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第1章・ただの高校生が・・・

(mission6)ミアーマ到着

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 マスタードさんを仲間に(?)した僕達が到着したのはやや都会的な雰囲気が醸し出されるミアーマという村であった。しかし村というより町と言うべきか・・・


 「ここが【ミアーマ】だよ太郎くん!!太郎くんは覚えているよね?」


 「?」


 「もう忘れたのかな!?ナウパレスで話した・・・!!」


 「大丈夫ですよリュウさん!!この村の外れで採れる【ミアーマコットン】のことでしょう?」


 「よく覚えていたね。正解だ。」


 「リュウさんとやら、お前はこの村に何か用があるのか?太郎とやらの旅のサポートじゃないのか?」


 「勿論太郎くんのサポートだよ!!そのために来たんだよ!!」


 「いや・・・さぁ・・・ミアーマコットンだったか?その話をしているときのお前の目がP(※1)になっていたんだが・・・」


 「いやあ~っ!!な~んのことかしら~!?」


 「口笛吹きながらごまかすなっ!!」


 なぜかマスタードさんに怒られているリュウさん・・・先程とは違う光景だ。しかしリュウさんはなぜミアーマに来たのか知りたいが・・・


 「リュウさん・・・ミアーマに何をしに来たのですか?」


 「ミアーマ・・・?あぁ・・・そうそう。ここでミアーマコットンを採れるだけ採って君の旅の収入源に・・・いたたた・・・」


 マスタードさんは半分キレながら右手でリュウさんの右耳を引っ張っていた。


 「あんたは一体何を考えているんだ!?こいつの旅を利用して自分の金儲けを企んでいるのか!?」


 「違う違う!!いたたた・・・あ、カード・・・」


 リュウさんがカードを懐から取り出そうとするとマスタードさんはすぐにリュウさんの耳を引っ張るのをやめた。そしてマスタードさんは僕の方を向いて言う。


 「とりあえず太郎だったか・・・一応俺も途中までは協力してやるがカードが返ってきたらもう後は自分でしろよ。」


 「はい、ありがとうございます!!」


 「もう俺は組織には戻れねえ。リュウのやつの目的地に着いたら話をしてやるから後は自分の力で切り開きな。まあお前みたいなやつなら協力者くらい一人か二人は出てくるだろうがな。」


 「は・・・はい!!」


 マスタードさんは敵対していた時と目もくちもとも違う・・・心を許せるような感じであったからだ。


 「じゃあ二人ともあそこで昼飯にしよう!!」


 リュウさんは突然蕎麦屋に指を差して食事をしようと言い出したのだ。


 「は!?昼飯早いな!!!」


 「あの・・・僕の旅の時間が・・・」


 「だ~い丈夫さっ!!」


 顔や信念とは裏腹にマイペースなリュウさんに翻弄される僕達は結局昼食をとることに。しかしこの店に来たのは本当に運命だったような気がすることを僕達は後に実感するのだ。


 「蕎麦、うめえな!!」


 「今は食事する気にはなれないが・・・確かにうまい。太郎はどうだ?」


 「美味しいですよ!!つゆがしっかり蕎麦の味を引き立てています。」


 三人でのんきにざるそばらしき蕎麦を食しているとリュウさんの座る席の隣の机の席に二人組のいかつい男性達が座ったのである。


 「なあ・・・あのテロ事件を知っているかボーガン?」


 「ああ、知ってるよトルド。ガキが死刑になったやつだろ?」


 「(二人とも静かに・・・隣の会話を聞くぞっ!!)」


 隣の会話を聞いたリュウさんは僕達に静かにするよう指示して僕とマスタードさんは頷いて何も喋らなかったのである。


 「ああそうだ。あの事件だが本当の犯人はあのガキじゃないそうだ。」


 「あいつの写真を見たがそれくらい分かるわ。それで本当の犯人はどんなやつだ?」


 「ああ・・・噂によると今日の夕方辺りにミアーマコットンの件に関してこの村の村長と話をするらしいとか。」


 「ほぉ・・・」


 話を真剣に聞いている僕とリュウさんだったがよく見ると僕の右隣にいたマスタードさんがいなくなっていた。


 「あら?マスタードさんがいないですよ・・・」


 「本当だ・・・!!」


 「コラッ!!貴様!!そりゃ本当の情報か!?」


 「え!?」


 僕とリュウさんは隣の二人組の席を見るとマスタードさんは二人組の一人の胸ぐらを掴んで何かを問い詰めていたのである。


 「貴様!!それは本当なんだな!?」


 「は・・・はい・・・!!本当です!!確かにとある消息筋から聞きましたから・・・!!」


 「トルドを離してください!!」


 「うるさい!!離してやるから詳しく聞かせろや!!」


 戦ったときの表情でもう一人の方を睨み付けたマスタードさん・・・その怖さに二人組の皆さんは顔に恐怖が広まっていた。しかしマスタードさんの姿勢を見て僕は少し嬉しかったのも事実だ。



 {ある町のホテルの部屋}

 その頃、あるホテルの部屋でアタッシュケースを持った男性が大きなスマートフォンのような携帯で誰かと会話していたのであった。


 「もしもし・・・今日の夕方にミアーマでしたね。」


 『ああ・・・そうだ・・・』


 「それなら今から行かせていただきます。」


 『ああ。それとお前に言っておくが今回は・・・』


 「承知しました。」


 電話の相手があることを伝えると男性はニヤリとしたのである。



 {ミアーマの蕎麦屋}

 その時、トルドさんという方から詳しく話を聞かせてもらったのである。


 「それで今日の夕方にミアーマコットンに関わる件でこの村を訪れるそうなんです。その人物の名前も所在地も詳細も分かりませんが聞いた話ではテロ事件の犯人と・・・」


 「ならそいつが世界を滅ぼす兵器とやらの情報を抱えているんだな!!」


 「はい~・・・恐らくは・・・」


 マスタードさんの威嚇に完全に怯えているトルドさん。しかしマスタードさんのお陰でこうして話を聞き出せてよかったが・・・すると・・・


 「おい!!邪魔すんで!!」


 突然僕達の元に背広姿のチンピラのような表情の二人組が現れたのだ。


 「邪魔するなら帰れ!!」


 「あ・・・失礼しました・・・ってこの野郎!!お前達に用事があって来たんじゃ!!」


 「用事?」


 マスタードさんが帰れと言っても怯まない二人組にリュウさんは質問をした。すると・・・


 「ああ、テロ事件の首謀者のこのガキを始末しに来たんだよ。この村に来たときにたまたま見掛けて様子を見ていたんだよっ!!家族を殺された仇をここで討つっ!!」


 「え、え、え、えーーっ!?」


 「落ち着け太郎!!お前ら、テロの犯人はこいつじゃないぞ!!」


 「あんたは誰か知らないが犯罪者を庇うものは皆共犯!!殺してやるっ!!」


 すると二人組は拳銃を両手に持ち僕達に銃口を向けたのである。僕が犯人でないとマスタードさんが言っても彼らは聞く耳を持たない。実際彼らは怒りと悲しみの交ざった表情をしておりただならぬ気を感じさせるほど。


 「(こりゃ聞く耳を持ってるわけないよ・・・)」


 僕はそう呟いた。裁判長達は何を考えて報道関係に僕への協力を要請したのか分からないがテロ事件には被害者や被害者の関係者もたくさんいる。そういう人達が復讐に襲ってくるかも知れないというのは予測がつくはずなのに・・・僕達はいよいよ絶体絶命となった。







 (※1)Pとは「ポイント」の意味でこの世界のお金の単位のこと。1ポイントは日本円で1円となる。
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