2 / 7
告白
2
しおりを挟む
理科準備室のドアをノックしようとした京也は、ドアに手が当たる手前で動きを止めた。
放課後のこの時間は備品管理や翌日の授業の準備をする為に理科準備室を使用する教員の中でも一番歳の若い古賀が一人でいる事が多い。その為、篤史の言っていた色々なタイプの奴が古賀に告白をしに来る時間帯にもなっていた。
ドア越しに聞こえてくる声がまさにその最中だった為、京也はノックをする事を躊躇った。
『先生···好きなんです···僕、本当に···』
緊張しているのか、微かに震えながら伝える声が聞こえた。
流石に勇気を出して告白をしている最中にドアをノックするほど無粋ではない。京也はドアの横に背を預け成り行きをそっと見守る事にした。
『悪いが、生徒に手ぇ出すほど困ってないんでね···恋愛ごっこなら他をあたれ』
突き放すような冷たい言葉。
毎回、断る時に古賀が言い放つ台詞だが、告白をしていない京也が聞いても胸に突き刺さる。
京也は溜め息を吐きながら廊下の窓の向こうに広がる空を見上げた。
はっきりと生徒と付き合うつもりはないと聞いた後に想いを伝えれるほど自分の神経は図太くない。
今日も先生の近くにいられるだけでいいか···。
そんなふうにぼんやりと考えていると、ドアが勢いよく開けられ中にいた生徒が飛び出してきた。一瞬、彼と視線が交わる。その瞳には涙が滲んでいた。
ドアの外に人がいた事に驚いた顔をした彼だが、直ぐに顔を背け走り去っていく。
「相変わらず冷たい言い方···」
ドアを軽くノックしながら部屋の中へと入った。
授業中は人当たりの良い口調で話しているのに、放課後になった途端に口調も表情も険しくなる。自身で生徒を寄せつけない為にそんな態度をとっているのだろうが、綺麗な顔立ちで冷めた雰囲気を纏っても色気が増しているだけだと感じるのは自分だけではない筈だ、と京也は白衣を羽織り備品の棚を確認している古賀の横顔を眺めた。
そんな京也の視線を感じた古賀は視線だけをチラリと向けた。
「さっさと諦められるようにしてやった方が親切だろうが。俺を好きになったなんて、ただの幻想だ。卒業して広い世界を見れば高校での事なんて青春の思い出くらいにしか思わねぇよ」
その言葉は自分にも向けられているように聞こえる。古賀は自分がここへ来る理由に気づいているのだろう。
「···そんなの···分かんねぇじゃん···」
自分の気持ちを否定されたようで、京也は悔しそうに小さく絞り出すように呟くと、古賀の右腕を掴み自分の方へと向かせた。
自分の気持ちを押し殺す事が出来ず、溢れ出すのを止められない。
「ずっと···一年の時から先生を見てた···その気持ちが本物じゃないなんて···あんたが決める事じゃねえだろ!」
「離せ···ガキの恋愛ごっこに付き合うつもりはないと言ってるだろ」
冷ややかな視線が注がれる。
「だったら、そのガキの手ぇ振りほどいてみろよ」
左肩を掴み、後ろの棚に押さえつけた。
「─── っ」
涼やかな表情だった古賀の眉が僅かに歪む。
「···なあ、先生。俺の気持ち···気づいてたんだろ?何で他の奴みたいにさっさと追い払わなかったんだよ···」
「······」
古賀は答えなかった。京也と視線を合わせず硬い表情のまま唇をきつく噤んだ。
放課後のこの時間は備品管理や翌日の授業の準備をする為に理科準備室を使用する教員の中でも一番歳の若い古賀が一人でいる事が多い。その為、篤史の言っていた色々なタイプの奴が古賀に告白をしに来る時間帯にもなっていた。
ドア越しに聞こえてくる声がまさにその最中だった為、京也はノックをする事を躊躇った。
『先生···好きなんです···僕、本当に···』
緊張しているのか、微かに震えながら伝える声が聞こえた。
流石に勇気を出して告白をしている最中にドアをノックするほど無粋ではない。京也はドアの横に背を預け成り行きをそっと見守る事にした。
『悪いが、生徒に手ぇ出すほど困ってないんでね···恋愛ごっこなら他をあたれ』
突き放すような冷たい言葉。
毎回、断る時に古賀が言い放つ台詞だが、告白をしていない京也が聞いても胸に突き刺さる。
京也は溜め息を吐きながら廊下の窓の向こうに広がる空を見上げた。
はっきりと生徒と付き合うつもりはないと聞いた後に想いを伝えれるほど自分の神経は図太くない。
今日も先生の近くにいられるだけでいいか···。
そんなふうにぼんやりと考えていると、ドアが勢いよく開けられ中にいた生徒が飛び出してきた。一瞬、彼と視線が交わる。その瞳には涙が滲んでいた。
ドアの外に人がいた事に驚いた顔をした彼だが、直ぐに顔を背け走り去っていく。
「相変わらず冷たい言い方···」
ドアを軽くノックしながら部屋の中へと入った。
授業中は人当たりの良い口調で話しているのに、放課後になった途端に口調も表情も険しくなる。自身で生徒を寄せつけない為にそんな態度をとっているのだろうが、綺麗な顔立ちで冷めた雰囲気を纏っても色気が増しているだけだと感じるのは自分だけではない筈だ、と京也は白衣を羽織り備品の棚を確認している古賀の横顔を眺めた。
そんな京也の視線を感じた古賀は視線だけをチラリと向けた。
「さっさと諦められるようにしてやった方が親切だろうが。俺を好きになったなんて、ただの幻想だ。卒業して広い世界を見れば高校での事なんて青春の思い出くらいにしか思わねぇよ」
その言葉は自分にも向けられているように聞こえる。古賀は自分がここへ来る理由に気づいているのだろう。
「···そんなの···分かんねぇじゃん···」
自分の気持ちを否定されたようで、京也は悔しそうに小さく絞り出すように呟くと、古賀の右腕を掴み自分の方へと向かせた。
自分の気持ちを押し殺す事が出来ず、溢れ出すのを止められない。
「ずっと···一年の時から先生を見てた···その気持ちが本物じゃないなんて···あんたが決める事じゃねえだろ!」
「離せ···ガキの恋愛ごっこに付き合うつもりはないと言ってるだろ」
冷ややかな視線が注がれる。
「だったら、そのガキの手ぇ振りほどいてみろよ」
左肩を掴み、後ろの棚に押さえつけた。
「─── っ」
涼やかな表情だった古賀の眉が僅かに歪む。
「···なあ、先生。俺の気持ち···気づいてたんだろ?何で他の奴みたいにさっさと追い払わなかったんだよ···」
「······」
古賀は答えなかった。京也と視線を合わせず硬い表情のまま唇をきつく噤んだ。
0
あなたにおすすめの小説
消えることのない残像
万里
BL
最愛の兄・大貴の結婚式。高校生の志貴は、兄への想いが「家族愛」ではなく「恋」であったと、失恋と同時に自覚する。血の繋がりという境界線、そして「弟」という役割に縛られ、志貴は想いを封印して祝福の仮面を被る。
しかし数年後、大貴の息子が成長し、かつての兄と瓜二つの姿となったとき、止まっていた志貴の時間は歪な形で動き出す。
志貴(しき):兄・大貴に長年片思いしているが、告げることなく距離を置いていた。
大貴(だいき):志貴の兄。10歳年上。既婚者で律樹の父。無自覚に人を惹きつける性格。志貴の想いには気づいていない。
律樹(りつき):大貴の息子。明るく素直だが、志貴に対して複雑な感情を抱く。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる