一宮君と幽霊ちゃん

へたまろ

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比翼連理

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 幽霊ちゃんが消えて1年以上経った。
 俺は大学を卒業して、まあ地元の企業に就職。
 目まぐしい日々を送っている。

 そうそう、幽霊ちゃんが消えてしばらくして、前の住人についていった女性の霊が現れた。
 見知らぬ男性を連れて。

「私より、酷い顔だね」
「……すいません」

 幽霊ちゃんがいなくなって、何もする気がなくなったというか。
 学校とバイトと家の往復。
 お酒の量も増えた。

「まあ、なんだ元気だしなよ」

 悪霊に元気づけられるってのも、おかしな話だし。

「あんたは、まだ生きてるんだからさ」
「たまに、死にたくなる」
「はは、死にたくなろうが生きたかろうが、いつか死ぬんだ。急いで死ぬこともないよ」

 悪霊のセリフとは思えない。

「生きてたら、良いことあるさ! まあ、私は死んでからも良いことあったけどね」

 そう言って、横の男性を見上げている。
 幸せそうな笑顔が、眩しい。

「その人は?」
「あー、私が追いかけて行った人……ここ出たのも、病気が原因でさ。末期の癌。死期が近かったから、私に触れることもできたみたいでね」

 そっか……
 
「彼の死期が近いことが分かってさ、どうしても最後まで側に一緒にいたくて……」

 死んでから結ばれたのか。
 今の俺に、のろけ話なんて本物の悪霊だ。

「彼の四十九日が終わったら、一緒に成仏かな? まあ、成仏した人にあったことないから成仏ってのがあるかどうか分からないけどね」
「幽霊ちゃん……」
「彼女は違うよ?」

 成仏したわけじゃないとか、余計に罪悪感が……

「そうだね。あの子に、生きる希望をくれてありがとうね……きっと、また会えるよ! あんたら魂が惹かれあってたからさ」

 とよく分からない、気休めのような言葉を掛けられた。
 
「それじゃあ、また会えたらいいね。当分先だと思うけど」

 そういって、男性の腕に自分の腕を絡めて消えていった。
 ちょっとイラっとしたのを覚えている。

 そっからすぐだったかな?
 みこと姉から、小さい頃俺について回ってた女の子が入院してたのを知ったの。

「でさ、たまたま私が運ばれた病院で、同じ部屋とか凄い偶然じゃない?」
「うん……」
「反応悪いなー……」

 事故にあって、頭を強く打ったらしく。
 1年近く昏睡状態だったらしい。

「で、私が入院してすぐに目が覚めるとか、私持ってるよね!」
「ふーん……」
「ノリ悪いなー」

 正直、いまこの人の相手するのをめんどくさかった。

「じゃあこれはどうだ! 彼女、起きてすぐに次郎の名前呼んで泣いてたよ!」
「ふーん」

 小学生の頃に、ちょっと一緒にいただけなのにまだ引きずってるのかな?
 初恋だったのかも。
 そうじゃなかったら、ちょっと引くけど。

「会いに行こうよ!」

 みこと姉にお見舞いに誘われた。
 正直、どこにも行きたくなかったんだけどね。

 でもでもだってしてたら、みこと姉に強引に連れ出された。
 このままここに居たら、腐るっていわれて。

「俺、まだ死にたくないんだけど?」
「はは、まっかせなさーい! これでも、運転うまいんだよ?」

 この間女性の霊に慰められてから、死にたいと思うことはなくなった。
 いや、かりに死にたかったとしても、幼馴染の運転する車で事故とかはちょっと……

 そしてみこと姉の運転で、無事病院に。
 流石に普通だったけど、幼馴染の運転する車は何故か心臓に悪い。

 というか入院してる人のところに来たのに、手ぶらでちょと気まずいんだけど?
 病室に入ると、ちょうど初老の女性が部屋から出てきた。
 見覚えのある懐かしい顔。
 最近見たような気も……
 
「あら、もしかして一宮くん?」
「こんにちは、おばちゃん! そうだよ、次郎連れてきました!」
「あっ、御無沙汰してます」
「ありがとうね、丁度ゆうも起きてるから待ってね」

 そういって、おばさんは奥のカーテンのある場所に。

「聞いてゆうちゃん! 一宮君が来てくれたよ!」
「えっ? やだ、なんで?」
「入ってもらう?」
「やだ!」
「なんで?」
「すっぴんだし……髪の毛セットしてないし……」

 何故か胸がギュッと苦しくなったのを覚えている。

「じゃあ、また出直します」
「あっ、一宮君」

 居た堪れなくなって部屋から出ようとしたら、おばさんに呼び止められる。
 深く頭を下げて、出口の扉を開ける。
 たぶん、涙が……無理だ……
 外に向かって一歩踏み出す。

 後ろから何かがかすれる音が、何度も聞こえてくる。

「あなた、どうしたの突然……音鳴ってないけど、指パッチンのつもり?」
「うぅ……」

 まさか! 
 
「寂しいよ……」

 俺はすぐに振り返って、ベッドまで行って……彼女を強く……強く抱きしめた。

「痛いよ……」
「あらあら、どうしたのかしら急に……一宮君」

 おばさんに声を掛けられて慌てて離れようとしたら、細い腕で弱弱しく抱きしめられた。

「寂しかったよ……」
「俺もだ……」

 それから、おばさんに少し席を外してもらって色々と話をした……

 お見舞いにも、何度も通ったなぁ……

 昔のことを思い出してながら歩いていたら、あっという間に家に着いた。
 就職したけど、まだ引っ越してなかったり。
 外から自分の部屋を見ると、灯りがついている。

 スマホから、もうすぐ着くよと彼女にラインを送る。
 俺にもなんだかんだで、春が来たんだよなー。
 部屋の電気が消えたのを確認して、玄関に向かう。

 ゆっくりと鍵を開けて、部屋に。

「ただいま!」
「おかえりなさい。料理にする? お風呂にする? それともわ・た・し?」
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