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第三章 立場大逆転
16話 一方的な怒り
しおりを挟むハヤトの表情は真顔か、少し怒っているようにも見えた。もしかすると、何かを決意した顔なのかもしれない。
オリビアは一瞬で悟り、笑顔を消した。
お別れの言葉を言いに来たの?
すぐに覚悟を決める。深呼吸して息を整えると、目に力を入れてハヤトを見た。
「………さっき、誰か男と一緒にいた?」
「………え?」
予想していた言葉とは違うものが、ハヤトの口から飛び出した。オリビアが驚きに固まる。
ハヤトは足音を立ててベンチの後ろから回り込み、オリビアの前に立った。今立ったばかりの彼女の肩を掴んで、再びベンチへ座らせる。
「ハヤト、落ち着いて……っ」
抵抗するが、力が強くて敵わない。顎を掴まれ、上を向けられ、そのまま強引に唇を奪われた。
「んっ……!?」
すぐに舌を入れられ、口の中を荒らされる。何度も角度を変え、貪るような口づけが続く。
別れの言葉で無いことに安堵したが、まだ嵐は去っていない。
(なんで、ハヤトが怒ってるの…!?)
訳が分からないまま、必死に応える。ようやく解放されたと思うと、今度は首筋に強く吸い付かれた。
「ちょっと、待って……!!」
慌てて押し返すが、びくりともしない。それどころか、さらに強く吸われてしまう。
「ハヤト、痛いっ……」
抗議の声を上げると、彼はオリビアの首元から顔を離した。オリビアの肌は真っ赤になっている。
「ねぇ、誰?さっき少ししか見えなかったんだよ。そいつ、誰に喧嘩売ってると思ってるんだろう」
ハヤトが杖を取り出す。杖の先が、パチパチと火花を散らしている。その光を見て、オリビアは彼らを思い出した────ハヤトに攻撃を仕掛け、凄まじい威力の魔法弾で返り討ちに遭った数人の男子生徒を。
「嫌。言ったら、あなた彼に対して何かするつもりなんでしょ?」
「当たり前だろ」
「あなた強いんだから、そんな事したらかわいそうよ」
「僕の彼女に手を出すやつが悪い」
「…何を言ってるの?あなただって…」
オリビアは言い返そうとしたが、ハヤトの剣幕に気圧されて黙り込んだ。
「早く、教えてくれ。じゃないと、僕は……」
怒りを露わにしたハヤトの瞳が、オリビアを見つめている。いつも穏やかな彼がこんな風に怒ったところは見たことがない。
いや、知っているはずだ。彼の嫉妬深さと、その恐ろしさを。彼はその魔力を使って付き合う前の自分を操作しようとした事もある。
それ程の執着がありながらどうして、彼は他の女の人と一緒にいたのか。
何も聞けないまま強く手首を掴まれたオリビアは観念して、口を開いた。
「そ、それは────────」
「俺だよ」
オリビアが答える前に、背後から声がした。ハヤトが驚いて振り返ると、そこには茶髪の男が立っていた。
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