78 / 141
Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
78.リーリウムの見た世界2
しおりを挟む
「世界が黒っぽい紫色……。」
学院長はボソリとつぶやき、考え込む。
「今はそのモヤは見えないの?」
フレエシアが尋ねると、リーリウムはこくりとうなずく。
「姉上、これはやはり師匠の研究どおりの現象なのでは……?」
「そうね。そうだと思う。
ただ、やはり確実な証拠が見つからない……。」
「研究とは、何のことだ?」
ヘンリクスが怪訝そうに尋ねる。
「殿下、私と前学園長である私の師匠は、表向きは古代魔法の歴史を専門としていましたが、密かに“なぜ魔法が使えなくなったのか”も同時に研究していました。」
マギア教授だけでなく、これまでも、この国で魔法が使えなくなった理由を突き止めようとする人間は、研究者のみならず、政治家や騎士、魔法使いの末裔などさまざまにいた。
しかし、真相に近づくにつれて、不慮の事故に巻き込まれたり、不治の病に侵されてしまったりと、不幸が後を絶たなかったのだ。
そのため、ここ十数年は表立ってその研究をしているものはいなかった。
「そうだったのか……。
それで、そのことと今回の件はどのように関係している?」
「これは仮説なのですが、師匠はこの国一帯が闇の魔力に覆われているのではないかと疑っていました。」
「なんだと?」
「リーリウムの見たモヤは闇の魔力だということ?」
フレエシアの言葉に、マギア教授は「あくまでも仮説だよ。」と釘をさす。
「リーリウム様の光の魔力と、闇の魔力は相反するものです。
リーリウム様がお倒れになったのは自らの魔力量の多さだけでなく、国を覆う闇の魔力に中てられたという可能性もあります。」
学院長の言葉に、ヘンリクスは腕を組み考え込む。
「今日、わたしとフレエシア嬢は、この国の中で魔法を使う者を見かけました。
闇の魔力に包まれたこの国で何の支障もなく魔法が使用できる者はただ一人。
この国をこの状態にした闇の魔法使いのみです。
アイリ嬢の手紙からも、闇の魔法の残滓が見つかりました。
彼女は、我々が想像するよりも危険人物なのかもしれません。」
「それでヘンリクス様へのお手紙には、チャーム以外にどのような力が宿っていたのですか?」
リーリウムは、あの手紙がヘンリクスを害すのではないかと、ずっと気がかりだった。
今思えば、その不安は闇の魔力を敏感に感じ取っていたからかもしれないと、リーリウムは考えていた。
「あの手紙自体には、アイリ嬢のチャームの力が働いていただけでした。
しかし、おそらくアイリ嬢が闇の魔法がかかった強力な魔道具を身につけていたのでしょう。
その魔道具の影響で、“能力強化”・“言霊”・“闇耐性”の三つの魔法が検出されました。
あくまでも残滓ですので、その力でヘンリクス様に危険が及ぶことはありませんよ。」
マギア教授の言葉に、リーリウムはほっと胸をなでおろした。
それと同時に、激しい疲れが体を襲う。
「リーリウムには、もう少し休息が必要だな。
公爵、リーリウムをしばらく王宮で預かる。
良いな?」
ヘンリクスの言葉に逆らえるはずもなく、ウェスペル公爵は「承知いたしました」と言って、頭を下げる。
「ヴィーも、今日はここに泊まりなさい。
顔色が悪いわ。
隣の部屋をすぐに準備させるから。」
「ありがとう。」
王妃がそういうと、公爵夫人は疲れた表情のまま微笑み、礼を告げる。
自分の体調もだが、今日だけはリーリウムのそばにいてあげたかったのだ。
「わたくしは陛下に報告をしてまいります。
フレエシアと先生方も、魔法に関する専門家としてご同行願います。
リーリウムもヴィスタリアも、よく休むのだよ。」
公爵はそう言うと、部屋を出て行こうとする。
「私も行こう。もっと詳しい説明を聞きたい。」
ヘンリクスは、リーリウムの手の甲に口づけをし、愛おしそうにそのあとを撫でる。
そして、部屋の入口で待つ公爵たちと共に部屋を出て行った。
部屋に残されたのは、リーリウムと公爵夫人、そして王妃の三人だ。
「さあ、リーリウム、もう休みなさい。」
公爵夫人は、リーリウムをベッドに横たわらせる。
「お母様、わたくし、あの紫色の世界に一人で放り込まれたような気がして、とても恐ろしかったわ。」
珍しく不安を口にするリーリウム。
「大丈夫よ。わたくしたちがそばにいるわ。」
公爵夫人はベッドに腰かけながら、リーリウムのやわらかなブロンドをやさしく撫で続ける。
王妃も、ベッドのそばの椅子に座り、リーリウムの手を包み込むように握っていた。
二人の母に見守られ、リーリウムはようやく安心して眠りについたのだった。
学院長はボソリとつぶやき、考え込む。
「今はそのモヤは見えないの?」
フレエシアが尋ねると、リーリウムはこくりとうなずく。
「姉上、これはやはり師匠の研究どおりの現象なのでは……?」
「そうね。そうだと思う。
ただ、やはり確実な証拠が見つからない……。」
「研究とは、何のことだ?」
ヘンリクスが怪訝そうに尋ねる。
「殿下、私と前学園長である私の師匠は、表向きは古代魔法の歴史を専門としていましたが、密かに“なぜ魔法が使えなくなったのか”も同時に研究していました。」
マギア教授だけでなく、これまでも、この国で魔法が使えなくなった理由を突き止めようとする人間は、研究者のみならず、政治家や騎士、魔法使いの末裔などさまざまにいた。
しかし、真相に近づくにつれて、不慮の事故に巻き込まれたり、不治の病に侵されてしまったりと、不幸が後を絶たなかったのだ。
そのため、ここ十数年は表立ってその研究をしているものはいなかった。
「そうだったのか……。
それで、そのことと今回の件はどのように関係している?」
「これは仮説なのですが、師匠はこの国一帯が闇の魔力に覆われているのではないかと疑っていました。」
「なんだと?」
「リーリウムの見たモヤは闇の魔力だということ?」
フレエシアの言葉に、マギア教授は「あくまでも仮説だよ。」と釘をさす。
「リーリウム様の光の魔力と、闇の魔力は相反するものです。
リーリウム様がお倒れになったのは自らの魔力量の多さだけでなく、国を覆う闇の魔力に中てられたという可能性もあります。」
学院長の言葉に、ヘンリクスは腕を組み考え込む。
「今日、わたしとフレエシア嬢は、この国の中で魔法を使う者を見かけました。
闇の魔力に包まれたこの国で何の支障もなく魔法が使用できる者はただ一人。
この国をこの状態にした闇の魔法使いのみです。
アイリ嬢の手紙からも、闇の魔法の残滓が見つかりました。
彼女は、我々が想像するよりも危険人物なのかもしれません。」
「それでヘンリクス様へのお手紙には、チャーム以外にどのような力が宿っていたのですか?」
リーリウムは、あの手紙がヘンリクスを害すのではないかと、ずっと気がかりだった。
今思えば、その不安は闇の魔力を敏感に感じ取っていたからかもしれないと、リーリウムは考えていた。
「あの手紙自体には、アイリ嬢のチャームの力が働いていただけでした。
しかし、おそらくアイリ嬢が闇の魔法がかかった強力な魔道具を身につけていたのでしょう。
その魔道具の影響で、“能力強化”・“言霊”・“闇耐性”の三つの魔法が検出されました。
あくまでも残滓ですので、その力でヘンリクス様に危険が及ぶことはありませんよ。」
マギア教授の言葉に、リーリウムはほっと胸をなでおろした。
それと同時に、激しい疲れが体を襲う。
「リーリウムには、もう少し休息が必要だな。
公爵、リーリウムをしばらく王宮で預かる。
良いな?」
ヘンリクスの言葉に逆らえるはずもなく、ウェスペル公爵は「承知いたしました」と言って、頭を下げる。
「ヴィーも、今日はここに泊まりなさい。
顔色が悪いわ。
隣の部屋をすぐに準備させるから。」
「ありがとう。」
王妃がそういうと、公爵夫人は疲れた表情のまま微笑み、礼を告げる。
自分の体調もだが、今日だけはリーリウムのそばにいてあげたかったのだ。
「わたくしは陛下に報告をしてまいります。
フレエシアと先生方も、魔法に関する専門家としてご同行願います。
リーリウムもヴィスタリアも、よく休むのだよ。」
公爵はそう言うと、部屋を出て行こうとする。
「私も行こう。もっと詳しい説明を聞きたい。」
ヘンリクスは、リーリウムの手の甲に口づけをし、愛おしそうにそのあとを撫でる。
そして、部屋の入口で待つ公爵たちと共に部屋を出て行った。
部屋に残されたのは、リーリウムと公爵夫人、そして王妃の三人だ。
「さあ、リーリウム、もう休みなさい。」
公爵夫人は、リーリウムをベッドに横たわらせる。
「お母様、わたくし、あの紫色の世界に一人で放り込まれたような気がして、とても恐ろしかったわ。」
珍しく不安を口にするリーリウム。
「大丈夫よ。わたくしたちがそばにいるわ。」
公爵夫人はベッドに腰かけながら、リーリウムのやわらかなブロンドをやさしく撫で続ける。
王妃も、ベッドのそばの椅子に座り、リーリウムの手を包み込むように握っていた。
二人の母に見守られ、リーリウムはようやく安心して眠りについたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!
杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。
彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。
さあ、私どうしよう?
とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。
小説家になろう、カクヨムにも投稿中。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる