女神のつくった世界の片隅で従魔とゆるゆる生きていきます

みやも

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第2章 夏

◆新商品「インスタントスープ」と「フルグラ」試食会

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「新商品、お試しいかがですか~?」

朝の穏やかな空気に乗せて声をかけると、カウンターに続々といつもの顔ぶれが現れた。

「是非、お願いするよ」
「私も~!」「姉ちゃん、今度は何作ったの?」「試食ってことは、タダだよな!?」

アンジーさんと、疾風ハンターのみんながわいわいと集まってくる。その光景はまるで、町内会の福引のようで、見ているだけで頬がゆるむ。

(あ、そうだ!今度“福引”したい!!)

思考が余計な方向に逸れそうになるのを軌道修正して、まずは、細かくカットした「携帯用グラノーラスティック」から。

ザク、ザクッ。
心地よい咀嚼音がいくつも重なり、店の空気が一気に活気づく。

「これは……少々硬いが、むしろそれがいい。ほんのり甘くて美味しいな」

アンジーさんが爽やかに笑ってくれて、私もつられて嬉しくなる。

「実はこれ、“完全栄養食”なんですよ?」

「……完全、栄養……食?」

「はいっ。体に必要な栄養をギュッと詰めた、冒険者向きの保存食です」

にっこり返すと、アンジーさんは少し驚いたように目を見開いた。

「冒険者さんって、遠征中はどうしても食事が偏りがちじゃないですか?体調崩したりしません?」

「するする!」
「この前、熱出した~」
「俺も腹壊したな~」
「それはあんたが生水飲んだからでしょ、自業自得!」

疾風ハンターのみんなが口々に言い合いながら、にぎやかに話が弾んでいく。

「私も、新人の頃はよく体調を崩していたな……」と、アンジーさんが遠くを見る目でつぶやくと、足元のクィールまで「ぐるにゃぁ~」と同調。きっと、いろいろ苦労してきたんだろうな…。

「水が合わないとか、寝不足とか、いろんな要因はあると思うんですけど……“粗末な食事”だと、そういう環境の影響を受けやすくなるんですよね。体って、食べたものでできてるので」

ぽかんとするみんな。まぁ、無理もない。栄養学なんて概念、こっちの世界じゃ知られていないし、「食事=お腹を満たす行為」という認識が一般的。
おまけに、希少で高価なものほど体にいいと信じられている世界。そう言うところは地球の歴史と一緒なのよね。
大昔の中国なんて「不老長寿の霊薬」として「水銀」を飲んでいたくらいだし…。
さすがにこっちの世界で金属を飲む話は聞いたことはないけれど、希少で高価ならば飲んでいてもおかしくはなさそう。

だから急に「栄養」なんて言われても、概念を理解するのはとっても難しいし、ポーションみたいに摂取すればすぐに実感できる、という代物でもない。
意味がわからなくて当然よね。

けどまぁ、「栄養」がわからなくても、「いつもの遠征食にフルグラバーを足せばちょっとは体がラクになるよ」っていうくらいは伝わって欲しいな…と、そんな風に思っていたら――

「多分、ノエルさんの言っていることは本当だと思います。私、ここに来てから食べるものが変わったんですが、肌や髪にハリが出て、風邪も引かなくなりましたよ。別に昔がひどく飢えてたってわけじゃないけれど、それでも体調が良くなったんです。だから、やっぱり“食べ物”って大事なんだと思います」

と、ケイトさんがひとこと。
ナイスアシスト過ぎる!!!

その言葉が効いたのか、「とりあえず試してみるか」「保存がきくならありがたい」「えっ、バフもつくの!?」と、次々に手が伸びていく。

ちなみに今回は“お試し価格”。つまり半値以下の超格安。
疾風ハンターのみんなは「「「やったー!!」」」と大喜び。

(甘い物なんて滅多に食べられないもんね、たくさん食べて強い体を作るんだよ)

さて、お次は本命――「インスタントスープ」改め「即席スープ」の出番。
私は麻袋からカラカラに乾いた具をすくい、木のカップにざらざらと入れる。そこへ、湯気の立つお湯を注ぐと――
ふわりと、茸とスープの優しい香りが店中に広がった。

「うまそうな匂い~」とリーダーのエド君がクンクンと鼻を動かしながら目を細める。
他のみんなも「うんうん」と同調しながらうっとりしている。
尻尾を振って待つ犬のような疾風の子達に「待て!」をして数分。
具材がふんわりと花開いたのを見計らって、そっとスープを手渡す。

「すっげぇ!本当にスープだ!」
「これなら浴びるほど飲みたい!」
「嘘でしょ!?お湯だけ!?」
「遠征中にこれ飲めたら最高だなぁ……」
「………おいしい(ボソッ)」

と、こちらも上々の反応!
そりゃそうだよね。実感のない栄養の話より、あったかいスープ一杯のほうが、ずっと心と体に染みるもの。
アンジーさんも驚いたようにひと口啜り「まるで魔法のようだ」と目を丸くしていた。

その時――

カランコロン、カラン。

店のドアベルが鳴って、私たちがいっせいにそちらを向くと……
そこには、冒険者とは到底思えない、ちょっと場違いな雰囲気のおじさんが立っていた。


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