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『Underground caT』
思い出ともに
しおりを挟む堕ちて行く。底無しの闇へと、深く、深く、どこ迄も──。
俺は自ら聖域を侵す。甘い夢を見る自分を壊したくて、嫌われたくて始めたこの行為。なのに隆司さんは嫌うどころか真っ直ぐに俺を見る。何時でも優しい目で俺を怒る。罪悪感に押し潰されそうで、ただ責めて欲しくて、俺はやめる事が出来なくなっていた。この悪循環の無限ループから抜け出す術を探してもがく。その度に足を取られ、更に深みに嵌って行く。
もう優しくしないで。例えどんな事をしてくれても俺は変われない。人を愛する事なんか出来ない。だから無駄なんだよ、全部。
俺達の関係がおかしな事になって早くも半年。一緒に住んで三年が経った。今年は東京にも沢山の雪が降って、道路脇には黒い山が点々と見受けられる。
植え込みの煉瓦に作られた汚い雪だるまを眺めていると、軽いクラクションの音が響いた。
「久しぶり」
運転席の犬飼は俺を見て優しく微笑んだ。海外に行っていたらしく、譲さんに会うのも半年ぶりだ。今日は別邸だから迎えは犬飼一人。俺達の関係は、ご主人様の呼び出しが無ければ無い。だから犬飼に会うのも半年ぶりだ。あの時以来。案の定ずっと気になっていたのか、バックミラー越しによく目が合う。
「聞きたい事があるなら答えるよ?」
バツが悪そうに視線を逸らした後、犬飼は深く溜息を吐いた。
「……お前、あの男とどう言う関係なんだ?お前の事を殴るなんて」
信じられないといった様子の犬飼の方が信じられない。俺は女じゃない。だから別に殴られようが何とも思わない。殴られて当然だし、それを望んだものは他でもない俺だ。
「ただの家主と居候の関係。……何、嫉妬でもしているの?」
こいつと寝たのは二回だけだ。そこ迄ハマってくれるとは思わなかった。
「そんなつもりは無かったんだが……すまない」
犬飼はバカがつく程真面目な男だ。自分の立場をよくよく理解しているからこそ、嫉妬すらお門違いだと分かっている。それなのに隠し切れないその波間でもがいているのだろう。深く溜息を吐いた後に、犬飼はポツリと呟いた。
「お前は不思議な奴だな。この腕で抱いたとしても、どうしても、心だけは掴めない。なのにまるで助けを求めてるようで放ってもおけない。二階堂様が夢中になるのも、納得が出来た」
俺はそれに答える事もなく、無言のまま車は二階堂家の別邸へと辿り着いた。駐車場には見慣れない車が一台止まっていた。
「誰か来ているの?」
「おかしいな。これは坊ちゃんの物だが……」
犬飼の表情が俄に曇る。どの坊ちゃんだろう。まあ、どれでも良いけど。取り敢えず待ってるように言われて俺は車で待機した。この別邸は譲さんしか使わないと言っていたし、子供とは口も聞いていないと言っていたから、何か大事なんだろうか。
そんな事をぼんやり考えていたら、コンコンと窓が叩かれた。視線を向けたその先で若い男が驚いた顔で俺を見詰めている。……何処かで見た顔だ。
「雪……?お前、雪か?」
窓の向こうで名前を呼ばれ、ふと思い出したものは、刑務所の中の御曹司だった。あの御曹司、二階堂って名前だったのか。知らなかった。世間はなんて狭いのだろう。
「坊ちゃん!?」
屋敷から走り出て来た犬飼が驚きの声を上げ走り寄る。
「おお、犬飼。こいつ何でここにいるんだ?」
「お父上の客人ですよ」
何て答えるのかと思ったら、さすが番犬。眉一つ動かさず余裕の微笑みを浮かべ答えた。
「間宮様。二階堂様がお待ちです。行きましょうか」
犬飼に促され、俺達は足早に屋敷へと向かった。
「……坊ちゃんと知り合いなのか?」
「うん、まあね」
何となく刑務所の話しはしたくなかったから濁した。軽蔑される事が嫌とかでは決してなくて、ただ何となく。
「あれは三男の昴様と言ってな、他のご子息と違ってどうにも……手を焼いているんだ」
刑務所に入っていた位だし、簡単に想像は付いた。二階堂家の面汚しか。ご苦労な事だ。
別に金持ちが苦労知らずとは思わない。そこにはそこの苦労があって、金持ちなりのジレンマや辛さがある事は分かる。だがこいつらは死ぬ程の空腹を知らない。生きる為に形振り構わず必死になる事を知らない。刑務所にすら喜んで入るような生活苦も、重い孤独も知らない。だからあの御曹司みたいにバカなんだ。
何だかその日は苛々して、何も悪くない犬飼にすら当たり散らしそうになった。譲さんとは普段通り、軽く話して海外の土産を貰って、誘って抱いてもらう。年寄りだから一回だけだけれど、帰りに犬飼が抱いてくれるから構わないと思っていた。俺が帰る頃には御曹司の車はもう無かったし、俺達はそのまま二階堂家の別邸を後にした。
無言のまま走り続けた車は、マンションから少し外れた位置に停車する。
「どうする、上がる?」
興味なさ気に問い掛ける俺にチラリと視線を投げると犬飼は後部座席に回った。今日は車か。こんな所でやりたくは無いけど、俺は最近もはやそんな事はどうでも良いと思うようになっていた。
見詰められる視線が熱くて、肩に手を掛け唇を重ねようとした瞬間、犬飼はすっとそれを制した。
「……雪、お前あの男に惚れているんだろう?」
思いも寄らない言葉に、胸が鈍く痛む。
「……そんな顔するなよ」
抱き寄せられた犬飼の腕の中は温かくて、無性に苛立った。
「もうこんな事はするな。自分が傷付くだけだろう?好きなら好きで、ちゃんとした方が良い。こんなんじゃ、好きになってもらえない。大丈夫だよ。お前は魅力的だ」
余りにも優しい言葉を紡ぐ男を前に、思わず鼻で笑ってしまった。バカか。もう何もかも手遅れなんだよ。
俺は腕を振り払い逃げるように車を飛び出した。エレベーターなんか待っていられなくて、六階迄の階段を思いっきり駆け上がる。玄関を乱暴に開けて自分の部屋に走り込もうとしたものの、リビングにいた予想外の人物に一瞬怯んでしまった。
「おかえり、雪」
にこやかに軽く手を振る将生さんの横で、鬼のような形相で俺を睨み付ける慎太郎。
「ちょっと座れ」
慎太郎から静かな威嚇の声が向けられる。こいつが怒っている所なんか初めて見たけれど、何かをした覚えはない。猿に命令された事も癪に触るし、俺はそのまま突っ立って睨み返していた。座らない俺に痺れを切らした慎太郎がゆっくり口を開く。
「お前、隆司さんに何した?」
頭の中は疑問符でいっぱいだ。何でそんな事をこいつに言われなきゃいけない。そもそも何をしたとして、それは俺と隆司さんの問題だ。外野が口を出す事じゃない。
「何言ってんだ猿」
そんな俺の態度に苛立ちを抑え切れなくなった慎太郎が、思いっきり机に拳を振り下ろす。あまりの音に身体が小さく跳ねた。
「倒れたんだよ!一緒にいて気付かなかったのかよ!」
倒れた……?
「あの人は辛い時に辛いなんて口が裂けても言わない。俺が何度も何度も休めって言っても負けられねえとか訳わかんない事言って……結果これだよ!お前の所為だろ!」
怒りにかまけた慎太郎の怒声も、遥か遠くの方で聞こえた気がした。
倒れたのが、俺の所為──そんなに苦しめていたって事なのか。頭の中が真っ白に飛んで、身体も小さく震え出す。俺は、どうしたらいい。
愕然とする俺をまるで落ち着かせるかのように、将生さんが静かに言葉を掛けた。
「雪、山室はずっとお前には言うなって言っていてね。けれどそうもいかなかったからこうして来たの。俺の有能な右腕をこのまま潰す訳にはいかないからね。俺には隠せないの……分かるね?」
何もかも見透かしたような冷たい視線に当てられて、俺は自分のして来た事を素直に打ち明けた。
当て付けのように男を連れ込んだ事。そして深く傷付ける事が分かっていて────殺して欲しいと願った事。
激怒した慎太郎に殴られて、涙が止まらなくて、自分がどうしようもなく嫌いになった。
隆司さんは心労から身体を壊し、肺炎になっていたそうだ。それでも無理して何ともないフリをして、結局倒れて病院に担ぎ込まれた。慎太郎が面会させないと喚いて結局俺は暫く外出禁止となった。
誰もいない部屋で呆然と過ごす。どうしたら良いのか考えて考えて、それでも何も思い浮かばなかった。謝ってどうなる。例え肺炎一つ。それでも死に至る事もある。隆司さんの奥さんがそうだったように。手遅れにならなくて良かったと、ただ泣く事しか出来なくて、その度に叫びたくなる程の罪悪感に襲われた。
俺は自分の事しか考えないから、こうして大切な人を傷付ける。やっぱり、誰かを愛する事なんか出来ない。もう隆司さんの側にいる資格も無いのに、それでも隆司さんのいない家で一人過ごす時間は、不安に押し潰されそうだった。
ただ会いたい。それしか頭には浮かばなかった。こんな時迄自分の事ばかり。全く都合の良い人間。どうしてこんなに、俺は欠陥だらけなんだ。
数日で退院した隆司さんは、慎太郎の付き添いで家に戻って来た。二人にはしないと豪語する慎太郎を何とか宥めて帰すと、隆司さんは少し照れたように笑った。
「いや、情けねえな。一人で大丈夫だったか?」
少し痩せて見える顔付きに胸が痛い。
「ちょっと座んな」
ソファを軽く叩かれ、恐る恐る隣に腰を下ろす。謝りたいのに言葉が出なくて、何とか涙だけは耐えるのに精一杯。そんな俺にすらこの男はいつもの様に優しい眼差しを向けてくれる。優しくする価値も無い、こんな人間に。
俯く俺の頭を軽く叩くと、隆司さんは静かに口を開いた。
「お袋さんに会いにいかねえか?」
「……え?」
「お袋さんに会って、病院にも行こう。お前の心もちゃんと治そう。治さなきゃダメだ」
この人、知っているのか。俺が、病気だと思っているの?
「いらないっ、そんなのいらない!」
頭の中が一瞬でぐちゃぐちゃになって、息が詰まる。
「怖いのは分かる。その不安を全部俺にぶつけても良いから……変わろう。このままじゃお前はダメになるよ」
分かってる。だけどどうしようもないんだ。向き合いたくない。逃げたい。その先に何が待ち受けていたとしても、一人で立ち向かうには俺は弱過ぎるんだ。だから、そんな目で見ないでくれ。
「お願いっ、許して……俺は変われないんだ!」
涙で滲む視界に、困ったように微笑む男が映る。
「俺も怖いよ。またお前を傷付けるんじゃないか……不安で不安で仕方が無い」
逃げる俺を引き寄せて、回した腕に力がこもる。
「それでも幸せになろう、雪──」
耳元で囁かれた言葉に、耐え切れなくて涙が溢れた。
何でこの世界にこんな人間がいるんだ。深く傷付けられた相手の幸せすら、真っ直ぐに願えるような、底無しのお人好し。壊れたみたいに泣き続けて、強く抱き締められた隆司さんの腕の中で、痛い位の深い優しさを感じた。
絶望を乗り越えて人は強くなる。この男のように、痛みを隠して笑えるようになる。それでも深く傷付いた心は、簡単には治らない。揺らぐ事なく見える人間の内に姿を隠す戸惑いと、不安。
真っ直ぐな瞳の裏に揺れるその感情が、この人の中に眠っていた事を知った。
初めて感じる。誰かががこんなにも愛しいなんて。あんたの為に変わりたい。苦しめた、傷付けた、どうかその罪滅ぼしをさせて欲しい。消えない罪を引きずったまま、それでも進みたいんだ。この病気を甘く見ていた訳じゃない。けれど幸せを願ってくれた隆司さんの為にも、嘘でも乗り越えて行く強さが欲しかった。
それでも未来は永遠の綱渡り。その先に、俺達は何を見るのだろう──。
どうやら隆司さんはずっと俺と母さんの蟠りを気にしていたようで、こっそり行方を調べていたそうだ。自ら会いにも行って、俺に会って大丈夫かも調べていたらしい。どこ迄もお人好しで呆れる程だ。
母さんは俺が服役している間精神病院に入っていて、今は退院して新しい男と暮らしているとか。変わらないのは、母さんも一緒。でも父さんの事を罪に感じているのなら、俺達は少しだけ進めるんじゃないか。そんな希望も俺の中には芽生えていた。
「そろそろ行くぞ。大丈夫か?」
部屋に顔を出した隆司さんに強く頷いて見せて、俺達は家を出た。移動は相変わらず電車。何でタクシーを使わないのかと一度聞いた時、隆司さんは借金があるからと教えてくれた。それが再び裏稼業に身を落とした理由みたい。あまり話したがらないから聞けなくて、それっきりだけど。
降りた駅は、最近再開発で注目されているセレブの街。どっかの社長でも捕まえたんだろうか。
「緊張していないな」
隣を歩く隆司さんがそう言って小さく微笑む。緊張しないのも、ここに来れたのも、手を差し伸べてくれた隆司さんがいたからだよ。そんな事恥ずかしくて言えないから、精一杯笑い返した。
大きなデパートの間を抜けて、辿り着いた場所は新しい高層マンションだった。
母さん。今は幸せ?こんな良い所に住んで、新しい男見付けて、幸せ?それは嫌味じゃなく、俺の本心だ。
オートロックのモニターの前で一〇二五室を呼び出す。返事をした声は、懐かしい母さんの物だった。
「こんにちは。山室です」
「あら、どうも、今開けますね!」
モニターから聞こえる声が嬉しそうで、胸の奥がチリっと痛む。俺より隆司さんの方が年が近いし、何より女だ。昔から綺麗だと言われてた母さん。万が一……なんて考えたくないけれど、微かに胸を過った不安。
「何て顔してんだ。行くぞ?」
その声に我に帰り、俺は慌てて隆司さんの後を追った。俺がまさか……嫉妬をするなんて。しかもこんな時に。本当どうしようもないな。何の為にここにいるのか思い直して、気持ちを切り替えエレベーターに乗り込んだ。
十階で降りた隆司さんの背中を見詰め歩き続ける。足を止めた光沢のある黒い扉の表札は、筆記体で『かきざき』と書かれてあった。隆司さんが俺に視線を投げ、俺は強く頷いて見せる。
インターホンが鳴ってしばらく。扉が開き、顔を覗かせたひとは、少しだけ年を取ったけれど、変わらずに綺麗な母さんだった。嬉しそうな顔から一気に血の気が引いて行くのが手に取るように分かる。
「久しぶり……」
重苦しい沈黙に耐え切れず呟くと、母さんはビクリと身体を強張らせた。扉に掛けた手が、同時にガタガタと震え出す。
「優美さん。今日はお話しがあって伺いました。どうか落ち着いて下さい」
ゆっくり語り掛ける隆司さんに視線を戻し、母さんは軽く頭を下げた。
「……上がって下さい」
「お邪魔します」
招かれざる客だと言う事は百も承知。母さんは怖いのだろう。俺がいなくなって手に入れた幸せを、また奪われるんじゃないかって。当たり前だし自業自得だけれど、こんな風に拒絶されるのはやはり悲しいものだ。
広いリビングに通されて、ソファに腰を下ろすと、程なくして母さんは紅茶を出してくれた。俺の方に差し出す手が震えていて、カップが受け皿とぶつかりカタカタと音を鳴らす。
母さんが席についても誰一人口を開く事もなく、重い沈黙が広い部屋を支配した。俺自身何て言ったら良いかも分からないし、母さんは一度も目を合わせてくれない。隣の隆司さんに視線を投げると、ふっと微笑まれた。その優しい眼差しに背中を押される様に一つ息を吐く。
母さんに視線を戻すと、俯いたままぎゅっと拳を握り締める様に、また悲しくなった。年を取って見えるのは、痩せたからだろうか。
「……元気だった?」
声を掛けるだけでビクリと身体を強張らせる自分の母親。けれど今なら分かるんだ。父さんの復讐と言う洗脳を言い訳に、目を背けていた事。いつからか復讐は、俺の心の叫びとなっていた事。憎まれてでも俺を見て欲しかった。いない物としないで欲しかった。怒ってくれて構わない。殴ってくれて構わない。罵って、傷付けられても構わない。俺は、ここにいる。そう、ずっと訴えていたんだ。
「母さん……ごめんね」
涙が溢れて、上手く息も付けなくて、それでも口を付いた言葉はそんな物だった。刹那、紅茶の入ったカップがガシャンと音を立て、俺も、隆司さんも一瞬何が起こったのか思考を飛ばした。
頬に長い髪が触る。首に走る熱が、急激に閉められた気道が、ギリギリと肌に食い込む長い爪が、鋭い痛みを呼んだ。けれど反射的にも首を締める手を振りほどく事が出来なかった。これが、母さんの抱えていた苦しみだと分かったから。生きているのに息を吸う事が許されず、それでも死ぬ事さえ出来ないような、重い罪の意識。
「雪、ごめんね……お母さんこんなんで、ごめんねえ──」
我が子を手に掛け、涙で美しい顔を汚し、唯々ごめんと繰り返す、狂ってしまった母親。
「ゆ、優美さん!」
我に帰った隆司さんの手で漸く引き離されて、肺が必死で空気を求めた。むせる度に鋭い痛みが喉を走り抜ける。
「雪、大丈夫か!?」
背中をさする手の温もりに、また涙が溢れる。もう戻れない。何度も何度も突き付けられて、それでも俺は繰り返す。けれどもう、これで最後だ。床にへたり込んで泣き続けている、小さな身体を抱き締めた。母さん。別れの言葉をあなたにあげる。
「母さん、俺、好きな人が出来たよ。その人もね、こんな俺の事好きになってくれた。俺は今凄く凄く、幸せなんだよ。だからもう、大丈夫」
母さんがこれ以上自分を責める事のないように。精一杯の嘘を吐く。それがせめても俺の出来る親孝行。これが罪を重ね傷付けあった親子の姿。悲しく虚しい、永遠の別れ。一度壊れてしまった物は二度と戻らない。分かっていた筈。それでも信じたのは、隆司さんがいたからでもあるけれど、何より俺達は血を分けた親子だから。だからこの世で誰よりも、あなたの幸せを願います。
悲しい別れのその先で、俺は少しだけ、憎み続け、逃げ続けた愛に触れた。それでもこんな人間産まれて来なければ良かったと、後悔だけが胸の内に残る。
それからの記憶はあまりない。けれど夢を見たんだ。永遠に続く幸せを信じて生きていた、幼い頃の夢を。
動物園が大好きだった。母さんと父さんの間で二人の手を繋いで園内を回る。よく笑って、気の利く優しい子。誰もが俺をそんな風に言った。その度に嬉しそうに笑う二人が大好きで、それだけで俺も幸せを感じていた。あの時は確かに、俺は二人を繋ぐ鎹だった。
夢を見たのはそれっきり。もう母さんを憎んではいない。それでも未来は闇の中。暗く重い罪をまた一つ、俺は背負った気がした。
そしてこれが沢山の人を傷付け、この先も誰かを傷付けてしか生きる事の出来なくなった、悪魔の進むべき道だと知った。
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