錬金術にしか興味のない最弱職アルケミストの異世界勘違い道中

奏穏朔良

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(……あののんびりした角生えてるやつが話しかけてきたのか……後ろに従者みたいなのぞろぞろ引き連れているし、絶対お偉いさんじゃん……関わりたくねー。)

うげぇ、と思わず顔を顰めたナタに、角のある少年は同じ薄い水色を纏う髪をガシガシ掻きながら、「えぇこれ絶対嫌われてるよぉ……諦めて滅ぶしかなくない?うちの国。」と後ろのローブ集団を振り向く。

「それを何とかするのが『フィウーメ』の姓を持つ貴方様のお役目でしょう!?」
「どうか、御子のお怒りを沈めてくださいませ!!」
「ただでさえやらかした奴らのせいでエスト国はあちこちから非難されているのです!我が国の貢物がお気に召したのならきっと希望が!」

(……か、帰りてー!)

わぁっと一斉に騒ぎ立てるローブ集団の言葉にナタは更に顔を歪めた。
しかもこいつらエスト国のやつらかよ。別にお前らの国自体に興味は無いんだ。興味があるのは素材だけなんだよ、とナタは内心悪態をつく。

(……ん?というか……)

「……『ソラーレ』じゃないのか?」

森の中に入れる人間は限られる、みたいなこと言っていたのに、こいつらも入れるのか?とナタは僅かに首を傾げた。

「……あれぇ?チェントロ国のソラーレは御子が見限ったって話じゃなかったっけぇ?だから今は各国の王族が交代で祭壇に祈りを捧げに来てるんだけどぉ……」

(いや、知らねー……)

しかも王族とか聞こえたな。

(ということはこいつはエスト国の王族ってことか。)

めんどくせぇ、という顔を隠しもしないナタに、「うーん……」とエスト国の少年を悩むような仕草を見せる。

しかし、直ぐにパッと顔を上げると、真っ直ぐこちらに目を向け、その場で片膝を着き、手を顔の前で組んだ。

「偉大なるルーナ・ディアーナの御子おこ、ナタ・ディアーナ様。我が国の同胞が母なる森に致した愚行、このネプト・フィウーメが代わりに謝罪いたします。誠に申し訳ありませんでした。」

と、少年が言った瞬間、後ろに控えていたローブ集団も一斉に膝を着いた。

「……お許し頂けるのならば、御子が気にするソラーレの一族が再び森の『管理者』となれるように我が国が全力で努めましょう。」

再び恭しい口調でそう提案するネプト・フィウーメと名乗った少年に、ナタは「……え、なんで?」と思わず首を傾げた。

別に気にしてるわけじゃないし、そもそも御子じゃないし。
しかし、予想外の回答だった様で「え!?なんでぇ!?」と勢いよく聞き返す少年の頭をローブの1人が「礼儀と威厳を保って!!」っと慌てて押した。

「そ、ソラーレの一族はルーナ・ディアーナ様が認めた森の『管理者』となるチェントロ国の王族……!見限っていないのであれば彼らの威厳を取り戻す必要が……」

「……それはそっちの都合でしょう。俺は(ただの錬金術アルケミストだから)国や政治情勢などどうでもいーし、(素材のある)森が燃やされないならそれでいーです。」

そこまでナタが言えば、とうとう言葉もなくなったのかポカンと開いた口をそのままに少年はナタを凝視する。

「ソラーレだとかフィウーメだとか(一般人の)俺にはどーでもいーです。」

ぶっちゃけ錬金術関係ないし。

(……というか、そもそも転移の時にも女神は神殿に行けば~とは言ってたけどソラーレの一族がどうのなんて言ってなかったし、大体……)

「なんで神が下界の者をいちいち気にすると思うんだ……?」

こちらの世界だと神と人間の距離が近いんだろうか?
もしかしたらこれは日本人特有の感性なのかもしれないな、なんて思いながらとりあえず祭壇にある貢物を全部アイテムボックスに収納していく。

「お、お待ちください御子様!」

それに慌てた様子のローブ男の言葉に、

「嫌です。祭壇に乗せたならこれは俺のだから。」

とナタは最後の貢物をしまい込んだ。
違うそうじゃない。

こいつ、神として勘違いされている中での上記の数々の発言を落としたのだ。「下界の者の生活とかどうでもいい」と明言したようなものなのだ。

神の怒りを買った可能性が残るエスト国からすればここで神の機嫌を取り直したいのだ。
しかし、神はこちらに欠片も興味を持ってくれない。

ローブ男の焦りは最高潮に達していた。

達してしまったのだ。

「こんの……!ろくに仕事もこなせない王子が!」

ガッと鈍い音がして、慌ててナタが振り返る。

そこには水色の髪を赤く染め、地面に蹲るネプトの姿と、フードが外れ、大きな犬のような耳がある男が鞘がついたままの剣を持つ姿だった。よく見れば剣の柄頭が赤いものによって汚れていた。

「才能もない、能力もない、継承権もない第十三王子のお前をここまで護衛してやったのに!」
「おい、よせ!」

(えぇー……俺が帰ってから内輪もめしてくれよ……)

ナタはうげぇ、と今までにないほどその口角を下げる。

「……もお~、御子様の前でやめなよぉ~。」

(……お?意外と元気?)

のそりと起き上がるネプトに、ナタは目を丸くする。血はまだ止まらずその頬を滑り落ちるが、ネプトの瞳孔はぶれることなく、しっかりと犬耳ローブ男を捉えていた。

(……そういえば、獣人なんだっけ?でもあの水色の角は何の獣人なんだろう?枝分かれしている形は鹿に似ているけれど、鹿の類にしては短いし……)

何より角のある位置が頭部の横ではなく額にあるのだ。他の獣人を知らないからなんとも言えないが、普通の獣人とは違う気がする。

観察している間に、ネプトはふらつきつつも、しっかりと足を踏み締めて立ち上がっていた。
脳震盪を起こす様子もなく、煩わしそうに流れる血を手のひらで拭っている。

(獣人族ともなれば体自体が頑丈なんだろうか?単に耐久値が高い?人間と獣人でポーションの効果に違いがあったりするんだろうか??)

俺、気になっちゃったなー、と抑えきれない探究心の赴くまま、ナタはネプトの方へとその足を進めた。
それに驚いたのはネプトだけではない、犬耳ローブ男もだった。

先ほど吐き捨てたセリフ通り、ローブ犬耳男は本来ならば敬うべきネプトを見下していた。何故ならネプトの母親は商人の出……つまりは平民だからだ。表向きは子爵家からの輿入れとなっているが養子に迎え入れられたことは誰もが知る事実。
王がどうしても娶りたい。王妃はもういるから側室に迎え入れたい。と、わがままを言ったので最低限の体裁を保つための措置に過ぎないのだ。

だからこそ、ネプトはこの度の祭壇への祈りに選ばれた。神の怒りを向けられ死んでもかまわないから、と。なんせ森を燃やすなどと言った愚行を犯したのは獣人。神の怒りが獣人を治めるフィウーメに向けられても何もおかしくない。

まあ、もちろんナタは女神の子供でもなければそもそも神ではないので全ては余計な心配なのだが。

しかし彼らはそれを知らない。一歩一歩確実に詰められる距離にローブの男たちは皆ブワリッとその尻尾を膨らませた。

「見せてください。」
「え……」

そして、気づけば目の前にいたナタに、ネプトは頭を掴まれていた。

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