錬金術にしか興味のない最弱職アルケミストの異世界勘違い道中

奏穏朔良

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まさかカルロに生後1ヶ月のばぶちゃん認定されたなど知りもしないナタは無事目が覚めた王子2人に、女神の森でのソール・ソラーレ襲撃の話、そしてそれによって考えられるテロや各国の王族を狙ってい可能性を伝えた。

言わずに後で何か起きて巻き込まれるのは困るので。
ナタに国の為とかそういう思考はない。

「確かに、ソールが狙われたことも無関係とは思えないね。」
「ただ、狙いがイマイチわからないので犯人を絞り込むのは今の段階では難しいですね……」

と、起きて早々云々唸って悩む王族2人を横目に、ナタはポチポチとアバターパーツの変更を行う。
神秘の姿からギリ平凡と言える茶色い髪と瞳のヒナタスタイルになった所で、「そもそも、」とレトゥムが口を開く。

「『ソールが襲撃された』ということより『襲撃の際に獣人族が女神の森を燃やした』という事の方が重要視されていて、調査が進んでいないんだ。」

ちなみにその原因の一旦はナタにもある。女神の森を燃やした不届き者のせいで、女神の子供が怒った、と各国のトップは判断していたのでそちらの対応を優先させたのだ。

ただ、それ以外にも

「ソラーレの一族の中じゃ、最早『管理者』の立場は皇族の墓場なんて言われてるからね……」

ソール自身の立場も関係していた。

しかし、ナタと平民であるカルロにはレトゥムのその言葉がピンと来ず、2人して首を傾げる。

「管理者っていやぁ、女神ルーナ・ディアーナがソラーレに直々に与えた役目だろ……?なんで墓場なんて……」

と、眉尻を下げて戸惑うカルロに「権力が無いからさ。」とレトゥムはあっけらかんと答える。

「管理者になった者は皇帝になれないし、与えられるのは神殿をまとめ、森を整備する権利だけ。政治に対する権力は何一つ持たないんだ。」

そう続けられた言葉に、誰しもが黙り込んだ。

「1000年前、ソラーレの一族は女神ルーナ・ディアーナに管理者として女神の森の管理を任された。そこに人が集まり、国が出来て管理者兼皇族となったが、今では管理者の方がオマケなのさ。」

そう言って僅かに目を伏せたレトゥム。ソムヌスにとっても初めて聞く内情だったのか僅かに目を見開き、静かに驚いていた。

カルロにとっても、女神信仰と生活は切り離せないほど密接なものだった。
だからこそ、その女神信仰のトップとも言える『管理者』への、皇族の認識と自分の認識の違いに言葉が出てこない。
むしろ誰しもが憧れる立場だと思い込んでいた。

しかし、

「ま、人間なんてそんなもんだよねー。」

と、ナタだけがあっけらかんとしていて、「え、神様からの人間の認識ってそんな感じなの?」とレトゥムは密かにショックを受ける。

うちはちゃんと国民のために動いている王族なので!!!
帰ったら汚職貴族粛清しよ、とレトゥムは心に決めた。

カルロはカルロで「あらやだ、バブちゃん達観しすぎ。」と手を口に当ててはわはわする。
誰かカルロにそいつは普通の17歳だって教えてあげて。

「というか、その管理者とかさ、この世界のこと説明された時全然教えて貰えなかったんだけど。」

ナタが「神殿となんか違う役目でもあるの?」と首を傾げながら続けた言葉に、レトゥムは

「教えて貰えなかった?」

と言葉を繰り返した。もしや、と思ってカルロを見やるがカルロは「いや、流石に世界のこととかは説明してない。」と首を横に振る。カルロはただの冒険者なのでそんな大役は無理である。

つまり、ナタにこの世界の事を最初に説明した『誰か』がいる。

女神の御子に世界を教えるなんて、そんなこと出来る誰かなんて限られてくるわけで……

たどり着いたひとつの仮説に、3人の顔が青ざめる。

「え、えーっと、世界の事って誰に教えて貰ったん、ですか、ね?」

なんて、詰まった言葉に敬語で、頬を引き攣らせたレトゥムの問に、

「誰って……君たちがルーナ・ディアーナって呼んで……」

いる女神様です!なんて言えねー!!!と、ナタはバチンと音がする勢いでその手で口を塞いだ。

やばい、とナタからダラダラ汗が流れる。

「エット、シ、知ラナイ、人カラ、ダヨ。」

なんて泳ぎまくる目で言い直した所でもう遅い。

3人は天を仰いだ。

間違いない。というか絶対、女神ルーナ・ディアーナに教えてもらっただろ。

(そうなると女神ルーナ・ディアーナからすれば管理者はそこまで重要じゃない……?これ以上ソールの立場が弱まれば、ソールの命も危ぶまれる……そしてそれ以上に、)

反神殿派が、勢力を増すことになる。

レトゥムは最悪の展開に今度は頭を抱えて下を向く。

「あの、ヒナタさん。それは絶対他の人に言わないでください。」

「ウン……」

流石のナタもうっかりすぎた、とちょっと反省。
心なしかしょんもり肩を落とすナタにソムヌスが「うっかりは誰にでもありますから!ね!」と青い顔で励ました。

「あ、そうだ。」

ソムヌスの励ましが効いたのか効いてないのか分からないが、さっきまでのしょんもり顔はどこへ行ったのか。

「これ渡しとくね。」

ケロっとした顔になったナタは、その手のひらから出したポーション瓶3つをテーブルに並べていく。
それにレトゥム達はまだ青さの残るその頭を傾げる。

「状態異常回復ポーションだよ。確かソール・ソラーレの時は呪毒だったから。」

念の為持ってて、と渡されたそれはパッと見で『上級』だとわかるほどに澄んだ美しいポーションだった。

「……ん?というか管理者の方は『呪い』じゃなかったのか?」

唯一、ソール襲撃事件の詳細を知らないカルロの問にナタは

「まぁ、『呪い』は人族にかけても本人死ぬだけで魔族ほど周りに被害期待できないし、生贄用意したりってコスト考えると『呪毒』のデバフの方が楽だからね。」

と、軽い声色で答える。
それに、とナタは言葉を続けた。

「黒魔術もそう簡単に連発出来るものじゃなかったはず……次に呪うにしても明日明後日なんて近日にやるのは無理だと思うよ。」

そのナタの説明にレトゥムは一先ず安堵の息を吐いた。
次の呪いが王族の誰を狙うのか、再びソムヌスを狙うのか、それはまだわからないが、猶予があるのならそれまでに犯人を捕えればいい。

とはいえ、必ずしも絶対的に大丈夫という保証は無い。
それをナタもわかっているので、

「だからそれまでに、1回神殿で呪いの事聞かないとな……」

と、ナタは試作のポーションのレシピを考えながら、ポツリと言葉を落としたのだった。



**あとがき**

途中眠過ぎて意識飛んでたので誤字とか変な文脈あったらサイレント修正します……すみません……!


それからこれは錬金術本編関係ないのですが、短編「欲しいものが手に入らないお話」を今月開催の恋愛小説大賞にエントリーしています!
もし良ければ暇潰しにでもサクッと読めるのでぜひ!
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