一宮君と幽霊ちゃん

へたまろ

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お嫁にいけない

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 部屋の隅で、三角座りをして膝に顔を埋めてる幽霊ちゃん。
 たぶん、数分前まではどや顔だったんだろうな。  

 事の発端は、俺が帰宅した直後。
 帰っても、電気をすぐに点けない。

「おかえりなさい。料理にする? お風呂にする? それともわ・た・し?」

 と、幽霊ちゃんに言わせるため。
 正直、昭和か平成初期を生きた子なのかなと思ったりしたけど。

 付き合う。
 まえに、帰ってすぐに電気を点けたときに盛大に拗ねてしまったから。

「いっつも、待ってるのしってるくせにー!」

 って。
 いや、俺独り暮らし。
 普通は、誰も待ってないんだけど。

 毎回俺におかえりなさいって、言いたいらしい。
 良い子。

 うーん、でもそれって幽霊ちゃんが言われる方だと思うけど。

「天にお帰りなさい!」

 とか?

 言わないけど。
 帰られたら、俺がゴーストロスになるかもしれない。

 ちなみに料理にするとは、俺が料理をするという意味。
 コンビニの袋もってると、少しテンション下がる。

「塩コショウを高いところから落とさないの?」
「あちこちに散らばって、後片付けが大変じゃん?」

 料理をする男性に夢を見ているらしいが。
 タンタンタンタンとリズミカルに千切りが出来る野郎なんて、本職くらいだと思うけど?

 で、わたしを選ぶと。

「ちょっと待ってて!」

 といって、リビングの前で準備が出来るまで待たされる。

「もういいよ!」

 そして許可を得て中に。
 いや、家主俺なんだけど?
 まあ、良いか。

 そして中にはいると。

 ブリッジした幽霊ちゃんが、こっちにシャカシャカと手足を動かしてやってきたり。
 エクソシスター?

 後ろ向きに立ってるのに、後頭部の髪を掻き分けて「ばあっ」って顔が出てきたり。
 爪先こっちむいてるけど?
 服前後逆に着ただけ。
 突っ込まないけど。
 流石に幽霊でも首は180度回らないらしい。

「柔らかいもん」

 開脚して見せてくれた。
 首はやっぱり、180度回らないらしい。

 この間は何回も目の前を通りすぎてた。
 同じ方向に。
 壁に消えていって、反対の壁からまた出てくる。
 三周目くらいからペース落ちて、息を切らし始めたけど。

 しょうもないことを自信満々に見せてくる小さい子供みたいで、可愛い。

 そして、今日。
 事故が。

 いつものように許可をもらってリビングに入ったら。

「ばあっ!」

 と可愛い声が。
 そして、バサッと白い何かが落ちてきた。
 えっと……目の前にはおっぱいとか、おへそとか、下着とか、太ももとか……
 出てるわけじゃないけど、意外と柔らかそうなお腹。

「きゃーーーーー!」

 俺じゃなくて、幽霊ちゃんの悲鳴。 
 そしてそれらもろもろが地面に落ちてきて、踞る。
 天井から逆さに登場して、俺を脅かそうとしたらしい。

 そして、服が盛大にめくれたと。
 わりとダボっとしたワンピースだもんね?

「スケベ!」

 こっちを睨んでくる顔が赤く見えるのは、逆さ吊りになってたからかな?
 あと、それはちょっと理不尽じゃ……

「もう、お嫁にいけない!」

 なにを期待してるのか知らないけど、もともとお嫁にいけないと思う。
 なんてことを言ったら、きっと大炎上。

「責任取って、俺がもらってやるよ」

 なんて言ったら、地縛霊から背後霊にジョブチェンジしそうだし。
 うん、かける言葉が見つからない。

「あー……ごちそうさま?」
「ばかぁ!」

 しばらく、幽霊ちゃんがトイレにこもって出てこなくなった。
 あの、迷惑……
 いや、ごめんなさい。
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