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ナタの視線の先には、頭を垂れるれるイナホモドキ……じゃなかったソール・ソラーレ。
少し下がった後ろでマールスもまた、片膝をつきその頭を垂れていた。
先ほどとは打って変わった態度と口調にナタは半歩下がる。あと何、女神の御子って。
しかもBGMは雷に撃ち抜かれた獣人たちのうめき声。嫌な状況だなここ。
「……あの、そーゆーのやめて欲しいです……」
と、顔を顰めたまま告げるナタに対し「ナタ様の仰る通りに。」と恭しいセリフと共にようやくソール達はその頭をあげた。
恐らく、というか確実に面倒な勘違いをされている。ナタは面倒事の予感に頭が痛くなってきた。
ナタの予感の通り、ソール達はナタの事を女神の子供と思い込んでいた。森を燃やされ怒ったこともナタは錬金術の素材が失われることに怒っていたのだが、ソール達は母の森を燃やされたことに怒ったと解釈したのだ。
「ところで、ナタ様はこれからどうするご予定で?」
ニッコリと音が付きそうな笑顔を見せて来るソールに、ナタの背にぞわりと嫌な物が走る。
(……これは逃げた方がいいか……?)
ナタの目的は錬金術を心ゆくまで楽しむこと。だがソールにこれ以上関わればお国の厄介ごとに巻き込まれる気がしてならない。
(とはいえ、俺は生産職だから騎士のマールスに逃げ足で勝てる気がしないし……さて、どうしようか……)
ゲーム機能で何か良いものがあっただろうか、と視界の四隅にあるゲーム画面に目を滑らせていると、
(あ、これ良さそう。)
アイテム、スキル設定、衣装箱と操作ボタンをスクロールしていった先、『マイルーム』と書かれたボタンが目に入った。
そう、実はゲームのステラートにはマイルームとして箱庭ゲーム機能も実装されていた。クエストやイベントで家具を手に入れたり、素材を集めれば自分で家具を作ったりと、かなり自由度高くカスタムできる。そのため中にはインテリアを集めるためにクエストに奔走するプレイヤーがいた位だ。
ただナタは錬金術にしか興味なかったのでこの機能をすっかり忘れていた。別に錬金術はどこででもできるのでわざわざマイルームに行かなくても素材を手に入れればその場で調合していたので。
つまり、ナタは森で野宿する必要はなかったということだ。もっと早くに思い出していればこんな面倒ごとに関わらなくてなくて済んだのに、と内心悪態をつきながら
「帰る。」
と、ソール達にその一言だけを告げて、『マイルーム』のボタンを押した。
僅かに見開かれたソール達の目を横目に、ぱちりと瞬けば次の瞬間、ナタが立っていたのは暗い森の中ではなく、初期設定のまま何も置かれていない薄暗い部屋だった。
とりあえず光源が欲しいな、とマイルームの家具一覧を開く。
「お、『夜空の家具セット』あるじゃん。」
家具は積極的に集めていなかったので光源になるものがあるか心配だったが、かつて素材欲しさにクリアしたイベントの限定家具セットがあった。すっかり忘れていた。
「全部配置、と。」
家具セットの横にあったボタンを押せば、古びた材木の壁はどこまでも広がる夜空の壁紙になり、星をモチーフにしたガーランドライトが吊り下がる。同じく古びた材木の床は星が浮かぶ水面に代わり、そこから夜空に似た深い青のテーブルとソファがにょきりと生える。
「おぉ、ちょっと楽しいかも。」
錬金術を応用すれば機能付きの家具が作れるかも、と使えそうな素材や魔法陣を頭の中でリストアップしながら、今しがた生えてきたテーブルに、ナタは錬金釜を設置した。
一通り機能は確認できたし、マイルームは完全に隔離された空間なのでソール達のような突然の来訪者が来る心配もない。
となればやることは1つ。
「よし、とりあえず知ってるレシピ片っ端から作ってみよー!」
心ゆくまで錬金術を楽しむことだ。
すでにナタの頭の中は錬金術のことでいっぱいで、まあ元から錬金術の事しか考えていないが、突然消えた自分がソール達からどう思われるかなど、考えもしなかった。
まあつまり、どうなるかと言えば
「……素材取りに森に戻ったら何か俺の名前の石碑が祀られてんだけど……ドシテ……?」
こうなるってことですよ。
****
女神の森で女神、ルーナ・ディアーナの御子が確認された、という話はたった数日でトロイヤ大陸中に広まっていた。
それもそのはず。女神の森を燃やした不届き物がいただけでも大事なのに、その不届き者たちに御子自らが天罰を与えたのだ。
しかもその後、ソラーレ一族の者の言葉に一言「帰る。」とだけ告げ、その場から忽然と姿を消したのだ。
御子の怒りは相当だろう、とそのお怒りを鎮めるべく、石碑を建て、ナタ・ディアーナの名を刻み、祈りを捧げ、様々な供物を祭壇に積み上げた。
そんなことになっているなど予想もしていなかったナタは、マイルームから出て、マップ上で最後にいた女神の森に自動的に降り立った。するとなぜか目の前に自分の名前がデカデカと刻まれた石碑を見る羽目になったのだ。訳がわからん。
ただ、ふとその祭壇の供物に気になるものが目に入った。
(こ、これはエスト国の『輝きの織物』!)
シルクのような艶やかな白い織物を思わず手に取る。
ゲームではトロイヤ大陸の東にあるエスト国までクエストを進めないと手に入らないレアアイテムだ。
唯一購入でしか入手ができない貴重な素材。
(これがあれば、バフ付与した服とかアクセサリーとか色々作れる!レアアイテムだから刻める魔法陣もいろいろ試せるぞ……!!)
しかし問題は、これが祭壇への捧げ物であるということだ。
お店なら相応の金額を払って好きなだけ買えるが、勝手に持って行く訳にも……
(……いや、そもそもこの石碑、俺の名前あるのなら捧げ物も全て俺の物では……??)
なんか知らないけど俺に対しての捧げ物でしょ?
なら全て頂いても咎められないよな?
んふふ、と抑えきれない笑い声が零れる中、『輝きの織物』をぐるりと身体に纏わせてみた。
ふわりと広がる光沢の輝く白い織物が月の光に反射し、更に煌めけば、創作意欲がどんどん湧いてくる。
(やっぱり折角なら最初に作るのは洋服がいいよな!この美しい光沢を活かしながら魔法陣がいっぱい刻めるようにふんだんに布を使って……)
なんて、くるくる回りながらその布の軽さと光沢を楽しんでいると
「わぁ~本当に女神の御子がいらっしゃる~。」
と、静かな森に響いた声に、ナタはピタリと動きを止めた。
(……なんだろ……またしても面倒事の予感……)
遠心力で舞い踊っていた布が、動きを止めたことにより重力に沿って落ちる。
貴重なアイテムを汚しても困るため、端が地面に着く前にナタはアイテムボックスに収納してしまう。すると、周りの人間からは突然そのぬのが消えたように見え、僅かにざわめきが広がった。
嫌々ながらもそちらへと顔を向ければ、どーもどーも、と適当に頭を下げる淡い水色の角の生えた少年と、黒いフード付きのローブに身を包んだ人達が複数人目に入った。
少し下がった後ろでマールスもまた、片膝をつきその頭を垂れていた。
先ほどとは打って変わった態度と口調にナタは半歩下がる。あと何、女神の御子って。
しかもBGMは雷に撃ち抜かれた獣人たちのうめき声。嫌な状況だなここ。
「……あの、そーゆーのやめて欲しいです……」
と、顔を顰めたまま告げるナタに対し「ナタ様の仰る通りに。」と恭しいセリフと共にようやくソール達はその頭をあげた。
恐らく、というか確実に面倒な勘違いをされている。ナタは面倒事の予感に頭が痛くなってきた。
ナタの予感の通り、ソール達はナタの事を女神の子供と思い込んでいた。森を燃やされ怒ったこともナタは錬金術の素材が失われることに怒っていたのだが、ソール達は母の森を燃やされたことに怒ったと解釈したのだ。
「ところで、ナタ様はこれからどうするご予定で?」
ニッコリと音が付きそうな笑顔を見せて来るソールに、ナタの背にぞわりと嫌な物が走る。
(……これは逃げた方がいいか……?)
ナタの目的は錬金術を心ゆくまで楽しむこと。だがソールにこれ以上関わればお国の厄介ごとに巻き込まれる気がしてならない。
(とはいえ、俺は生産職だから騎士のマールスに逃げ足で勝てる気がしないし……さて、どうしようか……)
ゲーム機能で何か良いものがあっただろうか、と視界の四隅にあるゲーム画面に目を滑らせていると、
(あ、これ良さそう。)
アイテム、スキル設定、衣装箱と操作ボタンをスクロールしていった先、『マイルーム』と書かれたボタンが目に入った。
そう、実はゲームのステラートにはマイルームとして箱庭ゲーム機能も実装されていた。クエストやイベントで家具を手に入れたり、素材を集めれば自分で家具を作ったりと、かなり自由度高くカスタムできる。そのため中にはインテリアを集めるためにクエストに奔走するプレイヤーがいた位だ。
ただナタは錬金術にしか興味なかったのでこの機能をすっかり忘れていた。別に錬金術はどこででもできるのでわざわざマイルームに行かなくても素材を手に入れればその場で調合していたので。
つまり、ナタは森で野宿する必要はなかったということだ。もっと早くに思い出していればこんな面倒ごとに関わらなくてなくて済んだのに、と内心悪態をつきながら
「帰る。」
と、ソール達にその一言だけを告げて、『マイルーム』のボタンを押した。
僅かに見開かれたソール達の目を横目に、ぱちりと瞬けば次の瞬間、ナタが立っていたのは暗い森の中ではなく、初期設定のまま何も置かれていない薄暗い部屋だった。
とりあえず光源が欲しいな、とマイルームの家具一覧を開く。
「お、『夜空の家具セット』あるじゃん。」
家具は積極的に集めていなかったので光源になるものがあるか心配だったが、かつて素材欲しさにクリアしたイベントの限定家具セットがあった。すっかり忘れていた。
「全部配置、と。」
家具セットの横にあったボタンを押せば、古びた材木の壁はどこまでも広がる夜空の壁紙になり、星をモチーフにしたガーランドライトが吊り下がる。同じく古びた材木の床は星が浮かぶ水面に代わり、そこから夜空に似た深い青のテーブルとソファがにょきりと生える。
「おぉ、ちょっと楽しいかも。」
錬金術を応用すれば機能付きの家具が作れるかも、と使えそうな素材や魔法陣を頭の中でリストアップしながら、今しがた生えてきたテーブルに、ナタは錬金釜を設置した。
一通り機能は確認できたし、マイルームは完全に隔離された空間なのでソール達のような突然の来訪者が来る心配もない。
となればやることは1つ。
「よし、とりあえず知ってるレシピ片っ端から作ってみよー!」
心ゆくまで錬金術を楽しむことだ。
すでにナタの頭の中は錬金術のことでいっぱいで、まあ元から錬金術の事しか考えていないが、突然消えた自分がソール達からどう思われるかなど、考えもしなかった。
まあつまり、どうなるかと言えば
「……素材取りに森に戻ったら何か俺の名前の石碑が祀られてんだけど……ドシテ……?」
こうなるってことですよ。
****
女神の森で女神、ルーナ・ディアーナの御子が確認された、という話はたった数日でトロイヤ大陸中に広まっていた。
それもそのはず。女神の森を燃やした不届き物がいただけでも大事なのに、その不届き者たちに御子自らが天罰を与えたのだ。
しかもその後、ソラーレ一族の者の言葉に一言「帰る。」とだけ告げ、その場から忽然と姿を消したのだ。
御子の怒りは相当だろう、とそのお怒りを鎮めるべく、石碑を建て、ナタ・ディアーナの名を刻み、祈りを捧げ、様々な供物を祭壇に積み上げた。
そんなことになっているなど予想もしていなかったナタは、マイルームから出て、マップ上で最後にいた女神の森に自動的に降り立った。するとなぜか目の前に自分の名前がデカデカと刻まれた石碑を見る羽目になったのだ。訳がわからん。
ただ、ふとその祭壇の供物に気になるものが目に入った。
(こ、これはエスト国の『輝きの織物』!)
シルクのような艶やかな白い織物を思わず手に取る。
ゲームではトロイヤ大陸の東にあるエスト国までクエストを進めないと手に入らないレアアイテムだ。
唯一購入でしか入手ができない貴重な素材。
(これがあれば、バフ付与した服とかアクセサリーとか色々作れる!レアアイテムだから刻める魔法陣もいろいろ試せるぞ……!!)
しかし問題は、これが祭壇への捧げ物であるということだ。
お店なら相応の金額を払って好きなだけ買えるが、勝手に持って行く訳にも……
(……いや、そもそもこの石碑、俺の名前あるのなら捧げ物も全て俺の物では……??)
なんか知らないけど俺に対しての捧げ物でしょ?
なら全て頂いても咎められないよな?
んふふ、と抑えきれない笑い声が零れる中、『輝きの織物』をぐるりと身体に纏わせてみた。
ふわりと広がる光沢の輝く白い織物が月の光に反射し、更に煌めけば、創作意欲がどんどん湧いてくる。
(やっぱり折角なら最初に作るのは洋服がいいよな!この美しい光沢を活かしながら魔法陣がいっぱい刻めるようにふんだんに布を使って……)
なんて、くるくる回りながらその布の軽さと光沢を楽しんでいると
「わぁ~本当に女神の御子がいらっしゃる~。」
と、静かな森に響いた声に、ナタはピタリと動きを止めた。
(……なんだろ……またしても面倒事の予感……)
遠心力で舞い踊っていた布が、動きを止めたことにより重力に沿って落ちる。
貴重なアイテムを汚しても困るため、端が地面に着く前にナタはアイテムボックスに収納してしまう。すると、周りの人間からは突然そのぬのが消えたように見え、僅かにざわめきが広がった。
嫌々ながらもそちらへと顔を向ければ、どーもどーも、と適当に頭を下げる淡い水色の角の生えた少年と、黒いフード付きのローブに身を包んだ人達が複数人目に入った。
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