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第一章・懐かしき25年前
第3部・お別れと帰還とその後《完結》
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〈林間キャンプ最終日(1992年8月16日)・小川小学校・校舎内〉
子供達と一緒に校舎内で一夜を過ごすことになった僕達は少しリラックスしながら寝る準備をしていると過去の僕を含む子供達が僕の元にやってきました。
「よぉ!おっちゃん!」
「おじちゃん、遊びに来たよ。」
「お、竜太君と隣にいるのは誰かな?」
「俺はオサユキ、大谷長幸だよ。こいつの面倒係だよ!」
「(あ、オサユキ兄ちゃんかあ。久しぶりだなあ。昔よく遊んでくれたよなあ・・・)それで何か用事かな?」
「遊んでほしいねん!」
「え?もうすぐ消灯だけど?」
「マクラ投げしたいねん!!」
「もう寝てる子もいるしやめておこうよ。」
「おっちゃんのケチ!!」
「こらっ!!長幸っ!!お兄さんが困っているだろうが!!寝る準備をしなさいっ!!」
「わあ!上川先生!!すみませ~ん!!」
「(ホッ・・・)竜太君はどうするの?」
「僕は長幸兄ちゃんについてきただけだから・・・あとちょっとお願いがあるの。」
「?」
あとちょっとで騒がしくなりかけましたが上川さんのお陰で何とかなりました。また過去の僕は何か秘密のお願いがあったのか僕に耳打ちしました。僕はそれを聴いて笑顔で彼を見つめました。
「竜太君、良いよ。」
「楽しみだね!!」
僕が返事をすると過去の僕も笑顔になりました。
「じゃあ、みんな!消灯の時間です!おやすみなさい!!」
「はーい!」
菊池先生が皆に消灯を告げると全員すぐに眠りにつきました。
「(さて・・・僕も寝るか。)」
僕も皆が寝たのを確認してからそのまま眠りについたのです。
〈翌朝〉
小鳥のさえずりが聞こえる朝、僕はいつにもない気持ちよい目覚めと共に起き上がると校庭に出て昔のようにしずかにジョギングしていました。ジョギング中に右腕を蚊に噛まれてしまいましたが気にせず待っていましたが痒かったです。すると過去の僕もすぐに校庭にやって来ました。
「痒い・・・蚊に噛まれてしもうた・・・!!しかも噛まれた痕がでかい・・・・・・」
「おじちゃん、おはよう!!」
「ああ、おはよう竜太君!!」
「一緒に走ろうね。」
「勿論!!」
実は昨晩約束していたのは皆が起きていない早朝にジョギングをしたいということでした。そして僕達は楽しく話をしながらジョギングしていました。
「気持ちいいね、竜太君!!」
「楽しいね~!!」
「ね~!!」
「またここに来たいね!」
「僕も来たいよ!!」
楽しく走る二人ではあったがいよいよ別れの時が来ていたのでした。僕は過去の僕の顔を見ると彼も時折寂しそうな目をしていたのでもうすぐ訪れる別れを理解しているのかもしれません。すると菊池さんが僕達を呼びに来てくれました。
「石川さん!!竜太君!!早いですね!!パンが用意されているから食べましょう!!」
「はいっ!!ありがとうございます!!」
「わ~い、パン♪パン♪」
過去の僕も僕自身も朝飯が食べらるのでよろこびました。すると僕はあることを思い出したのです。
「(そういえば上川さんも菊池さんも以前僕と遊んでくれたんだ。他の先生との思い出が深いのと学園に居た期間が短かった上に幼かったから少し忘れていたんだ・・・!!)」
僕は旅を通じて先生達との思い出やキャンプで何をしていたなど色々な記憶を取り戻してきました。こんな素敵な旅をして僕の心は洗われたような気がします。
「おじちゃん、行こう!」
「あ、竜太君!!ごめんごめん。行こうか。」
突っ立って考えていると過去の僕が呼び掛けてくれたので正気に戻ってパンを食べに行くことにしました。皆で寝ていた教室に着くとパンがたくさん用意されており、僕は食べたかったカレーパンと焼きそばパンを大人げないのですが一番乗りでゲットしました。
「おっちゃん!!ズルいぞ!!」
「長幸少年!!大人の世界はサバイバルだっ!!さあ!!競争だぞ!!」
「(いや、俺らは子供だけど・・・)」
皆が笑顔でパンを食べている・・・もうすぐ旅が、キャンプが終わるというのに皆が幸せそうに仲良くパンを食べる・・・その光景を見て僕は今にも涙が出そうになりました。でも僕は泣きませんでした。最後は笑って終わりたいと思っていたからです。
「(3日間の素敵な旅をありがとう・・・・・・!!)」
そして昼を迎えてキャンプの終わりを迎えました。校庭にワゴン車が到着して次々と子供達を乗せて古座駅へと向かいました。
「おじちゃん、ばいばーい!!」
「みんな!!また会おうな!!」
僕は車から手を振る皆に手を振って見送っていました。するとマサトさんは腕時計を見て時間を確認すると僕に言いました。
「竜太君、僕達もそろそろ行くぞ。」
「・・・は、はいっ!!」
マサトさんがそう言うとシェリルさんが車を少し動かして僕達の前で停めました。
「サンキュー、シェリル!!」
「マサトさん、竜太さん!!古座駅まで行きましょう!!あと荷物入れにこの小さなミニバッグをマサトさんに渡しますね。」
「ありがとうございます、シェリルさん。」
そして僕達は車に乗り込むと校舎の前でワゴン車を待つ子供達や先生達に手を振って小川小学校を後にしました。車の中で自分の荷物をバッグに入れていると皆の声が聞こえてきました。
「みんな!!またね!!」
「またね!!」
「皆さん、本当にありがとうございました!!」
「私達職員も皆さんから思い出を頂きありがとうございました!!」
「上川さん、菊池さん!!僕達こそありがとうございました!!またお会いしましょう!!」
すると過去の僕が車を追いかけてきました。シェリルさんはそれに気付いて校門で車を停めてくれました。
「おじちゃん、また会えるよね!!」
「ああ!!また会えるさ!!」
「うん、約束だよ!!」
「じゃあ、約束のハイタッチをしよう!!」
「はいっ!!」
僕は過去の僕とハイタッチをするとシェリルさんは再び車を走らせました。
「竜太君!!またな!!」
「おじちゃん、バイバイ!!」
車は駅へと向かい走りましたが校門前に居た過去の僕がどんどん小さくなって見えなくなりました。
「おじちゃん・・・」
「竜太君、また会えるよ。」
「うん!!」
淋しそうな顔で見送る過去の僕を上川さんが慰めていました。一方車は時間をかけて古座駅に到着しました。
「シェリルさん、今回はありがとうございました。」
「竜太さん、こちらこそ楽しい思い出をありがとうございました。また機会があればお会いしましょうね!!ではマサトさんはまた後日。」
「おう!シェリル!!お疲れさん!!」
「では皆さん、お疲れ様でした。」
そしてシェリルさんはどこかへ車を走らせて去っていきました。そしてマサトさんは僕に切符を渡してくれてから言いました。
「さあ、竜太君。もうすぐ電車が来るから串本まで移動してから特急に乗るよ。」
「はい!!」
そして僕達も古座駅から各停電車に乗って串本駅まで移動しました。そして串本駅で僕達は話をしました。
「この度はありがとうございました。」
「いえいえ。それよりも反省会をしよう。僕は様子見を優先したけど最初から声をかけておけばよかったかなと思いました。そうしたら皆ともっと深く交流できたかもね・・・」
「僕は・・・緊張していたからちょっとコミュニケーションがとれなかったのが少し残念です。確かに最初から声をかけていればまた違っていたかも。コミュニケーションが苦手なんかな?」
「ははは、仕方ないよ。あり得ない経験だからね。」
少し話をしていると特急『スーパーくろしお』号が到着しました。
(※特急『くろしお』号の種類の一つ。1989年7月22日に運転を開始。1992年当時は白い車体に赤と黄色のラインが引かれていた。後に海をイメージした白とエメラルド色にリニューアルした。2012年3月17日のダイヤ改正に伴い『くろしお』に統合されて1996年運転開始の『オーシャンアロー』号と共に廃止された。)
僕達はスーパーくろしお号に乗ると隣同士で反省会を再開しました。
「竜太君、充実な旅だったね。」
「でももう少し早く過去の自分と出会っていればと思うと。」
「いや、今回のような感じが良いよ。あんまりじゃれ合いすぎるとちょっとね・・・色々とややこしくなるよ。」
「あ・・・そうですよね。」
一応タイムスリップの旅なので下手にじゃれ合いすぎると過去に悪影響を及ぼすとのことでこれくらいの交流が良かったのだというのです。すると・・・
「僕は・・・君をこの旅に連れてきて良かったと思う。君の気持ちにもかすかに変化が見られるよ。」
「・・・!?そういや気持ちが少し軽くなったというか前よりも穏やかな気持ちになっているようですね。他人事みたいですみませんが・・・」
マサトさんに指摘されると僕は旅に出る前よりも気持ちが穏やかになっていることに気付きました。そしてマサトさんは僕にあることを言いました。
「君は短歌が好きだろ?この気持ちを短歌で表現して見せてよ!!」
「え・・・!?短歌は好きですが何故それを・・・!?」
「まあ、それは僕は何でもお見通しだから・・・じゃあ。3、2、1、キュー!!」
突然無茶ぶりをしてきたマサトさんでしたが僕は短歌で今の気持ちを表しました。
「・・・過去の夏、戻りてそこは、きのくにで、自然の中で、駆け巡る僕・・・」
「いいねえ~、昔に戻って元気よく学校を駆け巡った思い出がうまく表現されているよ!!」
「そうでしょうか?ありがとうございます。」
「もう少ししたら天王寺に着くからね・・・って・・・あれ!?」
「ぐー、ぐー・・・」
「寝てしまったか。仕方ないなあ、疲れていたもんな。」
「むにゃむにゃ・・・八雲立つ、出雲八重垣、妻ごみに、八重垣作る、その八重垣を~・・・」
「須佐之男命?(まさか寝言で短歌を・・・!?)」
「ぐー・・・ニシキ御子、千剣移す、石上、神が春日の、イチカワに、告げ納めしむ、ニシキ御子、司となせる~・・・」
「(ホツマツタヱの短歌じゃないか・・・よく知っているなあ。)」
「う~ん・・・めくみしる、若葉のみとり、かけ高く、三笠の森に、栄みすらし・・・(たかつかさ・まさひろ)~・・・」
「(はじめて聞いたぞ。この短歌・・・)」
(※鷹司政熙とは江戸時代の関白である。後に出家した。)
どうやら僕は疲れからか寝ていたようでしかもなぜか分からないが寝言で短歌を言っていたようです。めちゃくちゃ恥ずかしいのですが・・・そして僕が目を覚ますともうすぐ天王寺駅に着くところでした。
「竜太君、天王寺に着くよ。」
「は・・・はいっ!!」
そしてスーパーくろしお号は天王寺に到着しました。電車から降りると僕達はそのまま近鉄あべの橋駅へと移動しました。
「では、ありがとうございました。」
「いや、竜太君。恵我ノ荘までついていくよ。まだまだ話したいことがあるからね。」
「良いですか?ありがとうございます!!ところでマサトさんは一体何者で・・・?」
「別に・・・それよりもこれを飲みなよ。目覚めたばかりだからこれで目を覚ましな。あとこれも読みなよ。」
「あ、ありがとうございます!!」
マサトさんは相変わらず正体を明かしませんでしたが僕に缶のコーラと今日(1992年8月16日)の中部河内新聞の朝刊を渡してくれました。それを飲み干すと缶をポケットに入れて新聞をカバンに入れてあべの橋駅から準急橿原神宮前行きに乗って河内松原駅へと向かいました。
「もう終わりだな。」
「長いようで短いような3日間でした。ありがとうございます。」
「フフフ・・・また行きたいところがあれば僕はいつでも連れていってあげるからね。」
「(・・・?)あ、よ、よろしくお願いします!」
少しマサトさんの言葉が引っ掛かった僕ですが頭を下げてお願いしました。そして河内松原駅で古市行きの各停電車に乗り換えて恵我ノ荘駅へと向かいます。
「古市行きに乗るか。」
「は・・・はい!!」
各停電車に乗ってすぐに恵我ノ荘駅へと到着すると僕達は降りてベンチに座りました。
「お疲れさん!!竜太君!!」
「マサトさん・・・お疲れ様です!!」
「これからどうするのかな?」
「一旦家に帰って・・・」
「いっちゃん!!いっちゃん!!」
「ん・・・に、新山さん!?僕は・・・あれ!?何でここに!?」
なんと僕は恵我ノ荘駅の1番線ホームのベンチで寝ていたようで新山さんと『朝倉』の名刺をつけた若い駅員さんが僕の目の前にいました。
「大丈夫でしょうか?ご友人さんが起こしに来てくれたのですよ。」
「いっちゃんが恵我ノ荘のホームで寝ているのをたまたま見つけたんや。疲れてたんやな・・・もう松本さんは俺が配達してきたからな、あれから松本さんからまた電話があって届けたんやけど持っていくの遅れてるのに怒ってへんかったから大丈夫やで。」
「す、すみません・・・新山さん・・・」
まるで子を心配するかのように新山さんは僕のことを心配してくれていました。時計をみると午前8時半になっていました。仕事で迷惑をかけてしまって申し訳ない気持ちでした。そしてスマホをポケットから取り出すと使えるようになっていたので入口さんに電話しました。
「もしもし、石川です。」
『いっちゃんか!?新山さんから聞いたぞ!!寝ていたらしいな、ハハハ!!』
「すみません・・・ちょっと気がついたら・・・」
『そういうときもある!!俺らが居るから安心してや!!』
「すみません・・・ありがとうございます!!」
「さあ、いっちゃん・・・店に行こう!!」
「はい!!あと駅員さん・・・よく分からないけどホームで寝てしまいすみませんでした。」
「気にしないでください。お気を付けて!!」
「ありがとうございます!!」
僕は新山さんと駅を出てバイクに乗って帰りました。すると駅員さんは僕達の姿をずっと見つめて呟いていました。
「(・・・あの人、俺はどこかで・・・)」
帰る途中、羽曳野市の隣の松原市のコンビニによると新山さんは僕に言いました。
「いっちゃん、何か飲み物買ったるで!!」
「す、すみません!!ありがとうございます!!」
僕はお言葉に甘えてコンビニに入ると男女の若い店員さんがいました。二人は僕を少し見つめると明るく挨拶をしてくれました。
「いらっしゃいませ!!」
「おはようございます!!」
僕も挨拶をすると二人は素敵な笑顔を見せてくれました。そしてコーラを一本買うと新山さんが言いました。
「そういやいっちゃんのポケットからコーラの缶が落ちたから捨てといたで。」
「あ、そうですか。わざわざすみません!!(あれ、コーラ・・・飲んでたっけ?)」
その時店員さんの会話が少し聞こえてきました。
「お前の兄貴元気か?知子よ。」
「今日も恵我ノ荘の駅で張り切っているわ。」
「ハハハ・・・あいつらしいや。」
すると会話中に新山さんが会計してもらいにレジにいくと二人の名札が見えまして男性は『朝酌』で女性は『白樫』でした。
「ありがとうございます!!」
僕達は会計を済ませると外に出ましたが店員二人は僕達のことを見つめていました。
「(なあ、知子。あの若い人は・・・)」
「(私も見たことがあるわ。あの人・・・)」
二人の視線に気づかない僕はバイクの鍵を鍵穴に差し込もうとした時、右手に蚊に噛まれた大きな痕を見つけました。
「・・・でかいなあ。」
「いっちゃん、蚊に噛まれてやるやん!!後で薬ぬったるわ!!」
「すみません、よろしくお願いします。」
「謝らんでいい!!気にすんな。あとベンチに置いてたバッグやけど渡しとくわ。これいつ買ったん?」
「(え・・・?これいつ買ったんだ?)・・・ああ、拾ったんですよ。」
「ハハハ!!だと思ったわ。」
「いいカバンで勿体なさそうだったんでワハハハ!!」
二人で笑ってからバイクで職場に戻りましたがコンビニの駐車場に停車していた一台の車から僕たちの様子を見ている人が二人いました。車は小学校近くの県道で僕に声をかけてくれた人の車と同じで一人はなんとマサトさんでしたが少しフケているのかしわがありました。もう一人は見た感じは高齢者のようでモーニング姿にサングラスをかけながら運転席にいました。
「マサト君・・・あの子はどうだった?」
「純粋で子供のような心の持ち主でしたね。良い子でしたよ。」
「君のタイムスリップトラベラーの力はすごいようだね。」
「彼の記憶は消していますが他の方の記憶は消せていないですが・・・」
「それくらいは構わないさ・・・それよりあの子・・・いや、あいつもまだまだやな。私の年齢くらいまでにまださらに苦難が待っているのだから・・・」
二人が会話をしている頃、僕達は職場に到着しました。恵我ノ荘の駅で目を覚ましてからの僕からすればよく分からない不思議なことが続いていますがこれで僕のタイムスリップの旅は終わりました。結局僕はマサトさんの正体は分からず、25年前の林間キャンプの思い出がこれからどう自分に影響するか分かりませんが素敵な経験になったはずです。そして林間キャンプでの思い出のおかげで今までのストレスが嘘のようになくなりすっきりした気分になりました。また気持ちを入れ替えて新しい自分を探しにいこうと思います。
〈一か月後、2017年9月19日朝〉
職場で3人で盛り上がっている頃、僕はミニバッグに入っていた新聞を読むと1992年の日付になっているのに気付きました。
「あれ・・・25年前の新聞だ・・・!!」
「ほんまや・・・何であるんやろ?」
「分からへん・・・!!」
記憶は消えても“経験”自体は消えていないようでした。
〈その後〉
10月に入り、夏の出来事を忘れつつあった僕は6日の夜、職場でウトウトしているとある人物が店にやって来ました。
「おい!新聞入ってないぞ!いい加減にせ・・・」
「す・・・すみません!」
「き・・・君はもしかして・・・」
「ん?あ、あ・・・あなたは!!」
少し寝ていたため怒鳴られて飛び上がった僕でしたが店に来た人物は僕のことを知っていたようで彼の顔を見ると・・・
「俺ですよ!上川です!」
「上川さん!!お久しぶりです!!」
「元気してたかい?あのな、竜太君!!今度の連休に奈良県の方でちょっと竜太君と一緒にいた連中達と集まることになったけど来ないか?」
「あ、はい!いきます!!」
あの夏は終わりましたがあの時に一緒にいた皆との物語はまだまだ続きそうです。
《完》
子供達と一緒に校舎内で一夜を過ごすことになった僕達は少しリラックスしながら寝る準備をしていると過去の僕を含む子供達が僕の元にやってきました。
「よぉ!おっちゃん!」
「おじちゃん、遊びに来たよ。」
「お、竜太君と隣にいるのは誰かな?」
「俺はオサユキ、大谷長幸だよ。こいつの面倒係だよ!」
「(あ、オサユキ兄ちゃんかあ。久しぶりだなあ。昔よく遊んでくれたよなあ・・・)それで何か用事かな?」
「遊んでほしいねん!」
「え?もうすぐ消灯だけど?」
「マクラ投げしたいねん!!」
「もう寝てる子もいるしやめておこうよ。」
「おっちゃんのケチ!!」
「こらっ!!長幸っ!!お兄さんが困っているだろうが!!寝る準備をしなさいっ!!」
「わあ!上川先生!!すみませ~ん!!」
「(ホッ・・・)竜太君はどうするの?」
「僕は長幸兄ちゃんについてきただけだから・・・あとちょっとお願いがあるの。」
「?」
あとちょっとで騒がしくなりかけましたが上川さんのお陰で何とかなりました。また過去の僕は何か秘密のお願いがあったのか僕に耳打ちしました。僕はそれを聴いて笑顔で彼を見つめました。
「竜太君、良いよ。」
「楽しみだね!!」
僕が返事をすると過去の僕も笑顔になりました。
「じゃあ、みんな!消灯の時間です!おやすみなさい!!」
「はーい!」
菊池先生が皆に消灯を告げると全員すぐに眠りにつきました。
「(さて・・・僕も寝るか。)」
僕も皆が寝たのを確認してからそのまま眠りについたのです。
〈翌朝〉
小鳥のさえずりが聞こえる朝、僕はいつにもない気持ちよい目覚めと共に起き上がると校庭に出て昔のようにしずかにジョギングしていました。ジョギング中に右腕を蚊に噛まれてしまいましたが気にせず待っていましたが痒かったです。すると過去の僕もすぐに校庭にやって来ました。
「痒い・・・蚊に噛まれてしもうた・・・!!しかも噛まれた痕がでかい・・・・・・」
「おじちゃん、おはよう!!」
「ああ、おはよう竜太君!!」
「一緒に走ろうね。」
「勿論!!」
実は昨晩約束していたのは皆が起きていない早朝にジョギングをしたいということでした。そして僕達は楽しく話をしながらジョギングしていました。
「気持ちいいね、竜太君!!」
「楽しいね~!!」
「ね~!!」
「またここに来たいね!」
「僕も来たいよ!!」
楽しく走る二人ではあったがいよいよ別れの時が来ていたのでした。僕は過去の僕の顔を見ると彼も時折寂しそうな目をしていたのでもうすぐ訪れる別れを理解しているのかもしれません。すると菊池さんが僕達を呼びに来てくれました。
「石川さん!!竜太君!!早いですね!!パンが用意されているから食べましょう!!」
「はいっ!!ありがとうございます!!」
「わ~い、パン♪パン♪」
過去の僕も僕自身も朝飯が食べらるのでよろこびました。すると僕はあることを思い出したのです。
「(そういえば上川さんも菊池さんも以前僕と遊んでくれたんだ。他の先生との思い出が深いのと学園に居た期間が短かった上に幼かったから少し忘れていたんだ・・・!!)」
僕は旅を通じて先生達との思い出やキャンプで何をしていたなど色々な記憶を取り戻してきました。こんな素敵な旅をして僕の心は洗われたような気がします。
「おじちゃん、行こう!」
「あ、竜太君!!ごめんごめん。行こうか。」
突っ立って考えていると過去の僕が呼び掛けてくれたので正気に戻ってパンを食べに行くことにしました。皆で寝ていた教室に着くとパンがたくさん用意されており、僕は食べたかったカレーパンと焼きそばパンを大人げないのですが一番乗りでゲットしました。
「おっちゃん!!ズルいぞ!!」
「長幸少年!!大人の世界はサバイバルだっ!!さあ!!競争だぞ!!」
「(いや、俺らは子供だけど・・・)」
皆が笑顔でパンを食べている・・・もうすぐ旅が、キャンプが終わるというのに皆が幸せそうに仲良くパンを食べる・・・その光景を見て僕は今にも涙が出そうになりました。でも僕は泣きませんでした。最後は笑って終わりたいと思っていたからです。
「(3日間の素敵な旅をありがとう・・・・・・!!)」
そして昼を迎えてキャンプの終わりを迎えました。校庭にワゴン車が到着して次々と子供達を乗せて古座駅へと向かいました。
「おじちゃん、ばいばーい!!」
「みんな!!また会おうな!!」
僕は車から手を振る皆に手を振って見送っていました。するとマサトさんは腕時計を見て時間を確認すると僕に言いました。
「竜太君、僕達もそろそろ行くぞ。」
「・・・は、はいっ!!」
マサトさんがそう言うとシェリルさんが車を少し動かして僕達の前で停めました。
「サンキュー、シェリル!!」
「マサトさん、竜太さん!!古座駅まで行きましょう!!あと荷物入れにこの小さなミニバッグをマサトさんに渡しますね。」
「ありがとうございます、シェリルさん。」
そして僕達は車に乗り込むと校舎の前でワゴン車を待つ子供達や先生達に手を振って小川小学校を後にしました。車の中で自分の荷物をバッグに入れていると皆の声が聞こえてきました。
「みんな!!またね!!」
「またね!!」
「皆さん、本当にありがとうございました!!」
「私達職員も皆さんから思い出を頂きありがとうございました!!」
「上川さん、菊池さん!!僕達こそありがとうございました!!またお会いしましょう!!」
すると過去の僕が車を追いかけてきました。シェリルさんはそれに気付いて校門で車を停めてくれました。
「おじちゃん、また会えるよね!!」
「ああ!!また会えるさ!!」
「うん、約束だよ!!」
「じゃあ、約束のハイタッチをしよう!!」
「はいっ!!」
僕は過去の僕とハイタッチをするとシェリルさんは再び車を走らせました。
「竜太君!!またな!!」
「おじちゃん、バイバイ!!」
車は駅へと向かい走りましたが校門前に居た過去の僕がどんどん小さくなって見えなくなりました。
「おじちゃん・・・」
「竜太君、また会えるよ。」
「うん!!」
淋しそうな顔で見送る過去の僕を上川さんが慰めていました。一方車は時間をかけて古座駅に到着しました。
「シェリルさん、今回はありがとうございました。」
「竜太さん、こちらこそ楽しい思い出をありがとうございました。また機会があればお会いしましょうね!!ではマサトさんはまた後日。」
「おう!シェリル!!お疲れさん!!」
「では皆さん、お疲れ様でした。」
そしてシェリルさんはどこかへ車を走らせて去っていきました。そしてマサトさんは僕に切符を渡してくれてから言いました。
「さあ、竜太君。もうすぐ電車が来るから串本まで移動してから特急に乗るよ。」
「はい!!」
そして僕達も古座駅から各停電車に乗って串本駅まで移動しました。そして串本駅で僕達は話をしました。
「この度はありがとうございました。」
「いえいえ。それよりも反省会をしよう。僕は様子見を優先したけど最初から声をかけておけばよかったかなと思いました。そうしたら皆ともっと深く交流できたかもね・・・」
「僕は・・・緊張していたからちょっとコミュニケーションがとれなかったのが少し残念です。確かに最初から声をかけていればまた違っていたかも。コミュニケーションが苦手なんかな?」
「ははは、仕方ないよ。あり得ない経験だからね。」
少し話をしていると特急『スーパーくろしお』号が到着しました。
(※特急『くろしお』号の種類の一つ。1989年7月22日に運転を開始。1992年当時は白い車体に赤と黄色のラインが引かれていた。後に海をイメージした白とエメラルド色にリニューアルした。2012年3月17日のダイヤ改正に伴い『くろしお』に統合されて1996年運転開始の『オーシャンアロー』号と共に廃止された。)
僕達はスーパーくろしお号に乗ると隣同士で反省会を再開しました。
「竜太君、充実な旅だったね。」
「でももう少し早く過去の自分と出会っていればと思うと。」
「いや、今回のような感じが良いよ。あんまりじゃれ合いすぎるとちょっとね・・・色々とややこしくなるよ。」
「あ・・・そうですよね。」
一応タイムスリップの旅なので下手にじゃれ合いすぎると過去に悪影響を及ぼすとのことでこれくらいの交流が良かったのだというのです。すると・・・
「僕は・・・君をこの旅に連れてきて良かったと思う。君の気持ちにもかすかに変化が見られるよ。」
「・・・!?そういや気持ちが少し軽くなったというか前よりも穏やかな気持ちになっているようですね。他人事みたいですみませんが・・・」
マサトさんに指摘されると僕は旅に出る前よりも気持ちが穏やかになっていることに気付きました。そしてマサトさんは僕にあることを言いました。
「君は短歌が好きだろ?この気持ちを短歌で表現して見せてよ!!」
「え・・・!?短歌は好きですが何故それを・・・!?」
「まあ、それは僕は何でもお見通しだから・・・じゃあ。3、2、1、キュー!!」
突然無茶ぶりをしてきたマサトさんでしたが僕は短歌で今の気持ちを表しました。
「・・・過去の夏、戻りてそこは、きのくにで、自然の中で、駆け巡る僕・・・」
「いいねえ~、昔に戻って元気よく学校を駆け巡った思い出がうまく表現されているよ!!」
「そうでしょうか?ありがとうございます。」
「もう少ししたら天王寺に着くからね・・・って・・・あれ!?」
「ぐー、ぐー・・・」
「寝てしまったか。仕方ないなあ、疲れていたもんな。」
「むにゃむにゃ・・・八雲立つ、出雲八重垣、妻ごみに、八重垣作る、その八重垣を~・・・」
「須佐之男命?(まさか寝言で短歌を・・・!?)」
「ぐー・・・ニシキ御子、千剣移す、石上、神が春日の、イチカワに、告げ納めしむ、ニシキ御子、司となせる~・・・」
「(ホツマツタヱの短歌じゃないか・・・よく知っているなあ。)」
「う~ん・・・めくみしる、若葉のみとり、かけ高く、三笠の森に、栄みすらし・・・(たかつかさ・まさひろ)~・・・」
「(はじめて聞いたぞ。この短歌・・・)」
(※鷹司政熙とは江戸時代の関白である。後に出家した。)
どうやら僕は疲れからか寝ていたようでしかもなぜか分からないが寝言で短歌を言っていたようです。めちゃくちゃ恥ずかしいのですが・・・そして僕が目を覚ますともうすぐ天王寺駅に着くところでした。
「竜太君、天王寺に着くよ。」
「は・・・はいっ!!」
そしてスーパーくろしお号は天王寺に到着しました。電車から降りると僕達はそのまま近鉄あべの橋駅へと移動しました。
「では、ありがとうございました。」
「いや、竜太君。恵我ノ荘までついていくよ。まだまだ話したいことがあるからね。」
「良いですか?ありがとうございます!!ところでマサトさんは一体何者で・・・?」
「別に・・・それよりもこれを飲みなよ。目覚めたばかりだからこれで目を覚ましな。あとこれも読みなよ。」
「あ、ありがとうございます!!」
マサトさんは相変わらず正体を明かしませんでしたが僕に缶のコーラと今日(1992年8月16日)の中部河内新聞の朝刊を渡してくれました。それを飲み干すと缶をポケットに入れて新聞をカバンに入れてあべの橋駅から準急橿原神宮前行きに乗って河内松原駅へと向かいました。
「もう終わりだな。」
「長いようで短いような3日間でした。ありがとうございます。」
「フフフ・・・また行きたいところがあれば僕はいつでも連れていってあげるからね。」
「(・・・?)あ、よ、よろしくお願いします!」
少しマサトさんの言葉が引っ掛かった僕ですが頭を下げてお願いしました。そして河内松原駅で古市行きの各停電車に乗り換えて恵我ノ荘駅へと向かいます。
「古市行きに乗るか。」
「は・・・はい!!」
各停電車に乗ってすぐに恵我ノ荘駅へと到着すると僕達は降りてベンチに座りました。
「お疲れさん!!竜太君!!」
「マサトさん・・・お疲れ様です!!」
「これからどうするのかな?」
「一旦家に帰って・・・」
「いっちゃん!!いっちゃん!!」
「ん・・・に、新山さん!?僕は・・・あれ!?何でここに!?」
なんと僕は恵我ノ荘駅の1番線ホームのベンチで寝ていたようで新山さんと『朝倉』の名刺をつけた若い駅員さんが僕の目の前にいました。
「大丈夫でしょうか?ご友人さんが起こしに来てくれたのですよ。」
「いっちゃんが恵我ノ荘のホームで寝ているのをたまたま見つけたんや。疲れてたんやな・・・もう松本さんは俺が配達してきたからな、あれから松本さんからまた電話があって届けたんやけど持っていくの遅れてるのに怒ってへんかったから大丈夫やで。」
「す、すみません・・・新山さん・・・」
まるで子を心配するかのように新山さんは僕のことを心配してくれていました。時計をみると午前8時半になっていました。仕事で迷惑をかけてしまって申し訳ない気持ちでした。そしてスマホをポケットから取り出すと使えるようになっていたので入口さんに電話しました。
「もしもし、石川です。」
『いっちゃんか!?新山さんから聞いたぞ!!寝ていたらしいな、ハハハ!!』
「すみません・・・ちょっと気がついたら・・・」
『そういうときもある!!俺らが居るから安心してや!!』
「すみません・・・ありがとうございます!!」
「さあ、いっちゃん・・・店に行こう!!」
「はい!!あと駅員さん・・・よく分からないけどホームで寝てしまいすみませんでした。」
「気にしないでください。お気を付けて!!」
「ありがとうございます!!」
僕は新山さんと駅を出てバイクに乗って帰りました。すると駅員さんは僕達の姿をずっと見つめて呟いていました。
「(・・・あの人、俺はどこかで・・・)」
帰る途中、羽曳野市の隣の松原市のコンビニによると新山さんは僕に言いました。
「いっちゃん、何か飲み物買ったるで!!」
「す、すみません!!ありがとうございます!!」
僕はお言葉に甘えてコンビニに入ると男女の若い店員さんがいました。二人は僕を少し見つめると明るく挨拶をしてくれました。
「いらっしゃいませ!!」
「おはようございます!!」
僕も挨拶をすると二人は素敵な笑顔を見せてくれました。そしてコーラを一本買うと新山さんが言いました。
「そういやいっちゃんのポケットからコーラの缶が落ちたから捨てといたで。」
「あ、そうですか。わざわざすみません!!(あれ、コーラ・・・飲んでたっけ?)」
その時店員さんの会話が少し聞こえてきました。
「お前の兄貴元気か?知子よ。」
「今日も恵我ノ荘の駅で張り切っているわ。」
「ハハハ・・・あいつらしいや。」
すると会話中に新山さんが会計してもらいにレジにいくと二人の名札が見えまして男性は『朝酌』で女性は『白樫』でした。
「ありがとうございます!!」
僕達は会計を済ませると外に出ましたが店員二人は僕達のことを見つめていました。
「(なあ、知子。あの若い人は・・・)」
「(私も見たことがあるわ。あの人・・・)」
二人の視線に気づかない僕はバイクの鍵を鍵穴に差し込もうとした時、右手に蚊に噛まれた大きな痕を見つけました。
「・・・でかいなあ。」
「いっちゃん、蚊に噛まれてやるやん!!後で薬ぬったるわ!!」
「すみません、よろしくお願いします。」
「謝らんでいい!!気にすんな。あとベンチに置いてたバッグやけど渡しとくわ。これいつ買ったん?」
「(え・・・?これいつ買ったんだ?)・・・ああ、拾ったんですよ。」
「ハハハ!!だと思ったわ。」
「いいカバンで勿体なさそうだったんでワハハハ!!」
二人で笑ってからバイクで職場に戻りましたがコンビニの駐車場に停車していた一台の車から僕たちの様子を見ている人が二人いました。車は小学校近くの県道で僕に声をかけてくれた人の車と同じで一人はなんとマサトさんでしたが少しフケているのかしわがありました。もう一人は見た感じは高齢者のようでモーニング姿にサングラスをかけながら運転席にいました。
「マサト君・・・あの子はどうだった?」
「純粋で子供のような心の持ち主でしたね。良い子でしたよ。」
「君のタイムスリップトラベラーの力はすごいようだね。」
「彼の記憶は消していますが他の方の記憶は消せていないですが・・・」
「それくらいは構わないさ・・・それよりあの子・・・いや、あいつもまだまだやな。私の年齢くらいまでにまださらに苦難が待っているのだから・・・」
二人が会話をしている頃、僕達は職場に到着しました。恵我ノ荘の駅で目を覚ましてからの僕からすればよく分からない不思議なことが続いていますがこれで僕のタイムスリップの旅は終わりました。結局僕はマサトさんの正体は分からず、25年前の林間キャンプの思い出がこれからどう自分に影響するか分かりませんが素敵な経験になったはずです。そして林間キャンプでの思い出のおかげで今までのストレスが嘘のようになくなりすっきりした気分になりました。また気持ちを入れ替えて新しい自分を探しにいこうと思います。
〈一か月後、2017年9月19日朝〉
職場で3人で盛り上がっている頃、僕はミニバッグに入っていた新聞を読むと1992年の日付になっているのに気付きました。
「あれ・・・25年前の新聞だ・・・!!」
「ほんまや・・・何であるんやろ?」
「分からへん・・・!!」
記憶は消えても“経験”自体は消えていないようでした。
〈その後〉
10月に入り、夏の出来事を忘れつつあった僕は6日の夜、職場でウトウトしているとある人物が店にやって来ました。
「おい!新聞入ってないぞ!いい加減にせ・・・」
「す・・・すみません!」
「き・・・君はもしかして・・・」
「ん?あ、あ・・・あなたは!!」
少し寝ていたため怒鳴られて飛び上がった僕でしたが店に来た人物は僕のことを知っていたようで彼の顔を見ると・・・
「俺ですよ!上川です!」
「上川さん!!お久しぶりです!!」
「元気してたかい?あのな、竜太君!!今度の連休に奈良県の方でちょっと竜太君と一緒にいた連中達と集まることになったけど来ないか?」
「あ、はい!いきます!!」
あの夏は終わりましたがあの時に一緒にいた皆との物語はまだまだ続きそうです。
《完》
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