月夜に散る

朔弥

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 甘い誘いが鬼柳の耳をくすぐる。だが、千秋の頬に指で触れた鬼柳は悲しげな表情を浮べた。


 また···自分の手で愛しい者の命を摘んでしまう

 愛せば、愛するほど···


 苦しそうに眉をひそめる鬼柳に、千秋は自分の頬に触れている彼の手に自分の手を重ねた。
「鬼柳の気持ちを知ってるのに···ごめん···」
 愛しい人の命を自らの手で奪う事がどんなに辛く残酷な事か···。分かっていながら、シテ欲しいと願う自分は鬼と人から恐れられる彼より酷いのかもしれない。
「千秋がそれを望むのなら···俺は···お前が望むまま愛するだけだ···」
 鬼柳はいつもの温かな眼差しを千秋に向けた。
「千秋···」
 優しく名を囁き、鬼柳は着物の前をはだけさせた隙間から覗かせる雄を千秋の後孔に充てがった。
 躰を気遣うようにゆっくりと鬼柳は自身を千秋の中へと埋めていく。
「んうっ···あ···はぁ···あっ、っつ···んん···」
 内壁を押し広げながら入り込んでくる淫らな感覚に、千秋の躰は快楽に打ち震えた。
 奥まで咥え込んだ千秋は、中いっぱいに感じる鬼柳の存在を確かめるように内壁で包み込む。
「き···りゅ·····鬼柳···」
 何度も名を呼びながら千秋は鬼柳に手を伸ばし、しがみついた。
 その呼びかけに応えるように、鬼柳は熱い昂りを千秋の最奥へ何度も突き入れた。
「あっ···ああっ···鬼りゅ···ぁっ···ん···鬼柳···」
 突かれる度に躰の奥から湧き上がる快楽に千秋はしどけなく乱れ、微熱の混じる吐息は甘やかな色合いをみせていた。はだけた浴衣から覗く肌は仄かに薄紅色に染まり、淫靡な色気が鬼柳の欲情をそそる。
「千秋···」
 名を囁きながら鬼柳はより一層、激しく腰を打ちつけた。
「ぁあっ···あっ、んんっ···鬼柳···っ···きりゅぅ···愛して···もっと···鬼柳····んっ···ああっ ──··」
 深々と貫かれ、千秋はビクビクと震えながら白濁の液をほとばしらせた。それと同時に内壁が鬼柳の陰茎を締めつける。
「ち···あき···っ···千秋······っつ」
 柔らかな内壁が絡みつくように動き、その気持ち良さに欲望が絶頂へと導かれていき、こらえきれず千秋の中へと愛液を注ぎ込んだ。
「んっ···き···りゅう···」
 熱い想いを受けとめながら、千秋の唇が言葉を形どった。


 ─── 鬼柳···ごめん···ね···
 





「鬼柳···月が見たい···」
 ぐったりと生気のない表情で腕の中で抱かれていた千秋がぽつりと呟いた。だが、鬼柳は駄目だと首を横に振り、
「風邪をひく」
 と、縁側へ出る事を許さなかった。
 いつもなら諦めて鬼柳の腕の中に大人しく抱かれている千秋だが、今日はどうしてももう一度あの景色が見たいと鬼柳に食い下がった。
「俺が好きな景色を···鬼柳と一緒に見たいから···」
 お願い···と、今にも泣きそうな瞳で見つめられ、鬼柳は仕方ない···と溜め息をいた。
 鬼柳は浴衣の上に羽織りを着せると、千秋を抱え上げた。そして、千秋がいつも眺めている縁側へと向かう。
「ここでいいか?」
 鬼柳は千秋を横に抱いたまま座った。
 月の青白い光が照らす庭を眺めながら、千秋は頷く。
「俺が好きな景色···覚えておいて···」
 自分がいなくなっても、こうして好きだった景色を眺め思い出して欲しい。
 一緒にここで同じ景色を眺めた事を ──···

「ああ···」
 鬼柳は庭園を眺めながら頷いた。その声に嬉しそうに微笑むと千秋はゆっくりと目を閉じ、鬼柳の胸に寄りかかる。
「鬼柳···」
「ゆっくり眠るがいい···」
 穏やかな表情で目を閉じている千秋を優しい眼差しで鬼柳は見つめた。



 ──── どこにいようと


 必ず探し出してお前を迎えに行こう···





────────────────────



 読んで下さりありがとうございました!

 悲しく繰り返される鬼と人の恋の話しを書いてみました。
 切ない話しを書くのは初めてで、鬼柳の苦しい心情が少しでも伝わる事が出来たら嬉しいです。

 今回、鬼柳が鬼···という事で和装の二人を書きました。着物を乱しながら···って色気があって好きなんですが、文章で書くと難しいですね(>_<)
 


         (2022.03.24)
 
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