King of the slave

鴻上縞

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九章 箱庭の世界

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 初夏の早朝、薄桃色の空が何処までも遠く拡がって行く。牢の前に止めた馬車の前で、フェイはぼんやりと栗毛の馬を撫でている。それを尻目にミトが慌ただしく荷物を詰め込み、片や一応にも見送りに来たが、眠たそうにその様子を眺めるばかりのラフターとルーイ。妙に気の抜けた平和が不思議と漂っている。
「兄貴、準備出来ました!」
 その声を合図に、夜明けの街をアルベルトはフェイとミトと共に旅立った。

「わんこ、朝飯はそこに入っているからな!」
 ラブールを発って直ぐの事。ミトは馬を手繰りながら小さな鞄を指差した。いつからか、アルベルトにはそんな不愉快なあだ名がつけられていたようだ。
「ミト、私にも名前が……」
「いいじゃん、呼びやすいし!」
 ミトは馬車を操りながら、アルベルトの気も知らず楽しそうに笑う。いくら呼びやすくても、わんこはないだろうと、山積みの荷物の片隅に位置を取っていたアルベルトは思わずフェイを睨み付けた。
「お前の所為だ」
 隣で大きな欠伸をしていたフェイも、アルベルトの視線を感じるや負けじと睨み返す。
 相変わらず二人は犬猿の仲。しかし荷を運ぶ為だけの小さな馬車は当然屋根すらもなく、起き抜けの太陽が照らす蒼く澄んだ空がよく見えて、フェイの姿に吐き気すら催していたアルベルトも耐える事が出来ていた。自然の力は凄い、そんな呑気な事すら考えさせてくれる。

 休む事なく馬車は走り続け、太陽はもう頭上高くまで昇っていた。ここがフィリアからどの位離れているのかはわからないが、真夏の日差しはフィリアよりも厳しいものだ。何より辺りには草木も生えぬ黒い大地が広がり、日差しを遮る物など何一つない。
 ぼんやりとその景色を眺めていたフェイが小さく呟いた。
「ここには、二年前まで国があった」
 その言葉にアルベルトは再び大地に視線を向ける。もうそこに、微塵も命の痕跡を感じる事は出来ない。言われなければ誰がここに国があったなどと思うだろうか。それはあまりにも、寂しく悲しい姿だった。
「王に、守れる物などない」
 フェイは噛み締めるようにそう吐き捨てた。相変わらず黒い大地を見詰めるフェイの瞳にやはり光はない。初めて会った時も、フェイは確かそれを言っていた事を思い出し、アルベルトは真っ向からその思念を否定した。
「私はそうは思わない」
「お前は本当におめでたい奴だな。短絡的で世間知らず。だからこんな目にあっているんだろう」
 フェイは相変わらずアルベルトの神経を逆撫でする物言いを態とする。アルベルトとてそんな事は言われなくても分かっていた。自分は世間知らずでバカな男だ。何度も間違った道を選び、隣でだらけている男に穢され、国に帰る望みすら断たれた。
 苛立ちを胸の内で収容し切れず、アルベルトはフェイの顔を鋭く睨み付けた。その視線に気付いたフェイは、そんなアルベルトの足を爪先で軽く蹴り入れた。
「大体お前奴隷になるとか自分で言っておいて、何なんだよその態度。だからタグ無しは嫌いなんだよ」
「まあまあ兄貴、わんこは王様なんだから!生まれついての奴隷とも、タグ無しでラブールに来た奴隷とも訳が違いますよ」
 そんなミトの言葉に不貞腐れたフェイは、その後は一言も喋ろうとはしなかった。

 黒い大地を越えて深い森に入って暫く、小さな川の側で馬車は止まった。荷台から飛び降りたフェイが馬車を引いていた馬を連れ川へ降りると、水をその体にかけていく。その横顔があまりにも優しくて、アルベルトは呆然とその行動を眺めていた。ミトがそんなアルベルトの耳元でひっそりと囁く。
「兄貴は馬を何より大事にするんだ。寄り付くどんな良い女よりも馬の方が好きみたい。兄貴はああ見えて押しに弱いからいつも付き合っちゃうんだけどね、その所為ですぐフられるんだ」
 あれ程最低な男に馬は頬を摺り寄せている。動物にも物好きはいるのだろうか。悪戯な笑みを浮かべるミトの言葉を聞きながら、アルベルトはそんな事を思っていた。

 軽い昼食を食べ、一行は出発した。どこへ向かうのか分からないが、フェイはこの旅の終わりにフィリアに連れて行ってくれると言った。それを信じ、アルベルトはついて行くだけだ。それでも久しぶりに感じる森が生んだ澄んだ空気。自然の中を走る感覚に、磨り減っていたアルベルトの心も、昔のように戻っていくようだった。何も知らなかった、あの頃に──。
「寝るわ。ミト、道を間違えるなよ」
 遠くに想いを馳せていたアルベルトを現実に引き戻す酷く掠れた声。荷物の上で徐に眠り出す男を見て、そんな事はあり得ないと思い知らされた。やり切れない思いを払拭するよう、アルベルトは荷台から馬を手繰るミトの隣へと移動した。
「これからどこへ?」
「ベグダム国の領地、デトの街だよ。山を二つ越えるけど、あと一週間も走れば着くと思う」
 当然、ベグダムと言う国をアルベルトは知らない。それを知っていたかのように、ミトは丁寧に説いた。
「ベグダムは最近西で領地を広げている大国でね、デトも元々は一つの国だったの。領地の中では一番栄えた街なんだ」
「そこで何を?」
「戦の情報を集めるんだよ。戦が起きると逃げ出したりはぐれたホワイトタグが終戦後にうろつくからね。普段は各地の仲間から知らせがくるんだけど、兄貴はたまに世界情勢を見がてらこうして自分の足で回るんだ。ラブールをそんなに空けておく訳にはいかないから、今回みたいに三国も回るのは珍しいけどね」
 ホワイトタグ、戦の捨て駒として扱われる奴隷。アルベルトはそれ以上、聞く気にはなれなかった。
 あの日オーラストで別れた少年を思い出す。国同士が始めた戦の犠牲となったジャック。やはり、唯々戦が憎い。その思いだけがアルベルトの胸に溢れた。

 こうして走り続けた一行は、予定通り一週間後の昼間に大きな街に到着した。街の入り口に馬車を止めると、フェイは馬を撫でてから一人街へと歩き出す。
「わんこもついていけば?兄貴!わんこも連れていってやって下さいよ!」
 確かにこの街は見たいけれど、何が楽しくてフェイと二人にならなきゃいけないのだ、アルベルトは慌ててそう拒否しようとしたけれど、ミトはもう荷物の上で昼寝の体制に入っている。
「おい糞犬、早くしろ!」
 乱暴な声に引き摺られるように、アルベルトは慌てて走り出した。
 ミトの言うとおり、デトは栄えた街のようだ。アルベルトが見た事もない背の高い建物が道を囲むよう所狭しと建ち並び、縦横無尽に走るその道さえ赤い煉瓦で均等に舗装されていた。大通りを行き交う人の多さはとてもラブールの比ではなくて、真っ直ぐに歩く事さえ難儀な程、前方からも後方からも波のように押し寄せる。
 その圧倒的な光景に惚けていると、フェイはいきなりアルベルトの首輪を乱暴に引いた。
「おい、離れるなよ。別に逃げても良いが、こんな物を付けていたらすぐ他の人買いに捕まるのがオチだ」
 だったら外せと言いかけて、アルベルトは素直に頷いた。こんな所で喧嘩をしても人の目を引くだけだ。
 歩みの早いフェイの後を小走りでついて行きながら、大通りに並ぶ店を見てみると大きな硝子窓の向こうには見た事もない美しい人形や銀細工の小物、絹織の鮮やかな紋様が目を引く派手な服が展示されている。街行く人も皆まるで着飾った人形が歩いているかのようだ。
 ふと硝子窓に映る自分の姿をみると、何とも貧相なボロを纏っていて、アルベルトは途端に恥ずかしくなった。やはり待っていれば良かったと、その後フェイの足元だけを見て歩いた。

 やがて大通りを一本狭い路地に入ると、フェイは途端に歩みを緩め、アルベルトの姿を確認しながら進むようになった。真意は勿論よく分からないが、その度にフェイの顔を見なくてはならなくなり気分が良いものではない。
 幾つもの路地を曲がり、少し開けた場所に出た時。前方に蹲る一人の男が目に止まりアルベルトは思わず走り寄る。
「大丈夫ですか?どこか具合でも?」
 同じようなボロを纏った髭面の男がゆっくり顔を上げ何か言おうと口を開いた途端、アルベルトはフェイによってその場から乱暴に引き離された。
「な、何をする!彼は具合が悪そうだ!医者を呼ばなくては!」
 慌ててその手を振り払おうともがいてみたが、あまりにも強く掴まれていてそれは叶わなかった。
「この人でなし!」
 アルベルトの批難の声を無視して歩き続けたフェイは、また一つ曲がり角を曲がると、アルベルトを力任せに壁に叩き付けた。小さな呻きを最後に、痩せた気道が空気を上手く取り込めず、小刻みに震える。
「このバカ犬。あれはな、物乞いだよ」
「……物乞い?」
 漸く呼吸を取り戻し復唱したアルベルトに向けて、フェイは酷く面倒臭そうに舌打ちを投げた。
「おまえは金も、飯食わせるだけの余裕もないだろう。おまえお得意の優しさで腹が膨れるのか?」
 全く的を射た言葉に酷く腹が立つけれど、何も知らなかったものは自分である。羞恥と共に悔しさだけが込み上げる。
「あいつらはな、奴隷じゃない。死にそうになったら働くんだ。放っといて良いんだよ」
 そう言ってフェイはまた歩き出した。
 フェイと出逢い、アルベルトはフィリアを出てからあまりにも知らない事が多すぎる事に気付かされるばかり。戦争、奴隷、物乞い。そのどれもフィリアにはない。フィリアはまるで、美しい物だけを並べ立てた箱庭のようだ。アルベルトは知りたくなかった事も沢山知った。流した事のない苦い涙や、感じた事のない暗い気持ち。全てフィリアにいたら気付く事はなかっただろう。どちらがいいか、そう聞かれても、不思議と答えは出なかった。

 それから暫く、縦に長い住居らしい建物群の中を歩く。隣接した他の物との隙間は、猫すらも通る事は難儀に思える程密接している。更に規則性を持たぬ路地裏の細い道は、周囲に手掛かりとなる物が殆ど無い為に迷路を思わせた。それでも迷わず進んだフェイは、漸く一つの建物の前で足を止めた。ノックもせずに扉を開くと、その来訪を待ち兼ねていたかのように、一人の男が嬉しそうに両手を広げ駆け寄った。
「フェイさん、お久しぶりです!お元気そうで……そっちは?」
 ふくよかな面持ちの男はアルベルトの姿を見付け、訝しげに首を傾げる。アルベルトは慌てて小さく頭を下げた。
「新しい飼い犬だ。そんな事よりどうだ調子は」
 アルベルトが反論しようと口を開くより先に、フェイは家の中へと歩き出す。男も困惑しながらその後を追い、二人は玄関からも良く見えるリビングで何やら話しを始めてしまった。興味もないし、アルベルトは静かに建物を抜け出した。
 フェイが訪れた建物の周辺、密接した建物には路面に面した位置に決まって小窓があり、対岸にロープが渡してある。まるで網の目のように張り巡らされたそれには洗濯物が干してあって、確かな生活の匂いが香っていた。アルベルトがそれを眺めながら当てもなくうろついていると、角から子供たちが飛び出し、咄嗟に正面衝突は避けられたものの、驚いた子供の一人は尻餅をついた。
「大丈夫かい?すまなかった」
 アルベルトが転んだ一人を助け起こし笑いかけてやると、子供達は各々訝しげに眉を顰め逃げ去って行った。ボロを纏った自分が珍しかったのだろうか。そう首を傾げた途端にまた羞恥が込み上げ、アルベルト元来た道を足早に引き返す事にした。
 しかし、幾ら記憶を頼りに進めども、一向に辿り着く気配が見えない。嘲笑うよう立ち竦む建物群の中、気持ちは焦るばかり。だがこれ以上闇雲に進んでも更に遠ざかる気がして、アルベルトは思わずその場に座り込んでしまった。

 どれ位そうしていただろうか。ふと路地の向こうから人の近付く気配を感じて顔を上げると、三人の男がこちらに向かって近付いてくるのが見えた。道を訪ねてみようかと、そんな事を思いながら立ち上がり小さく頭を下げると、目の前まで迫った一人の男が突然アルベルトの顎を掴み上げる。
「タグ無しだぜ。どっかから逃げ出したのかな」
「どっちにしてもタグがないなら関係ないだろ。金髪な上にかなりの上玉だし、こりゃあ良い物を拾ったな」
 そんな事を言い合いながら、男達は愉快に笑った。
 その時、アルベルトは驚きと共に諦めにも似た感情を覚えた。自分はもう、奴隷以外には見えないのだ。この男達も恐らくは人買いだろう。もしかしたら、ブラックタグじゃなく違う色にしてくれるのかもしれない。そうしたらもう、あんな行為をしなくて済む。
 そこまで思い及んだアルベルトは、男達に促されるまま何処へ行くかも知れぬ未来へと歩き出した。ただ一つ。ミトにだけは別れの言葉、そして彼が気に病むことのないよう、感謝を伝えてやりたかった。それだけが心残りであった。
 心残り──その言葉にフィリアを想い、アルベルトはこの旅の意味を思い出す。しかしその時には、この男達を振り切り逃げたとて引き返せる気はしない程に歩を進めていた。仕方がない、生きていればいつか帰れるのかもしれない。
 アルベルトがそう思った瞬間だった。
「おい!」
 聞き慣れた嫌な声が背中越し、路地裏に響く。声の方へと恐る恐る視線を向けると、何故か額に汗を滲ませたフェイが肩を怒らせこちらに向かって来るではないか。
「……お前、もしやラブールのフェイか?」
 男達はどうやらフェイを知っているようだ。
「そいつはうちの人間だ。悪いが返して貰う」
 フェイがポケットから出した金貨を手渡すと、男達は素直に去って行った。
「くそ、大損だこの糞犬が!」
 酷く苛立って蹴り入れてくる男にも、あまりの驚きにアルベルトは腹が立つ余裕すらもなかった。逃げても良いと言ってたくせに──。
「何故だ」
 フェイは眉間に皺を寄せるだけで、その答えをくれなかった。アルベルトも何だかそれ以上踏み込む事が怖くて、前を歩き出したフェイの後ろを黙って歩いた。

 その日の夜。馬車に乗せていた荷物を小太りの男の家へと運び入れ、暫くこの街を拠点に動く事を聞かされた。アルベルトはミトと同じ部屋で眠る事となり、昼間人買いに捕まった事を聞いたミトは頬を膨らませて怒りを露わにしている。
「ダメだろ、逃げたりしたら!」
 逃げた訳ではないが、とりあえずにもアルベルトが謝り続けていると漸く満足したようで、ミトはいつものように明るい笑顔を見せた。
「わんこは分からないと思うけどさ、兄貴に拾われた奴隷は皆運が良いんだよ」
 あからさまに嫌な顔をしたアルベルトを見て、ミトはまたおかしそうに笑った。
「ああ見えて本当は優しいんだから!普通逃げ出した奴隷なんか買い戻さないし、わんこの態度だって、他のとこならもう折檻されまくりで生きていない位なんだよ?」
 買い戻さない──それはアルベルトも気にはなっていた。どうしてフェイはこれ程に扱い辛い奴隷などを探したのだろう。金貨まで払って。ブラックタグは金になるとか、そんな理由なのだろうか。
 アルベルトがそんな事に考えを巡らせてるうちに、ミトは小さな寝息を立て始めた。その穏やかな眠りを妨げないよう、アルベルトは緩いウェーブのかかった髪を優しく撫でる。
 元奴隷だったミトは、どうしてフェイの側にいるのだろうか。それは、知る事が怖い物でもあった。もしフェイが本当は思っている程悪い男じゃなかったら──。だが初めて会った日にあれ程痛めつけられ、死を望まずにはいられぬ程に追い込まれた。そんな男が良い人間のはずがない。例え思っているような人間ではなくとも、人買いなど最低な人種だ。何の感情もない癖に金になるからと唯この身体を抱くあの男は、最低だ。
 そう思う事で、アルベルトは心の安息を得ていた。アルベルト自身も分かっている。フェイを憎む自分を保てなくなる事が、唯々怖いのだ。

 頭ばかりを働かせていたから上手く寝付く事が出来ず、アルベルトはミトを残し静かに部屋を出た。軋む階段を下りきり開けたリビングに出ると、フェイが新聞を広げながら煙草をふかしていた。しかしアルベルトに気付いた瞬間、酷く面倒臭そうに舌打ちを漏らした。
「また逃げるのか?言っておくが、次はないぞ」
「……逃げたんじゃない」
 不服そうに呟いたその言葉に、フェイは小さく肩を竦め手元に視線を戻した。アルベルトは何となくその対面に腰掛けたものの、目のやり場に困り、その手元をジッと見詰める。使い込まれた指先には、この男の苦労が染み付いているようだ。
 時計の針の音だけが静かな部屋に響いている。
「……眠れないのか」
 アルベルトが素直に頷くと、フェイは茶色い液体の入った小さなグラスをぞんざいに差し出した。
「糞犬には勿体無いが、特別にくれてやる」
 そう言う得意気な顔は、やはり腹が立つ。
「これは酒か?飲んだ事がないからいらない」
「可愛くない奴」
 アルベルトに差し出した酒を一気に煽ると、フェイはまた新聞に視線を落とした。
「……何故、王族が嫌いなのか聞いても良いか?」
 沈黙に耐え切れず世間話程度に問うたアルベルトに向けられた瞳は、呼吸さえ忘れる程の殺気を孕んでいた。その瞬間、やはりこの男は恐ろしい人物であると実感する。普通に生きていたら、これ程に重い殺気を放つ事は出来ない。
 アルベルトがこのまま答えを聞かず逃げてしまおうかと腰を上げた時、フェイはゆっくりと言葉を吐いた。
「俺の国は、王族のせいで滅んだ」
 静かな部屋に、酷く掠れた低い声だけが響いた。
「その時の王はまだ十三歳だった。だがまだ幼いからとか、そんな物は言い訳だ。てめえの一族が引き起こした戦なのに、そいつは何も出来なかった。家臣に守られ、城の中で震え、泣いていた。お陰で国は滅び、何万人と死んだ。俺はその時、何も出来ない王族を心底恨んだよ」
 漆黒の瞳に揺れるものは、怒りよりもあまりにも深い悲しみのように思えて、アルベルトは言葉も出なかった。
 一体自分はどこまで愚かなのだろう。知らないだけで、人の心の傷を悪戯に引っ掻き回したのだ。アルベルトはその後悔に、深く頭を垂れた。
「お前の気持ちも考えないで、無神経な事を聞いてすまなかった……」
「……バカ犬が。もう寝ろ」
 フェイはちらりとも視線を流さず、吐き捨てるようにそう言った。

 アルベルトは言われるままに部屋へと戻った。布団に潜り込み、ミトの穏やかな寝顔を見たら、また深い後悔の波が押し寄せる。
 人を憎んだり、嫌ったりするには、その人としっかり向き合わなければならない。自分はそれを知っていた筈だ。だが我が身の悲劇にそれすらも忘れ、意味も無くフェイを傷付けたのだ。明日からもう少し、心に余裕を持って接して行こう。だがアルベルト自身が王族である限り、心を開いてくれる事はないのかもしれない。そう思いながらも、アルベルトは心に決めていた。フェイを、知らなくてはと。
 その日を境に、アルベルトは少しずつ大嫌いだったフェイに心を寄せようと決めた。それはきっと、王族を心から憎むほどに、フェイが自国を愛していた事を感じたからなのだろう。それと共に、戦はやはり悲しみしか生み出さない、とても虚しい物だと知った。

 それからアルベルトはミトと小太りの男の家で留守を任され、一日の大半を二人で過ごした。フェイはあの夜の事を特に引きずる様子も無く、いつもと特に変わりはなかった。安堵と共に、余計にフェイと言う男が分からなくなる。
 あの男はいつも我慢せずに感情をぶつけてくる。それでも一時も経たぬうちに、何事もなかったかのように元に戻る。本当にただの子供なのか、無理矢理に気持ちを抑えているのか。それとも他に、何かその心の内で思っているのだろうか。小屋の中の奴隷達と似通った光を宿さない瞳は、何かを教えてくれるようで、何もかもを隠しているようだ。フェイはそんな不思議な男だった。

 それから一週間程経って、その日はデトの街の祭りが行われるらしく、アルベルトはミトとフェイと連れ立って街へと繰り出した。街は未だ祭りの準備で大騒ぎ。ただでさえ人が多いのに、その日はその倍以上の人が通りに溢れかえり、はぐれないようにするにも一苦労である。いや、ミトが手を引いてくれていなければ、アルベルトは確実にはぐれていた。
 そんな賑わう大通りを歩いていると、ミトが突然フェイに向かって嬉しそうに走り出す。
「兄貴!わんこに服を買ってやってもいいですか?」
「服?」
 ミトの言葉にあらためてアルベルトの姿を見たフェイが、思わずといった様子で吹き出した。
「……失礼な奴だな」
 そうは言っても、確かにアルベルトは見るに耐えない程である。一応にも睨んだが、フェイの嘲笑めいたその顔にも余計に腹が立った。
「別に構わないが、おまえ金はあるのか?」
「うん!貯めていたやつを持って来ました!」
 首から下げた袋を取り出すとミトは白い歯を見せて笑った。この小さな少年がコツコツと貯めたものなのだろう。そう思うと申し訳ないと思う反面、その優しさがアルベルトの胸に染みた。
「ミト、私はいいから……」
 言いかけたアルベルトを何故か制すと、フェイは驚きに満ちた顔に向けて口端を軽く持ち上げて見せた。
「ミト、目を閉じてみな」
「あ!また兄貴は魔術を使うんだね!」
 ミトが嬉しそうに目を閉じ、フェイはよく分からない言葉をブツブツと呟いている。そしてポケットから取り出した金貨を首から下げた袋にこっそり入れると、人差し指を口に当てアルベルトに向けて軽く笑いかけた。
「よし、もう良いぞ」
「……あ、また増えた!やっぱり兄貴は凄いや!」
 その一部始終を見てしまったアルベルトは呆れに眉根を寄せた。騙すにしても、もう少しいい方法はあるだろうに。だがあまりにも真剣な顔で呪文のようなものを呟いていたフェイの顔を思い出し、途端に思わず吹き出してしまった。
「何笑ってんだ」
「いや、何でも」
 それでも笑いが引かないアルベルトを軽く蹴ると、フェイは苛立った様子で離れて行った。
「何が面白かったの?」
「何でもないよ」
 不思議そうに見上げる頭を撫でてやると、ミトは嬉しそうにアルベルトの手を引いて人混みの中を走り出した。
 二人で色々な店に入り、ミトはあれでもないこれでもないとアルベルトに似合う服を選んだ。本当にこの少年の犬になった気分ではあるけれど、それでも真剣に他人の服を選んでいる姿をみていると、アルベルトは嬉しいと思う反面、国に残したエルバントを思い出し、一人で眠れない弟の事が心配で堪らなくなった。
 小一時間散々悩み抜いた末に、ミトが選んでくれた服を着て、二人はフェイの待つ噴水前へと向かった。その道中、ミトはしきりにアルベルトが王様みたいだと騒いでいる。特に高級な服だったり、街行く人のように飾った服を買った訳ではない。着飾る事が嫌いなアルベルトの性格を分かってくれているのかと勘違いする位、いい意味で飾り気のない服をミトは選んでくれた。とても王には見えないが、もしかしたら気を使っているのかもしれない。そう思い及んで、アルベルトも特に否定はせず、感謝の言葉だけを並べ立てた。
 人混みをかき分け漸く噴水前に到着するや、不機嫌に煙草をふかしていたフェイは、アルベルトの姿に少し驚いたように見えた。
「……見違えたな、糞犬」
 糞犬と呼ばれても不思議と苛立たないのは、あの変な呪文のお陰だろうか。
「兄貴!王様みたいだね!」
「いやどっかの金持ちのバカ息子って感じだぞ」
 アルベルトは思わずフェイを睨み付けそうになり、だがフェイの答えにいまいち納得出来ない様子で頬を膨らませているミトの顔を見た時、腹が立った事も一瞬で吹き飛んでしまった。
「ありがとう、ミト」
 小さな頭を撫でると、ミトは心底嬉しそうに笑った。フィリアを出て一年と少し。アルベルトは久しぶりに、心から人に微笑む事が出来た気がした。

 そして昼過ぎに漸く祭が始まった。街はそれはもう驚く程の賑わいを見せていた。所狭しと出店が並び、あちらこちらでアコーディオンの音色に合わせ大道芸人がその腕を披露し歓声が上がる。大道芸を初めて見るアルベルトは、その一挙手一投足に釘付けだった。ミトも楽しそうに他の人と一緒になって騒いでいて、その横でアルベルトも大人気なく興奮し手を叩いた。
 しかし、芸が終わる毎に人々が金貨を投げている姿を見て、二人は顔を見合わせて項垂れた。
「楽しませてくれたのにね……」
「そうだな」
 何だかこれ以上ただで見る事は申し訳ない気がして、続きを見ずに二人が群衆を抜けようと振り向くと、気怠気にそれを眺めていたフェイが徐に二人の掌に一枚ずつ金貨を置いた。
「え、いいんですか!?」
「働いて返せよ」
 手渡された金貨を握り締めたミトが嬉しそうに群衆に戻る中、アルベルトはその金貨を突き返した。
「私はもらえない。ミトとは立場が違う」
 ここに来てどれだけ使わせた事だろう。働いてもいないのに金をもらう訳にはいかない。だがフェイはアルベルトの顔を見詰めるばかりで何も言わないし、受け取ろうともしない。アルベルトも何故か、その瞳の熱を前に、言葉が出なかった。そして真っ直ぐに自身を見詰める漆黒の瞳は、やはりシンを思い出させる。二人はまるで対極の人物に思えるのに。安く例えるならば、月と太陽。それなのに何故、こんな気持ちになるのか、アルベルトにはまるで分からなかった。
「わんこ!何してんだよ早く早く!」
 その声にアルベルトが我に帰ると、フェイは早く行けと軽く手を扇いだ。アルベルトは慌ててミトの側へ向かったが、その後はどれ程の大技が目の前で披露されても、いまいち集中出来なかった。

 その夜ははしゃぎ疲れ、ミトは直ぐに眠ってしまった。アルベルトは再び安らかに眠るミトを起こさないように布団を抜け出し、階段を静かに下りる。
 開けたリビングで新聞に目を通していたフェイは、一瞬アルベルトを見やり、直ぐに再び新聞に視線を落とした。アルベルトは静かにその前の椅子に腰を下ろす。特に話す話題はないし、相変わらずフェイの事は嫌いだ。だが吐き気がする程ではなくなった。それはここ暫くこの男に抱かれていないからなのだろうか。そう思うと、嫌になる程おめでたい思考回路だと、アルベルトはまた一人気分を落とした。
 言葉を交わす事もなく時間は過ぎ、リビングには紙面を捲る軽い音だけが一定のリズムで繰り返されるばかり。アルベルト自身、何のためにここに来たのかすらいまいち分からない。そもそもは眠れないから何となく来ただけで、特に理由はないのだけれど。
 部屋に戻ろうと思ってはみたものの、何かきっかけがないと立ち上がれず、しかし当然きっかけはなさすぎて、アルベルトはただ猛烈な睡魔とひたすら格闘していた。
 やがて睡魔に負け机に突っ伏してみると、冷たいその感触が意外に心地良くて、アルベルトはそのままゆっくりと緩い眠りに包まれていった。フェイはその様子を眺めながら、目の前で微かな寝息を立て始めた無防備な顔付きに、苛立たし気な舌打ちを投げた。
「何を勘違いしているんだか。本当に……馬鹿な奴だ」
 アルベルトは何時までも染まらない。受け入れた筈の奴隷と言う立場にも、そして、フェイへの憎しみにも。或いは堕ちてしまえば楽になるものを。アルベルトのその頑なさは、やはり彼の深部が未だ王故の物であると示しているような物であった。

 それから二ヶ月、一行はデトの街に滞在し、季節が移り変わり燃え上がる木々が秋の訪れを告げる頃に華やかな街を発った。この二ヶ月を通して見ても、フェイについては一切が闇に包まれたままであった。
 相変わらずにアルベルトは罵られ、軽度ではあるが蹴りを入れられる事も少なくはなく、ただミトに対してのみ、まるで父親のような優しさが時折見受けられる事が分かった位である。仕事をしている時はミトすらも連れて行かずに何でも一人でこなしていくフェイは、沢山の手下に慕われていながらも、酷く孤独な男に思えた。
 フェイとの距離が縮まらない一方で、アルベルトとミトの関係はかなり変わった。馬車の移動もアルベルトは手綱を握るミトの隣でその操り方を教わり、細やかな会話を楽しんでいる。アルベルトはいつからかまだ幼い少年を、本当の弟のように思うようになっていた。エルバントに向ける事の出来ない愛情をミトに向けていたのかもしれない。
 自身は奴隷で、ミトは人買いなのに。全くおかしな関係だ。アルベルトを奴隷とわかっている癖にそう扱わないこの二人の不思議な態度は、アルベルト自身が奴隷として生きると決めた事すら、首輪さえなければ忘れさせていただろう。 

 デトを離れ一週間程走り、もう森を二つ越えた。ミトがあと三日もすれば次の目的地につく事をアルベルトに教えてくれた。
「わんこ、次はモルトダント国の城下町だよ!城下町だから、デトとはまた雰囲気が違うんだよ!」
 得意げな表情のミトに、アルベルトは素直に感心していた。
「ミトは本当によく知っているね」
「わんこが知らなすぎるんだよ!」
 そんな風に二人が笑いながら話している後ろで、一方のフェイはいつにも増して機嫌が悪かった。その原因は、モルトダントにつく一日前に知る事となった。
「ミトとおまえここで待っていろ。どうも予想より手が早いようだ」
 夜が更け二人が火を起こしていると、フェイは栗毛の馬を引きながらいつもより一段低い声で呟いた。ミトはその言葉で全てを察したらしく、力なく頷く。しかし、アルベルトには分からなかった。
「……どうして?」
「わんこ!」
 慌てて立ち上がったアルベルトの手を強く引いたミトが、その意味を聞いてはいけないと訴える。
「ついて来るか?」
「兄貴、ダメだ!」
 フェイの瞳は何時もより一層光を宿していない。加えてミトの慌てように胸騒ぎを覚えつつも、アルベルトは強く頷いた。
 箱庭から出たアルベルトの止まる事のない好奇心は、いつも悪い方に転ぶ事を彼自身忘れていた。

 馬に乗せられ丸一日。フェイは硬く口を閉ざしている。どこか怒っているような、緊張しているようなその雰囲気にアルベルトも呑まれ、口を聞く気にはなれなかった。
 やがて遠くにチラチラと明かりが見え始めた時。アルベルトは風に運ばれ鼻を掠めたその異臭に、思わず嗚咽を漏らした。何かが焼け焦げる匂いと、生臭さが合わさったような酷い異臭である。それは今まで嗅いだ事のない、不愉快な匂いであった。
 アルベルトが遂に我慢出来ずに口に手を当てると、馬を止めたフェイが震える身体をゆっくりと大地に下ろした。しかし吐きたいのに吐く事もままならず、それが収まる時を待ってみるしかアルベルトには対処の仕方が分からない。
 どうしようもなく嗚咽を繰り返していると、フェイは小さな葉をひとひら目の前に差し出した。
「これを噛め。少しは楽になる」
 それが何かは分からないが、この苦しさが楽になるのなら。そう思ってアルベルトは手渡された葉を必死の思いで噛んだ。その瞬間、舌に強烈な刺激が走った。
「なに、これ……!」
 余りの驚きに思わず吐き出してはみたが、痺れた舌の痛みから、吐き気で溜まっていた涙が自然と溢れる。薄荷の類なのか、息を吸うたび舌先が冷えて行く。だがお陰で止め処なく続いていた吐き気は幾分か楽になっていた。
「いけるか?」
 フェイが珍しく気を使っている気がして、アルベルト自身この先に進むのが少し恐ろしくなって来る。しかしそれでも弱い姿をこれ以上見られたくはなくて、アルベルトは溢れた涙を拭い気丈に頷いて見せた。
 再び走り出した馬の上で、フェイはアルベルトの様子を見ては葉を差し出し、その身を案じているような素振りを見せる。しかし匂いは酷くなる一方であり、更には肥溜めに似た類のものも混ざるようになり、アルベルトは最早この異臭に耐え切れる自信がなくなっていた。
「これは、何の匂いなんだ?」
 救いを求めるように問い掛けると、手綱を握る指先に、微かな力がこもる。
「戦の匂いだ」
 背中で響いた声に、心臓が一つ大きく脈を打った。戦の匂いとはどういう事なのかは分からないが、自然と身体が震え、近付く街の明かりが炎だと気付いた時に、吐き気からではなく、アルベルトの瞳からは涙が止め処なく溢れて行った。また知らなかった事を、知りたくなかった事を知る。
 街の様子が見て取れる場所に馬を止めると、フェイは街を見下ろしながら静かに煙草に火を付ける。初めて目の当たりにする人間の戦、燃える街の中で動き回る沢山の人影、人の物とは思えない雄叫び、断末魔のような鋭い叫び。少し小高い丘の上にあるからか、あの匂いはここまで流れては来ないが、その異様な空気にアルベルトは言葉を失った。
「今、王族狩りと称して内乱を煽る妙な連中が裏で動いている。モルトダントに元々反国の動きはあったものの、これ程燃え上がったのはそいつらの所為だろう」
「……王族、狩り?」
 淡々と放たれた言葉、あまりにも恐ろしいその響きに、また身体が震え出す。
「おまえは王として、何を思う」
 真っ直ぐにアルベルトを見詰めたフェイの瞳に相変わらず光は無く、それでも痛い程に伝わってくる。この男は、何か大きな悲しみの中を生きている。フェイは一体、何を求めているのか。アルベルトはその見えない感情を前に、直ぐに答える事ができなかった。
 その視線から逃れるように街に視線を戻す。モルトダントという国の姿は、悲しい程に滑稽で、まるで炎を舞う道化のように見えた。この殺し合いの果てに、人々は何を勝ち取るのだろう。
「虚しい」
 炎が呼んだ風が強く頬に打ち付け、熱い涙を冷やして行った。
 もしも自身がこの国の王だったとしたら、どうするのだろうか。民の不平不満の末に戦が起き、ここまで来てしまったらもう人々の求める物はきっと王の改心などでは無いのだろう。
「この首一つで戦を止める事が出来るのならば、私は喜んでそれを差し出そう」
 思わずアルベルトの口をついた言葉に、フェイは酷く驚いていた。
「……何を言っているんだ」
「いや……独り言だ」
 だが王の命を奪った事で、何かが変わるのだろうか。人の命を奪ってまで手に入れなくてはならない物が、この世にはあるのだろうか。

 相変わらず争いを続ける国を、アルベルトは丘の上から呆然と眺める。少し前にフェイは馬を置いてどこかへ消えた。綺麗な栗毛の馬に手を伸ばすと、馬は大きな黒い瞳で真っ直ぐにアルベルトを見詰めた。その澄んだ瞳に、フィリアを思う。
 無垢な笑顔しか知らない故郷。まるでここは別世界であった。余りにも悲しく無意味な争いをこの世界の人々は繰り返す。その前でアルベルトはいつでも自分の無知と無力さに酷く苛立ち、胸を押し潰す程の悲しみがいつまでも消える事はない。
 こんな苦しみ、知らなければ良かったと、馬の首に顔を埋めアルベルトは唯々無意味な涙を流した。泣いた所で何一つ変わる事はないと、彼自身痛感している。それでもこの悲しい世界を前に、そもそも自分のできる事など何一つない気がして堪らなかった。
 今にして思えば、フェイの言う通りなのかもしれない。王に守れるものなどないのかもしれない。そう思った瞬間、アルベルトの脳裏に美しい少女の笑顔が蘇る。いや、アンナの笑顔を守る事は出来た筈だ。この苦しみはきっと、誰かの笑顔に繋がっているのだ。何も知らないアルベルトは、縋るようにそんな事を思っていた。

 暫くして帰って来たフェイは、アルベルトの情けない顔を見てあからさまに眉を顰めた。
「どうもあと二週間は続くらしい。ここは後回しだ。行くぞ」
 その声が聞こえてはいるが、身体が動かない。無視をしている訳ではないが、涙が引かず何時までも馬に張り付いていたアルベルトは、唐突なフェイの蹴りにより情けなく大地を転がった。
 また簡単に人に暴力を奮うその野蛮さに腹が立って睨み付けたが、フェイはそれよりも深い怒りをアルベルトにぶつけた。
「お前を見ていると、本当に腹が立つんだよ糞犬が!」
 何をそんなに怒っているのかよく分からないが、アルベルトにとって見れば何故これ程理不尽に傷付けられなければならないのか、理解が出来ない。
「お互い様だ!」
「全然違う、バカが!何も知らない癖に!」
 フェイのその言葉に、この旅で収まっていた怒りが、アルベルトの中で遂に爆発した。
「おまえこそ、私の気持ちなど何も分からない癖に!おまえのような野蛮人に犯されて、挙句ブラックタグの奴隷なんか……私はもう、戻れない!おまえ所為で──」
 言って直ぐに、アルベルトの胸を後悔だけが満たして行った。アルベルト自身も気付いてしまったのだ。フェイを憎む事で、この道を自ら選んだ事実から目を背けようとしていた事に。
 一瞬の静寂の後に、フェイは静かに呟いた。
「俺はこの手で未来を掴む為に地を這い、泥を舐めてでも生き抜いた。おまえはいつまでも帰れぬ故郷を思い、立ち止まるつもりか?」
 光を宿さないと思っていたこの男の瞳は過去の悲しみに囚われているようで、遥彼方を見詰めていた。何故だろうか。その時にフェイが、何か大きな信念を背負って生きていて、浅はかな自分などではまるで敵わない、そんな男だとアルベルトは思わされた。
「……夜が明けるぞ」
 その声に顔を上げると遠くの空が薄っすらと白んで見えた。
 まだ暖かい秋の風。二人が朝日を見詰めるその下で、人々は今も殺し合いを続けている。誰にも止める事の出来ない無意味で虚しい戦。フェイはいつでも突きつけるようにそんな悲しみや無力さをアルベルトに教えた。そしてその中で迷い苦しむアルベルトを、まるで救い上げるかのように導く。フェイが一体何を望んでいるのか。知りたくもあるが、それは知ってはいけない事のような気がした。

 この旅はアルベルトにとって、そしてフェイにとっても大きな意味を持つ事を知ったのは、メルトダントを離れ次の目的地での仕事も終えて、季節はもう冬に移り変わった頃だった。
 ラブールに帰る前にフィリアを見せると約束したフェイ。現実を受け止めろ──その言葉すら、アルベルトは忘れていた。二年離れた愛する故郷に帰れる喜び。愛する人々との再会。そして何より、シンに会える事。もう隠す事など何も考えられない程、その時アルベルトの心は、唯々シンを望んでいた。

 馬車は夕焼けの山を走る。この森を抜けオーラストを横切り、国境を渡る山を越えればもう、フィリアである。
「楽しみだなあ、わんこの国!」
 ミトはアルベルトの隣で嬉しそうにはしゃいでいた。アルベルトもミトに、フィリアを見せたいと思っていた。あの国の平和に触れたらきっと、誰もが驚く事だろう。
 しかし二人が頬を緩めている後ろから、フェイは苛立たし気な声を投げた。
「バカを言うな。おまえは馬車の見張りだ。糞犬も何を浮き足立っている。フィリアに行く時間は夜が更けてから。誰にも話させないし、会わせない」
「……え?」
 思わず振り向くと、フェイはアルベルトを鋭く睨み付けた。
「言ったはずだ。オーラストは滅びた。おまえは国じゃもう、墓の中なんだよ」
 あまりにも強い瞳に圧され、素直に頷いてはみたが、しかし浮かれていたアルベルトは心の中で、それでも皆待ってくれている。シンだってこの身の無事を信じている。そう思っていた。

 二日かけて山を越え漸く到着したオーラストには、相変わらず人の姿は見受けられなかった。領地争いの戦と言っていたが、広がる黒い大地は誰の手も入っていない。アルベルトが半年前に発った時のままであった。テバンと言う国は何の為にこの国を滅ぼしたのか、アルベルトには分からない。
「少し、見てもいいか?」
 朽ち果てた城を見てジャックが無事とは思えなかったが、アルベルトはどうしても少しの希望に望みをかけたかった。馬車を止めると、アルベルトはミトと共に城へと歩を進めた。フェイは不機嫌そうに荷物の上で目を閉じていて、もしかしたら滅んだ故郷を思い出させたかと、アルベルトは少し申し訳ない気持ちになった。
 焼け焦げ朽ち果てた白い城を、手を繋いで歩く。アルベルトの人生を変えたこの場所。それでも変わり果てた姿を前に、思わず胸を圧し上げる何かがあった。
 記憶を頼りに大きく崩れた城壁をどけ、地下への階段を見付けるとアルベルトは迷う事なく足を進める。入り口は激しく燃えていたが、中はあの時のまま。薄暗い階段を下りきった目の前の牢屋、アルベルトが一年と言う長い時を過ごした場所。そして、ジャックと出会った場所だ。
 湿気が多く、冷んやりとした地下牢にいつの間にか自生した光苔が、淡く石壁を浮かび上がらせる。壁の傷もあの時のまま。激しい望郷の願いも、あの時のままであった。
 その牢の隅で、蹲るように眠る少年、その手に握られた枯れ果てた葦の葉の小さなバッタは、手に取った瞬間、脆く崩れ去っていった。
「……わんこ?」
 変わり果てたジャックの姿に、あの時連れて行かなかった事を後悔する以外、アルベルトにはどうしたら良いか分からなかった。それでも背中をさするミトの手が暖かくて、唯々声を上げて泣いた。 
 自らの死を覚悟し命を救ってくれた赤毛の少年を、彼が愛したこの国がよく見える丘の上に眠らせた。ジャックはこの国の為、戦う為に残ったけれど、やはり戦の恐怖にまかれ、アルベルトと共に過ごした地下牢に逃げ込んだのだろう。それは何も恥じる事ではない。誰よりも優しく、勇敢だった事を、アルベルトだけは知っているのだから。
「この人がわんこを逃がしてくれた人だったんだね。俺からも、お礼言う」
 そう言って胸に手を当て目を閉じるミトを見て、また涙が溢れそうになる。
「ありがとう、ミト」
 言葉を詰まらせながらもそう言うアルベルトに、ミトは白い歯を見せて少し照れたように笑った。
 手を繋ぎ馬車へ戻りながら、アルベルトは死を望んだ事を恥じた。この命はもう、自身だけの物ではない。何があっても生きなくては。赤く染まる空を仰ぎ、強く胸に誓った。
 帰って来たアルベルトの顔を見て、フェイは忙しい奴だと鼻で笑った。こうして一行は悲しみを抱いてオーラストを発ち、待ち望んだ故郷、フィリアを目指した。

 それから丸一日馬車を走らせ、一行は漸くフィリアの手前までやって来た。雪は降っていなかったが、大地はもう白く染まっている。
「行くぞ」
 枳殻の林の手前で馬車を下りると、フェイは直ぐに歩き始めた。
「いってらっしゃい!」
 もしかしたら永遠の別れとなるとも知らず元気にそう言うミトに手を振って、アルベルトもその後を追った。
 夢にまで見たフィリア。二年ぶりの故郷は、変わらずに息を呑む程美しかった。蒼白い月明かりに浮かぶ白銀の大地、なだらかな勾配に点々と佇む案山子、谷間を吹く風の匂いすら、酷く懐かしい。二年とは思えない程に長い長い旅をしていた気分だ。漸く帰って来たのだ。そう思うと、思わず走り出したくなる程であった。自分が穢れてしまった事も、首輪が付いている事すら、その時は忘れられた。
「フェイ、父上の墓参りがしたい」
 フェイは嫌な顔を見せたが、拒絶はしなかった。そこに自分の墓があるかもしれない。なければ、この男から逃げる。まだ皆が待っているのなら、帰る場所はここだ。アルベルトは熱く滾る胸の内、静かにそう誓っていた。
 雪に覆われた大地を確かめるように踏みしめ歩む。国境から程近い墓場について、アルベルトは真っ先に一番奥に建てられた父と母の眠る墓へと向かった。その横に、アルベルトの墓はなかった。やはり皆信じてくれているのだ。
 父よ、今帰った。今度こそこの国を守る為に──父の墓前、アルベルトがそう誓っていると、フェイは水を差すようにその背中に言葉を投げた。
「一応、全部見た方がいいんじゃないのか」
「……そうだな」
 そう言いながらも、アルベルトはいつ逃げ出すか、それしか考えてはいなかった。フェイは何を考えているのか、周りを頻りに警戒しながらアルベルトと一定の距離を保っている。気にはなったが、近過ぎるよりは逃げ易い。そう思うと、逸る気持ちを抑える事の方が難儀に思えた。
 一頻り見て回ったが、墓場にある物はどれもアルベルトがここを発つ前に見た事のあるものばかりである。それに深く安堵しながらも一応注意深く墓石を見て歩いていると、隅に新しい墓が二つ増えている事に気付く。本能的に、酷く嫌な予感がした。
 何故あんなに日の当たらない隅で、二つ並んでいるのだろうか。ゆっくりと近付く度に、心臓が大きく鳴る。そして、墓に書かれた名前を確認した瞬間、アルベルトは思わず息を呑んだ。
 アンナ・フリート──それは、アルベルトがあの日身代わりとして助けた、この国一番綺麗な少女の名前だった。そしてその隣に佇む墓に彫られた名前に、アルベルトはもはや何も考える事が出来なかった。
 レッド・フリート 死刑囚──何故この国で。悲しみなど、憎しみなど、怒りすらも縁遠い平和な──。
「おい!」
 フェイの声が背中で聞こえたが、アルベルトは無我夢中で城へと走り出していた。
 お願いだ。この訳のわからない状況を、誰か悪夢だと言ってくれ──そう願いながら。

 城の側の川に差し掛かった時、休む事なく走り続けていたその足は漸く止まった。シンと夜の散歩でよく訪れた川の側。アルベルトの墓は、静かに其処に佇んでいた。
「おまえっ、何なんだよ!」
 息を切らしたフェイが立ち尽くすアルベルトの手を掴んだ瞬間、思わずアルベルトはその手を振り払った。
「触るな!おまえが、おまえさえいなければ!」
 そこまで言って、アルベルトはその場で蹲ったまま立つ事すらも出来なくなった。
「だから、言っただろう」
 フェイはこうなる事をきっと知っていた。何度もアルベルトに教えてくれていた。その優しさに気付いていれば、この悲劇を、知らなくて済んだのだ。
 アルベルトが今にもこの悲劇を前に叫び声を上げようかと言う、その時であった。
「……兄様?」
 突然耳に触ったその声にアルベルトが勢い良く顔を上げると、そこには二年ぶりに会う愛しい弟の姿。
「エル!」
 少し大きくなったように思える弟は、アルベルトとフェイを交互に見た後に、思わず駆け寄ろうと踏み出した兄に向け、まるで嘲笑うかのように笑ったのだ。
「何で、戻って来たの?」
 何を言われたのか、アルベルトは一瞬分からなかった。だが次の瞬間、遠くで草を踏む音が響き、フェイは呆気に取られていたアルベルトの手を乱暴に引いて足の長い川草の茂みに飛び込んだ。アルベルトは混乱しながらも、先程のエルバントの言葉を何度も何度も繰り返し胸の内で呟き、聞き間違いである可能性を探していた。だがどうにも上手くいかず、再びエルバントに声をかけようとしたが、フェイに口を塞がれていて、おまけに立ちあがれないように組み敷かれていてはどちらも叶わない。どうしてだと睨み付けるも、フェイは唯一点を見詰めていた。
「エル様、どうかなさいましたか?何やら人の声が聞こえたようですが」
 雪原に響く澄んだその声は、シンの物であった。その声を聞いた瞬間、アルベルトの中に根を張っていた熱い感情が溢れ出し、どうにかして逃れようと暴れ出す。しかしフェイは更に強くアルベルトを押さえ付け、やはり徒労に終わってしまった。仕方がないが姿だけでもとアルベルトが声の方に視線を向けた時、草むらに視線を投げたエルバントとその一瞬、視線がぶつかった気がした。
 しかし──。
「ううん、ネズミ」
 エルバントは白々しくそう吐き捨てた。
 どうした事だろう。二人は仲の良い兄弟だった筈だ。喧嘩だって今までした事がない。アルベルトはシンと同じ位にエルバントを想っていたし、同じ位に会いたいと願っていた。なのにどうして、エルバントは見た事もないような瞳でシンを見ているのだ。そして何故、二人は抱き合っているのだ。
「エル様、アル様の墓前ですから」
 シンが諭すようにそう言うと、エルバントの瞳は、再び押さえ付けられ、草葉の陰に隠れるアルベルトに向けられた。その瞳に、先程の熱はもうない。
「じゃあ早く帰ろう。ねえシン、僕の事を愛してる?」
「はい」
 冬の雪原、凍った小川、アルベルトの墓前にて、二人は、熱く唇を重ねた。その時、アルベルトの中で、何かが崩れ落ちて行った。

 二人が去った事を確認すると、フェイはゆっくりと押さえつけていた手を離した。アルベルトは溢れそうな涙を、唇を噛み締めて耐えた。何度も何度も頭を巡る二人の姿。一体自分は何を勘違いしていたのだ。自身の愚かさに思わず零れそうになった涙をも慌てて抑えようとした手を、フェイは酷く優しく制した。
「こんな時位、自分の為に泣いたらいいだろう」
 その言葉に、耐え続けた涙が堰を切ったように溢れていった。ぎこちなく抱き寄せられたフェイの腕の中で、この想いが二度と届く事はないと知りながら、アルベルトは何度も、シンの名を呼んだ。 

 最早立つ事も出来ず、フェイに抱かれ馬車に戻ってもアルベルトの涙が止まる事は無かった。
「わんこ、どうした?大丈夫?」
 心配そうに覗き込むミトの優しい顔を見ても、余計に涙が溢れるだけである。
「出せ」
 静かなフェイの声を合図に、アルベルトは再びフィリアを発った。
 走り出した馬車の中でも泣き続けるアルベルトの髪を撫でる手があまりにも優しくて、大っ嫌いな男だと忘れ、アルベルトは唯々その優しさに縋った。

 夢にまで見た男との再会は、あまりにも切ないものだった。そしてフェイの言う通り、愛した自国にアルベルトを待つ者はいなかった。箱庭を出て穢れたこの身はもう、戻る事は出来ない。アルベルトはそう思い知らされた気がした。
 こうしてアルベルトは愛する自国と決別した。もう、本当に王ではなくなった。縋り続けた王としてのプライドも、もう必要はない。アルベルトはこの世界で、ブラックタグの奴隷として生きていく以外に道はなくなった。
 アルベルトは深い絶望が訪れる度、いつも選ぶべき道が間違いだったと感じてしまう。それでもその全てに意味があるものだ。だがそれを知るのは、もっと先の話となる。
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