異世界の家族は落ちてきた未知の生物(人間)に欲情する

ユミグ

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空から降り落ちてくる品々を見つけた場合、即座に国へ報告し、献上しなければならない。
これは法で厳しく決められており、尚且つ、ソレが生物であった場合、速やかに空気を纏う魔法をかけてあげなければならない。

何故なら落ちてきた生物には耐えられない空気量だからだ。

酷く薄い空気量は、か弱な生物では2-3分で意識が落ち、やがて死んでしまうとの謂れがある。

どの国でも最初に習う魔法は、落ちてきた生物にいつ出会っても対処出来るよう、空気を纏う魔法を学ぶ。

空から降り落ちてくる品々は1年に1つの場合もあれば、50年に1度の場合もある。

降ってくる場所もランダムであり、特定が出来ない為、発見が遅れてしまう事も多々ある。数百年前に落ちたとされる品が最近見つかったという話も珍しくない。

だからこそ、生物が落ち、助けられた。なんて事例は“ない”と言ってもいい。
目の前に落ちてこない限り生物を助ける事が出来ないからだ。

降り落ちる瞬間を捉えられても、何処に落ちたかまでは把握出来ない。いや、把握しようとしていない。

落ちた品々は貴重であり、手に入れた者によっては幸福をもたらす物もあるが、“大切”ではない。あくまで“貴重な品”なのだ。

そして、古くから言い伝えられている事がある。

落ちてきた生物がなんであれ、助かったとしても自死をする可能性が非常に高く、監視しておかなければならないと。

そして、落ちてきた品々はこう呼ばれている。

    《幸福な贈り物》



*********************************



化物が私を魅了し幻覚を見せているのだと思った。



「ぜぇっぜぇっ……けほっ…」



何かがまた空から降り落ちているのは分かっていた。ソレは私が空を飛んでいる目の前を横切るように落ちていたのだから。

皇帝に差し出さなければと…

たまの休暇にも関わらず何故こうも仕事が舞い降りてくるんだと、確かに落ちていく品を目で捉え、ため息を吐き出しながら私も後に続いた。

“落ちている間は決して触れる事叶わぬ”

その文言は、他の世界からやってくる落ちた品が完全に大地へと触れるまでは酷く朧げで、触れた者を何処かへと連れ去ってしまうと言われている。

だから待った。

落ちていく速さには、とうについていけていないが、落ちた先の目星は理解した為、翼を翻し森の中だろう場所へ向かった私の視界には………

「……っ……ぜぇっ……はっ…はっ…」

苦しげな息を吐き、裸体が土に塗れ、爪には土が詰まる事を気にする様子もなく必死に土を掘る……?掴もうとしているのか?

そんな姿だった。

角もなければ翼もない。
先ほど微かに見えた瞳は黒い。
瞳の全てが黒いのでない。
瞳が黒く、回りが白い……そんな不思議な瞳を持つ少女。

鱗も見えず、牙もなさそうな少女は息も絶え絶えだ。

青い肌や黒い肌ではなく、白い肌。

黒の髪は首元まであり、酷くか弱に見える。それもそうだろう。
あるはずの魔力がない。

目を凝らしても、不躾に魔力を探ってもない。

「…………ひゅっ……」

喉を危うげに鳴らした少女にやっと体が動いた私は即座に空気を纏う魔法をかけてはみたが…

「……」

気を失ったか…あるいは…




ゆっくりと近付いて少女の前髪に触れた。

「生きてるな」

白だと思っていたが、少し黄みがかっている肌に、苦しかったのか………涙の跡。

「すまない」

生物だと分かってはいた。

理解はしていたのだが……酷くか弱で儚げな少女はまるで幻のような、泡沫のような雰囲気があり、近付くのさえ躊躇ってしまったのだ。
早く助けなければならないと……分かってはいたが……

「ああ……なんて弱さだ」

抱き上げれば軽く、“本質”さえない。

私達は化物だ。

人の姿を模してはいるが、本質は醜く悪臭を漂わせ、ひしゃげた肉体を持つ。

遠い国では、この少女のように“本質”などなく、人としての姿しかないと聞いた事はある。

そういう人間達に憧れて人の姿を取るようになったと…そういう歴史も残されている私達は人のように生きて誤魔化しているのだ。

己の心も誤魔化し生き続けている。

「どうだろうか?」

皇帝に献上するなど、そんな気持ちはとうに消え失せた。

「私の娘にならないか?」

体を震わせている少女には空気を纏う魔法以外にも必要そうに見える。

「✼✼……✼✼」
「ああ…言語か」

初めての言葉を聞き取ってやれなかったと悔やみながら言語機能の魔法をかけると…

「さむ……」
「さむ?」

さむ……さむ……寒い……のか?

暖める魔法ではなく何故か私の着ている服を着せてしまう行動はきっと…

「娘には手ずからがいい、どうだ?」

反応はないが体の震えが止まった少女を既に娘として接し、声を掛ける。

「帰ろうか」

帰ろう。

私達の家に。
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