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Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
89.ルドヴィクの懸念
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その数日後、リーリウムの元へハモンド兄妹が作った薬膳チョコレートが届いた。
事前に学院長やマギア教授、そして王宮の侍医らによって、十分に吟味されたものである。
ヴィオラの訪問以来、食生活が改善され、時々日光に当たるなどしていたリーリウムの血色が、以前よりも幾分か良くなっていた。
落ちていた体重もやや戻ってきたこともあり、食後に少しずつチョコレートを食べて様子を見ることになった。
「お姉様、お加減はどうですか?」
ウェスペル家の姉妹は、入れ替わり立ち代わりにリーリウムの様子を見に来ていた。
今日は学園帰りに、ルドヴィクと共にプリムラが訪れている。
「最初の頃に比べると、大分過ごしやすくなったわ。
マリー嬢にお礼を伝えておいてね。」
「良かった! マリーもきっと喜びます。
そうそう、先日、お直しに出していた職人の元から、マリーの髪飾りが戻ってきたのです。
それをマリーに返したら、すごく感激していて……。」
「そうだったの。
髪飾りがきちんと直って、元の持ち主に戻って本当によかったわ。」
「ヴィオラ嬢が、髪飾りを舞踏会に持ってくるように言っていたそうだ。
アイリが何か仕掛けてきたら、もしかすると役に立つかもしれないって。」
ルドヴィクが楽しそうに報告してくれる。
「確かに、彼女なら皆が集まる舞踏会で何か仕掛けてくるかもしれませんね。」
「お姉様が舞踏会にいらっしゃらないなんて残念です。
本来であれば、王太子の婚約者として注目されるはずだったのに……。」
何やら考え込むリーリウムに、プリムラが声をかける。
「うふふ、いいのよ。
注目されるのは、正直言うと少し苦手なの。
それよりも、プリムラもアイリ嬢に目を付けられているのですから、気を付けるのよ。」
「はい、お姉様。」
そんな二人の会話を見守っていたルドヴィクが、プリムラの手をぎゅっと握る。
「プリムラは、俺がそばで守っているから大丈夫だ。
話は変わるが、ちょっと前からヘンリクスのクラスに留学生が来たことについて、何か聞いているか?」
「ああ、隣国からご令嬢が転入してきたと聞いています。
すごく気さくな方だとか。」
「それだけじゃない。
ものすごく美人なんだ。」
「まあ! ルドヴィク様!」
プリムラがキッと睨みつける。
「いや、客観的に見て、だ。
当然、俺にとっての一番はプリムラだし、ヘンリクスにとってはリーリウムが一番に決まっている!
ただ、周りの様子がおかしいのだ。」
「どういうことですの?」
「確かに彼女、リナ嬢は美人だが、それだけだ。
それなのに、彼女を見た人間はどいつもこいつも、ぼーっとして見惚れている。
それこそ、顔を見ただけで虜になってしまったかのようだった。
そして、それは俺とルヴァリ、ヘンリクス、ディナルドには当てはまらない。
彼女に研究棟で話しかけられてしばらくしゃべってはみたが、ヘンリクスの言う通り、気さくな令嬢という印象以外は残らなかった。」
「それってまるで……。」
「アイリのチャームに似ているだろ?」
リーリウムとルドヴィクが考えていたことは同じだった。
「そのリナ嬢って言う方も、チャームの能力を持っているってことかしら?」
「確定は出来ないが、そうかもしれない。
ただ、リナ嬢はアイリとは違い、俺たちを“攻略しよう”とは考えていないようだった。
普通に日常会話をして、それ以来、顔を合わせれば挨拶をする程度で接触もしてきていない。」
「どういった素性の方なのかしら……。」
リーリウムがつぶやくと、プリムラが思いついたように思いがけない言葉を出した。
「わたくし、話しかけてみようかしら?
気さくな方なら、お友だちになれるかもしれないし。」
「いやいや、だめだ! 危険すぎる。
相手が何者かはっきりしていないのに、そもそも同性にはキツい性格かもしれないだろ?」
「それだったらそれで退避するだけだわ。
いじわるな女性の相手をしたことないわけでもないし、それくらい平気よ?」
ルドヴィクの強い反対にも、プリムラは一向に引く様子がない。
美人と聞いて好奇心が芽生えたのも否定できないが、チャームの能力を持っているかもしれない人物の正体を明かして、みんなの役に立ちたいとも思っていたからだ。
「……絶対に二人きりで会ってはダメよ。
人目のある所で、誰かを護衛に控えさせなくてはいけないわ。」
しばらく考え込んでいたリーリウムが口を開いた。
プリムラの頑固さを知っているリーリウムは、ここで反対をしてプリムラが暴走してしまうくらいなら、条件を提示したほうが安全だと思ったのだ。
「わかったわ!」
ルドヴィクはそんな姉妹の様子を見て、自分が折れるしかないことを悟る。
「では、プリムラがリナ嬢と会う時には、俺とアーサーが影から見守ろう。
それならば、俺も許可する。」
「ありがとう。必ずそうするわ!」
プリムラは、ルドヴィクにも認めてもらえたことがうれしくて、思わず抱きつく。
「まあプリムラったら、はしたないわよ。」
リーリウムは恥ずかしそうに目をそらしながら、プリムラをたしなめた。
事前に学院長やマギア教授、そして王宮の侍医らによって、十分に吟味されたものである。
ヴィオラの訪問以来、食生活が改善され、時々日光に当たるなどしていたリーリウムの血色が、以前よりも幾分か良くなっていた。
落ちていた体重もやや戻ってきたこともあり、食後に少しずつチョコレートを食べて様子を見ることになった。
「お姉様、お加減はどうですか?」
ウェスペル家の姉妹は、入れ替わり立ち代わりにリーリウムの様子を見に来ていた。
今日は学園帰りに、ルドヴィクと共にプリムラが訪れている。
「最初の頃に比べると、大分過ごしやすくなったわ。
マリー嬢にお礼を伝えておいてね。」
「良かった! マリーもきっと喜びます。
そうそう、先日、お直しに出していた職人の元から、マリーの髪飾りが戻ってきたのです。
それをマリーに返したら、すごく感激していて……。」
「そうだったの。
髪飾りがきちんと直って、元の持ち主に戻って本当によかったわ。」
「ヴィオラ嬢が、髪飾りを舞踏会に持ってくるように言っていたそうだ。
アイリが何か仕掛けてきたら、もしかすると役に立つかもしれないって。」
ルドヴィクが楽しそうに報告してくれる。
「確かに、彼女なら皆が集まる舞踏会で何か仕掛けてくるかもしれませんね。」
「お姉様が舞踏会にいらっしゃらないなんて残念です。
本来であれば、王太子の婚約者として注目されるはずだったのに……。」
何やら考え込むリーリウムに、プリムラが声をかける。
「うふふ、いいのよ。
注目されるのは、正直言うと少し苦手なの。
それよりも、プリムラもアイリ嬢に目を付けられているのですから、気を付けるのよ。」
「はい、お姉様。」
そんな二人の会話を見守っていたルドヴィクが、プリムラの手をぎゅっと握る。
「プリムラは、俺がそばで守っているから大丈夫だ。
話は変わるが、ちょっと前からヘンリクスのクラスに留学生が来たことについて、何か聞いているか?」
「ああ、隣国からご令嬢が転入してきたと聞いています。
すごく気さくな方だとか。」
「それだけじゃない。
ものすごく美人なんだ。」
「まあ! ルドヴィク様!」
プリムラがキッと睨みつける。
「いや、客観的に見て、だ。
当然、俺にとっての一番はプリムラだし、ヘンリクスにとってはリーリウムが一番に決まっている!
ただ、周りの様子がおかしいのだ。」
「どういうことですの?」
「確かに彼女、リナ嬢は美人だが、それだけだ。
それなのに、彼女を見た人間はどいつもこいつも、ぼーっとして見惚れている。
それこそ、顔を見ただけで虜になってしまったかのようだった。
そして、それは俺とルヴァリ、ヘンリクス、ディナルドには当てはまらない。
彼女に研究棟で話しかけられてしばらくしゃべってはみたが、ヘンリクスの言う通り、気さくな令嬢という印象以外は残らなかった。」
「それってまるで……。」
「アイリのチャームに似ているだろ?」
リーリウムとルドヴィクが考えていたことは同じだった。
「そのリナ嬢って言う方も、チャームの能力を持っているってことかしら?」
「確定は出来ないが、そうかもしれない。
ただ、リナ嬢はアイリとは違い、俺たちを“攻略しよう”とは考えていないようだった。
普通に日常会話をして、それ以来、顔を合わせれば挨拶をする程度で接触もしてきていない。」
「どういった素性の方なのかしら……。」
リーリウムがつぶやくと、プリムラが思いついたように思いがけない言葉を出した。
「わたくし、話しかけてみようかしら?
気さくな方なら、お友だちになれるかもしれないし。」
「いやいや、だめだ! 危険すぎる。
相手が何者かはっきりしていないのに、そもそも同性にはキツい性格かもしれないだろ?」
「それだったらそれで退避するだけだわ。
いじわるな女性の相手をしたことないわけでもないし、それくらい平気よ?」
ルドヴィクの強い反対にも、プリムラは一向に引く様子がない。
美人と聞いて好奇心が芽生えたのも否定できないが、チャームの能力を持っているかもしれない人物の正体を明かして、みんなの役に立ちたいとも思っていたからだ。
「……絶対に二人きりで会ってはダメよ。
人目のある所で、誰かを護衛に控えさせなくてはいけないわ。」
しばらく考え込んでいたリーリウムが口を開いた。
プリムラの頑固さを知っているリーリウムは、ここで反対をしてプリムラが暴走してしまうくらいなら、条件を提示したほうが安全だと思ったのだ。
「わかったわ!」
ルドヴィクはそんな姉妹の様子を見て、自分が折れるしかないことを悟る。
「では、プリムラがリナ嬢と会う時には、俺とアーサーが影から見守ろう。
それならば、俺も許可する。」
「ありがとう。必ずそうするわ!」
プリムラは、ルドヴィクにも認めてもらえたことがうれしくて、思わず抱きつく。
「まあプリムラったら、はしたないわよ。」
リーリウムは恥ずかしそうに目をそらしながら、プリムラをたしなめた。
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