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Lesson.1 「悪役令嬢」という存在
6.四姉妹だけの秘密
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それぞれがさまざまな考えを頭の中で巡らせていると、コンコンと扉をノックする音が静かな部屋にひびいた。
部屋の中に再び時が流れだしたように、3人の意識が現実に引き戻され、ヴィオラはリーリウムから日記帳を受け取ると、チェストの一番上の引き出しに隠す。
「ヴィオラお姉さま? プリムラです。」
扉の前にいたのは末妹のプリムラだった。
3人の姉に溺愛され育てられた、愛らしいプリムラ。
明るいブルーの大きな瞳に軽くカールした長い睫毛がかかり、形のいい鼻と小さくてぷっくりとしたバラ色のくちびるを持つ、公爵家一の美貌の持ち主だった。
本人の唯一のコンプレックスが、姉妹の中で一番色の濃いブロンドヘアだったが、むしろ、小麦の穂のような黄金色のその髪色がプリムラの魅力を神々しく彩っていた。
プリムラは時々ヴィオラの部屋にやってきて、姉の美容グッズを借りていた。
フレエシアとリーリウムが長女のヴィオラを敬い、一線を引いた関係を保っている一方で、プリムラだけが無条件でヴィオラに甘えられるただ一人の妹だった。
「どうぞ」
ヴィオラが声をかけると、プリムラが扉を開ける。
部屋に入るなり自分以外の姉妹が集まっていたことに、分かりやすく頬を膨らませて腹を立てた。
「私だけ仲間外れですの?」
幼い妹に日記帳の話をするわけにはいかず、姉たちはそれぞれで逡巡したが、フレエシアとリーリウムは長女であるヴィオラに任せようと視線を送り合った。
「ああ、プリムラに知られてしまいましたわ。
あなたのお誕生日プレゼントについて内緒で話し合っていましたのに。」
ほほほ…上品にほほ笑むヴィオラ。
「まあまあ! そうでしたの?
わたくしの誕生日までまだ半年もあるというのに!
それでは聞かなかったし気づかなかったことにしておきますわね。
やさしいお姉さまたち!」
ぱぁっと花が開いたような笑顔を見せたプリムラに姉3人は安堵した。
「それで、プリムラはどんなご用で私のお部屋に遊びに来てくれたのかしら?」
ヴィオラの問いかけに再びにっこり笑うと、プリムラはつかつかとチェストの方へ向かいながら話した。
「この間お話くださった美白クリームをお借りしようかと思いまして…。この中ですわよね?」
「!」
姉たちが止める間もなく、プリムラはチェストの一番上の引き出しを開けた。
「…これは、何ですの?」
ヴィオラの持ち物にしては武骨でエレガントさのかけらもない日記帳は、香水瓶や美しく彫刻された小箱など、美しいものしか入っていないヴィオラのチェストの中で異彩を放っていた。
「ま、まさか!ヴィオラお姉さま、この部屋で殿方と逢引でもしましたの!?
これはその方の忘れ物ね!
いや、それとも好きな方の日記を恋焦がれすぎて盗んできましたの!?
いやいや、もしかするとヴィオラお姉さまと結ばれることがないのを嘆いて命を絶った恋人の形見ということも…!」
プリムラは周囲が驚くほどの恋愛脳だった。
妄想をしつづけるプリムラ。
いつもであれば、そんなプリムラをほほえましく見守る3人だが、妄想の方向が不穏になってきたことと、貴重な日記帳をプリムラが握りしめていることが気になってきた。
「プリムラ、これはリーリウムが図書館で見つけてきた昔の日記帳ですわ。」
スッと日記帳をプリムラの手から取り上げると、ヴィオラはプリムラをやさしく窘めた。
「丁重に扱わなければいけない、大切なものなのですよ。」
珍しくヴィオラに注意をされたことと、それ以上に嘘をつかれたことにショックを受けたプリムラは泣きながら抗議をする。
「…この日記帳を3人で読んでいたのですね?
私の誕生日プレゼントだなんて嘘までついて……!」
3人の姉はプリムラの涙に弱かった。
心の底から悲しがっている涙に、嘘をついてしまった引け目もあったヴィオラまで珍しくオロオロしていた。
何をどう取り繕っても、今のプリムラをさらに傷つけてしまうように思えたからだ。
「フレエシア、リーリウム…プリムラに話しても大丈夫なのでしょうか?」
ヴィオラが2人に意見を求めることは滅多にない。しかし今回ばかりは決断できないようだった。
「お姉さま、プリムラは賢い子です。
それに、公爵家の娘でもあるのですから、知っていた方が良いようにも思います。」
リーリウムはヴィオラに応えた。
「私もリーリウムの意見に賛成です。
それに、こんなに泣かれては心が痛みます。」
プリムラの頭を優しくなでながら、フレエシアも同意する。
「…それでは、リーリウムからプリムラに事の次第を説明してあげてくださる?」
ヴィオラは2人の意見を受けて、プリムラにすべてを話す決断をした。
部屋の中に再び時が流れだしたように、3人の意識が現実に引き戻され、ヴィオラはリーリウムから日記帳を受け取ると、チェストの一番上の引き出しに隠す。
「ヴィオラお姉さま? プリムラです。」
扉の前にいたのは末妹のプリムラだった。
3人の姉に溺愛され育てられた、愛らしいプリムラ。
明るいブルーの大きな瞳に軽くカールした長い睫毛がかかり、形のいい鼻と小さくてぷっくりとしたバラ色のくちびるを持つ、公爵家一の美貌の持ち主だった。
本人の唯一のコンプレックスが、姉妹の中で一番色の濃いブロンドヘアだったが、むしろ、小麦の穂のような黄金色のその髪色がプリムラの魅力を神々しく彩っていた。
プリムラは時々ヴィオラの部屋にやってきて、姉の美容グッズを借りていた。
フレエシアとリーリウムが長女のヴィオラを敬い、一線を引いた関係を保っている一方で、プリムラだけが無条件でヴィオラに甘えられるただ一人の妹だった。
「どうぞ」
ヴィオラが声をかけると、プリムラが扉を開ける。
部屋に入るなり自分以外の姉妹が集まっていたことに、分かりやすく頬を膨らませて腹を立てた。
「私だけ仲間外れですの?」
幼い妹に日記帳の話をするわけにはいかず、姉たちはそれぞれで逡巡したが、フレエシアとリーリウムは長女であるヴィオラに任せようと視線を送り合った。
「ああ、プリムラに知られてしまいましたわ。
あなたのお誕生日プレゼントについて内緒で話し合っていましたのに。」
ほほほ…上品にほほ笑むヴィオラ。
「まあまあ! そうでしたの?
わたくしの誕生日までまだ半年もあるというのに!
それでは聞かなかったし気づかなかったことにしておきますわね。
やさしいお姉さまたち!」
ぱぁっと花が開いたような笑顔を見せたプリムラに姉3人は安堵した。
「それで、プリムラはどんなご用で私のお部屋に遊びに来てくれたのかしら?」
ヴィオラの問いかけに再びにっこり笑うと、プリムラはつかつかとチェストの方へ向かいながら話した。
「この間お話くださった美白クリームをお借りしようかと思いまして…。この中ですわよね?」
「!」
姉たちが止める間もなく、プリムラはチェストの一番上の引き出しを開けた。
「…これは、何ですの?」
ヴィオラの持ち物にしては武骨でエレガントさのかけらもない日記帳は、香水瓶や美しく彫刻された小箱など、美しいものしか入っていないヴィオラのチェストの中で異彩を放っていた。
「ま、まさか!ヴィオラお姉さま、この部屋で殿方と逢引でもしましたの!?
これはその方の忘れ物ね!
いや、それとも好きな方の日記を恋焦がれすぎて盗んできましたの!?
いやいや、もしかするとヴィオラお姉さまと結ばれることがないのを嘆いて命を絶った恋人の形見ということも…!」
プリムラは周囲が驚くほどの恋愛脳だった。
妄想をしつづけるプリムラ。
いつもであれば、そんなプリムラをほほえましく見守る3人だが、妄想の方向が不穏になってきたことと、貴重な日記帳をプリムラが握りしめていることが気になってきた。
「プリムラ、これはリーリウムが図書館で見つけてきた昔の日記帳ですわ。」
スッと日記帳をプリムラの手から取り上げると、ヴィオラはプリムラをやさしく窘めた。
「丁重に扱わなければいけない、大切なものなのですよ。」
珍しくヴィオラに注意をされたことと、それ以上に嘘をつかれたことにショックを受けたプリムラは泣きながら抗議をする。
「…この日記帳を3人で読んでいたのですね?
私の誕生日プレゼントだなんて嘘までついて……!」
3人の姉はプリムラの涙に弱かった。
心の底から悲しがっている涙に、嘘をついてしまった引け目もあったヴィオラまで珍しくオロオロしていた。
何をどう取り繕っても、今のプリムラをさらに傷つけてしまうように思えたからだ。
「フレエシア、リーリウム…プリムラに話しても大丈夫なのでしょうか?」
ヴィオラが2人に意見を求めることは滅多にない。しかし今回ばかりは決断できないようだった。
「お姉さま、プリムラは賢い子です。
それに、公爵家の娘でもあるのですから、知っていた方が良いようにも思います。」
リーリウムはヴィオラに応えた。
「私もリーリウムの意見に賛成です。
それに、こんなに泣かれては心が痛みます。」
プリムラの頭を優しくなでながら、フレエシアも同意する。
「…それでは、リーリウムからプリムラに事の次第を説明してあげてくださる?」
ヴィオラは2人の意見を受けて、プリムラにすべてを話す決断をした。
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