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十四章 絶望と無明
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アルベルトとミトが国を出て丸二日が経った。ミトはゆっくりと馬を走らせていたから、普段より少しだけ時間がかかっているが、ラブールまでの一週間程の道のりでアルベルト自身考えたい事があった。
アンナの死をどう受け止めたら良いのか。アルベルトの所為だと言ったエルバント。国を離れた事は、逃げでもあった。逃げたこの身がフェイとどう向き合うか、この罪から逃げる事をフェイは酷く怒りそうである。それに何よりフェイはアルベルトの事がどうやら嫌いらしい。心配はしてくれるし、フィリアに返してくれた。だがそれはきっと、誰にでもそうなのだろう。こんな男に心を開いてくれるのだろうか。アルベルトにも不安がない訳はない。むしろ、不安しかない。ラブールを離れ早くも半年。何も変わっていないと良いが──。
そんな事をアルベルトが濛々と悩んでいる間に、間も無く国境を渡る山を越える。そこには未だ人の手の入っていないオーラストがある。
「ジャックの墓参りをしてもいいか?」
すまなそうに問うアルベルトに、ミトは快く頷いてくれ、二人は朽ちた城が見下ろせる丘へと馬車を進めた。葦の葉は見付からなかったから、周囲に生えていた雑草で作った飛蝗を墓前に供え、二人は同時に目を閉じた。
いつでもこの命はジャックと共にある。この目が見る景色、その全てを、優しい赤毛の少年に捧げよう。アルベルトがそう思えたのも、奴隷としてでも生きて行こうと決めたからである。フェイは不思議な男だ。人に生きようとする力を与えてくれる。特別な言葉を掛けてくれる訳じゃない。けれどあの男と関わると、不思議と強くなれる気がした。
そんな物思いにふけっていたアルベルトの袖口をミトは軽く引いた。
「ねえ、わんこ。あの人たちこっちを見ているよ」
その言葉でミトの視線の先に目をやると、確かにこちらを見る数人の人影が見受けられる。こんな所で一体何をしているのだろうか。
「人買いかな」
アルベルトはここでミトに捕まった事を思い出していた。だが、ミトは注意深く首を振った。
「……違うと思うよ。あの紋章は、テバンの物だ」
テバン──オーラストを滅ぼした国。その国の名に、アルベルトは身体中の血が駆け巡るように熱くなるのを感じた。
暫く睨み付けていると、一人の男がこちらに向かって歩み寄って来た。アルベルトは咄嗟にミトを身体の後ろに隠す。
「そこで何をしている」
顔が認識出来る位置まで来ると、男は声高らかにそう問うた。
「私はアルベルト・フィリア。この山向こうの──」
言いかけて、アルベルトはそれ以上言葉を続ける事が出来なかった。遂には目の前まで迫った屈強な男は、まるで威圧するかのように口籠るアルベルトを見下ろしている。
「まるで位の高い者の喋り方だな。何者だ。ここをテバンの領地と知っての事か」
「……何者でもない」
その答えが不服だったのか、男は大袈裟に眉をしかめた。自分がもはや王ではないと同時に、下手に刺激してフィリアに何かあってはいけない。アルベルトは怒りに燃える脳で瞬時にそう判断していた。
テバンは戦をする国。大切な人を奪った国だ。男が舐めるようにアルベルトを見る視線も、酷く不愉快なものに感じた。その瞳に宿る暗い欲望。ブラックタグだった時に見て来た、他者を見下す男達と同じ瞳だ。
アルベルトは周囲を取り囲むように集まる男達を睨み付けた。
「どこかの貴族ですかね」
「何にしても立場が分からないようだ。大人に楯突くとどうなるか、思い知らせてやれ。但し、あのお方に見付かると面倒だ、手短にな」
「わんこ、逃げよう!」
そう言ってミトが強くアルベルトの腕を引いたが、いつの間にかぐるりと囲まれていて逃げ出そうにも道が完全に塞がれている。やはりテバンは乱暴な国なのだろう。アルベルトの胸で怒りの焔が渦を巻いている。だが苛立っている場合ではない。
「私の態度が気に障ったのなら謝ります。ですが私達は先を急いでいるのです。道を開けて下さい」
軽く頭を下げて強引に輪の中心から出ようとするも、やはりそう簡単にはいかなかった。どこに向かっても屈強な男が立ち塞がる。焦りと恐怖、そして抑え切れぬ怒りに息が上がって行くのをアルベルトは感じた。
その中の一番立場が上だろう、最初に話し掛けてきた男を睨み付けると、周囲から乾いた笑い声が起きた。
「こんな状況で良い面構えだな、わんこ」
その男の言葉に周囲はまたドッと湧く。この男達の態度は全く不愉快ではあるが、こんな所で立ち止まっている場合ではない。
「邪魔だ、そこをどけ」
ミトがいるにも関わらず、アルベルトの口からは挑発にも取れる言葉が自然と飛び出す。当然男達の顔からは嫌な笑いすら消え失せた。
「わんこまずいよ!」
ミトにはすまないとは思ったが、それでもアルベルトはこの怒りに抗う事が出来ない。ジャックを、ジャックが愛したこの国を滅ぼしたテバンの人々が、心の底から憎い。
「どこの世間知らずのお坊ちゃんか知らないが、あまり大人を舐めると本当に痛い目を見るぞ」
脅すように胸ぐらを掴まれてももう、アルベルトに恐怖はなかった。
「気が済むのなら思うままその情けない拳を振るうがいい。私はそんな事で屈する程弱くはない」
男の瞳には驚きと、怒りが簡単に見て取れる。男が正に拳を振り上げた瞬間の事であった。
「何をしている!」
突然、睨み合う群衆目掛け走り寄って来た者は、一目見ただけで高貴な人物だと分かる程に、美しい女であった。周りを取り囲んでいた男達が一斉に跪く様を見ても、どうやらこの女は只者ではない。
長い栗色の髪に磁器のように白い肌、ブルーの大きな瞳と、天を向いて反り返る長い睫毛。これ程に気品溢れる美しい人を、アルベルトは未だ見た事がない。
「無駄な争いは避けろとあれ程言っただろう。君、大丈夫か?」
心配そうに肩を揺すられ、アルベルトは見惚れていた事に気付き慌てて頷いた。
「私はテバンの女王、レスティアだ。どうか、臣下の無礼を許してくれ」
凛と張った透き通る声で穏やかに語られた女の正体に、アルベルトは驚きに目を丸くした。
大臣のマルフから昔聞いた事がある。どうしても王子が生まれなかった場合、王女がその国の君主になる事があるらしい。まだ二十五歳程のこの女性が、大国テバンの女王。そして、オーラストを滅ぼした──。
「私はアルベルト・フィリア。助けて頂いた事には感謝します。けれど私は……貴女を許さない」
周りの男達が騒然とする中、女王は今までの気の強さが嘘のように、悲しみに満ちた瞳を伏せた。
「君がフィリアの王か。オーラストの王子から話しは聞いていたよ。我が国の戦に巻き込んですまなかった」
オーラストの王子──突然のその名に、怒りに燃えていたアルベルトの脳は一気に混乱を来した。何故ディラックが自身の話しを。よく分からない。だが一つ分かる事は、この女王がアルベルトの正体を知っていると言う事だ。
「私はもう王ではない!フィリアも離れた、だから──」
「心配するな。フィリアに何かしようとは思っていない」
アルベルトにはやはり分からない。レスティアと言うこの女王は、悪い人には思えないのだ。それがどうして戦争などを起こしたのだろう。
「……ディラック王子は?」
「この国とともに散った。王である父の様に、最期は立派な男だった。死の間際、君を逃がしてくれと私に伝えてくれたのだ。それで、君を探したのだけれど──」
続いたテバンの女王の声も、アルベルトの耳には届いていなかった。何故、ディラックが──ディラックはアルベルトの人生を変えた男だ。あの男がフィリアに訪れたから何もかもが狂ってしまった。アンナの死も、レッドの処刑も、エルバントが変わってしまったのも元を正せばディラックの所為だ。アルベルト自身知りたくなかった事を知り、怒りも悲しみも絶望も、そして死を願わずにはいられない程に追い込まれた。だが、フェイに出逢えた。
ディラックの事は許せない。そうは思っても、今迄のように憎む事は出来なかった。どうして憎んできた人々は、心の底から憎ませてはくれないのだろう。知らない事は、何て罪深い事なのだろう。アルベルトはその深い後悔の念に打ち拉がれた。
何時の間にか口を噤み自身を見詰めていた女王にアルベルトは視線を戻す。そのあまりにも澄んだ瞳は、やはりどうしても戦を起こす様には思えなかった。
「貴女はどうして、オーラストを滅ぼしたのですか」
人の命を奪ってまで得る物があるのだろうか。
「近くにテバンの領地である街がある。ついて来い。そこでなら、君の探す答えが見付かるかもしれない」
探す答え、それを知った事で、自身はその重みに耐え得る事が出来るのだろうか。それでも知りたいと思うのは、やはり頭では分かっていてもアルベルト自身がまだ、王としての自我を残しているからなのだろうか。
レスティアの立派な馬車の後をミトの質素な馬車はついて走る。思考を巡らせぼんやりとしているアルベルトに、ミトがポツリと呟いた。
「綺麗な人だったね」
「……そうだな」
レスティアは本当に美しい。そしてあれ程の屈強な男達を一瞬の躊躇もなく跪かせるだけの揺るがない強さがある。それが一目見ただけで分かる程に、テバンの女王は人を惹きつける魅力的な人だった。
ラブールとは逆へと進む一行。アルベルトはまた一つの道を選んだ。この先に見える物は何だろうか。不安と恐怖、そして僅かな希望を抱いて、アルベルトは唯この道を進む。
半日程でその街には辿り着いた。そこまで大きな街ではないが、それでもやはり所狭しと並ぶ家々に道を歩く沢山の人達。テバンの領地であるこの街は、活気に溢れる街だった。アルベルト達はレスティアの後に続きその中でも一際立派な屋敷に通された。美しい庭園に囲まれたその屋敷は、フィリアの城よりも大きなものだ。
二人はそのまま客間に通された。身体が深く沈み込む柔らかなソファや、部屋の中の古美術品にミトは瞳を輝かせている。その向かいに腰を掛けたレスティアは、その様子を微笑を浮かべ眺めていた。
「彼は君の従者か?」
「いいえ、友人です。ミトと申します」
ミトは突然自分の名を呼ばれ、慌てて緩み切っていた顔を引き締めた。
「友人か。どうだろうミト、庭を見てきては」
そう言ってレスティアは傍に控えていた家臣に合図を送り、その男が優しくミトの手を取るとミトは不安気にアルベルトへ視線を向けた。
「行っておいで」
安心させるようそう言って笑いかけてやると、ミトは渋々手を引かれ部屋を出た。
残った家臣達も下がらせるや、レスティアは先程までの柔らかな表情とは打って変わった真摯な眼差しでアルベルトを見据える。アルベルトはその力強さに圧倒された。初めて他国の王と対面するが、皆これ程に圧倒的な雰囲気を発するのだろうか。誇りや尊厳、その信念の強さすら伺える程だ。自分は奴隷と間違われ、人買いに捕まり、貴族の坊やと呼ばれてしまうのに。これが立派な王と呼ばれる者との格の違いなのだろうか。
そんな事を考えていると、レスティアは言い聞かせるようゆっくりと口を開いた。
「私がテバンの女王になったのは、昨年の事だ。前王である私の父は、オーラストとの戦の少し後、病で息を引き取ってね。だから、私の知る限りしか君に教える事は出来ないけれど、一つ知っておいて欲しい。テバンは古より、平等な和平を望む国である事を」
アルベルトが深く頷くと、レスティアは長い睫毛を伏せた。
「オーラストとテバンは昔から領地争いを繰り返していたのだ。この辺りは良い鉄が良く取れるからね。テバンは和平を望んだ事もあったのだよ。和平同盟を結び、採れた鉄を分け合おうとね。だがオーラストは君も知っての通り、この辺境の地にある。鉄は唯一の資金源であり、他国と対等でいる為の最後の砦でもあった。だから国を守る為、オーラストは和平を拒み続けてきた。そしてオーラストは反テバンの諸国と手を組む動きが近年活発になっていてね、テバン侵攻の緊張感が続いていたのだよ」
「……だから、先に滅ぼしたと?戦の他に、幾らでも方法があった筈だ」
アルベルトの真っ直ぐな言葉に、レスティアは何故か優しく微笑んだ。
「王は国を守る為に戦わなければならない」
「私には分かりません。戦うものは王ではなく、民だ。それに戦を繰り返し、他国を滅ぼさねば国が守れないなんて、そんな事はない筈だ」
「君にもいずれ分かる。この手を血に染め、血の涙を流してでも戦わなくてはならない心が」
どうして、この女王はこんなにも優しい顔をしている。オーラストを滅ぼしたのに。人の命を、奪ったのに。アルベルトの頭は、その混乱に熱を上げて行く。
「僅かばかり言葉を交わしただけでも、私は貴女が悪い人ではないと感じました。けれど、私は、戦が憎いのです」
戦をする人間が、良い人だとは思えないのだ。
「それは誰もが同じ心だろう。戦など無ければどれ程に幸せか。だがね、アルベルト。それでも人は争わずにはいられないのだよ。愛する事を、知っているから」
レスティアの話しはまるで雲を掴むようで、未熟なアルベルトには理解し難かった。どうして愛する事を知っていると争わずにはいられないのだろうか。それが分からないのは自身がまだ、愛すると言う事を知らないからなのだろうか。
難しい顔で考え込んでいるアルベルトに、レスティアはやはりどこまでも柔らかく、優しい声を掛けた。
「アルベルト、君は不思議な王だね。誰もが本当はそうありたいと願う、純真で、優しい王だ。フィリアでは民に好かれただろう」
そう言うテバンの女王は、少女のような新たな顔を見せる。その可憐さに直視する事を戸惑い、アルベルトは思わず俯いた。
「アルで、良いです。それに私はもう王ではない。民に好かれてもいない。苦しめ歪めてしまったのに、その罪を償う事もせず、心の呼ぶ声に身を任せ国を出たのです」
そう思うと羞恥ばかりが込み上げ、王であった事すら隠したい思いである。こんな人間に、他者を救う事は出来るのだろうか。フェイに、会う資格はあるのだろうか。
途端落ち込むアルベルトを掬い上げるよう、レスティアは静かに首を振った。
「アル、全てに意味があるものだよ。君が国を出て私と出会った事も、この街に来た事も」
意味とは何だろう。この寄り道に何の意味があったのだろう。落ち込んだだけのような気がしていたが、項垂れるアルベルトに向かい、レスティアは今度は強く言葉を繋いだ。
「君に、会いたがっている人がいるのだ」
「え……?」
こんな知らない土地で、一体誰が会いたいと言うのだろうか。あまりにも突然の事に意味もなく動悸が激しくなって行く。それでもついて来いと言い部屋を出るレスティアの後を、アルベルトは迷う事なく追った。
長い髪を靡かせて歩く後姿。その凛とした美しさを見つめながらひたすらに進む。だが、疑念は深まるばかり。
「その人は、どのような人なのですか」
「占者だ。私はその人の進言でオーラストに赴いた」
「私を、占ってくれるのだろうか」
一瞬チラリとアルベルトに目をやったものの、レスティアはそのまま歩き続けた。アルベルトの知らない所で動く何か。それが酷く恐ろしくもあった。
やがて離れの一室の前まで来ると、ここより先は一人で行くように言われ、アルベルトは不安ながらも重い扉を押し開いた。覗き込んだ部屋の中は薄暗く、そして何やら不思議な匂いが漂っている。恐る恐る足を踏み入れ数歩、扉が背後で閉まると、薄闇から声が生まれ出でた。
「アルベルト・フィリアだね」
酷く嗄れた声に、アルベルトは思わず小さく飛び上がる。それでも心を落ち着け目を凝らすと、部屋の隅の椅子に一人の老婆が座っていた。
「はい、私はアルベルト・フィリアと申します。……貴女は?」
「掛けなさい」
どうやら質問には答えてくれないようだ。アルベルトは恐る恐る近付き目の前の椅子に腰掛ける。蝋燭の淡い光に浮かび上がる老婆の瞳は固く閉じられ、手先は小さく震えていた。
「私に、何か……」
慎重に声を掛けると、震える指先がアルベルトに向かい伸ばされ、アルベルトは慌ててその手を取る。
「道が、二つ」
「……道?」
アルベルトは占者と言う者と初めて会うが、不思議な感覚を覚えた。全てを見透かされているかの様な、そんな不気味な心地。
しかし幾ら待てども老婆はその先を言わないような気がして、アルベルトは性急に問い掛ける。
「道とは、何ですか」
手を握ったまま、老婆は何やら呟いてはいるが、それはこの世の言葉ではないような気がして背筋を冷たい物が走る。そもそもアルベルトに会いたいと言っていた事も可笑しな事なのだ。だが、老婆が漸く呟いた一言に、アルベルトは震撼した。
「フェイ・リンメイを、知っているね」
何故、この老婆の口からその名が──自分の身体が小さく震えているのが手に取るように分かった。
「知るか、拒むか、二つの道がある。どちらを取るかは、おまえ次第だ」
「何の、話しですか……?」
この老婆は一体何を知っていると言うのか。自身はそれを、知るべきなのだろうか。アルベルトには分からない。
「呪われし大国リーハ、最後の王──。その地獄とも言える人生の話しさ。知れば後悔の道を、知らずとも、進める」
途切れ途切れに呟く言葉はまるで呪いのようで、余計に恐怖を煽る。
「待って、話しが分からない、何を言っているんですか」
アルベルトの頭は混乱していた。突然過ぎて追いついていないのだ。リーハとは確か、滅びたシンの国だ。その最後の王、十三歳だった王──それが、フェイだと言うのだろうか。アルベルトはそこまで思い及ぶと、全身を駆ける悪寒に震えた。
「さあ、どうする」
老婆の嗄れた声が重く耳に響く。アルベルトは混乱する頭で必死に考えた。だが、幾ら考えたとて答えなど一つしかない。アルベルトはあの男の為に、ここまで来たのだから。
「聞きます」
老婆の閉じた瞳がゆっくりと開かれた。揺れる蝋燭の光に映し出されたその瞳は、闇のような漆黒の色をしていた。
アルベルトはフェイの過去を聞く事で救えるのではないかと思っていた。光を宿さない瞳に、再び光を取り戻せるものと思っていた。同じ王として、黒札に身を落とした者として、分かってあげられるものと──だが全てを知った時。それは何とも、愚かな考えであったと知った。
アンナの死をどう受け止めたら良いのか。アルベルトの所為だと言ったエルバント。国を離れた事は、逃げでもあった。逃げたこの身がフェイとどう向き合うか、この罪から逃げる事をフェイは酷く怒りそうである。それに何よりフェイはアルベルトの事がどうやら嫌いらしい。心配はしてくれるし、フィリアに返してくれた。だがそれはきっと、誰にでもそうなのだろう。こんな男に心を開いてくれるのだろうか。アルベルトにも不安がない訳はない。むしろ、不安しかない。ラブールを離れ早くも半年。何も変わっていないと良いが──。
そんな事をアルベルトが濛々と悩んでいる間に、間も無く国境を渡る山を越える。そこには未だ人の手の入っていないオーラストがある。
「ジャックの墓参りをしてもいいか?」
すまなそうに問うアルベルトに、ミトは快く頷いてくれ、二人は朽ちた城が見下ろせる丘へと馬車を進めた。葦の葉は見付からなかったから、周囲に生えていた雑草で作った飛蝗を墓前に供え、二人は同時に目を閉じた。
いつでもこの命はジャックと共にある。この目が見る景色、その全てを、優しい赤毛の少年に捧げよう。アルベルトがそう思えたのも、奴隷としてでも生きて行こうと決めたからである。フェイは不思議な男だ。人に生きようとする力を与えてくれる。特別な言葉を掛けてくれる訳じゃない。けれどあの男と関わると、不思議と強くなれる気がした。
そんな物思いにふけっていたアルベルトの袖口をミトは軽く引いた。
「ねえ、わんこ。あの人たちこっちを見ているよ」
その言葉でミトの視線の先に目をやると、確かにこちらを見る数人の人影が見受けられる。こんな所で一体何をしているのだろうか。
「人買いかな」
アルベルトはここでミトに捕まった事を思い出していた。だが、ミトは注意深く首を振った。
「……違うと思うよ。あの紋章は、テバンの物だ」
テバン──オーラストを滅ぼした国。その国の名に、アルベルトは身体中の血が駆け巡るように熱くなるのを感じた。
暫く睨み付けていると、一人の男がこちらに向かって歩み寄って来た。アルベルトは咄嗟にミトを身体の後ろに隠す。
「そこで何をしている」
顔が認識出来る位置まで来ると、男は声高らかにそう問うた。
「私はアルベルト・フィリア。この山向こうの──」
言いかけて、アルベルトはそれ以上言葉を続ける事が出来なかった。遂には目の前まで迫った屈強な男は、まるで威圧するかのように口籠るアルベルトを見下ろしている。
「まるで位の高い者の喋り方だな。何者だ。ここをテバンの領地と知っての事か」
「……何者でもない」
その答えが不服だったのか、男は大袈裟に眉をしかめた。自分がもはや王ではないと同時に、下手に刺激してフィリアに何かあってはいけない。アルベルトは怒りに燃える脳で瞬時にそう判断していた。
テバンは戦をする国。大切な人を奪った国だ。男が舐めるようにアルベルトを見る視線も、酷く不愉快なものに感じた。その瞳に宿る暗い欲望。ブラックタグだった時に見て来た、他者を見下す男達と同じ瞳だ。
アルベルトは周囲を取り囲むように集まる男達を睨み付けた。
「どこかの貴族ですかね」
「何にしても立場が分からないようだ。大人に楯突くとどうなるか、思い知らせてやれ。但し、あのお方に見付かると面倒だ、手短にな」
「わんこ、逃げよう!」
そう言ってミトが強くアルベルトの腕を引いたが、いつの間にかぐるりと囲まれていて逃げ出そうにも道が完全に塞がれている。やはりテバンは乱暴な国なのだろう。アルベルトの胸で怒りの焔が渦を巻いている。だが苛立っている場合ではない。
「私の態度が気に障ったのなら謝ります。ですが私達は先を急いでいるのです。道を開けて下さい」
軽く頭を下げて強引に輪の中心から出ようとするも、やはりそう簡単にはいかなかった。どこに向かっても屈強な男が立ち塞がる。焦りと恐怖、そして抑え切れぬ怒りに息が上がって行くのをアルベルトは感じた。
その中の一番立場が上だろう、最初に話し掛けてきた男を睨み付けると、周囲から乾いた笑い声が起きた。
「こんな状況で良い面構えだな、わんこ」
その男の言葉に周囲はまたドッと湧く。この男達の態度は全く不愉快ではあるが、こんな所で立ち止まっている場合ではない。
「邪魔だ、そこをどけ」
ミトがいるにも関わらず、アルベルトの口からは挑発にも取れる言葉が自然と飛び出す。当然男達の顔からは嫌な笑いすら消え失せた。
「わんこまずいよ!」
ミトにはすまないとは思ったが、それでもアルベルトはこの怒りに抗う事が出来ない。ジャックを、ジャックが愛したこの国を滅ぼしたテバンの人々が、心の底から憎い。
「どこの世間知らずのお坊ちゃんか知らないが、あまり大人を舐めると本当に痛い目を見るぞ」
脅すように胸ぐらを掴まれてももう、アルベルトに恐怖はなかった。
「気が済むのなら思うままその情けない拳を振るうがいい。私はそんな事で屈する程弱くはない」
男の瞳には驚きと、怒りが簡単に見て取れる。男が正に拳を振り上げた瞬間の事であった。
「何をしている!」
突然、睨み合う群衆目掛け走り寄って来た者は、一目見ただけで高貴な人物だと分かる程に、美しい女であった。周りを取り囲んでいた男達が一斉に跪く様を見ても、どうやらこの女は只者ではない。
長い栗色の髪に磁器のように白い肌、ブルーの大きな瞳と、天を向いて反り返る長い睫毛。これ程に気品溢れる美しい人を、アルベルトは未だ見た事がない。
「無駄な争いは避けろとあれ程言っただろう。君、大丈夫か?」
心配そうに肩を揺すられ、アルベルトは見惚れていた事に気付き慌てて頷いた。
「私はテバンの女王、レスティアだ。どうか、臣下の無礼を許してくれ」
凛と張った透き通る声で穏やかに語られた女の正体に、アルベルトは驚きに目を丸くした。
大臣のマルフから昔聞いた事がある。どうしても王子が生まれなかった場合、王女がその国の君主になる事があるらしい。まだ二十五歳程のこの女性が、大国テバンの女王。そして、オーラストを滅ぼした──。
「私はアルベルト・フィリア。助けて頂いた事には感謝します。けれど私は……貴女を許さない」
周りの男達が騒然とする中、女王は今までの気の強さが嘘のように、悲しみに満ちた瞳を伏せた。
「君がフィリアの王か。オーラストの王子から話しは聞いていたよ。我が国の戦に巻き込んですまなかった」
オーラストの王子──突然のその名に、怒りに燃えていたアルベルトの脳は一気に混乱を来した。何故ディラックが自身の話しを。よく分からない。だが一つ分かる事は、この女王がアルベルトの正体を知っていると言う事だ。
「私はもう王ではない!フィリアも離れた、だから──」
「心配するな。フィリアに何かしようとは思っていない」
アルベルトにはやはり分からない。レスティアと言うこの女王は、悪い人には思えないのだ。それがどうして戦争などを起こしたのだろう。
「……ディラック王子は?」
「この国とともに散った。王である父の様に、最期は立派な男だった。死の間際、君を逃がしてくれと私に伝えてくれたのだ。それで、君を探したのだけれど──」
続いたテバンの女王の声も、アルベルトの耳には届いていなかった。何故、ディラックが──ディラックはアルベルトの人生を変えた男だ。あの男がフィリアに訪れたから何もかもが狂ってしまった。アンナの死も、レッドの処刑も、エルバントが変わってしまったのも元を正せばディラックの所為だ。アルベルト自身知りたくなかった事を知り、怒りも悲しみも絶望も、そして死を願わずにはいられない程に追い込まれた。だが、フェイに出逢えた。
ディラックの事は許せない。そうは思っても、今迄のように憎む事は出来なかった。どうして憎んできた人々は、心の底から憎ませてはくれないのだろう。知らない事は、何て罪深い事なのだろう。アルベルトはその深い後悔の念に打ち拉がれた。
何時の間にか口を噤み自身を見詰めていた女王にアルベルトは視線を戻す。そのあまりにも澄んだ瞳は、やはりどうしても戦を起こす様には思えなかった。
「貴女はどうして、オーラストを滅ぼしたのですか」
人の命を奪ってまで得る物があるのだろうか。
「近くにテバンの領地である街がある。ついて来い。そこでなら、君の探す答えが見付かるかもしれない」
探す答え、それを知った事で、自身はその重みに耐え得る事が出来るのだろうか。それでも知りたいと思うのは、やはり頭では分かっていてもアルベルト自身がまだ、王としての自我を残しているからなのだろうか。
レスティアの立派な馬車の後をミトの質素な馬車はついて走る。思考を巡らせぼんやりとしているアルベルトに、ミトがポツリと呟いた。
「綺麗な人だったね」
「……そうだな」
レスティアは本当に美しい。そしてあれ程の屈強な男達を一瞬の躊躇もなく跪かせるだけの揺るがない強さがある。それが一目見ただけで分かる程に、テバンの女王は人を惹きつける魅力的な人だった。
ラブールとは逆へと進む一行。アルベルトはまた一つの道を選んだ。この先に見える物は何だろうか。不安と恐怖、そして僅かな希望を抱いて、アルベルトは唯この道を進む。
半日程でその街には辿り着いた。そこまで大きな街ではないが、それでもやはり所狭しと並ぶ家々に道を歩く沢山の人達。テバンの領地であるこの街は、活気に溢れる街だった。アルベルト達はレスティアの後に続きその中でも一際立派な屋敷に通された。美しい庭園に囲まれたその屋敷は、フィリアの城よりも大きなものだ。
二人はそのまま客間に通された。身体が深く沈み込む柔らかなソファや、部屋の中の古美術品にミトは瞳を輝かせている。その向かいに腰を掛けたレスティアは、その様子を微笑を浮かべ眺めていた。
「彼は君の従者か?」
「いいえ、友人です。ミトと申します」
ミトは突然自分の名を呼ばれ、慌てて緩み切っていた顔を引き締めた。
「友人か。どうだろうミト、庭を見てきては」
そう言ってレスティアは傍に控えていた家臣に合図を送り、その男が優しくミトの手を取るとミトは不安気にアルベルトへ視線を向けた。
「行っておいで」
安心させるようそう言って笑いかけてやると、ミトは渋々手を引かれ部屋を出た。
残った家臣達も下がらせるや、レスティアは先程までの柔らかな表情とは打って変わった真摯な眼差しでアルベルトを見据える。アルベルトはその力強さに圧倒された。初めて他国の王と対面するが、皆これ程に圧倒的な雰囲気を発するのだろうか。誇りや尊厳、その信念の強さすら伺える程だ。自分は奴隷と間違われ、人買いに捕まり、貴族の坊やと呼ばれてしまうのに。これが立派な王と呼ばれる者との格の違いなのだろうか。
そんな事を考えていると、レスティアは言い聞かせるようゆっくりと口を開いた。
「私がテバンの女王になったのは、昨年の事だ。前王である私の父は、オーラストとの戦の少し後、病で息を引き取ってね。だから、私の知る限りしか君に教える事は出来ないけれど、一つ知っておいて欲しい。テバンは古より、平等な和平を望む国である事を」
アルベルトが深く頷くと、レスティアは長い睫毛を伏せた。
「オーラストとテバンは昔から領地争いを繰り返していたのだ。この辺りは良い鉄が良く取れるからね。テバンは和平を望んだ事もあったのだよ。和平同盟を結び、採れた鉄を分け合おうとね。だがオーラストは君も知っての通り、この辺境の地にある。鉄は唯一の資金源であり、他国と対等でいる為の最後の砦でもあった。だから国を守る為、オーラストは和平を拒み続けてきた。そしてオーラストは反テバンの諸国と手を組む動きが近年活発になっていてね、テバン侵攻の緊張感が続いていたのだよ」
「……だから、先に滅ぼしたと?戦の他に、幾らでも方法があった筈だ」
アルベルトの真っ直ぐな言葉に、レスティアは何故か優しく微笑んだ。
「王は国を守る為に戦わなければならない」
「私には分かりません。戦うものは王ではなく、民だ。それに戦を繰り返し、他国を滅ぼさねば国が守れないなんて、そんな事はない筈だ」
「君にもいずれ分かる。この手を血に染め、血の涙を流してでも戦わなくてはならない心が」
どうして、この女王はこんなにも優しい顔をしている。オーラストを滅ぼしたのに。人の命を、奪ったのに。アルベルトの頭は、その混乱に熱を上げて行く。
「僅かばかり言葉を交わしただけでも、私は貴女が悪い人ではないと感じました。けれど、私は、戦が憎いのです」
戦をする人間が、良い人だとは思えないのだ。
「それは誰もが同じ心だろう。戦など無ければどれ程に幸せか。だがね、アルベルト。それでも人は争わずにはいられないのだよ。愛する事を、知っているから」
レスティアの話しはまるで雲を掴むようで、未熟なアルベルトには理解し難かった。どうして愛する事を知っていると争わずにはいられないのだろうか。それが分からないのは自身がまだ、愛すると言う事を知らないからなのだろうか。
難しい顔で考え込んでいるアルベルトに、レスティアはやはりどこまでも柔らかく、優しい声を掛けた。
「アルベルト、君は不思議な王だね。誰もが本当はそうありたいと願う、純真で、優しい王だ。フィリアでは民に好かれただろう」
そう言うテバンの女王は、少女のような新たな顔を見せる。その可憐さに直視する事を戸惑い、アルベルトは思わず俯いた。
「アルで、良いです。それに私はもう王ではない。民に好かれてもいない。苦しめ歪めてしまったのに、その罪を償う事もせず、心の呼ぶ声に身を任せ国を出たのです」
そう思うと羞恥ばかりが込み上げ、王であった事すら隠したい思いである。こんな人間に、他者を救う事は出来るのだろうか。フェイに、会う資格はあるのだろうか。
途端落ち込むアルベルトを掬い上げるよう、レスティアは静かに首を振った。
「アル、全てに意味があるものだよ。君が国を出て私と出会った事も、この街に来た事も」
意味とは何だろう。この寄り道に何の意味があったのだろう。落ち込んだだけのような気がしていたが、項垂れるアルベルトに向かい、レスティアは今度は強く言葉を繋いだ。
「君に、会いたがっている人がいるのだ」
「え……?」
こんな知らない土地で、一体誰が会いたいと言うのだろうか。あまりにも突然の事に意味もなく動悸が激しくなって行く。それでもついて来いと言い部屋を出るレスティアの後を、アルベルトは迷う事なく追った。
長い髪を靡かせて歩く後姿。その凛とした美しさを見つめながらひたすらに進む。だが、疑念は深まるばかり。
「その人は、どのような人なのですか」
「占者だ。私はその人の進言でオーラストに赴いた」
「私を、占ってくれるのだろうか」
一瞬チラリとアルベルトに目をやったものの、レスティアはそのまま歩き続けた。アルベルトの知らない所で動く何か。それが酷く恐ろしくもあった。
やがて離れの一室の前まで来ると、ここより先は一人で行くように言われ、アルベルトは不安ながらも重い扉を押し開いた。覗き込んだ部屋の中は薄暗く、そして何やら不思議な匂いが漂っている。恐る恐る足を踏み入れ数歩、扉が背後で閉まると、薄闇から声が生まれ出でた。
「アルベルト・フィリアだね」
酷く嗄れた声に、アルベルトは思わず小さく飛び上がる。それでも心を落ち着け目を凝らすと、部屋の隅の椅子に一人の老婆が座っていた。
「はい、私はアルベルト・フィリアと申します。……貴女は?」
「掛けなさい」
どうやら質問には答えてくれないようだ。アルベルトは恐る恐る近付き目の前の椅子に腰掛ける。蝋燭の淡い光に浮かび上がる老婆の瞳は固く閉じられ、手先は小さく震えていた。
「私に、何か……」
慎重に声を掛けると、震える指先がアルベルトに向かい伸ばされ、アルベルトは慌ててその手を取る。
「道が、二つ」
「……道?」
アルベルトは占者と言う者と初めて会うが、不思議な感覚を覚えた。全てを見透かされているかの様な、そんな不気味な心地。
しかし幾ら待てども老婆はその先を言わないような気がして、アルベルトは性急に問い掛ける。
「道とは、何ですか」
手を握ったまま、老婆は何やら呟いてはいるが、それはこの世の言葉ではないような気がして背筋を冷たい物が走る。そもそもアルベルトに会いたいと言っていた事も可笑しな事なのだ。だが、老婆が漸く呟いた一言に、アルベルトは震撼した。
「フェイ・リンメイを、知っているね」
何故、この老婆の口からその名が──自分の身体が小さく震えているのが手に取るように分かった。
「知るか、拒むか、二つの道がある。どちらを取るかは、おまえ次第だ」
「何の、話しですか……?」
この老婆は一体何を知っていると言うのか。自身はそれを、知るべきなのだろうか。アルベルトには分からない。
「呪われし大国リーハ、最後の王──。その地獄とも言える人生の話しさ。知れば後悔の道を、知らずとも、進める」
途切れ途切れに呟く言葉はまるで呪いのようで、余計に恐怖を煽る。
「待って、話しが分からない、何を言っているんですか」
アルベルトの頭は混乱していた。突然過ぎて追いついていないのだ。リーハとは確か、滅びたシンの国だ。その最後の王、十三歳だった王──それが、フェイだと言うのだろうか。アルベルトはそこまで思い及ぶと、全身を駆ける悪寒に震えた。
「さあ、どうする」
老婆の嗄れた声が重く耳に響く。アルベルトは混乱する頭で必死に考えた。だが、幾ら考えたとて答えなど一つしかない。アルベルトはあの男の為に、ここまで来たのだから。
「聞きます」
老婆の閉じた瞳がゆっくりと開かれた。揺れる蝋燭の光に映し出されたその瞳は、闇のような漆黒の色をしていた。
アルベルトはフェイの過去を聞く事で救えるのではないかと思っていた。光を宿さない瞳に、再び光を取り戻せるものと思っていた。同じ王として、黒札に身を落とした者として、分かってあげられるものと──だが全てを知った時。それは何とも、愚かな考えであったと知った。
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