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Lesson.2 王子と親密になっておこう
10.王宮でのお茶会
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午後、今日のために新調していたレースをふんだんに使った淡いブルーのドレスを美しく着こなしたリーリウムは、城の一室にいた。
部屋の中にはあと二人。
王妃と教育係のマーテル夫人がにこやかな表情でリーリウムを見つめていた。
「ついにこの日が来ましたね、リーリウム。」
感慨深い気持ちをたっぷりこめて、王妃はリーリウムを歓迎する気持ちを伝える。
そして、緊張するリーリウムの心をほぐすように、両方の手を手のひらで優しく包み込み微笑んだ。
深みのある銀髪をゆるやかに束ね、たおやかな雰囲気をまとった王妃。
彼女は思慮深く、やさしさと強さを兼ね備えた女性だった。
今は遠くにいるリーリウムの母とは娘時代の親友同士だったこともあり、公爵家の娘たちを愛おしく見守ってくれている。
王太子ヘンリクスの二歳下にリーリウムが生まれた際には、この子を王太子妃にと極秘に母親同士で約束をし、リーリウムを本当の娘のように慈しんでいた。
「王妃様、光栄なことです。」
リーリウムは両の手に王妃の温もりを感じながら、やはり感慨深く言葉を返す。
「リーリウム、こちらがあなたのお作法や王太子妃の心得を教えてくださる先生、マーテル夫人です。」
マーテル夫人は、王妃が王太子妃になる際にも指導を行った優秀な人物だが、まったく年齢を感じさせないことから、“魔女ではないか”とまことしやかに社交界では噂になっている人物だった。
リーリウムは彼女とは初対面だったが、確かにそのような噂が流れるほどの美貌で、思わず見惚れてしまいそうになる。
「マーテル夫人、よろしくお願いいたします。」
リーリウムはマーテル夫人へ深々と礼をすると、マーテル夫人はやはり柔らかな笑顔でそれを見守り挨拶を返した。
「こちらこそ、これからよろしくお願いいたします。リーリウム嬢。」
「さあ、初日は顔合わせだけにしておいて、殿下もいっしょに皆でお茶を飲みましょう。」
そう王妃が言い目で指図をすると、侍女の1人がヘンリクスを呼びに部屋を出た。
「今日はお天気がいいから、お庭にお茶会の用意をしたのよ。
さあ、リーリウム向かいましょう。」
王妃はリーリウムの左手を握ると、まるで母娘のように手をつないで庭へ彼女を誘った。
バラが咲き誇る庭園の真ん中にあるガゼボでは、すでに着いていたヘンリクスが優しい微笑みをたたえながら彼女たちを出迎えてくれた。
「やあ、リーリウム。こんにちは。」
「ごきげんよう、殿下。」
リーリウムはスカートを指先でつまむと、優雅に礼をする。
ヘンリクスは、リーリウムの手を取り優雅にエスコートすると、椅子を引き彼女を席に座らせた。
テーブルの上にはバラにも見劣りしない華やかなお菓子が並び、リーリウムはその美しさに驚いた。
夜空のようなリーリウムの瞳が、本物の星空のようにいつにも増してキラキラと輝くその瞬間をヘンリクスと王妃は愛おしそうに見つめる。
「君のために用意したんだ」
「食べてしまうのがもったいないくらい美しいですわ」
しばらく息をすることすら忘れていたリーリウムは、お菓子から目を離さずに素直な賛辞をおくった。
「まぁ、リーリウム! 食べないのなら私が全部食べちゃいますよ。」
「王妃様ったら!」
リーリウムたちは王妃の思いがけないユーモアに、声を上げて笑い合った。
まるで幼い頃、無邪気にヘンリクスや姉妹たちと遊んでいたときのような、軽やかな空気が流れるお茶会だった。
しかし、王妃と別れ、ヘンリクスと二人きりでバラの庭園を散歩していると、とたんに緊張感が走った。
そしてリーリウムは、先ほどのお茶会で自分はなんとはしたない態度だったかと後悔しはじめた。
「リーリウム? どうかした?」
「いいえ、殿下。
素敵なお茶会でしたので、思い出していたのです。」
ヘンリクスに心配をかけまいと、リーリウムはいつもの淑女らしい微笑みを見せた。
「そう。気に入ってくれたのなら良かった。」
ヘンリクスも王子らしく微笑みを返す。
先ほどまでの屈託のない笑顔とは違うヘンリクスの表情を見て、さらにリーリウムは落ち込んだ。
「ところで、リーリウムは読書家だとは思っていたけど、公爵家の図書館に入れるなんて、すごいことだね」
「殿下は図書館のこと、ご存じでしたの?」
ヘンリクスは、図書室ではなく“図書館”と言った。
つまり、あの魔法の空間のことを知っていたのだ。
「僕もあのパーティーの後に母上に教えてもらったんだよ。
実は結婚前、侯爵令嬢の頃に君の母上にこっそり入れてもらったことがあったらしいよ。」
「そうだったのですね。」
図書館への入室を許可するほどの仲。
母親と王妃の絆の深さは、もしかすると実の姉妹以上のものなのかもしれない。
親友という存在がいないリーリウムは、そんな母たちが少しうらやましかった。
「いつか、僕にも図書館の話を聞かせて欲しいな。」
「はい。」
ヘンリクスの言葉を断るわけにはいかないリーリウムは、あいまいな微笑みを見せながら小さな声で返事をするしかなかった。
部屋の中にはあと二人。
王妃と教育係のマーテル夫人がにこやかな表情でリーリウムを見つめていた。
「ついにこの日が来ましたね、リーリウム。」
感慨深い気持ちをたっぷりこめて、王妃はリーリウムを歓迎する気持ちを伝える。
そして、緊張するリーリウムの心をほぐすように、両方の手を手のひらで優しく包み込み微笑んだ。
深みのある銀髪をゆるやかに束ね、たおやかな雰囲気をまとった王妃。
彼女は思慮深く、やさしさと強さを兼ね備えた女性だった。
今は遠くにいるリーリウムの母とは娘時代の親友同士だったこともあり、公爵家の娘たちを愛おしく見守ってくれている。
王太子ヘンリクスの二歳下にリーリウムが生まれた際には、この子を王太子妃にと極秘に母親同士で約束をし、リーリウムを本当の娘のように慈しんでいた。
「王妃様、光栄なことです。」
リーリウムは両の手に王妃の温もりを感じながら、やはり感慨深く言葉を返す。
「リーリウム、こちらがあなたのお作法や王太子妃の心得を教えてくださる先生、マーテル夫人です。」
マーテル夫人は、王妃が王太子妃になる際にも指導を行った優秀な人物だが、まったく年齢を感じさせないことから、“魔女ではないか”とまことしやかに社交界では噂になっている人物だった。
リーリウムは彼女とは初対面だったが、確かにそのような噂が流れるほどの美貌で、思わず見惚れてしまいそうになる。
「マーテル夫人、よろしくお願いいたします。」
リーリウムはマーテル夫人へ深々と礼をすると、マーテル夫人はやはり柔らかな笑顔でそれを見守り挨拶を返した。
「こちらこそ、これからよろしくお願いいたします。リーリウム嬢。」
「さあ、初日は顔合わせだけにしておいて、殿下もいっしょに皆でお茶を飲みましょう。」
そう王妃が言い目で指図をすると、侍女の1人がヘンリクスを呼びに部屋を出た。
「今日はお天気がいいから、お庭にお茶会の用意をしたのよ。
さあ、リーリウム向かいましょう。」
王妃はリーリウムの左手を握ると、まるで母娘のように手をつないで庭へ彼女を誘った。
バラが咲き誇る庭園の真ん中にあるガゼボでは、すでに着いていたヘンリクスが優しい微笑みをたたえながら彼女たちを出迎えてくれた。
「やあ、リーリウム。こんにちは。」
「ごきげんよう、殿下。」
リーリウムはスカートを指先でつまむと、優雅に礼をする。
ヘンリクスは、リーリウムの手を取り優雅にエスコートすると、椅子を引き彼女を席に座らせた。
テーブルの上にはバラにも見劣りしない華やかなお菓子が並び、リーリウムはその美しさに驚いた。
夜空のようなリーリウムの瞳が、本物の星空のようにいつにも増してキラキラと輝くその瞬間をヘンリクスと王妃は愛おしそうに見つめる。
「君のために用意したんだ」
「食べてしまうのがもったいないくらい美しいですわ」
しばらく息をすることすら忘れていたリーリウムは、お菓子から目を離さずに素直な賛辞をおくった。
「まぁ、リーリウム! 食べないのなら私が全部食べちゃいますよ。」
「王妃様ったら!」
リーリウムたちは王妃の思いがけないユーモアに、声を上げて笑い合った。
まるで幼い頃、無邪気にヘンリクスや姉妹たちと遊んでいたときのような、軽やかな空気が流れるお茶会だった。
しかし、王妃と別れ、ヘンリクスと二人きりでバラの庭園を散歩していると、とたんに緊張感が走った。
そしてリーリウムは、先ほどのお茶会で自分はなんとはしたない態度だったかと後悔しはじめた。
「リーリウム? どうかした?」
「いいえ、殿下。
素敵なお茶会でしたので、思い出していたのです。」
ヘンリクスに心配をかけまいと、リーリウムはいつもの淑女らしい微笑みを見せた。
「そう。気に入ってくれたのなら良かった。」
ヘンリクスも王子らしく微笑みを返す。
先ほどまでの屈託のない笑顔とは違うヘンリクスの表情を見て、さらにリーリウムは落ち込んだ。
「ところで、リーリウムは読書家だとは思っていたけど、公爵家の図書館に入れるなんて、すごいことだね」
「殿下は図書館のこと、ご存じでしたの?」
ヘンリクスは、図書室ではなく“図書館”と言った。
つまり、あの魔法の空間のことを知っていたのだ。
「僕もあのパーティーの後に母上に教えてもらったんだよ。
実は結婚前、侯爵令嬢の頃に君の母上にこっそり入れてもらったことがあったらしいよ。」
「そうだったのですね。」
図書館への入室を許可するほどの仲。
母親と王妃の絆の深さは、もしかすると実の姉妹以上のものなのかもしれない。
親友という存在がいないリーリウムは、そんな母たちが少しうらやましかった。
「いつか、僕にも図書館の話を聞かせて欲しいな。」
「はい。」
ヘンリクスの言葉を断るわけにはいかないリーリウムは、あいまいな微笑みを見せながら小さな声で返事をするしかなかった。
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