錬金術にしか興味のない最弱職アルケミストの異世界勘違い道中

奏穏朔良

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女神もまさか今回のやり取りで親子疑惑が確定されたなどと思ってもなかっただろう。
当事者であるはずのナタもわかっていないし。

そんな勘違いの嵐のど真ん中にいながら常にゴーイングマイウェイを突き進む男、ナタはというと

「……え、何このオブジェ。こんなのあったっけ?」

ようやく神官長だったものに気が付いた。

よく見れば周りにも似たような黒い塊が呻き、転がっている。

「その、女神様のお怒りに触れたようでして……」

と、ソムヌスがやんわりと神罰について説明すると、「ああ、なるほど。」とナタは合点がいったのかうんうん頷いて神官長だったものに近寄った。

「神託の条件満たしてないのに神官になっちゃったんだねー。ま、その神託も1000年前のものだからどこかで失われたのかな?」

そうあまりにも軽い声色で告げられる内容に、雷を免れた神官たちの間でざわめきが広がる。
それが知らないことに対する動揺なのか、知っていて見ないふりをしていたことへの恐れなのかはわからない。
ただ、王家では神官になるにあたって条件が与えられていたことを関知していない。

ソムヌスは早急に内情を調査しなければ、とため息をついた。兄だけではない。この国を治める我が母、ノルドの女王もしばらく多忙になる事が決定した瞬間だった。

「……ぅぁ゛……」

ナタの声が聞こえたのかはわからない。何か言いたいことがあったのか、ただの音にすぎないのか。
それすらもわからないが、炭化した神官長の口からわずかな呻き声が漏れた。

「……へぇ。」

それにナタの口角が上がる。

そう、こいつにとっての一番の興味は錬金術。

そしてそれによって生成された物の実証実験。

つまり何が言いたいかって?

「ここまで炭化しているの生きてるってことは内臓までは焼けていないのかな?それとも見た目を派手にしてあるだけで実際はそこまで焼けてないとか?いや、押したら崩れたから炭化はしてるな。眼球確認できないから意識あるか確認できないのがつまんないな……呻いてるならワンチャン意識ある?いや無意識にも呻く被験者患者もいるし断定はできないか。いやぁ、魔法ってなんでもありだよなぁ。これで生きてるってすごいよな!」

こいつは素晴らしい実験体だぜ!!!!

炭化具合を確認するために容赦なく腕を押し、崩したナタ。本当に容赦がなかった。本人的には必要な確認だが、周りにいた神官たちはちょっと引いた。人外(誤解)の怖すぎる。

「んふふ、これは色々試せていいなぁ。」

と、ぽんぽんアイテムボックスからポーションを取り出し並べるナタにカルロが「ちょ、ちょっと待て!」と制止の手を上げる。

「お前、まさか治す気か!?」

そのカルロの言葉に周りも騒めいた。
神罰という点を除いても、これ程までに真っ黒に焼け、肉が炭化した人間を治す?

いくら神の子供でもあれは無理じゃ……、と呟いたのは民か神官か。

しかしナタは

「え?治すよ?」

と、あっけらかんと答えて見せた。
まぁ、治すと言ってもナタの中では「試したい事あるし」という文言が付くが。

ちなみにナタが試したいのは先日襲撃してきたヤクルスを使ったポーションだ。

なんせレア素材をふんだんに使えるのだ。
既存のレシピから新しいレシピの開発まで、それはもう贅沢にヤクルスを使いまくった。
それに、ヤクルス討伐後はしばらくお祭り騒ぎが収まらず、ナタは外出を極力控えていたので、集中して錬金術に勤しめた、というのもある。

血液、爪などの定番素材だけではなく、少しマイナーな素材、内臓や体毛なども使ってそれは大いに錬金術を楽しんだ。
本来なら能力を付与する装飾品に使うことの多い角や皮も、ポーションに活用してみた。

そして、ナタが開発したものは勿論の事、既存のレシピも含めたこれらのポーション、全て一度も人間に対して使ったことがない。


そう、つまり楽しい(※ナタだけ)治験祭りの始まりである。


****


「……よし、ひとまずこれで改善が見られるね。」

ナタが与えたポーションにより、炭化し黒くひび割れていた皮膚が、青白くも弾力のある、人の皮膚に戻ったことに、神官長は再び物が見えるようになった目から一筋涙をこぼした。

「いったんこれで様子を見ましょうか。変化があれば時間と過程、具体的な症状をここに書き留めておいてください。」

「は、はい!」

雷を受けなかった神官にそう指示をし紙とペンを渡すと、ナタはすぐさま他の黒焦げになった神官の元へと足を動かす。

神官長よりマシとは言え、神官たちも四肢が炭化しているため下手に動かすことが出来ない。
そのため、ナタがそれぞれの患者の元へと赴き、それぞれの状態に応じたポーションを処方していく。
処方、と言っても同じ効能でも微妙に材料の比率が異なるレシピの物をそれぞれに与えているので本当にただの治験である。

なんなら時々全く違う効能の物を渡しているし。
ナタにとって彼らは治すべき対象ではなく、ただで治験に協力してくれる都合のいい実験体なので。倫理観が家出しすぎている。

とはいえ、この場にいる者たちはそんなナタの心情など知りもしないので、神罰を受けた者にすら手を差し伸べるその慈愛と慈悲深さに黒焦げになった神官たちは涙し、手を組み祈り始める者までいた。

「おぉい、こっちは比較的軽傷者だ。神殿にある中級ポーションを飲んだそうだが治りが悪いそうだ。」

カルロの言葉にナタは「多分普通のポーションじゃ完治は無理だと思う。」と中傷者の火傷に新しいポーションをぶっかけながら告げるナタ。

「やっぱ普通の火傷とは違ぇか……」

と、カルロは眉尻を下げる。

カルロは診療所でも手伝っているので慣れたもので、率先してトリアージ、カルテ作り、神官への指示を行っていた。
ソムヌスも患者からの生年月日や現在の症状等の聞き取りを手伝ってくれているが、如何せん患者が多すぎる。
無事な神官より神罰を受けた神官の方が圧倒的に多いなんて王子としては耳の痛い話だ。

それにしても、とソムヌスはナタのかけたポーションが見る見るうちに火傷を治していく様を見て口を開いた。

「ナタ様のポーションはすごいですね……やはりナタ様がお作りになるポーションは特別な力が宿るのでしょうか?」

ソムヌスの純粋な疑問に、ナタは少し考えた後、

「いや、多分錬金術のスキル持っている人ならレシピさえ知っていれば作れると思う。」

と、答えを口にする。それにソムヌスだけではなく周囲にいる神官も目を丸くし驚きの表情を浮かべた。
ナタはそれにそんなに驚くことか?と小首を傾げながら

「そもそもこれもまだ試作段階のものが大半だし……もっと効能を最大限に引き出したいんだけどちょうどいい配合が見つからないんだよね。」

と、持っているポーションの瓶を揺らす。揺れに合わせて形を変える水面はキラキラと白い光が浮かんでいる。

「普通の回復ポーションとは違うんですよね?」

そうソムヌスはナタの持つポーションを覗き込むようにして顔を近づけた。

「うん。これは回復ポーションのレシピに、ヤクルスの血液と角を混ぜてる。これだけだとポーションにならねーから、それぞれの親和性を高めるために乾燥させた白月草はくげつそうを少し混ぜてる。」

ナタの説明に、ソムヌスはそっと後方から様子を窺っていた神殿お抱えの錬金術師の方を見やった。

そしてレシピを聞いてスンッと光の消えた彼らの死んだ目を見てソムヌスは察した。

うん、それは常人には作れないレシピですね。

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