ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第11章・新たな武器と過酷な道のり

孤児院②

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ちなみに孤児院に来る前の将志とリンは直子曰く悲惨な状態であったという。二人はいつ親に捨てられたか分からず地面に落ちた食べ物や雑草に汚い川の水を食べたり飲んだりして過ごしていたという。

「俺らは頼る人が気がつけば居なかったんだ…………」

偶然出会った二人で乗り越えてきたからこそ将志はリンとの関係を悪くさせたくなかったようだ。

「でも何でケンカしたのかな?」

「…………ちょっとそれは今すぐには言えない。」

「将志君は中々ものが言えない子なの。恥ずかしがりやさんなのよ。」

「直子さんは将志君が何歳の時に出会ったのですか?」

「そうね……将志君もリンちゃんも四歳くらいの頃ね……」

「いったい両親はこの子達のことをどう思っていたのか……理解に苦しみます。」

「私もこの子達の家族が平気で過ごしているのかと思うと不思議に思うわ……理解に苦しむ。」

そしていろいろ話を聞いているうちに日も暮れてきたのである。

「私はそろそろ帰ります。」

校舎に戻ろうとしたヒナに直子は呼び止めたのである。

「将志君から聞いたけどあの校舎に戻るの?だったらここに泊まっていってください。ここなら人もいるし、風呂も食事もあるから……」

さすがに断る理由もなく、ヒナは言葉に甘えて宿泊することにしたのである。校舎に置いているカップラーメンなどの荷物は明日取りに行くことにしたのである。そして一階の空き部屋で宿泊するのだがヒナの寝ている姿を窓から覗いている男がいたのだ……

「お、こんなところにいたか……」

西村雄麿である。スーザックからわざわざヒナの様子を見に来たようである。校舎に置き去りにした行為への反省や罪悪感は全く見られず、何食わぬ顔でヒナを見つめているのだ。

「まあいい。これから俺の計画が一段と順調に進むであろう。」

西村は一体何を企んでいるのか……分かっていることはただ一つで『ヒナの旅を妨害した上に無理矢理山の中へ連れていって置き去りにしたことを謝罪する気はない』のである。

「まあ、校舎でも孤児院でもいいから今はゆっくり休んでおけ。またこれからが大事な局面だからな…………」

西村は孤児院を後にしてスーザックへと戻ったのである。


翌朝、ヒナは校舎に向かうと中の教室に置いていた荷物(カップラーメン他)を全て回収して孤児院へと運ぶ。この作業に孤児院の副院長である植原栄英(うえはら・さかえい、男性)も車を運転して協力してくれたのである。

「わざわざありがとうございました。」

「いやいや、こちらこそ子供達の世話をしてくださりありがとうございます。旅の目処がつくまでこの孤児院で休んでください。」

「ありがとうございます。ゆっくり休みます。」

ヒナは好意を受け止めた。ところがこの宿泊を受け入れたことによってまたややこしい事態を招くことになろうとは夢にも思わなかったのである。孤児院の窓を西村ともう一人が除いていた。

「北庄司……あの子供を狙うんだ……」

「オッケー!」

どうやら西村ともう一人の誰かである。西村は周参見野一族の一人を呼び出して施設につれてきたようだ。この西村の計画がヒナの状況を乱すことになるのだ。
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