悪役令嬢にならないための指南書

ムササビ

文字の大きさ
70 / 141
Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革

70.ウェスペル家の休日3

しおりを挟む
「はい、陛下。
ヒロインと悪役令嬢について、ユニカ様の手によって詳しく書かれていました。
それに、マリア様によるチャーム無効の祝福の影響で、我が家に男児が生まれなくなったことも。」

そう言うと、リーリウムはすぅっと空気を吸い込んで、勇気を出して王へ質問した。

「陛下、わたくしはヘンリクス様と結婚をしても良いのでしょうか?」

「え? リーリウム、今のはどういう意味だい?」

慌てたヘンリクスは思わず椅子から立ち上がり、リーリウムを見つめる。

「わたくしも祝福を授けられています。
将来、ヘンリクス様と結婚をしても男の子を生めません……。」

それはすなわち、王国の世継ぎを生めないということである。
「ウェスペル家の呪い」の噂が広がると同時に、ウェスベル公爵家からは長らく王妃として嫁いだ公女はいなかった。
リーリウムは、母親同士がどうしてもといって強引に進めた縁談だった上に、
ヘンリクスもリーリウム以外考えられないということで維持された婚約だったのだ。
今まで噂でしかなかった「ウェスペル家の呪い」。
たまたま女児ばかりが続いているだけではないか、という可能性だってあった。
しかし今回、原因がはっきりしてしまったことで、男児が生めないと確定したのだ。

「うむ。実は私もそれが気になってね。
君とヘンリクスが婚約する少し前にこのアレクサンデル王の日記を久しぶりに紐解いてみたのだよ。
すると、こう書かれていたのだ。」

『ウェスペル家では、本当に女の子しか生まれなくなっていたようで、先日長女が婿養子をとることになったと報告があった。
しかし、昨日、隣国の第三皇子へ嫁いだ公爵家の次女が、男児を生んだそうだ。』

リーリウムにとっては、初耳だった。
いつ頃前の話なのか分からないが、ウェスペル家出身の女性が男の子を生んでいるなんて!

「この後にも、時々ウェスペル家から他家へ嫁いだ女性たちが男児を生んでいるという記述がある。
そこでアレクサンデル王は、こう結論付けた。

『ウェスペルの姓でなくなると、祝福が消えて男児も誕生するようになるのではないか』と。

だからリーリウム、気に病むことはない。
まあ、祝福の力はなくなってしまうがな。」

「そのような記述は、ユニカ様の日記にはありませんでした。
教えてくださり、ありがとうございます。」

リーリウムは全身の力が抜けていくような感覚だった。
ヘンリクスと婚約して最初は無邪気に喜んでいたが、大きくなるにつれて「ウェスペル家の呪い」が重くのしかかるようになった。
ヘンリクスが優しくしてくれるほど、自分が悪いわけでもないのに罪悪感をもつのも嫌だった。
おそらく王家の秘密であろうアレクサンデル王の日記。
その内容をリーリウムに明かしてくれた王に感謝の気持ちでいっぱいになる。

「それにアレクサンデル王とユニカ様は、法改正もしている。
実はその頃、法律から“王は直系男子でなければならない”という記述がなくなっているんだ。
貴族家の当主も同じだ。
我々は、第一子が女の子だったとしても、その下に男の子が生まれればその子を王太子にしてきたが、実はそれはただの慣習だったのだよ。」

「そうなのですか?」

「うむ。アレクサンデル王とユニカ様は、考えが進みすぎていたのだろう。
法を改正出来ても、人々の常識までは変化させることができなかった。
だから、王も貴族家の当主も未だに男性ばかりなのだ。
他国では変化が訪れているというのにな。
今日はそのことを君と、それにヴィオラ嬢にも知らせておきたかった。
そう、ヴィオラ嬢に伝えてくれるか?」

リーリウムは、王がヴィオラに本当に伝えたいことに気づき、ハッとした。

「わかりました陛下。
必ず、お姉様にお伝えします。」

「それから、学園についてはヘンリクスから報告をもらっている。
現学園長が選出されたときに私が出した条件と、食い違いが生じているようだ。
こちらでも調査をしておくので、二人も引き続き、前学園長派との話し合いを頼む。
次回正式な懇談の場を設けるから、それまでに準備をしておくように。」

そう王は用件を言い終えると、まだ仕事があると言って庭園を後にした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!

杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。 彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。 さあ、私どうしよう?  とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。 小説家になろう、カクヨムにも投稿中。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

処理中です...