ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第12章・ヒナの国造り

裏の処理人・真藤寺リラ①

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回想に入り、リラがヒナと対峙する5週間のある日……

「かあぁっ!!あのペイビー村の野次見(やじみ)夫妻の態度が腹立つわ!!殺意沸くなあ!!」

ロージーパインの小包配達業の男性がある夫婦に舐めた態度を取られたらしく怒りを露にしているとある女性が男性に声をかけたのである。

「こんにちは、あなたお名前は?」

「東口董朗(ひがしぐち・とうろう)です。」

「もしよければ三万円でその憎たらしい夫婦を消すことが出来るわよ!?」

「ま……まじか!?頼んます!!」

男性はその女性に三万円を払うと女性は言う。

「私は真藤寺リラ……裏社会の中心人物よ……!!」

「可愛いと思いきや、恐ろしい女だな……」

「トゲがある方が良いわよ(笑)。」

そのやり取りのわずか3日後に野次見夫妻はペイビーの自宅において謎の変死を遂げたのである。外傷は見えず、心臓が破裂したという。

「なんやなんや?夫婦ともに殺られたんか?」

「態度悪いから全然哀しないわ。」

「死んだって『あ……そう』としかね……」

「加枝根画(かえねがさん)、それは俺も思いますわ。」

さいわい、人望がないためか誰がやったのかとかどうやって消したとか本当はただの心臓破裂かとかの議論がまるで無く、ただ二人が亡くなった程度にしか話題にならなかったのである。

「う……うまくいきましたが……これは……」

「これは空気弾(エア・ガン)という技で撃っても弾は出ないけど空気の弾が身体に貫通して心臓を貫くのよ……って依頼者まで撃っちゃったわ……」


回想が終わり、ヒナはリラの残忍な手口に憤りを覚えたのである。

「あなた……最低な人間ね!!罪もない夫婦を殺してさらには依頼者まで技の説明のふりをして殺すなんてとんでもないわ!!」

「何を言うのかしら?生きるためにはこれくらいしないとダメなのよ?あなたには分からないかもしれないが生きるために私は殺人も躊躇しなかったわ……」

その彼女は小さい頃の自分の姿を脳裏に浮かべていた。戦火が残るある村で小さいながらにナイフを持って仁王立ちするリラの姿があった。彼女の修羅場はヒナには想像できないことであった。

「孤児院からも追い出され、両親も戦火で亡くしてどうやって生きるの?あなたには分からないでしょうがそれが現実なのよ!!」

だがヒナはその言葉を聞き、怒りに更なる火をつけたのである。

「だからって殺人は許されるの!?ふざけないで!!どんな生き方をしても頑張って生きる人もいるわ!!私も両親はいなくて孤児院で温かく育ったかもしれないけど辛かったわよ!!だから苦しい生い立ちを犯罪の言い訳にしないで!!」

その言葉を聞いたリラは反論はしなかった。だが闘いの火ぶたはすでに切られていたのだ。


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