処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

復讐の鬼、目覚める

──暗闇の中で意識が蘇る。

肉体は朽ち果て、血は乾き、心臓は止まっていたはずだった。
だが、魂は滾るほどの 怒りと憎悪 に燃えていた。

「……ようやく目覚めたか。我が契約者よ」

耳元で囁くのは、低く不気味な声。
レオン・アルヴァレスは、冷たい石の上でゆっくりと目を開いた。

そこは死の静寂に包まれた 忘れ去られた地下墓地。
長年閉ざされた棺の中、彼の骸は 完全な死 を迎えていた……はずだった。

「……ここは……」

動かぬはずの指が蠢く。
朽ち果てた腕に血が流れ、腐り果てた肉が瞬く間に再生する。

彼は覚えていた。

——死の間際、己が契約を交わしたことを。

十年前、処刑台の上で、彼は最後の望みを込めて 「悪魔」に誓いを立てた。

《我が命を捧げよう。だが、たった一つの願いを聞き届けよ。》
《俺が望むのは……復讐だ。》

「フフフ……見事だ、レオン・アルヴァレスよ。貴様は約束通り、蘇った」

足元から沸き上がる黒い瘴気。
ゆらめく影の中から、 邪悪なる存在 が現れる。

「さあ、約束の刻だ……貴様が憎む者どもに、相応しき報いを与えよ」

──復讐の鬼、目覚める。

レオンは冷たい笑みを浮かべながら、ゆっくりと立ち上がった。
もはや勇者ではない。
王国を滅ぼし、裏切り者どもを絶望の底に叩き落とすための亡霊。

「……ああ、そうだな」

十年の時を経て、彼は 地獄から舞い戻った。

「俺の復讐は、ここから始まる——」