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2.出会い2
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明らかに怒り心頭といった様子の若い男と、腕を組み威厳を保っている壮年の男……。
コスプレイヤー?
二人とも見たことのない白を基調とした衣服に身を包んでいる外国人だ。
若い男の方は水色の長い髪に真っ赤なカラコンを着けて、この世のものとは言えない美しさだった。
肌は極限まで白く、見たことはないが“アルビノ”と呼ばれる人々を連想させた。
だけど、サラサラの髪の毛が逆立つのではないかというくらい、全身で怒りを表現して私を睨みつけている。
「お前! どうしてくれるんだ!?」
若い男は外国人らしいオーバーリアクションで、私に詰め寄ってくる。
「へぇ!?」
状況がつかみ切れていない私は、頭の上から出たような変な声を上げてしまった。
なんで私はこの男から叱責されているんだろう。
「聖女だからといって、何をしても許されるわけではないのだぞ!?」
コスプレをしていて、思考まであっちの世界に行ってしまったのだろうか?
「すみませんが、人違いだと思います。」
「だがお前は聖女だろう?」
「いえ、私はセイジョではないです……。」
「待て、キタロス。
彼女はまだ状況が分かっていないのだ。」
ずっと腕を組み、私たちのやり取りを傍観していたもう一人の男が、若い男を制する。
「私は聖騎士のヤジール。こっちは見習い神官のキタロスだ。」
ヤジールと名乗った男は、確かに聖騎士らしく、白い甲冑を身にまとっていた。
ゴールドの繊細な刺繍が施された、やはり白いマントを翻してこちらに近づいて来る。
金髪碧眼で、お父さんが好きな昔の映画に出てくる俳優に少し似ているイケオジだ。
さっきまで感情的に私を責めていたキタロスも、ヤジールの一声で冷静になったようで、バツが悪そうにヤジールの後ろに控えている。
「君はマリコを知っているか?」
私の目の前にやってきたヤジールは、真っすぐに私の目を見つめてそう、唐突に尋ねた。
マリコ……。
私の知っているマリコはただ一人だ。
「マリコは私の母です。」
ヤジールの言っている「マリコ」が母のことかは分からないが、なんとなくそうではないかという直感が働いた。
「そうか、やはり。
君からマリコと同じ聖力を感じる。
マリコに会わせてくれないか?」
「え、いや、母は……。」
この狭い路地で話せる内容ではない。
もう、今日はお父さんが帰宅しているはずだ。
私はスマホを取り出し、自宅へ電話をする。
コール音が鳴ると、すぐにお父さんのやさしい声が聞こえる。
「ヒカルか? どうした?」
「あ、お父さん? 何かお母さんのことを知っているっていう男の人たちに会ったんだけど……。」
「え? どういうこと?」
「私もよく分からないんだけど、何かお母さんの話をし始めてて……。
話始めると長くなりそうだから、とりあえず家に連れて行ってもいい?
もうすぐそこまで来てるんだけど……。」
「え? う、うん。どこにいるの?」
「家の側の路地のところ。」
「迎えに行くから、ちょっと待ってて!」
お父さんは慌てたような声でそういうと、電話を切ってしまった。
そして、エプロン姿のまま全速力でこちらへ向かって走ってきた。
「はーはーはー……、ぜーぜー……」
お父さんは私とキタロスの間に体を割り込ませると、手を膝に当て、呼吸を懸命に整えようとしている。
「マリコの夫君か。
私はキタロス、そしてこっちはヤジールだ。」
お父さんが顔を上げるよりも早く、キタロスはマイペースに自己紹介を始める。
これが、空気を読めない聖騎士キタロスと、きれいな顔なのに性格が残念な神官見習いヤジールとの出会いだった。
コスプレイヤー?
二人とも見たことのない白を基調とした衣服に身を包んでいる外国人だ。
若い男の方は水色の長い髪に真っ赤なカラコンを着けて、この世のものとは言えない美しさだった。
肌は極限まで白く、見たことはないが“アルビノ”と呼ばれる人々を連想させた。
だけど、サラサラの髪の毛が逆立つのではないかというくらい、全身で怒りを表現して私を睨みつけている。
「お前! どうしてくれるんだ!?」
若い男は外国人らしいオーバーリアクションで、私に詰め寄ってくる。
「へぇ!?」
状況がつかみ切れていない私は、頭の上から出たような変な声を上げてしまった。
なんで私はこの男から叱責されているんだろう。
「聖女だからといって、何をしても許されるわけではないのだぞ!?」
コスプレをしていて、思考まであっちの世界に行ってしまったのだろうか?
「すみませんが、人違いだと思います。」
「だがお前は聖女だろう?」
「いえ、私はセイジョではないです……。」
「待て、キタロス。
彼女はまだ状況が分かっていないのだ。」
ずっと腕を組み、私たちのやり取りを傍観していたもう一人の男が、若い男を制する。
「私は聖騎士のヤジール。こっちは見習い神官のキタロスだ。」
ヤジールと名乗った男は、確かに聖騎士らしく、白い甲冑を身にまとっていた。
ゴールドの繊細な刺繍が施された、やはり白いマントを翻してこちらに近づいて来る。
金髪碧眼で、お父さんが好きな昔の映画に出てくる俳優に少し似ているイケオジだ。
さっきまで感情的に私を責めていたキタロスも、ヤジールの一声で冷静になったようで、バツが悪そうにヤジールの後ろに控えている。
「君はマリコを知っているか?」
私の目の前にやってきたヤジールは、真っすぐに私の目を見つめてそう、唐突に尋ねた。
マリコ……。
私の知っているマリコはただ一人だ。
「マリコは私の母です。」
ヤジールの言っている「マリコ」が母のことかは分からないが、なんとなくそうではないかという直感が働いた。
「そうか、やはり。
君からマリコと同じ聖力を感じる。
マリコに会わせてくれないか?」
「え、いや、母は……。」
この狭い路地で話せる内容ではない。
もう、今日はお父さんが帰宅しているはずだ。
私はスマホを取り出し、自宅へ電話をする。
コール音が鳴ると、すぐにお父さんのやさしい声が聞こえる。
「ヒカルか? どうした?」
「あ、お父さん? 何かお母さんのことを知っているっていう男の人たちに会ったんだけど……。」
「え? どういうこと?」
「私もよく分からないんだけど、何かお母さんの話をし始めてて……。
話始めると長くなりそうだから、とりあえず家に連れて行ってもいい?
もうすぐそこまで来てるんだけど……。」
「え? う、うん。どこにいるの?」
「家の側の路地のところ。」
「迎えに行くから、ちょっと待ってて!」
お父さんは慌てたような声でそういうと、電話を切ってしまった。
そして、エプロン姿のまま全速力でこちらへ向かって走ってきた。
「はーはーはー……、ぜーぜー……」
お父さんは私とキタロスの間に体を割り込ませると、手を膝に当て、呼吸を懸命に整えようとしている。
「マリコの夫君か。
私はキタロス、そしてこっちはヤジールだ。」
お父さんが顔を上げるよりも早く、キタロスはマイペースに自己紹介を始める。
これが、空気を読めない聖騎士キタロスと、きれいな顔なのに性格が残念な神官見習いヤジールとの出会いだった。
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