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狂愛へのカウントダウン
14話 連れ去られた場所
しおりを挟む「ねぇ、どこに行くのよ!!」
「僕さ、転校してくる前、宿舎があるって知らなくて。在学中の間だけ使う用の小屋を用意しちゃったんだよね。宿舎じゃ狭いからさ、そこをオリビアと僕の家にしよう」
ハヤトは平然と、とんでもない事を口にした。
「な、何言ってるの……?そんな事する訳ない!」
「嫌なの?降りる?」
彼の口調は急に冷たくなり、高度を上げた。雲に手が届きそうな程高くなって、私は青ざめて首を振り、彼の腰にしがみつく。ここで逆らう事は、出来ない。
「いい子だね」
物凄い速さで移動するハヤトにあ然とする。ホウキレースの時は、10分の1の力も出していなかったのだ。強風に息もしづらくなって、彼の背中を壁にしてようやく酸素を吸い込む。
やがてその恐ろしいスピードも緩まり、地上にほど近い高さでゆっくり止まる。木が生い茂っている。森の中のようだ。目を開けると、丸太で組み上げられた小さな小屋が建っていた。ここで2人で暮らすですって?冗談じゃない。私はホウキから降ろされるのと同時に走り出した。とにかく距離を取って、逃げるしかない。しかし、そんな私にハヤトはくすくすと笑いかけた。
「ここら辺は魔物が多い地域でね。僕さ、魔力が時々暴走するから、ゴブリンで発散してコントロールするためにあえてここに小屋を用意したんだよ。オリビアには危険だと思うな」
「ふ、ふん。そんな嘘通用しないわよ」
そう思って森の中を闇雲に進み始めると、すぐに嘘では無い事が分かる。明らかに人ではないものが雑草や、木の実を踏み荒らした形跡があった。
「ね?」
足がすくむ私にハヤトが追い付いて、肩に手を添えた。それなら、と私が出したホウキもはたいて落とし、足で踏んづける。
「オリビアって諦めが悪いね。だったら僕の事も追いかけ続けて欲しかったよ」
後ろから私を抱き締める。優しく私の髪を梳いた後、首すじを吸った。ぴくんと反応する私を、さらに愛おしそうに強く抱く。その力強さに、私は今度こそ万策尽きた。
ずっと負けず嫌いだった私が認めた程の魔法使いなのだ。本物の天才からは、逃げられる訳がなかった。
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