月夜に散る

朔弥

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 首筋に傷をつけたその後は、鬼柳は優しく肌に口づけ千秋の躰を大切に扱った。
 首元に顔を埋めたまま、鬼柳は浴衣の襟の隙間から手を忍ばせ千秋の胸へと指を伸ばした。胸の周りを撫ぜ回すように指で優しく触れていると、千秋の胸の突起がピンと立ち早く触れて欲しいと主張し始める。
「···ぁ···鬼柳···さわ···って···」
 むず痒い刺激に焦れた千秋は艶っぽい声で誘った。だが、鬼柳はいつも千秋の肌の感触をゆっくり堪能する。この肌を忘れたくないとでもいうように···。
「んんっ···ねえ···お願い···」
 じわじわとくすぶるうずきに千秋はを涙で潤ませた。
「俺はもっと千秋の肌を楽しみたいんだがな···」
 少し残念そうな表情かおをしながら、ようやく鬼柳は千秋の浴衣の前をはだけけさせた。腰の帯は解かず、少し着崩れた浴衣の褄下つましたからは千秋の太腿が覗き、薄闇の中、月の光だけが千秋の白い肌を凄艶せいえんに浮かび上がらせる。

 もっと見ていたい···

 そんな自身の気持ちを抑え、鬼柳は千秋の胸に唇を寄せた。口づけながら、舌先で胸の尖りを転がすように舐めていく。
 胸を愛撫しながら、右手は太腿を撫ぜていった。何度か太腿の外側を撫ぜた後、その手は次第に内側へと向かっていき、浴衣の下に下着をつけていない千秋の半身に簡単に辿り着く。
 もどかしい刺激でも千秋の半身は熱を帯び始めており、絡みついた鬼柳の指が気持ちの良い快楽を生み、背を仰け反らせた。
「──っつ···はぁ··はぁ···ん···うっ···」
 吐息に淫靡な香りを混ぜながら、千秋は緩々ゆるゆると動かされる指の動きに合わせ、無意識に腰をくねらせた。
 淫らな熱が下肢に集まってくる。
「···あっ···んっ、はぁ···ぁっ···き··りゅ···もっと···シテ···」
 優しい愛撫だけではイけない···と、千秋は色情を含んだ眼差しを鬼柳に向けた。
 胸を愛撫していた鬼柳は、充血した突起に軽く歯を立てた。ビクッと千秋の躰が震える。なだめるように優しく舌で舐めた後、唇を離した。そして、躰を下へずらすと千秋の膝の裏に手を当て、軽く膝を立てさせると、左右に脚を開かせた。乱れた浴衣から先走りの液を滲ませる陰茎が鬼柳の前に曝される。
 鬼柳は舌先を先端の破れ目に這わせ、じわじわと染み出てくる液を舐め取っていった。だが、舐め取る舌の動きは敏感な先端には刺激が強く、つま先に力が入り下肢が震える。
「あっ、あっ···だめっ···それ···やだ···イっちゃう···やだ···」
 かぶりを振り、込み上げる快楽を懸命に耐える。
 鬼柳はそんな千秋の懇願に耳を傾ける事はせず、先だけ口に含み舌で刺激し続け、陰茎に絡めた指をバラバラに動かしながら千秋の快楽を更に高めていった。
「やっ···ぁあっ···あっ、あっ···やだっ···んんっ···だ···め···イっ···ちゃう···イく···ああっ ─── !」
 喉を仰け反らせ、鬼柳の口の中に欲望をほとばしらせた。

 はぁ···はぁ···はぁ···

 躰の力が抜け、荒々しく呼吸を繰り返す千秋の腰を抱え、躰を反転させた。上半身は布団に沈ませたまま膝を曲げさせると、腰を突き出す格好となった千秋の浴衣の裾を託しあげ臀部を曝す。双丘に手をかけ、左右に広げ硬く閉じた後孔に、唾液を舌に乗せて差し入れた。
「ああっ···ん···あっ···ぁ···っつ···」
 丁寧にひだを舌で広げられる感触が生々しく感じられ、羞恥に顔を布団に埋めた。
 千秋の躰が傷つかないようにと、鬼柳はいつも丹念に後孔を舌を使って解してくれるのだが、この時間だけはいつまでも慣れる事はなかった。
 舌が入り込む動きに、千秋の腰が悩ましげに揺れる。入口付近だけを執拗に愛撫され、躰の奥に淫らな欲情が生まれ始めていた。
「もう···いいから···んっ···っつ···」
 息を乱しながら千秋は顔を後ろへ向け、鬼柳へと手を伸ばした。鬼柳はその手の動きを難なく止める。
「大人しくしていろ」
 鬼柳は千秋の手の動きを封じたまま、舌を柔らかくなってきた後孔の奥深くへと突き入れた。
「んんっ ───··あっ、ぁ···あっ···」
 細い腰が物欲しげにしなり、淫らな喘ぎ声が零れる。
 ちゅぷっ···くちゅ···と濡れた音がゾクゾクと千秋の躰の中の淫らな気持ちを高揚させた。
「あっ···あっ···お願い···もう焦らさないで···っつ···んうっ···」
 おかしくなりそうだ、と千秋は涙を滲ませ懇願した。
「泣くな···お前を傷つけたくないだけだ···」
 漸く千秋から離れた鬼柳は涙に濡れた目尻を指で拭い、優しく口づけた。
「鬼柳···」
 千秋は求めるように彼の名を口にしながら、躰の向きを抱き合うように変えると両手を伸ばし、彼の背にまわした。
「もう···充分だから···鬼柳···挿れて···」
 耳元で欲情に浮かされた声で囁いた。



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