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7.『犬木みずき』
しおりを挟む少し昔話をしよう。
『犬木みずき』とは中学の頃、ずっと揉めていたケンカ相手だった。
身長はワタシと同じくらいで茶色のショートヘアで男嫌い。
男嫌いというより、異性としての興味が全く無い。
じゃあ女好きかといわれると、そうでも無い。
ある一人の人物、みずきの幼なじみの『夏目ひまわり』という女しか興味が無いという話を聞いた事がある。
それ以外にもみずきはよく『檀特かんな』という不良ともつるんでいた。
この『かんな』という女もよくケンカをしていた相手なんだけど・・・今回は割愛する。
みずきとはどういうきっかけでかは覚えていないが、目が合っては毎度殴り合いのケンカ。
そんなみずきもワタシと同じ不良であったが、その時のワタシはまだ『みずきがヤクザの孫娘』だってことは知らなかった。
ワタシとみずきは恒例行事かのように学校の体育館裏でケンカをしていた。
ワタシ達でも、ケンカには暗黙のルールがあった。
学校でのケンカではチャイムが鳴るまで立っていた方の勝ち。
学校外でのケンカでは通報されるまで立っていた方の勝ち。通報されたら引き分け。
ケンカを繰り返していくうちに、いつの間にかそういう暗黙のルールが出来上がっていた。
これまでの戦績は13勝13敗7引き分け。
同じ相手と30回以上も殴り合っている。
「お前らよく飽きないなぁ」と当時の担任の先生に言われたのを覚えている。
しかし、32戦目となった中学二年から三年にあがる頃のある日。
いつもの如く体育館裏で殴り合うワタシ達に一声が入る。
「みずきぃ!!」
みずきの名前を叫んだのは、みずきの幼なじみの『夏目ひまわり』だった。
ひまわりの声が聞こえた瞬間、みずきはピタッと動きを止め、声のする方に振り返った。
「ひまちゃん!?ここに来ちゃ駄目って言ったでしょ!」
ケンカしている最中のワタシをそっちのけに、みずきはひまわりの元へ走り出した。
「・・・え!?」
ひまわりからなにか事情を聞いたのか、みずきは血相を変えてどこかへ走り出した。
ワタシと仲間達、みずきの連れのかんなはその場に立ち尽くしていた。
「なんだアイツ・・・どこ行きやがった?」
「知るか馬鹿が。・・・今回は御開きだな。じゃあな。」
かんなはそう言ってスタスタとこの場を去った。
それから後に仲間から聞いた話によると、どうやらみずきの両親が亡くなったらしい。
そしてこの日を境に、みずきとのケンカは無くなった。
正確には、みずきはつるんでいた不良達との関係を自ら切った。
ワタシも『親が死んだから無気力になるのも無理ないか』と頭が悪いながらそう感じていた。
それにちょうどその頃、他のグループとのいざこざがあったので、みずきに構っている暇は無かった。
それから数年が経った頃、ワタシは半グレグループのリーダーとなり、色々なことをした。
喧嘩代行、窃盗、恐喝、斡旋・・・
ただ、みずきとの最後のケンカの不完全燃焼感はワタシの心のどこかでしこりとなっていた。
そのしこりは次第に大きくなり、ワタシはなにをしても全く満たされなくなっていった。
そしてワタシはついに、グループを使ってみずきを襲撃した。
しかしこの時、ワタシはみずきの逆鱗に触れたらしい。
みずきとかんなはワタシ達のグループに乗り込んで壊滅まで追い込まれた。
そして最後には身内のヤクザまで出てくる始末。
そこで初めて、みずきは『ヤクザの孫娘』であることを知った。
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