女神のつくった世界の片隅で従魔とゆるゆる生きていきます

みやも

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第2章 夏

◆揚げたてはみんなのご馳走:串カツ編

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「今日、串カツ!?!?ヒャッハーー」

帰ってくるなりテーブルの串カツセットを見てヒャッハーしているのはシヴァさん。
その後ろでは無口なまま体中から「~♪」のオーラが出まくっているジェイさんがいた。

「やっと帰って来たか!ほれ、さっさと体の汚れを落として来い。早うはじめるぞい」
両肩に大きな樽酒を乗せてニヤリと笑うバッカスさん。

はい。今日も大変高価な鉱石でキリッとコクのある大人の麦炭酸ジュースを交換させていただきました。
ありがとうございます。

ガチャ丸としーちゃんは串カツ初めてだね。
キラキラした瞳で卓上の串カツセットを見つめているガチャ丸。

「ガチャ丸は自分でやってみる?」
「ギャギャ」元気よく手を挙げる。

うちの子かわいい~とか思ってたら、リアムさんが「遅れてすまない」と申し訳なさそうに現れた。
その顔からは哀愁が漂っている。

(やっぱり迷惑かけちゃったのね。その分、今日はたくさん食べて行って欲しいな。満足してくれるといいけど…)

バッカスさんお手製の串カツ用揚げ小鍋は全部で三つ。
銅?ちょっと違うような?多分、なんかお高いやつな気がする。

そして、その揚げ鍋を乗せる簡易コンロはIH卓上コンロそっくり。よくこんなの売ってたな~と思ったら、案の定、既製品を改造して小型化したんだとか。
通りで使いやすそうな見慣れた形になってるわけだ!

ブウォンと偽IH卓上コンロの魔法陣が赤熱する。

「ここが電源、ここのボタンで温度調節じゃ。シンプルで使いやすかろう?」

「おぉ~(パチパチパチ)」
ドヤ顔のバッカスさんに賞賛を贈る。だって、サイズも使い方もすごく馴染みがあって使いやすいもん。

「もう、いいだろ。ガチャ丸達もお待ちかねだ。早く揚げよーぜ」
待ちきれなかったシヴァさんの一言が、串揚げの合図となった。

「では、皆、ジョッキは持ったか?」

「乾杯!」

「「「かんぱ~い」」」「…乾杯(小声)」

ゴッゴッゴッ。各所から「プハア~」という声と共にジュワワァァ~と串を油へ投入した音がする。
三つの揚げ鍋が奏でるその音はさながら交響曲のようで…。

ジュワワァァ~
ジュワワァァ~
ジュワワァァ~

はぁ~胃袋のホールが開演を今か今かと待ってるよ!!

各揚げ鍋の配置は、私とガチャ丸達、バッカスさんとリアムさん、シヴァさんとジェイさんって感じになってる。
リアムさんはバッカスさんの手ほどきを受けながら恐る恐る串を揚げていて―

「いいか、リアム。そこのソースは一度だけじゃぞ。どうしてもの時は…」

と、世話を焼きながらもしっかりと二杯目のジョッキビールを煽っていて、そんなバッカスさんの串カツ指導を真剣な面持ちで聞いているリアムさんについ笑みがこぼれてしまった。

最初の一口目はリアムさん。
みんなが「一番串はリアムだ」って言って譲らないから、仕方なくリアムさんは、皆に見つめられながら揚げ鍋からフツフツと油の気泡が弾ける“牛串”を取り出し、慎重にソースに潜らせる。

(これ、絶対、みんな初めて串カツ食べる人の反応見たいだけだわ)

そして、まだ湯気の立つ衣に怯みながらも恐る恐るひとくち―

「……っ!?!?」

目を大きく見開いて、周囲の視線を忘れたかのように二口目を頬張った。
ハフハフと熱さを逃がしながら咀嚼し、ゴクリと嚥下、そして―

「ノエルの故郷の食の神は“串”に宿るのか!?」と、驚きの表情で残った串を見つめている。

シヴァさんはビールを噴き出しそうになるのを堪えているし、その横ではバッカスさんが満足気に頷いていて、シヴァさんの正面に座るジェイさんは肩が震えていたのでアウト。

でも、とうとう耐え切れずテーブルを叩いて笑い出しちゃったシヴァさん。
「リアム、お前最高だな!!“神が串に宿る”、そんなこと言われたら俺の故郷の人間は間違いなく喜ぶぜ!」と絶賛した。

褒められたリアムさんは頬を赤らめながらも、海老串をちゃっかり揚げ鍋へ投入していたよ。もう串カツの虜だね。

その間、私の方ではガチャ丸が、もちろんジャガイモ串を投入していて、どうやらこちらは黄金色になるまで引き上げるのをグッと我慢する気でいるらしい。一応、蒸かし芋の状態で串にしているからジャガイモに火は通っているんだけど、芋愛の強いガチャ丸には揚げ上がりへのこだわりがあるようだ。

しーちゃんは安定のホタテ串。
ドボンと串カツソースにつけたホタテを串から外してお皿に入れると、アツアツをものともせずあっという間に食べてしまった。ほんと、この子はホタテ好きよね。
次は何がいい?わかったわ、サーペントね。ジュワワァァ~

「おーし、俺のも揚がったぜ」
とニッコニコでオーク串をソースにダイブさせるシヴァさん。
そして、豪快に口に入れると「のぉぉおおー」地響きのような声を漏らした。

続けて「うんめぇーーーー!え?なにこれ?串カツってこんな幸せだったっけ?マジうめぇ!!」
と瞳を輝かせ、続けてゴッゴッゴッと喉を鳴らしてビールを煽り、数年ぶりの味覚に体を震わせていた。

そんなに喜んでくれたらこっちまで嬉しくなっちゃうよ。

発起人のバッカスさんも「うるさいやつじゃな」なんて言ってるけど、めっちゃ嬉しそう。
そんな彼は、さすが酒豪。初手、紅ショウガである。
「この酸味とピリッとした辛み、サクサクの衣が恐ろしく酒に合うわい」と、感想も堂に入っている。

ジェイさんは黙々と数本まとめてアスパラ串を揚げていて―

「アスパラ好きなんですね」と声をかけると

「…味が、優しい」

いつもと微妙に違う、どこか弾んだような声で、思わずほっこりしてしまった。

(ジェイさんも満足してくれてるみたい)

そして――

「ほら、ノエルも食えよ。お前が一番大変だったんだからさ」と、シヴァさんがそっと皿を差し出してくれた。
そこには、ソラクラム、ツオロ、レンコン、サーペントと熱々の揚げたて串が乗っていた。

「ありがとう♪」

フツフツと油の気泡が残るソラクラムをジュッとソースの中に入れる。
クニクニとした食感に溢れる磯の風味。すごく贅沢なお出汁とソースの複雑な風味が相まって、口の中で潮風が広がったかと思えば、次の瞬間、衣の香ばしさが全てをふわりと包み込み、それはまるで、舌が初めて出会う味。けれど、全然嫌じゃない。むしろもっと欲しくなる喜びの味覚だった。

─でも……
おいしいのはきっと、それだけじゃない。

目を丸くしているリアムさんの表情も、子供みたいにはしゃぎながら食べてるシヴァさんも、相変わらず無口だけど口角が上がりっぱなしなジェイさんも、豪快に串にかぶりつくバッカスさんも、もちろんガチャ丸達も、みんなで一緒に味わうからこそ、こんなにも心に残る。ソースと一緒に心にしみる。
串カツは、ただのごちそうじゃない。笑顔でできた、最高のごちそうだ!!
正に“串に宿る神”の御業。

「ノエル~これでもうひと樽頼めるかの?」
「はいはーい」

「……ケチャップ…欲しい」
「はいはーい」

「塩も頼むわ」
「はいはーい」

「ギャギャギャギャ」
「はいはーい」

あれ?私、全然食べれてなくない!?!?
でも、ま、いっか。串はまだまだたくさんあるし、夜もまだこれからだもん。

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