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4章
22話《未遂》
しおりを挟む「桝谷さん……どうしてこんな……」
戸惑う俺に彼は答える。
「あんな噂流されてるんだよ?試してみたいとか思うでしょ」
「こっちはいい迷惑ですよ……帰りますから……」
彼の手を引き離そうと力を入れて引っ張るが、力が強くてどうにもならない。
「なんで?暇なんでしょ?」
「そんなこと言ってませんよ」
「暇じゃなかったらあんなとこ居ないでしょ」
「こっちも色々事情あるんですよ!」
俺は声を張りあげ、そう言い放った。
「そ。まぁ俺はには関係ないことだけど」
彼は逃げようとする俺を抱きしめた。
「えっ、何……」
「いい匂いする……愁里君……」
「や、やめてくださいって……」
「やーだ。ほら、顔向けて」
俺は嫌だというように顔を下に伏せた。
「恥ずかしいの?」
「こういうのが嫌なだけです」
「へぇ、強気なんだ。堕ちたとこ見るの楽しみだな」
桝谷さんは無理矢理に俺の顎を持ち上げ、口づけをした。
「んぅ……っ、やめ……」
拒んでも無視されてそのまま舌を入れられ、俺を抱きしめる腕の締まりも強くなった。
「っは……桝谷さん、ほんとにやめて下さいって」
どうにか口を離し、俺を抱きしめたままの彼を睨みつける。
「なんでやめなきゃいけないの?」
「さっきも言いましたけど、迷惑なんですって……」
「そっかじゃあやめよっか……」
「だったら離してくださいよ」
「何言ってんの、諦めるわけないじゃん」
くすくすと笑いながら彼は言う、反抗したいのだがこの状況で回避出来そうな気がしない。
もう、ほとんど諦めてしまったその時だった。
『桝谷さん、上司の方がお呼びです。至急3階__』
放送が入った。
桝谷さんに呼び出しがかかったのだ。
ナイスタイミング!と、心の中でガッツポーズをする。
「チッ、こんな時に呼び出しかよ……今回はお預けか」
「邪魔です……早く行ってください」
「んだよ、調子乗りやがって」
「調子なんか乗ってませんよ?迷惑事が落ち着くので良かったなと安心してるんです」
「ふん、覚えとけよ。次会った時はぶち犯してやるから」
彼は言い放つと走ってトイレを出ていった。
俺は安心と恐怖で体から力が抜けた。
「はぁ、こんなこともあったし戻ろっかな……雅斗さんにもきちんと謝ろう」
俺も直ぐにトイレを出て近くのエレベーターに乗り込み、雅斗さんの元へ戻ることにした。
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