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Lesson.3 学園生活の始まりが、悪役令嬢の始まり
24.入学式の朝
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ユニカ高等学院などの平民学校に通う貴族の子女向けの奨学生制度は、その後あっという間に採用が決定した。
冬が来て、プリムラは入学試験を、リーリウムたちは各学年の編入試験を受験して、全員が難なく合格。
リーリウムたちの入学を聞きつけた他の上位貴族家たちも、こぞって年ごろの娘に入学試験や編入試験を受験させていたそうで、今年は例年に比べて受験者が多かったそうだ。
将来、社交界の頂点に立つリーリウムとの繋がりを作っておきたかったのだろう。
アイリたちも同じ日に編入試験を受けていたそうだが、入試会場で会うことはなく、リーリウムもプリムラも胸をなでおろした。
それからは、王太子妃教育に並行して、制服の採寸などの入学準備もあり、慌ただしく時が過ぎて行った。
そして春、いよいよ入学式の日がやってきた。
花々の香りが国中を包み込んでいるような清々しい朝だった。
プリムラとリーリウムは、真新しい制服に身を包む。
制服は、動きやすいように足首が出るくらいのスカート丈で、大きな白い襟と赤いベルベットのリボンが付いたシンプルなネイビーのワンピースだった。
そのワンピースさえ着ていれば良いので、生徒たちは制服にさまざまなアレンジを施すのが通例であった。
プリムラはレースをたっぷり付けてかわいらしく、リーリウムはヘンリクスからもらったサファイアのブローチを付けてエレガントに、二人も思い思いのアレンジを楽しんで着こなしている。
しばらく待っていると、王宮からヘンリクスとルドヴィク、ルヴァリが二人を迎えにやってきた。
ネイビーのジャケットにグレーのスラックス、白のシャツにネクタイ姿の三人の王子は、令嬢たちの注目の的だろう。
ライオンの鬣のような赤い髪を持つルドヴィクとルヴァリは、双子とあってそっくりだった。
しかし、ルドヴィクは短髪で、ルヴァリは長く伸ばした髪を一つに結っていたので、二人の違いは一目瞭然だった。
それぞれ挨拶をかわし、早々に馬車に乗り込むと、全員で学園へと向かった。
学園に到着すると、フレエシアとディナルド、さらにヴィオラの婚約者であるアンドレアス・フェネルが校門の前で出迎えてくれた。
「ヘンリクス殿下、ルドヴィク殿下、ルヴァリ殿下、おはようございます。
リーリウム嬢とプリムラ嬢も、入学おめでとうございます。」
学園の生徒会長でもあるアンドレアスが、代表して挨拶をする。
「リーリウム、プリムラ、入学おめでとう!
二人と同じ制服を着て学園に通えるなんて、とってもうれしいよ。」
フレエシアは二人の妹を感慨深げに見つめる。
「アンドレアス様、お姉さま、ありがとうございます。
それにディナルド様もお出迎えいただいて、ありがとうございます。」
リーリウムは微笑みながら、フレエシアたちにお礼を言う。
「うん。おめでとう。」
そっけなく返答するディナルドだが、優しい表情で二人を見つめていた。
幼いころから良く知るディナルドは、リーリウムたちにとって頼れる兄のような存在だ。
「殿下、学内ではわたくしが護衛いたします。」
ディナルドがヘンリクスの前に跪く。
「うん。聞いている。よろしく頼む。」
ディナルドは立ち上がり、ヘンリクスの斜め後ろに付いた。
ディナルドは、この日以降特別に校内での帯剣を許可されており、
警護中であることを示すために制服の上から特別に支給された王国騎士団のマントを羽織っている。
同様に、ルドヴィクとルヴァリにもそれぞれ護衛騎士が付いていた。
「お時間ですので、参りましょうか?」
アンドレアスがそう言うと、全員で入学式の会場へ歩き出した。
案内役のアンドレアスに導かれて、王子三人が先頭を歩き、リーリウムとプリムラ、フレエシアがその後ろを、さらにその後ろに護衛騎士たちが付いている。
ヘンリクスやリーリウムに挨拶をしたいとタイミングを見計らっていた上位貴族の子女たちも近寄れない、高貴な雰囲気が漂っていた。
「殿下ぁ~~!」
その時、その荘厳な空気を一変させる、甘ったるくてよく通る声が響き渡った。
その場にいた全員が声のする方へ視線を移す。
すると、綿菓子のようなふわふわとしたピンク色の髪を振り乱しながら走ってくる少女が見えた。
アイリだ。
アイリは、ヘンリクスの前で止まると満面の笑顔を見せた。
とっさにディナルドが二人の間に割り込む。
すると、アイリはディナルド越しにヘンリクスに話しかけてきた。
「殿下! おはようございます。
ご一緒してもよろしいですか!?」
あまりの出来事に空気が凍る。
さすがのディナルドもあっけにとられている。
周りの空気など全く読まないアイリの後ろには、同じく編入生のジョンがオロオロと控えていた。
「おはよう、アイリ嬢。」
ヘンリクスは王太子スマイルをアイリに向けて挨拶だけをし、ディナルドを促して歩を進めようとする。
すると、アイリはちゃっかりヘンリクスの横に並んで歩こうとする。
「アイリ嬢、殿下のお隣は歩いてはいけませんよ。
それに、目上の方へ自分から話しかけるのもマナー違反です。」
見かねたリーリウムが後ろから声をかける。
アイリが貴族学園で浮いてしまわないか心配で、マナーを教えてあげようと思ったのだ。
「どうして、そんないじわるを言うのですか?
ヘンリクス殿下は一緒に歩くことを嫌がっていませんわ!」
しかし、アイリはリーリウムが思っていたのとは違う反応を返してくる。
リーリウムがたじろぎ、プリムラとフレエシアもあっけにとられている。
(((これが“ヒロイン”?)))
三人がほぼ同時に同じことを考えていると、ヘンリクスがリーリウムの手を握りしめ、自分の横へ立たせた。
「アイリ嬢、わたしの横を歩けるのは婚約者のリーリウムだけだ。」
リーリウムの手の甲に軽くキスをしてみせ、ヘンリクスはリーリウムに微笑みかける。
そのまま一行はアイリを置いて歩き出した。
ディナルドは、アイリの後ろにいたジョンにそっと話しかける。
「あのままだとあの子は不敬罪でいつか痛い目にあうぞ。
よく見張っておけ!」
ジョンは慌ててアイリの手を取ると、そのまま野次馬たちの中へ消えて行った。
冬が来て、プリムラは入学試験を、リーリウムたちは各学年の編入試験を受験して、全員が難なく合格。
リーリウムたちの入学を聞きつけた他の上位貴族家たちも、こぞって年ごろの娘に入学試験や編入試験を受験させていたそうで、今年は例年に比べて受験者が多かったそうだ。
将来、社交界の頂点に立つリーリウムとの繋がりを作っておきたかったのだろう。
アイリたちも同じ日に編入試験を受けていたそうだが、入試会場で会うことはなく、リーリウムもプリムラも胸をなでおろした。
それからは、王太子妃教育に並行して、制服の採寸などの入学準備もあり、慌ただしく時が過ぎて行った。
そして春、いよいよ入学式の日がやってきた。
花々の香りが国中を包み込んでいるような清々しい朝だった。
プリムラとリーリウムは、真新しい制服に身を包む。
制服は、動きやすいように足首が出るくらいのスカート丈で、大きな白い襟と赤いベルベットのリボンが付いたシンプルなネイビーのワンピースだった。
そのワンピースさえ着ていれば良いので、生徒たちは制服にさまざまなアレンジを施すのが通例であった。
プリムラはレースをたっぷり付けてかわいらしく、リーリウムはヘンリクスからもらったサファイアのブローチを付けてエレガントに、二人も思い思いのアレンジを楽しんで着こなしている。
しばらく待っていると、王宮からヘンリクスとルドヴィク、ルヴァリが二人を迎えにやってきた。
ネイビーのジャケットにグレーのスラックス、白のシャツにネクタイ姿の三人の王子は、令嬢たちの注目の的だろう。
ライオンの鬣のような赤い髪を持つルドヴィクとルヴァリは、双子とあってそっくりだった。
しかし、ルドヴィクは短髪で、ルヴァリは長く伸ばした髪を一つに結っていたので、二人の違いは一目瞭然だった。
それぞれ挨拶をかわし、早々に馬車に乗り込むと、全員で学園へと向かった。
学園に到着すると、フレエシアとディナルド、さらにヴィオラの婚約者であるアンドレアス・フェネルが校門の前で出迎えてくれた。
「ヘンリクス殿下、ルドヴィク殿下、ルヴァリ殿下、おはようございます。
リーリウム嬢とプリムラ嬢も、入学おめでとうございます。」
学園の生徒会長でもあるアンドレアスが、代表して挨拶をする。
「リーリウム、プリムラ、入学おめでとう!
二人と同じ制服を着て学園に通えるなんて、とってもうれしいよ。」
フレエシアは二人の妹を感慨深げに見つめる。
「アンドレアス様、お姉さま、ありがとうございます。
それにディナルド様もお出迎えいただいて、ありがとうございます。」
リーリウムは微笑みながら、フレエシアたちにお礼を言う。
「うん。おめでとう。」
そっけなく返答するディナルドだが、優しい表情で二人を見つめていた。
幼いころから良く知るディナルドは、リーリウムたちにとって頼れる兄のような存在だ。
「殿下、学内ではわたくしが護衛いたします。」
ディナルドがヘンリクスの前に跪く。
「うん。聞いている。よろしく頼む。」
ディナルドは立ち上がり、ヘンリクスの斜め後ろに付いた。
ディナルドは、この日以降特別に校内での帯剣を許可されており、
警護中であることを示すために制服の上から特別に支給された王国騎士団のマントを羽織っている。
同様に、ルドヴィクとルヴァリにもそれぞれ護衛騎士が付いていた。
「お時間ですので、参りましょうか?」
アンドレアスがそう言うと、全員で入学式の会場へ歩き出した。
案内役のアンドレアスに導かれて、王子三人が先頭を歩き、リーリウムとプリムラ、フレエシアがその後ろを、さらにその後ろに護衛騎士たちが付いている。
ヘンリクスやリーリウムに挨拶をしたいとタイミングを見計らっていた上位貴族の子女たちも近寄れない、高貴な雰囲気が漂っていた。
「殿下ぁ~~!」
その時、その荘厳な空気を一変させる、甘ったるくてよく通る声が響き渡った。
その場にいた全員が声のする方へ視線を移す。
すると、綿菓子のようなふわふわとしたピンク色の髪を振り乱しながら走ってくる少女が見えた。
アイリだ。
アイリは、ヘンリクスの前で止まると満面の笑顔を見せた。
とっさにディナルドが二人の間に割り込む。
すると、アイリはディナルド越しにヘンリクスに話しかけてきた。
「殿下! おはようございます。
ご一緒してもよろしいですか!?」
あまりの出来事に空気が凍る。
さすがのディナルドもあっけにとられている。
周りの空気など全く読まないアイリの後ろには、同じく編入生のジョンがオロオロと控えていた。
「おはよう、アイリ嬢。」
ヘンリクスは王太子スマイルをアイリに向けて挨拶だけをし、ディナルドを促して歩を進めようとする。
すると、アイリはちゃっかりヘンリクスの横に並んで歩こうとする。
「アイリ嬢、殿下のお隣は歩いてはいけませんよ。
それに、目上の方へ自分から話しかけるのもマナー違反です。」
見かねたリーリウムが後ろから声をかける。
アイリが貴族学園で浮いてしまわないか心配で、マナーを教えてあげようと思ったのだ。
「どうして、そんないじわるを言うのですか?
ヘンリクス殿下は一緒に歩くことを嫌がっていませんわ!」
しかし、アイリはリーリウムが思っていたのとは違う反応を返してくる。
リーリウムがたじろぎ、プリムラとフレエシアもあっけにとられている。
(((これが“ヒロイン”?)))
三人がほぼ同時に同じことを考えていると、ヘンリクスがリーリウムの手を握りしめ、自分の横へ立たせた。
「アイリ嬢、わたしの横を歩けるのは婚約者のリーリウムだけだ。」
リーリウムの手の甲に軽くキスをしてみせ、ヘンリクスはリーリウムに微笑みかける。
そのまま一行はアイリを置いて歩き出した。
ディナルドは、アイリの後ろにいたジョンにそっと話しかける。
「あのままだとあの子は不敬罪でいつか痛い目にあうぞ。
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