンと同等だし。
 
「あんまり、女の子が汚い言葉を使うんじゃない」
「いつっ!」

 上空からの拳骨だ。
 堪えるだろう?

「なるほど、お前が化け物ってのはよーく分かった」
「そういう君は天使かな?」
「!」

 あれっ? 
 キザっぽく口説いたつもりなのに、唖然とした表情。
 もしかして、まさかの図星?
 いや、それとも本気にしちゃって俺に惚れちゃうパターン?
 いやん、罪作りな男だわ……俺って。

「ここは、譲ってやる!」
「ここは? 次があるとでも?」

 あれっ?
 景色が霞んでいく……

『時空魔法の発動を確認しました。巻き戻されます……ダンジョンの力でレジストしますか?』

 おお、新耐性……
 んなもん、くらう一択に決まってんだろ!

――――――
「来ましたミカエル様。あれが、このダンジョンのマスターです」
「本当に一階層で出迎えてくれるんだな……嘗めたものだ」
「それだけ自信があるって事ですよ。帰ります?」
「なんでだよ! ヘンリー王子を助けないと」

 おお?
 なんか、既視感のある光景。

『勇者ミカエルの能力で、時間が撒き戻されています』

 あっ、そういう事。

『来ますよ』
「ああ……」

 セーブポイントが警告をしてくると同時に、ミカエルの姿が掻き消える。
 右手で受けようとしたが、その状態からさらに大きく踏み込んできたミカエルの剣で腕と首をあっさりと斬り飛ばされた。
 絶対切断かよっ!
 さらに念入りに細切れにされたわ。

「ふんっ、調子に乗ってるだけだったみたいだな。他愛無い」

 時間操作耐性:レベル1を獲得しました。
 最後にセーブした地点で復活します。

――――――

 あー、全部思い出したわ。
 一回目は押せ押せで、なんか相手が色々と身体強化を使い始めたから、こっちも50%で舐めプして時間戻されたのね。
 んでもって、1回目の一撃目を右手で防ぐのを知ってたミカエルが、さらに大きく踏み込んで剣を首まで届かせたと。
 しかも2回目に至っては、最初から身体強化をしてたんだ。
 ズルいね。
 やり直しって、反則だわ。

『それをあなたが言いますか?』
「俺がやる分には、良いんだよ」

 取りあえず、ミカエルか……可愛かったなー。

『なんですか、その感想は』

 それに凄く、良い匂いだった。
 流れるような金髪に、海のようなブルーアイ。
 染み一つ無い肌は、カーミラたんに匹敵する。
 いや、頬にほんのりと赤みがあって健康的な分、違う魅力がある。
 カーミラたんのは青白いけど、芸術的な美しさというか。
 ミカエルの場合は、生きた美しさ?
 うん、自分の語彙の無さに泣けてくるけど、取りあえず美しいって事。
 顔立ちはカーミラたんより幼いけど、将来が楽しみ。
 プックラとしたピンクの唇も良いよね。 

「旦那様がだらしない顔をしてる」
「うむっ、また新たな被害者が見つかったようじゃの」

 ヘルとカーミラたんが、何やら不憫な様子でこっちを見てヒソヒソと話している。
 違うよ、2人にお友達を連れてきてあげようかなと。
 取り合えず、ミカエルが来るまで少し時間あるから効率的に、ミカエルの持つ攻撃手段の耐性を得る方法を考えよう。
 今度は何回くらい死ぬのかな?
 完全状態異常無効【序】の次の扉が開けると良いな。

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