King of the slave

鴻上縞

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十章 光なき道程

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 乾いた風だけが、ラブールを駆けてゆく。長い旅を終えた三人は、一週間程前にこの街に帰り着いた。そしてあの旅は、アルベルトの、そしてフェイの心にも、深い爪痕を残していた。

 人買い小屋の二階の部屋。フェイはいつも通りの生活に戻っている。
「はい丁度ね、毎度」
 受け取った金貨をポケットに入れる動作を見送り、客である男は机に座るフェイの耳元に脂ぎった顔を寄せた。
「なあフェイ、いい加減儲けを考えるなら黒札入れろよな。お前の仕込みなら、良いのが出来るんじゃないのか?」
「俺はブラックタグは仕込まねえんだよ。とっとと失せろ」
 苛立ったフェイがまだ何か言いたげな男に小さく舌打ちを見舞うと、男は慌てて部屋を出て行った。
 その背中を見送ってから、フェイが部屋の隅で俯いたまま小さくなっている少女に軽く手招きをすると、少女は怯えながらもフェイの前に歩み寄った。頬についた泥を拭うとそれだけでビクリと肩を震わせる。
「おまえのお得意さんが褒めていたぞ。よく働くってな」
 フェイとしては優しく言ったつもりだが反応は無かった。
 首輪についたブルータグ、この少女は生まれ付いての奴隷。自身は人買だ。心を開かない事も当然で、それでいいのだ。ルーイを呼んで少女を下がらせ一人になった瞬間、フェイの口からは思わずため息が漏れた。
 ブラックタグ──その言葉にアルベルトを想う。ラフターの口車に乗せられ仕込みを引き受けはしたが、本当に嫌で堪らないのだ。そのラフターに旅から帰って来てからそろそろ仕込みを再開しろとうるさく言われているのだが、どうにもやはり気乗りがしない。
 鬱々と考え込んでいると、小さく扉を叩く音が響いた。
「兄貴、連れて来ました」
 顔を覗かせたミトは少し不安気な表情だ。本当にアルベルトによく懐いている。一応他の奴隷への建前もあるし、縄は付けて来るように言っているものの、ミトは内心それが嫌だったのだろう。部屋に入った途端に細い手首を縛る縄を外した。
「それじゃあ……」
 そう言ってミトが部屋を後にすると、残されたアルベルトはどうにもバツが悪そうにフェイの顔色を伺っている。
 一週間ぶりだが、顔色も別段悪くはなくて、フェイは心のどこかで安堵した。アルベルトはいつでも他人の痛みやこの世界の無情に涙を流す癖に、自分の事となると直ぐに強がる癖がある。だからなのだろうか。あの時ふと、自分の為に泣いて欲しいと思ったのは。
「元気そうだな」
 アルベルトはフェイの言葉に驚いた顔を見せた。細い金髪も翡翠色の瞳も、ブラックタグなどにしておくには勿体無い。だがそれを決めたものはフェイ自身である。この世界は少しでも道を外れれば待っているのは地獄。その地獄をアルベルトの目の前に突きつけたものも、フェイだ。アルベルトの顔にはここに来た時よりも色濃く暗い影が滲んで見えた。その全て、自身が齎した物だとフェイは感じていた。
 ぼんやりとその顔を眺めていると、アルベルトは長い睫毛を伏せて小さく呟いた。
「いつでも、おまえの言う通りだ。帰るべきではなかった」
 小さく震えるその姿は、あまりにも心細い。どれ程に堕ちたとしても、王として自国に帰り着く事を望みに生きて来たアルベルトには、今回の帰郷の旅は何より辛い現実だった。もう王ではない事など、アルベルトでさえ分かった筈だ。
「すまなかった。私はおまえの事をとんでもない悪人だと……勘違いしていた」
 それなのに、フェイを真っ直ぐに見据えたその瞳は、未だに王としての輝かしい自尊心を保ったままであった。
 何故そんなにも強い。生温い国に生きて、外に出た期間は僅か二年。その二年でこんなにも強くなれるのだろうか。信念を失わず、生き続けられるのだろうか。
「勘違いじゃない」
 だからこそ、この男が嫌いだと、フェイは苛立ちに圧され動いた。
 思い切り机に叩きつけられたアルベルトから、短い悲鳴が上がる。あまりにも予想外だったのか、見上げた瞳には驚きと怒りが滲んで見える。だが旅に出る前まで服に手を掛けるだけでも喚き散らしていたアルベルトは、その日は何故か大人しくフェイを受け入れた。瞳の輝きは失わずとも、遂に心は堕ちたか。そう思うと何故か胸が締め付けられるように痛んで、思わず服に掛けたフェイの手が一瞬動きを止めた。そんな自分に驚き、フェイが慌てて再び手を進めようとした時、不意に頬に伸びた指先に身体は凍り付く。
「フェイ、何がそんなに辛い」
 何故、そんな事を言うのか。自分の息が上がってゆく事を感じて、フェイは慌てて身を引いた。その手を掴んだアルベルトの瞳は、やはり目を背けたくなる程に、美しい輝きに満ちていた。
「調子の良い事を言っているのは分かっている。けれどもう、何も知らずにおまえを憎みたくはない。何故そんなに辛そうな顔をするか……教えてほしい」
 一体何がそれ程にこの男を動かすのだろう。もう帰る場所も、愛した男も、血を分けた弟さえ失ったのに。
「知らなければ良かったと、後悔する事になる」
「それでもいい」
 アルベルトの強さが、逃げ出したくなる程に恐ろしかった。
「もういい。出ていけ」
「フェイ!」
 尚も食い下がるアルベルトを突き放し、フェイは真っ直ぐにその瞳を見詰めた。
「俺は十三の時から五年、ブラックタグとして生きて来た。その意味が分かるだろう。これで、満足か」
 アルベルトはあまりの驚きに、言葉さえも失っていた。奴隷としてその苦しみを知っている男が、今では人買。さぞや軽蔑した事だろうが、それでいい。フェイは胸の内で強くそう繰り返す。
「ミトは下にいる。早く出て行け」
 扉が閉まる音が、静かな部屋に一段と大きく響いた。

 一人になった部屋で、フェイは早まる動悸を必死で抑えようと呼吸を繰り返す。過去を明かさずともかわせたはずだ。何故思い出したくもない事をアルベルトに話してしまったのだろうか。あの瞳に僅かでも、期待したのだろうか。
「フェイ、おまえ変だぞ」
 突然耳元で響いた声に飛び上がる程驚いたフェイを呆れ顔で見詰めていたのは、丸眼鏡の男、ラフターであった。
「何だよっ、悪趣味な奴だな!」
「おまえ、仕込み上げる気あるのか?」
 またその話しかと、フェイはあからさまに不機嫌な舌打ちを見舞った。
「あの糞犬がいつまでも──」
「まだ怖いか?」
 食って放たれたその言葉に、一気に頭に血が上るのを感じ、鋭く睨み付けるもラフターは怯む事なくフェイを見据えた。
「俺は医者だ。その位は分かる」
 分かっているなら、放っておいてくれ。その意も込めて視線を逸らす。ラフターはそうか、と小さく漏らした。
「アルなら、おまえを変えられると思ったんだがな」
「……アルって誰だ?」
 その瞬間、硬い音と共に鈍い痛みが頭部に響いた。
「痛っ!」
「アルベルト・フィリア。おまえの糞犬の名前だろうが」
 糞犬で一貫していた所為で、いまいちピンとはこないが、殴られた頭部の痛みからフェイは素直に頷いた。
「旅から帰った時に、おまえの中で何かが変わった。違うか?」
 ラフターとはもう、七年の付き合いだ。ブラックタグとして生きていた時からフェイの事を知っている。そして、フェイの本当の姿を知っている。だからこそ迂闊な事は言えない。
「何も変わる訳ないだろう。これは何だ、治療か?」
 少し考えた後にラフターは静かに呟いた。
「……世間話だよ」
「そう言う嘘は良いんだよ。本当に何しに来たんだ」
「気になったから。おまえ、わざと目を逸らしているだろう」
 これだから医者は嫌いだと胸の内で毒吐きながら、フェイは遂に不貞腐れてそっぽを向いた。
「もう話したくない」
 小さな溜息だけを残し、ラフターは部屋を出て行った。
 ラフターの言う通り、確かにフェイはアルベルトから目を逸らしていた。それにはフェイにしか分からぬ、葛藤があったのだ。
 アルベルトは誰からも愛されて生きて来た。フェイは生まれ落ちてより、誰からも愛された記憶はない。実の父すら、フェイを見てはくれなかった。この世界の無情を目の前にした時も、アルベルトはそれでも人に心を寄せ生きる事を選び、そしてフェイはたった一人生きる事を選んだ。その違いは何か。それは、簡単な事だ。アルベルトには帰る事は出来なくとも愛する故郷がある。想いは届かずとも愛する者がいる。何より、背負う罪が無い。だからこそ輝きを失わずにいられる。それが堪らなく羨ましくて、フェイは無意識に同じ道を歩ませようとしていた。
 何とも恐ろしい事だ。一体何を望んでいたのだろう。アルベルトならば、全てを理解してくれるとでも思ったのか。
 フェイは弱る心に鞭打つように、胸の内で繰り返す。思い出せ、何の為に地を這い生きて来た。この罪深い薄汚れた人生の果てに、はるか昔願った夢を叶える為だ。その夢の為に、もう立ち止まる事は出来ない。例え憎まれ軽蔑されても構わない。その為にたった一人、長い間孤独の闇の中を生きて来たのだ。何にも縋る事のない、そんな強さを手に入れたのだ。まだ間に合うのかもしれない。胸の奥に引っかかるこの想いに気付く前に──。

 その夜フェイは弾かれるように、ラブールを発った。

 休む事なく馬を走らせ四日。夜が更ける頃、フェイは漸く目指した地へと辿り着いた。アルベルトの故郷、フィリア──。
 あの時、アルベルトは気付いていなかったが、この国はどうも様子がおかしい。入口には稚拙な罠が張られていて、墓場までは使い込んだ鍬を手にした農夫が付いて来ていた。彼等は薄闇の中距離を取って付いてきていたから、アルベルトの顔までは分からなかったようだが。
 聞いていた話しとはまるで違う。今もこの国に足を踏み入れた途端、下手くそな尾行が付いたようだ。だが人の足ではさすがに馬には追い付けず、程度の低い尾行も軽く振り切ることができた。それを除いてしまえば、アルベルトが何時でも思い続けるだけはある。美しく清廉で、谷間に息衝く大自然と寄り添うような国。これ程静寂に愛された夜も、澄んだ風の匂いも感じた事がない。アルベルトは育まれた地を、そのままその身に映しているようである。
 フェイは小川に差し掛かると馬を降り、確かめるように大地を踏んだ。アルベルトの墓は、この小川を上り丁度城を背にして建てられている。その一点を目指す足取りは決して軽いものではない。だが、何かに突き動かされるよう、止まる事は無かった。

 やがて墓石の影が微かに伺える所までくると、フェイは翡翠色の瞳を思い浮かべながら、眩い星の川を見上げ一つ息を吐く。
 この国に来た目的は、当然フィリアの美を堪能する為ではない。フェイはある男に会いに来たのだ。祖国が滅びて以来、十二年ぶりに会う、フェイと同じく、黒い瞳を持つ男に。
 川面に腰を屈める人影の背後から、フェイは落ちた声を投げ掛けた。
「久しぶりだな、シン」
 その声に振り向いたシンは、フェイの姿を目に留めた途端、普段一文字に引き結んでいる唇を開けたまま、あまりの驚きに声を失っていた。それでも何とか上がる息を整え、確かめるように一言一言区切りながらシンは言葉を何度も噛んだ。
「まさか、フェイ、様……ですか?」
 その横で隠れるようにしてフェイを睨む少年は、警戒心を露わにシンの袖を引いている。
「シン、外の人を入れたら……」
「エル様、この方は昔の……知り合いです。少し話しがしたいので、先に城へ」
 フェイは二人のやり取りを眺めながら、苛立つ気持ちを押し殺した。
 やがて説得されたエルバントが渋々城へと戻ると、シンはいきなりフェイを掻き抱いた。
「まさか、生きておられるとは!こんな事が、夢のようだ……!」
「やめろよ、もうガキじゃない!」
 その言葉に慌てて離れたものの、シンは相変わらずまるで夢見心地で、フェイの存在を確認するかのように優しく輪郭をなぞっている。
 しかし、一時もすればその表情が微かに強張った。
「生き残ったものは、貴方一人ですか?」
 瞳に涙を溜めたシンを前に、フェイは頷く事が出来なかった。
 十二年前滅びた国、二人の故郷。名をリーハと言った。戦火に呑まれ、生き残った者はシンとフェイだけである。何も言わない事に全てを察したシンは、その悲劇を前に、真珠のような涙を一粒、頬に滑らせた。
「さぞや辛かった事でしょう。私は何も出来ず、申し訳ありません」
 フェイはゆっくりと首を横に振る。きっと誰よりも傷付き生きたものはこの男であるから。
「お前の父が、庇ってくれた。俺など、生き残るべきではなかったのに」
「フェイ様、どうぞそんな事を言わないで下さい。私はこうして貴方のこれ程にも立派な姿を見る事が出来、心より幸せに思います」
 シンはどこまでも一本気で、優しく、美しい男であった。それは二人が別れて以来、何一つ変わってはいない。
「国を出てからは、何を?」
「……適当に、生きていた」
 だからこそとても言えなかった。一時ブラックタグに身を落としたなどと。
「シンこそ、こんな所で性悪糞野郎のお守りか?」
 小さく眉根を寄せたシンは、フェイの言葉の意味がいまいち分からないようだ。
「エルと言ったか。顔は兄貴そっくりなのに、性格は真逆だな」
 フェイの言葉に当然シンは酷く驚き、息を飲む動きに合わせ逞しい喉が大きく波を打つ。
「アルベルト様を、ご存知なのですか?」
 そう、フェイは十二年ぶりの再会を楽しむ為にここに来たわけではない。これは賭けなのだ。どちらに転ぶか。フェイと、そしてアルベルトの運命が。
「人買いの街ラブール。そこにアルベルトはいる」
 あまりの衝撃に、シンは再び言葉を失っていた。アルベルトが生きていたなど、とても信じられないのだろう。
「実は二週間程前、俺はアルベルトと共にここへ来た。性悪糞野郎は兄の帰還を拒絶したが、あいつはまだこの国を想っている。お前は、どうする?」

 シンは、長い間黙り込んでいた。フェイもまた言葉を掛けられず、ただ時間だけが流て行く。冬の冷たい風ばかりが胸に染みる。フェイは自分でも気付かぬうちに緊張していたのか、心臓の音が耳に痛い程である。シンの出す答えは知りたい。それでも、アルベルトを失う事が今更になって怖くなっていた。
 そして漸く顔を上げたシンは、息を呑むフェイを見詰め、あまりにも悲しく、そして優しく微笑んで見せた。
「私は、あの方を忘れなければならない。守らなければならない人がいるのです」
 その時、フェイは気付いてしまった。シンもまた、アルベルトを想っていたこと。それでもこの男はもう、戻る事の出来ない道を歩んでいる事を。
「アル様は、笑っていますか?」
 フェイが小さく頷くと、シンは優しく微笑み、深く頭を下げた。
「貴方に頼む事ではないと分かっています。けれどどうか、あの御方の事をよろしくお願いします」

 フェイは一人、フィリアを発った。頭を下げたシンは、泣いていたように思う。フェイのついた嘘にもきっと気付いていただろう。その心を思うと、息が詰まるようだった。笑わなくなったアルベルトは、シンに会えば笑えるのだろうか。そう思えばこそ、この国に返してやりたい思いもある。だがシンの決意、歪んだ弟、ここでアルベルトは笑えるのだろうか。変わってしまった国を見せる事が、正しいのだろうか。それはフェイにも分からない。
 あまりにも似ている二人の境遇。ブラックタグに身を落とし、その地獄を生きなければならない苦悶。それでもやはり違うものは、愛してくれる者がいる事だ。だからこそ誰よりもアルベルトの気持ちが分かるのにも関わらず、何一つ救い方が分からない。フェイはこの事をアルベルトには知らせずにいようと決めた。フェイとて、人の為に悩んでいる場合ではない。立ち止まる訳にはいかないのだ。

 旅を終え、フェイは再び遥か昔その胸に誓った信念を噛み締めた。心を閉じて、たった一人この孤独を生きる訳を。王として、自ら滅ぼした国。奪って来た数え切れぬ命。背負ったその罪を決して忘れる事のないよう。そして名前さえ奪われ心を閉じた人々が、自分の力で立ち上がる日を夢見て、この道を進むしかないのだ、と。
 神に許されなくとも良い。けれどどうか、誰からも愛されるあの男が、同じ光なき道を歩まないように。唯々、それだけを祈った。
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