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しおりを挟む「わあ…!美味しそう!」
いや、嬉しいんだけどな?おっさんの、しかも父親の「わあ…!」はキツくないか?キツイよな?
「そうだ、先にこれ」
そう言って出してきたのは金の指輪だった。
「誕生日おめでとうレオカディラ」
驚いた、驚くよな?俺って今日が誕生日だったの?ていうか誕生日って何日?
「おれって、なん、さい?」
「っっ……24歳だよ」
そんなに年取ってたのか、まだ7年くらいだと思ってたらここに来て16年も経ってたのか…浦島太郎の気持ちがほんの少し分かったよ。ちょっと損した気分になるのはなんでだろう?
ん、指輪がはまるの薬指だ、おお…ぴったりだ。
あ。
食べた。
俺の手料理を。
「ん!美味しい!」
「……………」
良かった…いや、食べてくれたことも嬉しいんだけどさ、お父さんって一応、多分貴族じゃん?だからそんな舌が肥えてる人が俺の家庭料理を食べても美味しいと思うか不安だったんだが……うん、良かった。
美味しい美味しいと言いながら黙々と食べていくお父さんに………いや、いつまで食べてるの?まだ食べるの?確かにどれくらい食べるか分かんなかったから多めには作ったよ?でも絶対に残すだろうと思ってたんだけど………え?おかわり?もうないよ?ある訳ないよね?ていうかそんなひょろひょろの体に入るとも思ってない!
「もう食べないの?」
そんなに食べられると思うな。
「夕食は僕に任せて!」
不安だ……お父さんの料理スキルは分からないけど、不安になる。
だっておっちょこちょいみたいな顔してるんだ。絶対なんかやらかす。不安だ、なにかしないか見張っておこう。
ちょっと早めのお昼を食べた後、家庭菜園の様子を見に行く俺の後ろを着いて回るお父さんはひよこにでもなったのかと勘違いできるほど俺の後を着いてきた。まぁ、来たこともない場所ですることもないんだから着いて回るしかないとは分かるけど、もう少しだけ離れてくれないか?邪魔だ。
菜園を整えて家の掃除を始めるとお父さんもやると言って俺の手から雑巾を奪った、なにかやらかさないか心配して今度は俺がひよこみたいにお父さんの後ろを歩いてたけどそんなことにはならなかった。むしろ器用に色々な箇所を掃除してる。ホコリも取ってるし。
想像するより貴族って器用なんだなぁ…と、最後の方は感心するように見ていた。
「………レオカディラ、一緒に帰らない?」
それは無理だろう。
だって結界守護は俺しかできない。
放り出すことはしたくない、だってそんなことしたら守りが薄くなっちゃうだろ。
「いや?」
そんな風に顔をかしげるな。
可愛らしい仕草だがちょっとキツイぞ。
「しごとがある」
「………もう必要ないって言ったら?」
「……………」
え?俺ってお役御免なの?それならそうと早く言ってよ。
「嘘だよ、ごめん。困らせたい訳じゃないんだ」
なんだ嘘かよ。
ちょっと期待しちゃったじゃん!街に出れるのかなぁ?とか、騎士とかって居たっけ?とか一瞬にして色々考えちゃったよ。どうしてくれんだこの期待。
「立派に仕事してるね、いつも僕たちを守ってくれてありがとう」
また褒められた。
「動いたらお腹減っちゃったね!座ってて、あ!寝ててもいいからね」
嘘だろ?もうお腹減ったの?俺はやっと胃の中に若干空白あるよーくらいなのに?え?大食いなの?痩せの大食いなの?それはそれで助かるけどね、食材腐らせてばっかりだからいいけどね、ちょっと困惑するよ。
「ふふ、おやすみ」
いつからか俺はソファに横になってたみたいで、そんな声と華奢な手が降ってきて寝てしまった。
「レオカディラ、レオ、これ以上寝ちゃうと夜寝れなくなるよ」
いや、俺は一体いくつだよ、子どもじゃあるまいし。なんて思いながら起き上がると人が居て驚いた。
「……………」
そうだった、お父さんが会いに来てくれてたんだった。忘れてたよ。
「ぉは、よ、」
「うん、おはよう、ご飯できてるよ」
「ありが、と」
まだ寝起きでぼーっとしながら椅子に座ったら目の前の光景に驚いて今度こそ目が覚めた。
「食べよう」
なにこの豪華絢爛な食卓。え?なにこれ、お父さん本当に貴族?俺の記憶違いで本当は平民とか?そっちの方がまだ納得するよ。え?こんな食材あったっけ?
「お腹空いてない?」
「たべる」
「うん」
美味しそうな匂いに美味しそうな見た目の料理を躊躇なく口に入れた。
「おい……しい……」
「良かった」
見た目とは違い、味が最悪!なんてのも想像してたけど全然そんなことない。むしろ美味い。めっちゃ美味い。レシピを教えて欲しいと思えるくらいに美味しい。
「おとう、さんって……きぞく?」
「ん?うん、一応、そんな感じかな?」
なんだそのアバウトさ。嫌いじゃないぞ、その適当さ。
「レオカディラが連れて行かれてから勉強したんだ、レオが1人で暮らすって知って…それなら僕も同じ境遇になろうと思って学んでたんだけど…ふふっ、無駄にならなくて良かった」
「……………」
なんだその可愛い話。お父さんじゃなきゃ抱きしめてたぞ。
「雨漏りをやり過ごすのはしんどかったけど…そんな必要はなさそうないい家だね」
分かるぞお父さん。雨漏りって嫌だよな。ただでさえ屋根に当たる雨の音が煩いのにぴちょんぴちょんと鳴るから気になって眠れないんだよ、朝になったらバケツから漏れてるし。雨漏りのせいで家鳴りも酷くなるし。というかそんなボロ家に住んでんのか?お貴族様が?………俺も貴族だったや。いや、でも、俺の場合は快適空間に変えちゃったからきっとお父さんの家より立派だ。
「そんなことよりパパって呼んでくれないの?」
そんな眉をへにゃってしなくても大丈夫だ、声だけで充分寂しそうなのは伝わったから。
………………パパはキツイだろう!パパはないなぁ!俺もう24なんだって!さすがに24でパパはキツイって!
「……もう食べないの?」
当たり前だろ、さっき食べたばかりだぞ。掃除だっていつもよりしてなければさっきまで寝てたんだ、これ以上食べられる訳がない。
「もう一口だけ」
「……」
「ね?あーん」
「ぁ……ぁー」
一口がデカいぞお父さん。
もっそもっそと食べていると満足そうな顔が目に付いたから………
「偉いね」
「…」
もう一口だけ食べた。
「食休みしたらお風呂に入っておいで、片付けは僕がやるから」
「いい、おれも、やる」
「それじゃぁ一緒に片付けよう」
正直、このキッチンで人と並んでなにかをすることがあると思わなかった。
しかも父親と。
あまりにも非現実的な今に嘘だと思ってしまうけれど、そんなことを思うのはわざわざ来てくれているお父さんに失礼だと思い直してはまた嘘だと思う。
この人は俺に……会いたかった…んだよな?わざわざ…俺に会う為だけにここに足を運んでくれた。
ぶっちゃけ記憶もなければ顔も忘れてたけど…お父さんは俺の事を忘れていなかったんだ、しなくてもいい家に住んで俺と同じ境遇を味わってもくれている。
「ありが………とう、きて、くれて」
「……僕が会いたかっただけだよ」
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