錬金術にしか興味のない最弱職アルケミストの異世界勘違い道中

奏穏朔良

文字の大きさ
23 / 27

23

しおりを挟む
カルロとソムヌスは目の前の光景をただただ死んだ目で眺めていた。

だって、なんかもう、色々お腹いっぱい。
カルロは

「ただの冒険者には荷が重い……」

とひたすら遠くを眺めているし、ソムヌスは

「ちょっと次男だから耐えられない……」

と脳内でイマジナリー兄様を召喚し「大丈夫!ソムヌスなら耐えられるよ!頑張って!」と脳内でイマジナリー兄様がソムヌスを鼓舞している。
いや、やっぱり無理。頑張れない。

多分長男でもこれは耐えられないと思うぞ。ソムヌスはちょっぴり兄に対しての期待値が高い弟でもあった。

ううぅ~と呻く黒く焦げた塊は神官だった者達・・・・・を眺め、カルロとソムヌスは同時にため息を吐き出す。

たった今、晴天の空から降り注いだ雷によって撃ち抜かれた、神罰を落とされた女神の怒りに触れた者。
それらをオロオロと手当しようと試みる焦げひとつない神官は恐らく信用に値する者達だろう。

あとで兄に報告するため無事だった者達の顔を覚えたソムヌスが再びナタに視線を戻すと、降り注ぐ神聖な光が消えていた。

恐らく女神様と話が終わり、女神様も神の世界へとお戻りになられたのだろう。

とりあえずひと段落がついたか、とカルロと共に胸を撫で下ろす。
BGMに黒焦げ神官達の呻き声が流れている時点でまだ何もひと段落ついていないがな。

ちなみに降り注ぐ光が消えたのは女神が居なくなったからに間違いはないが、決して話が終わったからではない。

ナタがすっかり女神の存在をそっちのけで錬金術の計算を始めてしまったので、

『もういいかしら?地球に帰りたいとか言わなそうだし。』

とその場を後にした女神はついでに女神は1000年ぶりにソラーレの名を継ぐ者に神託を下ろしに向かった。

ついでで、突然の女神に訪問された今代の管理人、ソール・ソラーレの心臓が止まりかけたのは言うまでもない。

何なら彼が今回の1件の最後の被害者。強く生きて欲しい。

「んふふ、次に呪いの患者被験者が来た時にはこれ試そ。」

と、満足そうにしているのは今回の騒動を引き起こしたナタだけである。
大体お前のせい。周りみてあげて。混沌しかないから。


ナタがこんなにもケロリとしているのに周りがこれほどまでに疲弊しきっているのにはお互い気づいていない、認識の差があるからだ。

少し時間を遡り説明するが、そもそも女神の声は周りには聞こえないことも今回の事態の原因でもあった。

鈴のような、美しく響くその音の重なりはどうしたって人に出せる声ではない。

正確には女神が声を届けようとした者以外にはフィルターがかかり、認識できないように阻害されるからなのだが、そんなもの下界の人間に分かる訳もなく、同じようにフィルター機能が適応されてしまったナタの言葉もまた、女神と同じように鈴が鳴りあうような、不思議な音色へと変換されてしまった。

つまりどうなるか。

人外の言葉で話し合う未知の空間の出来上がりである。

シャンシャンシャン協和音。確かにこれで会話してるってなればナタの人外説なんてもう確定したようなもん。
この時点で神官長も「あ、もしかして俺やばいことしたかも……」と顔を青くしていた。

そして何より、言葉はわからなくとも雄弁に語るはナタのその表情。怒り、呆れ、嫌悪。移ろい行くごとに下がる口角。

神殿の事を完全に母親にチクってるだろこいつ!
神官長はもう泣きそうだった。まあ実際は親じゃないんだけどな。

しかしそんな中、突如ナタの表情が喜色に染まった。

そして地面にしゃがみ込んだかと思えば何やらガリガリとペンを走らせている。
これはもうお咎めなしでは?と、神官長は思わず息を吐いた。力の入っていた肩が凝りに凝って痛い。

「ねぇ!!ソムヌス!!」

「は、はい!!!?」

「属性!何!!?」

「や、闇と水です!!!」

と、突然下界の言語(語弊)に戻ったナタの問いかけに、思わずそのまま勢いで答えてしまったソムヌスに「そっか!!!」とこれまたデカい返答を投げると、ナタは再び地面でガリガリと何かを書き進める。

まだシャンシャン音が響いているので女神に何か言われながら書き進めているのだろう。

一体何を書いているのか、とソムヌスたちの意識がそちらに向いた時だった。

ズガンッと重い、何かが光と共に神官長に落とされたのは。
強烈な光に目が眩む。

一瞬で収まったとはいえ強烈なそれに、目を瞬かせると、次第に白んだ世界に色が戻ってくる。

「……え。」

「……う、嘘だろ……」

そして色の戻った世界で見えたモノに、ソムヌスだけではない。カルロですら思わず口を手で覆った。

黒い塊だ。
真っ黒い、人の形をしたナニカ。

たしか、そこに在ったのは神官長ではなかっただろうか。

その正体に気づいた時、ソムヌスは胃の奥からせり上がってくるものを感じた。
僅かな呻き声が、炭化して動かない唇の奥から聞こえる。

正しく、天罰だった。

自然界で発生するような雷とは音の重さが違った。それだけのエネルギー。それだけの怒り。
しかしそれを喰らっても即死に至らない辺りが紛うこと無き罰であった。
即死など許されない。生きたまま炭となり、苦しみ、死を緩やかに体験していく。

あまりにも恐ろしき、神罰が、そこにあった。

ちなみにこの時ナタは計算に夢中でこのことに気づいていなかった。

そんなナタの様子に気づいたカルロは震わせた口で

「もしや、女神は神罰のシーンをナタに見せないようにしたのか……?」

そう思いついた考えを言葉にした。
なんせカルロの中でナタは生後一か月の赤ちゃん。まだ純粋無垢なばぶちゃんなのである。

そうだよね、赤ちゃんに見せるにはちょーっと刺激が強いよね。と女神の母性(誤解)に共鳴しちまった。

「なるほど……!」

なるほどじゃないんだよソムヌス。女神は暇になって神罰落としただけなんだよ。

そうして神官長ほどの威力ではないが、女神に不適合と認識された神官たちに、女神の雷が降り注ぐ。
死にはしないが見た目真っ黒こげになっていく神官たちに、次第にソムヌス達の目は死んでいった。

どうしよう、結構数多いぞ。

これに神官たちに搾取され不当を強いられてきた市民たちも集まり、ナタに万歳三唱し始めちまったからもう大変。
更に目が死に、こうして時間は冒頭へと至る。


まぁ、つまりどうなったかって。

「これで確証に至りましたね。ナタ様は間違いなく女神、ルーナ・ディアーナ様の御子おこである、と。」
「ああ、そーだな。最早疑う余地もねぇわ。」

こうなっちまうわけですよ。



**あとがき**

ちなみに読者の皆様……もしお答え頂けるならsnsの投稿でもここの感想欄でも全然いいのですが、この作品のタイトル略すとしたら何て略しますか?
もしくはどう略して呼んでますか??

私タイトル全部打つの面倒で(自分で付けたタイトルなのにな……)snsの告知の際に「錬金術のやつ」って適当に略しちゃってて……

もしいい感じの略し方あれば教えて欲しいです!
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ
ファンタジー
普通の会社員だった佐藤隼人(さとうはやと)は、ある日突然異世界に招かれる。 異世界で勇者として10年間を旅して過ごしながら魔王との戦いに決着をつけた隼人。 役目を終えて、彼は異世界に旅立った直後の現代に戻ってきた。 隼人の意識では10年間という月日が流れていたが、こちらでは一瞬の出来事だった。 戻ってきたと実感した直後、彼の体に激痛が走る。 異世界での経験と成長が現代の体に統合される過程で、隼人は1ヶ月間寝込むことに。 まるで生まれ変わるかのような激しい体の変化が続き、思うように動けなくなった。 ようやく落ち着いた頃には無断欠勤により会社をクビになり、それを知った恋人から別れを告げられる。 それでも隼人は現代に戻ってきて、生きられることに感謝する。 次の仕事を見つけて、新しい生活を始めようと前向きになった矢先、とある人物が部屋を訪ねてくる。 その人物とは、異世界で戦友だった者の名を口にする女子高生だった。 「ハヤト様。私たちの世界を救ってくれて、本当にありがとう。今度は、私たちがあなたのことを幸せにします!」 ※カクヨムにも掲載中です。

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

異世界転生 剣と魔術の世界

小沢アキラ
ファンタジー
 普通の高校生《水樹和也》は、登山の最中に起きた不慮の事故に巻き込まれてしまい、崖から転落してしまった。  目を覚ますと、そこは自分がいた世界とは全く異なる世界だった。  人間と獣人族が暮らす世界《人界》へ降り立ってしまった和也は、元の世界に帰るために、人界の創造主とされる《創世神》が眠る中都へ旅立つ決意をする。  全三部構成の長編異世界転生物語。

聖女だったけど魔王にジョブチェンジしました。魔獣たちとほっこり生活を満喫します。

棚から現ナマ
ファンタジー
聖女リーリアは婚約者である王太子リカルドにより、偽の聖女だと断罪される。 えん罪を着せられたリーリアは、あろうことか獣や魔獣が出没する”魔の森”へと捨てられるのだった。 攻撃や身を護る手段を持たないリーリアは…… なんだかんだあって、魔王になり、魔獣や魔物たちとワチャワチャ楽しく暮らしていくのでした。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

神々のダンジョン~チートスキル【アイテムボックス】と【鑑定】でアラフォーおっさんは成り上がる~

葵はるか
ファンタジー
「少子化で、八百万の神々の力が衰えるどころか滅亡しそうです! ですので、氷河期世代を救います!」  国会に突如、降臨した絶世の美少女である天照大御神は、氷河期世代を救うために日本中に日本人専用のダンジョンを作りだすことを宣言するのであった。  会社に一方的にクビにされた佐藤和也も、日本中に発生したダンジョンへ生活の糧を得るために潜ることになったのであった。

処理中です...